救世主転生 ~死にたくなかったので、勇者覚醒イベントの攻略不能ボスを倒して勇者を救おうと思います!~ 作:嵐山田
翌日、依頼から帰って来たミリアにも、王都行きの旨の話をした。
その話の前に、朝早く帰って来たミリアにクラリスが鉢合わせて昨晩のエモニの二の舞になったのは言わずもがなである。
……はぁ。
「でも、私たち三人が同時にこの街から出ちゃうのは、ちょっとかわいそうかもね……主にギルマスが」
いつもの四人にクラリスを加えた五人でテーブルに着き、今後のことについて話をする。
ちなみに椅子は四脚しかないため、激しい争いの末、ユメが俺の膝に座ることで決着がついた。
「それは……確かにあるな。俺とエモニはともかくとしても、ミリアが抜ける穴は月の街ギルドにとって大打撃間違いなしだ」
「そうだよね。クラス6昇格目前のミリアさんが居なくなっちゃうのは流石に……」
この状況はあれに近いものを感じる。
有能な社員ほど見切りをつけるのも早いから、やめたあと残された側が地獄になるあれだ。
「あ、それなら私と一緒に来たコントラクターを置いてけばいいよ!ロティスたちの方が強そうだし!」
閃いた!とでも言いたげな表情でとんでもないことを宣うクラリス。
「……それは、まずいんじゃないか?特にあのユーリとか言うやつ、確実にめんどくさそうだけど?」
そう言えば、クラリスってどういう立場なんだろうか?
姉妹揃って特別な力を持っているだけに、なんとなくそこそこ立場のある家のお嬢様なイメージがあるけど……。
「ああ、それは大丈夫!私と一緒に来たあのいかにも偉そうなギルド役員より、私の発言権の方が上だから!誰にも文句は言わせないよ!」
ooh……やっぱりですか。
でもクラリスなんてキャラクターに聞き覚えはないんだけどなぁ。
◇
「そう言えば、今朝ギルドが騒がしかったよ?なんでも女の子が行方不明だとかで」
………………。
「ミリア、それ、詳しい話は聞いた?」
「ううん。一秒でも早く報告を終わらせてロティスに会いたかったから、何も聞かずに帰って来たよ!」
ですよねぇ。
……ああ、厄介ごとの予感。
「あ、でも一番騒いでた人に見覚えがなかったかも」
……いや、まだ九割確定したってレベルだ。
俺は残りの一割に賭ける!
「諦めよロティス。お主はそういう星の元に生まれておるんじゃ」
膝に座ったまま俺を見上げて諭すように話すユメの頭をわしゃわしゃと撫でながら、クラリスを見つめた。
「?」
まあ、なんて純粋そうな笑顔……当人に自覚なしと。
いいだろう。
スニーキングミッション開始だ。
クラリスの宿まで誰にも見つからずに行き、何事もなかったようにして「実は隠れてただけです~てへ!」をクラリスにやってもらうしかない。
「とりあえず、クラリスを宿まで送ろう。俺達も王都行きの準備をしたり、ギルドで色々やることもあるし……」
「えー、私今日も泊まりたい!息苦しいとこは嫌だもん!」
「最悪それでもいいけど、クラリスは今誰にも言わずにウチに来ちゃってるんだよな?」
「ううん、ちゃんと書き置きを残してきたよ!」
自信満々に言って見せるクラリスだが、俺は余計に厄介ごとの気配を感じた。
「……ちなみに、なんて?」
「え、普通に『運命を見つけました。探さないでください』って」
………………
………………
………………
……終わったかもしれない。
というか確定しちゃったよ。もう絶対キミだよねその行方不明者!?
「……とりあえず、今日は解散しよう。エモニもエリアさんたちに王都行きのことちゃんと伝えるんだぞ?」
「そうだね。私とロティス、ユメちゃんはまだしも、エモニちゃんはちゃんと話してこないとダメだよ?」
「うん、でも大丈夫だと思う。私はもう、生き方を決めたって伝えてあるから……」
とっくに覚悟は決めている、そんな表情のエモニ。
「……そう、それでもケジメはちゃんとつけるのよ?」
「もちろん。これは私の人生だから」
……なんの話をしているんでしょうか?
なんか二人が知らないところで分かり合ってるんですが。
確かに、アインからの頼みのことも考えると危険だが、そんな戦地に赴く兵士みたいな顔しなくても……。
「ふふっ、ロティスって悪い男なんだね」
「そうじゃぞクラリス。だからお主はやめておけ」
「ふふっ」
「カカッ」
……こっちはこっちで謎の火花が散っている?
まあ、何事も切磋琢磨して高めあっていくのは良いことだからね。うん。
とりあえず、俺は何も気にしないことにした。
◇◇
「さて、クラリス。泊まっている宿はどこだ?まあ、北側なことはほぼ間違いないだろうけど……」
「うーん、なんてとこだったかな……。なんかやけに豪華だったけど」
話し合いのあと、エモニは家に、ミリアはギルドに王都へ行くことを報告に行き、俺はクラリスと二人でスニーキングミッションを開始しようとしていた。
正確には姿を消したユメが腰の左側に浮いているが、まあ、ほぼ二人だ。
「豪華な宿か……まあ、クラリスがどの程度の立場かは知らないけど、月の街でそんなに豪華な宿は十中八九スーパームーンだろうな……」
スーパームーン、お貴族様御用達なこの街一番の宿だ。
ちなみに原作だと俺が殺された後、暴れたエモニによってこの街で唯一壊される宿でもある。
「あ、そんな名前だった気がする!じゃあ、行こっか!」
そう言って意気揚々と歩き出そうとするクラリスを咄嗟に止めた。
「ちょっと待て!その恰好じゃ、クラリスがここにいたってことがバレる。それは面倒だろ?」
「確かに……でも、どうするの?私替えの服とか持ってないよ?」
「ああ、だからこれを着てくれ!」
そういって俺は目深なフードのついた如何にもなローブを渡した。
「これは……逆に目立たない?」
冷静な突っ込みありがとう。
だが、ゲーオタとしてはスニーキングと言ったらこれなんだ!
「問題ない。クラリスくらいの身長の子が着てれば、たいてい何でもかわいいで済まされるはずだ!」
「むぅ……それって私が小さいってこと?」
「いや、だってクラリス11とか12歳くらいだろ?」
「むぅぅぅ!違うよ!私もロティスと同じで15歳だよっ!!!」
な、んだと?
どこからどう見ても小学校高学年くらいの子にしか見えないんだけど……15歳?あと三年したらリアル合法ロリじゃないか!?
まあ、俺はロリコンじゃなから興味ないけどね?
「そ、そうだったのか。まあでも、変装において実年齢と違って見られるってのは有利なことだからな!よしっ、早速行くぞ!」
これ以上墓穴を掘らないうちに俺は行動を開始した。
なかなか王都に向かえない……。
それもこれもメガネっ子の予定だったのに蓋を開けてみたら天真爛漫お転婆お嬢様だったクラリスちゃんのせい!