救世主転生 ~死にたくなかったので、勇者覚醒イベントの攻略不能ボスを倒して勇者を救おうと思います!~   作:嵐山田

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第十一話 マイア村

 その場に崩れ落ちたユーリをあの見た目が偉そうなギルド職員が何とか馬車に乗せ、ついに俺たちの旅は始まった。

 

 俺たちの乗った馬車が動き出すとさっきの魔法のこともあってか街から大きな歓声が上がっていた。

 ……戻ったら、ギルマスとミナさんに詰められそうだな。

 ヒルウァは俺たち三人が協力して倒したということにしたため、相対的にミリアの比重が大きかったという判断になって俺達のクラスの急上昇は起きなかったが、上位魔法や複合魔法は使えるだけでクラス5や6にされかねない。

 

「ロティス!さっきのはなんじゃ!?星が降って来たようじゃったぞ!」

「ね!綺麗だったね!いつの間にあんな魔法使えるようになってたの?」

 

 初めて乗る馬車への興奮も相まってか、いつもの倍くらいのテンションで俺に詰め寄るユメとエモニ。

 

「思い付きでやってみたんだ。うまくいって良かったよ」

 

「さすがは私のロティス、まさか複合魔法で上位魔法規模のものを使っちゃうなんて……」

 

 この世界では何故か魔法を合わせて使うということが一般的ではない。

 昔に作ったお湯を出す魔法もこっちの世界の人は水を出してそれを火属性魔法で温めるという工程を踏んでいたりなぜか簡略化しようとしないのだ。

 

 これはゲームの名残で同時に魔法を使えないという制限を受けているのかとも思ったが、強化魔法で体を強化したまま魔法を使えるのだから誰かしら思いついてもよさそうだが……まあ、とにかく珍しいらしい。

 

 そんな話をしながら馬車に揺られること体感2,3時間ほどすると……。

 

「のう、ロティス」

 

「どうした?ユメ」

 

「ロティスに限らずじゃが、なぜ皆の顔色が悪いのじゃ?」

 

 最初の十数分程ははしゃいで左右の窓を行ったり来たりしていたユメだが、変わり映えのしない景色にすぐに飽きたようで刀の姿になっていた。

 そして、今再び人の姿になって言ってきたのだ。

 

「……体が痛くてな。主に腰とか……」

「これは新手の特訓になるかもね」

「これならいつも通り走って護衛してた方がよかったよ……」

 

 俺に続いてエモニとミリアも苦い顔でそう言った。

 そうである。

 この馬車、とにかく揺れるのだ。

 女子三人の手前言葉を濁したが、腰より尻がやばい。

 外装をあれだけ豪華絢爛にするなら、もう少し乗り心地を改善する努力をしてほしい。

 いや、ほんとに……。

 

「む?」

 

 そんな俺たちを不思議そうな顔で眺めるユメにはこの辛さを言わないでおいた。

 世の中知らなくていいこともあるものだ。

 

 ◇◇◇

 

「着いた〜!」

 

 苦行の馬車に耐えてようやく俺たちは今日の目的地であったマイア村に到着した。

 

「皆さん、お疲れ様です。挨拶が遅くなりましたが、クラリス第二王女の護衛を務めるヒナと申します」

 

 馬車から降りて、各々が腰や足を伸ばしたりしているとクラリスの馬車から降りて来た快活そうな女性が挨拶にやって来た。

 

「どうも、依頼を受けたロティスです。あちらはミリアとエモニ、ヒナさんよろしくお願いします」

 

「……ヤバイ、ロティスくん近っ!名前呼んでもらっちゃった――ンンッ!はい!よろしくお願いします!」

 

 ヒナさんが上を向いて何かぼそぼそと言っていたが大丈夫だろうか?

 ユーリという悪い見本があるおかげで警戒してしまう。

 クラリスも息苦しいって言ってたしな……。

 だが挨拶をしてもらった手前、警戒しながらも握手くらいはしておくかと思って手を差し出そうとすると、俺の前に二人の影が割り込んだ。

 

「ヒナさん。どうもミリアです。よろしくお願いしますね?」

「同じく紹介されたエモニです。よろしくお願いしますね?」

 

 ……二人は凄い圧でヒナさんに挨拶をする。

 こらこら、無条件で女性に圧をかけちゃうその癖直そうね?

 なんて思うのは、心の内だけ。

 ああなった二人には何も言えないです。

 

「あっ、はい!よろしくお願いします!」

 

 だが、ヒナさんは全く動じていない。大物だな。

 それにしてもクラリスの護衛か~、やっぱりクラリスっていいとこのお嬢様だったんだな~。

 ………………

 ………………

 ……第二王女!?

 

 考えることが多すぎて一番重要な部分の衝撃がだいぶ遅れてやってきた。

 

 え?……え???

 今、ヒナさんクラリス第二王女の護衛って言ってたよね?

 ……ん?……は?

 

「え、あの、クラリスって第二王女なんですか?」

 

「あれ、ご存じなかったんですか?てっきりご承知の上かと……」

「ヒナ、ここからは私が話します」

 

 俺の疑問にきょとんとした顔をするヒナさんを差し置いてクラリスが会話に入って来た。

 

「驚かせてしまってごめんなさいロティス様。ただいまおっしゃられた通り、私はサンシャイン王家の第二王女クラリス・サンシャインと申します」

 

 そう言って見事なカーテシーを披露するクラリス。

 ……おいおい、これがあのクラリスだって?

 信じられないが、立ち居振る舞いや言葉遣いその節々から王族たる気品を感じさせる。

 

「立ち話も何ですから、まずはギルドハウスへ行きましょう」

 

「あ、ええ。分かっ――りました」

 

 状況にまったくついていけず、口調がおかしくなってしまうが先導するクラリスとヒナさんの後を追って俺たちは歩き出した。

 

「ねえ、ロティス……今のってほんと……だよね」

 

「ああ、あの雰囲気は間違いないだろうな……」

 

「でも、今の王族一家に王女っていたかしら?ご息女の紹介はされてなかったはずだけど……」

 

 ミリアの言う通りで絶望勇者の作中のサンシャイン王家に王子や王女などの後継は存在しない。

 まあ、どのエンドでも大抵滅ぶか登場前に終わるから作られていなかったんだろうけど……。

 

 そんなことを考えているうちにあっという間にギルドハウスが見えて来た。

 ギルドハウスとはギルドのない村や街にコントラクターが依頼などで滞在する場合に使用することのできる宿舎のようなものだ。

 小さい村などでは宿がないこともあるため、王都のギルド本部サンシャインギルドが王国中の村や町にこのギルドハウスを作ったのだ。

 管理人は王都からすべてのギルドハウスに派遣されており、ギルドの役職持ちと変わらないほどの好待遇だそうだ。

 

「さぁこちらです。マルクス副ギルドマスター、準備は出来ていますね?」

 

 俺達が到着すると先について待っていたあの偉そうなギルド職員とユーリが居た。

 偉そうなギルド職員は副ギルドマスターだったようだ。

 道理で月の街のギルドマスターが媚びを売っていたわけだ。

 

 隣のユーリはなぜか叱られた後の子供のような顔で下を向いている。

 

「はっ!クラリス様、それにコントラクターの方々もどうぞお入りください」

 

 こうして俺たちの旅の一日目は無事に終わりを迎えようとしていた。

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