救世主転生 ~死にたくなかったので、勇者覚醒イベントの攻略不能ボスを倒して勇者を救おうと思います!~   作:嵐山田

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第十三話 襲撃

 料理をあらかた楽しみ、いつの間にか加わっていたヒナさんも含めて、食堂で歓談していたところ何やら外に嫌な気配を感じた。

 

「なあ、ミリア。なんだか外が変じゃないか?」

 

「そう?でもロティスが言うならそうなのかも……ん~?まあ、こういう村にあんな馬車が三台も来たら村も盛り上がるんじゃない?」

 

 そう思って遠出慣れしているミリアに聞いてみたが、反応はこの通り。

 だが、どうにも嫌な気配がする。

 

「ロティス?どうかしたの?なんか険しい顔してるけど?」

 

「いや、なんだか外が騒がしい気がしたんだが……気のせいかもな」

 

 そう答えつつも、俺はユメに目配せをする。

 彼女はこういう気配に敏感だが、特に反応は示していない。

 

 だが、これは……一度様子を確認しに行った方がいいかもな。

 

「わり、俺ちょっとお手洗い行ってくるわ」

 

「あっ!ロティス、場所は分かる?案内しようか?」

 

「ありがとなクラリス。でも大丈夫だ」

 

 彼女たちにそう告げて俺はこの嫌な気配の正体を探ってみることにした。

 

 トイレに行くふりをして自室に戻り、ただの刀状態である夢幻と無限を帯刀すると隠密の魔法を発動して部屋の窓から外へ出た。

 

 とりあえず、ギルドハウスの屋根から辺りを見回してみるが目立った何かがあるわけではない。

 

「でも、この感じは……」

 

 やはり嫌な気配は変わらずにあり、あたりを注視していると妙な動きをする人影を見つけた。

 

「あいつは……ユーリか?」

 

 ここからでは丸見えだが、隠れて何かのタイミングを見計らっているように見受けられる。

 

 おいおい、今度は何をやらかす気だよ……と内心あきれてそれを見ていると直後に予想だにしないことが起こった。

 

 ◇◇◇

 

「あの、皆さん。ロティスきゅ――ロティスくんの実力はいつごろからあんなに卓越していたのですか?」

 

 ロティスが居なくなった食堂では若干緊張気味なヒナのその言葉で女子会の様相を呈した、ロティス会が始まっていた。

 

「ロティスは昔からすごかったよ。三歳くらいの頃から私に魔法を教えてくれてたし」

 

「そうね~私のロティスはもう本当に最初からすごかったのよ!」

 

「さすがはろてぃすきゅん!そんなに幼い時から……」

 

「のう、ミリアよ。ワシは前から思っていたのじゃがその()()とはいったい何なのじゃ?」

 

「それはだって私がロティスを拾って育てて来たんだから!でも実際に私の子ってわけじゃないでしょ?だから間を取って私のロティスってことよ」

 

「まったくどこの間を取ったらそうなるのかわからんな」

 

「うんうん!それにはユメちゃんに完全同意!ミリアさんの呼び方には他意の方が多く含まれてそうだもん!」

 

 彼女たちがロティスの話を始めてしまえば、きっかけがなければそれが止まることはない。

 

「そういえば、クラリスちゃん。ロティスとデートをしたんだって?一体私のロティスとどんなデートをしたのかしら?」

「あ、それってあの突然部屋に帰って来た日のこと?私も聞きたい~」

 

「ふふっ、どうしようかなぁ?あのデートは私とロティスだけの秘密だしな~」

 

「クラリス、ワシも居たことを忘れておるな?ならばワシの口から語ってやろう」

 

「あっ!あーあー!まって!待ってユメちゃん!」

 

 人とは同じ趣味のものが集まって少し話をすれば簡単に打ち解ける。

 今ではこの通り、自分より()()の彼女たちに緊張していたヒナも完全にオフモードで普通の女の子としての会話を楽しんでいる。

 

「私のことはいいから……ってそう言えば、ロティス遅くない?」

 

「言われてみれば確かに……」

 

 その直後、ギルドハウスに大きな衝撃が走った。

 

 ◇◇◇

 

「あれは……魔方陣!?まさかっ!?」

 

 俺の嫌な予感は最悪な方向で的中していたようだ。

 

 ギルドハウスを取り囲むように四方に展開された巨大な魔方陣。

 そこからは大きな衝撃波とともにクラス4、5程度の魔物が一体ずつ現れる。

 ハイオークほどの巨体ではないが、人型で魔族に近い容姿をしている。

 

 夜ではあるがまだ深夜というほどの時間ではなく、村にはちらほらと人出もあり、その村人たちは突如現れた魔物を見て阿鼻叫喚の嵐だ。

 

 召喚魔方陣……あれは間違いなく魔族の魔法。

 でも、いったいなぜここに?

 

 突然の出来事に村人ほどではないが俺も驚き、原因を考えていると、時は来た!とでも言わんばかりにユーリがそのうちの一体に対して飛び出していった。

 

「村の者!落ち着くがいい!ここには王家に名を連ねるルシール公爵家の次男であり、クラス5のコントラクターでもあるこのユーリ・ルシールがいる!!安心して僕に任せろ!」

 

 その名乗りに村人は歓声を上げている。

 だが……あいつはどうにもここに魔物が来ることを知っていたような気がする。

 どうにも胡散臭い。

 

 それに、やらせだとしてもあれの相手は厳しいんじゃないか?

 

 ユーリが対面しているのはギルドハウスの入口方面に召喚された魔物。

 一番目立つ位置に召喚されたそいつにタイミングよく向かっていったユーリだが、そいつは召喚された中でも明らかに強い気配を放っている。

 間違いなくクラス5程度の実力はあるだろう。

 

「こんな夜更けに人里を侵攻してくるとは、卑怯者め!だが、僕の前に現れたのが運の尽きだったな!貴様はこの僕が成敗してくれるわっ!!」

 

 まあ、頑張ってくれるなら後でいいか。

 どうせすぐにミリアたちも気が付くだろうし、俺は別のとこから対処するとしよう。

 

 屋根を飛び降りると、とりあえず周囲の様子を確認しながら一番手近な魔物を無駄なく処理した。その間にもユーリの様子を確認しながら、次の動きとその背後にいるであろう存在について俺は思考を巡らせていた。

 

 ◇◇◇

 

「今の衝撃、なに!?」

 

 先ほどまでの和やかな空気は一瞬で吹き飛び、彼女たちは即座に戦闘態勢に入った。

 どんなに気を抜いていても、彼女たちの本質はコントラクター――戦いを生業とする者たちだ。

 

「この気配……魔族かっ!」

 

 魔族の存在に最も敏感なユメが、険しい表情で呟く。

 

「魔族っ!?」

「まさか……本当にあの魔族……?」

 

 場が一気に緊張する。

 

「なるほど……それでロティスは一人で行ったのね。まったく、いい格好しいなんだから……」

 

「ミリアさん!そんなこと言ってる場合じゃないよ!」

 

「そうね、行くわよ!」

 

 全員が一斉に立ち上がり、食堂を飛び出した。

 

 ギルドハウスの入口へ駆けつけると、そこには魔物と交戦しているユーリの姿があった。

 

「あれは……ユーリ……さん?」

 

 魔物のクラスは5程度だろうか?

 それなりの強さはあるはずなのに、どうも動きが鈍い。まるで攻撃を避ける気がなく、わざと傷を負っているかのようだった。

 攻撃の方も、手に持った槍にも斧にも使えそうな武器を直線状に振り下ろすだけで、戦術に工夫が感じられない。

 

「くっ……この凶悪な魔物め!だが、この僕が相手なら!貴様など!何でもないわっ!!」

 

 ユーリはロティスと戦ったときと同じように大きく後ろへ飛び退くと、火属性上位魔法を発動しようとする。

 それは、まるで「必勝パターン」とでも思っているかのように、寸分違わぬ動きだった。

 

「あのバカ!またこんな往来であんな魔法を……!」

 

 ヒナが叫び、それに反応したミリアが即座に制止しようと魔法を発動しようとする――が。

 

「あれ?」

 

 違和感に気づく。

 

「私の魔法が……出ない?」

 

「えっ!? ちょっと待って、私も……!」

 

 異変はミリアだけではなかった。エモニもまた、驚いた表情で手を見つめる。

 

「まさか……魔法が封じられている!?」

 

 その言葉に皆がそれぞれ魔法を発動しようと試みるも、結果は同じだった。

 

「やっぱり……ダメ?」

 

 ミリアが苦々しく呟く。

 

「でも、どうして? だってユーリは魔法を……」

 

 そう、ユーリは今まさに火属性の上位魔法を発動しようとしている。

 もし魔法が封じられているのなら、彼の魔法も同じく発動しないはずだ。

 

「どうして、ユーリは……?」

 

 疑問と不安を抱きつつも、彼女たちはユーリへと目を向ける。

 だが、次の瞬間――彼女たちの胸に広がったのは安堵だった。

 

「「「「「ロティス!!」」」」」

 

 そこに立っていたのは、二刀を振り抜いたロティス。

 燃え盛る炎ごと魔物を両断し、その場のすべての問題に終止符を打っていた。




ロティスくんかっこよすぎ!!
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