救世主転生 ~死にたくなかったので、勇者覚醒イベントの攻略不能ボスを倒して勇者を救おうと思います!~   作:嵐山田

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第十四話 ジーンの謀略

 ロティスがその魔物を斬った瞬間、ミリアたちの封じられていた魔力が元に戻った。

 

「魔法が使える!ってことは魔法が使えなくなったのは今の魔物の力だったってこと?」

 

 ロティスが魔物を斬ってからも、警戒を緩めず魔法の発動を試みていたミリアがそう呟く。

 

「ほんとだ!でもそれより……」

 

 魔法が使えることを自分でも確かめたエモニが、視線を向けるその先。

 そこにはユーリに刀の切先を向けるロティスの姿があった。

 

「なあ、ユーリ。お前、ここに魔物が召喚されることを事前に知ってたよな?」

 

 俺は怒りを滲ませながら、低く鋭い声で問い詰めた。

 3体目の魔物を倒した後、ユーリの様子を伺っていた時に駆けつけてきたミリアたちの困惑した様子が目に入った。

 どうにも魔法が使えなくなっているとのこと。

 

 こいつが何をしようとしていたかなんて正直どうでも良い。

 だが、ミリアたちにまで手を出そうとしていたのならば話しは別だった。

 

「……しっ、知らない!」

 

「そうか……まあここじゃ人目が多いもんな。他にも聞きたいことがあるしちょっとこっちに来てもらおうか」

 

 有無を言わせぬ圧でユーリに言うことを聞かせると、この場の処理……というか対応をミリアたちに目配せで任せて、ギルドハウスの裏にユーリを連れて行った。

 

 ◇

 

「お、おいっ!何をするっ!僕はルシール公爵家の次男、ルシール・ユーリだぞ!」

 

「だったら俺はサンシャイン王家第二王女より直々の依頼を受けているコントラクターだ。もちろんこの依頼にはクラリス王女の護衛も含まれている。この意味が分かるよな?」

 

 ギルドハウスの裏は魔物が召喚されても、その跡が残らないくらいにはだだっ広いだけの空間になっていた。夜も更けてきて、より一層強い暗がりになっている。

 

「な……なんだ!一体それが何だって言うんだ!?」

 

「クラリス第二王女の身に危険を及ぼす敵は身分にかかわらず等しく敵だってことだ!」

 

「僕は彼女を危険に晒してなど……」

 

「晒してなどないってか?魔物が現れるまで潜伏して魔方陣が現れた途端に飛び出してきておいて?」

 

「くっ……なぜそれを……」

 

「そんなことはどうでもいい。いったいどうやって襲撃があることを知ったんだ!あれは明らかに魔族の魔法だったよなあ?」

 

 一番重要な点はここだ。

 もし、コイツほどの身分の者が魔族とつながりを持っているのだとすれば、今回の依頼は非常に厄介なものになる。

 それに、積極的に信用しようとは思わないがアイン側なのかそうでないのかも見極める必要が出てくる。魔王の支配力に屈しているのならば、今後も魔物を使った襲撃や魔族自身が直接出向いてくる可能性もある。

 

 その折、ギルドハウスの影となってより深い闇となったただの空間から第三者の笑い声が響いた。

 

「ククク……よもやここまで見事に解決されてしまうとは……」

 

「誰だっ!?」

 

 刀に手をかけ、声の方へ振り返る。

 全く気配に気が付かなかった。

 確かに怒りに身を7割ほど任せてユーリを尋問していたとはいえ、一切隠れる場所のないここで背後を取られるとは思わなかった。

 

「そう警戒なされずに……どうも私はジーン。魔族侯爵ルギア様のバトラーを務めております。まずはロティス様へ謝罪を。お仲間の方々が魔法を使えなくなったのは、魔物が発する魔力に反応して魔法の発動を阻害する薬を食事に混ぜたためです。ですが毒性の物でもなく、害意はありませんでした」

 

 優雅……そんな言葉がぴったりな謝罪を見せると顔を上げユーリを見た。

 

「ユーリさん。我が主は無能を嫌うのです。先ほどの一件はいわばあなたに与えられた最後のチャンスだった。それすら棒に振ったあなたにはもう存在価値はありません」

 

「なっ!?どういうことだ!ジーン!」

 

「そのままの意味ですよ。救世主の周りに無能はいらない。申し訳ありません救世主よ。誠に勝手とは思いますが、この者が無能なのか見どころがあるのかをテストさせていただきました」

 

 ……なんだ?どういうことだ?

 この魔族、ジーンと言ったか。ジーンはユーリに実力証明のチャンスを与えた?それならばミリアたちに薬を盛った理由は理解できるが、つまり前々からつながりがあったということか?だが、だとすると救世主の周りに無能はいらないという言葉は微妙に噛み合っていない気がする。

 

「……待て。状況が飲み込めない。お前はルシール公爵家とつながりがあったのか?」

 

 先ほどのミリアたちの反応から害意がなかったということは信じられたため、ユーリに対する怒りが完全に収まったわけではなかったが突然現れた魔族を意識し、一旦冷静になって落ち着いて質問した。

 

「いえ、ユーリさんと知り合ったのはつい先ほどです。私の目的は救世主、つまりロティス様のお迎えですから」

 

 ???

 その発言でより何を言っているのかわからなくなってしまった。

 

 ◇◇

 

 色々と話が噛み合ってない気がしたため、一度頭から話の中身を擦り合わせた。

 

「つまりお前は、身勝手な意思でユーリを試すために魔物を召喚したと?」

 

「……端的に言えばその通りですね。ですが、我が主の元へお越しいただくにあたって確実に邪魔になる者を排除しようとしたというのが本意ですが……」

 

「……待て、ジーン。お前は俺たちをなんだと思っている?」

 

「我が主の元へ向かわれる救世主の一団ではないのでしょうか?」

 

 ああ、そう言うことか。

 納得……とまではいかないもようやく合点がいった。

 

「それは違う。今向かっているのは王都サンシャイン。銀翼のダンジョンとは別口の依頼だ」

 

「なんとっ……ということはこのユーリさんは召使いか御者でしょうか?大変失礼いたしました」

 

「おいっ!この僕を下僕扱いだと!?」

 

「黙れ無能!今私が救世主と話しているのが見えないのかっ!」

 

「なっ!?」

 

 このジーンという魔族はアインに依頼された次の目的の魔族であるルギアのところからやって来たそうだ。

 そして俺達を見つけると同時にその中に無能を見つけた。

 主も自分も無能は認めない主義の考え方を持っているため、テストを行い不合格の場合は救世主の一団に見合わないと排除しようとした。

 つまりはこういう経緯だったらしい。

 

「ンンッ……まあ、理由は分かった。それで迎えというのは?」

 

「ああ、そうでした。我が主が早く救世主と会いたいとのことだったのでお連れしようかと出向いてきた次第にございます」

 

「なるほど。だが、すまない。もう片方の依頼も重要な案件なんだ。今すぐに向かうことは出来そうにない」

 

「そうでしたか……確かに救世主ほどの者になればさぞ忙しいことでしょう。分かりました。では我らがダンジョンにお越し頂いた際にこちらの指輪をお使いください」

 

 ジーンはそう言うと非常に洗練されたシンプルな意匠の指輪を渡してきた。

 

「これは?」

 

「こちらは我が主の館まで転移することができる指輪になります。本来ならばダンジョンを昇って来た者にしかお会いにならないルギア様ですが今回はことが事ゆえにこちらを預かっております」

 

 ほう、ということはダンジョン攻略の必要がないということか。

 正直それは助かるな。

 クラリスの依頼もとりあえず王都に来て欲しいってだけでまだ詳しい内容は話してもらってないし、時間に余裕ができるのは助かる。

 

「なるほど。これはありがたく貰っておく。これで転移できる人数に制限はあるか?」

 

「3人まででしたら問題ありませんが……いえ、何でもありません」

 

 ?まあ、3人まで行けるなら問題ない。

 

「では救世主、いえ、ロティス様。我が主の館にてお会いできる日を楽しみにしております」

 

「ああ、今後は何かする前に俺に直接接触してくれと他の魔族にも伝えてくれ」

 

「承知いたしました。それでは私は……っとその前に。ユーリさん。おそらく私とロティス様の会話を吹聴されると厄介になるでしょう。なので分かっていますよね?」

 

 悔しそうに唇を噛み締めながらも、逆らえば問答無用で殺されると悟り、コクコクと頷くユーリ。

 それを見て満足と言った表情をするとジーンはまた闇の中に溶けていった。

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