救世主転生 ~死にたくなかったので、勇者覚醒イベントの攻略不能ボスを倒して勇者を救おうと思います!~   作:嵐山田

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第十五話 改心

 ジーンが消えていった空間にはアインの時と同じように黒い煙のようなモヤが少し漂っている。

 

 そしてすっかり暗くなったギルドハウスの裏手には壁を背にしなだれかかるユーリと俺だけが残される。

 

「俺に対しては別にいくら突っかかってきてくれても構わん。だが、ミリアやエモニ、ユメたちに何かしようとするなら次はお前を斬る」

 

「……」

 

 ぱっと見たところでは、無言で聞いているかいないのかわからないが、ユーリの拳は複雑な感情に揺れていた。

 

「それに加えて、だ。お前クラリスの婚約者なんだろ?俺は平民だから貴族の婚約関係による利害とかは正直分からん。でも、婚約者だというのならもっと相手をよく見て、よく考えて接してあげなきゃだめだ。クラリスはまだ15歳だぞ?これからはお前と一回り以上の差があるってことを常に念頭に置くんだな」

 

 言いたいことだけ言って立ち去ろうとした俺の背中にユーリの呟きが飛んできた。

 

「……まるで貴様は15歳ではないようなものの言い方だな」

 

「ンンッ……反省したのか?」

 

 不意に突かれたその一言で足を止めるとユーリは話を始めた。

 

「……ああ、僕はずっと焦っていたようだ。優秀な兄に比べて魔力量しか優れた所のなかった僕は今までずっと焦っていた。そうだな……貴様の言う通りだ。クラリスだけとは言わず僕はもっと周りを見ようと思う」

 

「そうしろよ。んじゃ、俺は戻る」

 

「待て!」

 

 今度こそと思ったがまた引き留められた。

 

「なんだ?」

 

「貴様はなんなんだ?圧倒的な魔法の才能を持っていて、あっという間に3体の魔物を斬り伏せる剣の腕、突然現れた魔族とも物怖じせず会話ができる胆力までを持ち合わせる……まるで歴史に残る『英雄』や『勇者』のようなその圧倒的な力は一体……」

 

「……そうだな。これは勇者を救うためにただ努力した結果なんだが……」

 

「?」

 

 何を言っているんだ?って文字が浮かび上がりそうな顔は止めてくれ……。

 

「まあ、つまるところ俺は救世主だ。勇者のな」

 

「……救世主、か。少し羨ましいな。それが努力の成果なのだとしても、目的のためにそれを為す力を持っているというのは」

 

 どうやら吹っ切れたみたいだな。

 いささか急な心変わりで正直不気味ではあるのだが……さっきのジーンとか言う魔族、何もしてないよな?

 なんか仮面っぽいの被ってたし、あの感じで「いただいていく」とか言われたら……。

 

「羨んでいるだけじゃ変わらんぞ。今からでも頑張れよ」

 

「……ああ、そうするよ。彼女たちには謝罪を伝えておいて欲しい。王都に着いたら正式に詫びさせてもらいたい」

 

「わかった。それじゃ、今度こそ俺は戻る」

 

 三度目の正直は無事に叶い、俺は自分たちの部屋に戻った。

 

 ◇◇◇

 

「……男の友情とは、かくして結ばれるのじゃな」

 

 ギルドハウスの正面側まで来たところで、建物の陰からひょいと顔を出したユメがそう言ってきた。

 

「……ユメ、聞いてたのか」

 

「ワシはじゃんけんに勝ったからな。勝者の権利じゃ」

 

 ……なるほど、俺を待つ一人と騒ぎを治める他に分かれたってわけか。

 おそらくだが……。

 

「そう言えば、ユメも魔力が使えなくなってたのか?」

 

「む?ああ、そうじゃな。刀に戻ろうとはしたんじゃが、できんかった」

 

「でも、そのままだったよな?」

 

「うむ……言われてみれば、確かに」

 

 ユメの身体は彼女の夢幻を応用した魔法の一種で作り出されている、らしい。

 つまりこの身体は魔法で実体ではないはずなのだ(触れるし、人間と変わらないけど)。

 なのに、魔力が使えなくなっても消えなかった。

 

 さっきの薬の効果が発動済みの魔法には効果を及ぼさないものだった可能性はあるが、それでも。

 

「じゃが、それを言うならばミリアもではないか?」

 

「いや、ミリアは何というか……ユメの逆なんだよな多分」

 

「逆?刀になっているということか?」

 

 ユメに頷いて見せる。

 そゆこと。

 無限をどうやって生み出したのかは知らないけど……というか聞いてもなぜか「ふふっ」という意味深な笑みを返してくるだけで教えてくれないんだよな。

 

「じゃが、ロティスは無限も振るえていたではないか」

 

「おそらく無限は普通の刀だからだな。ミリアがどうやって刀になっているかは本当にわからない」

 

「うーむ、もしかしたらワシも本当に人間になったのかもしれんな!」

 

 笑いながら冗談めかして言って見せるユメ。

 ふむ……だが、否定しきれる要素がない。

 

「今は刀に戻れるのか?」

 

「無論じゃ」

 

 音もなく目の前のユメの姿が消える。

 

「どうじゃ!できておるじゃろう?」

 

 消えたかと思えば腰の左側から声が聞えた。

 

「おお、いつも通りだな」

 

「うむ!ワシにも特に変わり感じられないのじゃ……では、一体どういうことなのじゃ?」

 

 ……わからん。

 

「まあ、なんであれユメはユメだしな。何でもいいさ」

 

「……そうか、まあ、そうじゃの!」

 

 そう言うとユメは俺の手を引いて駆け出した。

 

「早く戻ろうぞロティス!ミリアもエモニもクラリスもヒナもお主を待っておるぞ!」

 

「そうだな」

 

 俺も駆け足でユメの隣に並ぶと、軽い足取りで部屋に戻った。

 

◇◇◇

 

「あ、私のロティスがやっと帰って来た~」

「ユメちゃん、勝者の特権をここぞとばかりに使って来たね」

「おかえりなさい!ロティス!」

「ろてぃしゅきゅんかっこよすぎたぁ……」

 

 部屋に戻ると、料理や果物や飲み物やらを大量に囲んでいるミリアたちが出迎えてくれた。

 どうも騒ぎを治めているときに村の人から俺に渡してくれと色々を貰ったらしい。

 迅速な対応のおかげで村への被害は0だったと。

 あれが作為的に起こされたと知ったら……まあ、わざわざ教える必要もないか。

 

「みんなただいま。さあ、ササっといただいたものを食べて、明日に備えて寝ようぜ」

 

「おー!!」

 

 早朝の出発だというのに、その日は明け方までにぎやかな声が響いていたのだとか……。




心を頂戴するっ!
……ユーリの改心が書きたかったんです。
でも想像以上に短くなったので急遽のじゃエモを……ちょっと閑話的になっちゃいましたが
のじゃロリっていいよね……!
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