救世主転生 ~死にたくなかったので、勇者覚醒イベントの攻略不能ボスを倒して勇者を救おうと思います!~ 作:嵐山田
言いたいことを言って俺たちの驚いた顔を満足いくまで眺めた国王は「そこまで気負わずとも余が魔に抗えれば良い話しよ。貴殿らは王都を楽しむと良い」と言って部屋を出て行ってしまった。
うん、これがサンシャイン王家の人間の特徴なのだろう。
そして取り残された俺たちはというと――
「さすがは私のロティス。王を討って王になるのね」
「言われたときはさすがにびっくりしたけど、確かにロティスが王になるのはアリだよね」
「うむ!ワシを振るうロティスじゃ。王になるくらい何の問題もなかろうて!」
なぜか国王を討った後、俺が王になるという訳の分からない方向で話が盛り上がっていた。
おかしい、ミリアもエモニもこんな感じじゃなかったはずなのに……。
俺は助けを求めてクラリスを見るが……
「ロティスが王に……ということは私は国王を支える王妃!?きゃー!」
ああ、ついにお嬢様キャラまで失ってる。
ヒナさんは……
「今日ほど自分の家柄に感謝した日はないよっ!側室にふさわしい家柄で良かった!!」
うん、知ってたよ。
最近の様子を見て居ればわからない方がおかしい。
それぞれがそれぞれでトリップしている空間で俺も対策を考えることにする。
まず、第一として国王殺しは論外だ。
ミリアやエモニがどうしてそんなに肯定的になっているのかは知らないが、ここは普通の王都だ。
武の都マーズではない。
マーズもどうかは知らないが、ここは強い者が治める地ではない。
由緒正しい王家とそれに連なる貴族の人間がいるのにどうして俺が王になれるというのか。
もし、国王が魔に取り込まれたとして、それを討ったのが俺だなんて情報が出回ればとてつもない反乱が起きることなど火を見るよりも明らかだ。
ではどうするか。
それは国王が魔に取り込まれる前に魔をどうにかしてしまうしかないだろう。
国王が言うには魔の正体は魔王だと言うし、やはりアインの依頼をどうにかすれば自ずと解決しそうだ。
と言うかここまで読み切っている……なんてことは無いよな。……いや、あのアインなら全然ありうる。
なるべくあいつらとは戦いたくないな。
右手に嵌められた無骨な骨の指輪を見ながらそう思う。
あのジーンとかいう魔族もやばかった。
本気の警戒ではなかったとはいえ、全く悟らせず俺の背後から現れるというのは、自分で言うのもアレだが相当な腕前であることは確かだろう。
少し思考がズレてしまったがとりあえず直近の目的は確定した。
アインの依頼通り銀翼……白銀の翼ダンジョンへ行こう。
だが、そのためには――
「やはり拠点が必要だな」
思わず口からこぼれた言葉にバッと彼女たちがこちらを向いた。
「「「拠点!!!」」」
なぜこんなにギラギラした目をしているのか……クラリスとヒナさんはまあ、まだわかるけど、ミリアたち三人は月の街を出る前にも話したよね?
「ロティスも王城に住めばいいよ!」
「いやいや、それは外聞が悪すぎるだろ……クラス8のコントラクターが王の依頼で王城に出ずっぱりって言うんならまだわかるけどミリアでもまだクラス5だし、俺とエモニはまだ4なんだぞ?」
「むぅ……いいと思ったのに」
さすがにそんなわけにはいかないよ。
それに俺の気が休まらないし……。
「とりあえずギルドにも顔を出しておくか。ヒルウァの討伐報酬が出るらしいしな」
「そういえば王城での諸々が終わったら来てくれって副マスさんに言われてたわね」
「報酬貰ったら拠点探しだね!問題的に長期滞在になりそうだし、宿住まいよりも家探しだ!」
「うむ!新たな家か……ワシ畳が欲しいぞロティス!」
ユメよ……おそらくこの世界に畳はない。
というか俺の前にユメに会った転生者は一体何をこの子に聞かせたんだ?
エモニとクラリスとヒナさんの畳?という顔を見ながら、俺達は王都のサンシャインギルドへ向かった。
◇◇◇
クラリスはなんでもやることがあるようで、俺たちは四人でサンシャインギルドまでやって来た。
サンシャインギルドは前世の国会議事堂のような趣のある建物だった。
だが、あくまで似ているのは雰囲気だけで、一度中に入ってしまえば聞こえてくるのは粗野なコントラクターたちの喧騒ばかり。
まあ、月の街に来た時のユーリみたいなキャラばかりだったらさすがに苦しいから、なんとなく安心する。
「ロティスさん、ミリアさん、エモニさん。お待ちしておりました。こちらへ」
受付で依頼請負人《コントラクター》証明であるバッジを見せると、俺たち三人は三階のこれまた一層荘厳な雰囲気の部屋に通された。(面倒を避けるためユメには刀に戻ってもらっている)
「ようこそ、救世主とそのお仲間方。私がこのサンシャインギルド、ギルドマスターのリーシア・マルスです。優秀なコントラクターだと聞いていますよ」
なるほどな、やけに荘厳な部屋だと思ったらギルドマスターの執務室だったのか。
ギルドマスターと名乗ったその女性は長く伸ばした金髪に透き通るような碧眼、ミリアに並び立つほど大きな双丘を携え、そのあまりに整った容姿からいかにも高貴なる者ですというオーラを放っている。
だがそれ以上に……特徴的なのはやはり尖った耳だろう。
この世界に来て多分13,4年ここでようやくファンタジー世界のテンプレと遭遇することができたのか。
「え、エルフ?」
同じような感想を抱いていたのだろう。
隣のエモニが口元に手を当てながら、そう呟いた。
「ふふっ、そうですよ。驚きましたか?」
だが、まさかエルフとはな……。ゲームでもサンシャインギルドのギルドマスターは登場するけど立ち絵はおっさんの汎用ギルドマスターだったぞ?
「あっ、すみません。エルフの方を初めて見ましたので……」
「いいですよ、おそらく大半の人が同じ反応をするでしょう。逆に私としては驚かなかったお二人に驚きです」
「いえいえ、私も驚きました。……挨拶が遅くなりましたが月の街でコントラクターをしているロティスです。本日はお招きいただき感謝します」
俺の挨拶にミリアとエモニも続く。
するとリーシアさんはまっすぐに俺の腰の左側を見て、衝撃の一言を言い放った。
「そこの剣のお嬢さんも出てきていいですよ」
!?
「む?お主、ワシのことが見えるのか?」
ストンと俺の横に刀から姿を現したユメも不思議そうな顔をしている。
「いや、はっきりと見えるわけじゃないんだけどね。報告は受けていましたし、それにエルフは精霊と相性がいいですから」
「精霊?ユメが精霊ということですか?」
「おそらくそうですね。精霊というか剣に宿った剣霊が実体を持てるようになった……という感じでしょうか?」
「ふむ、なるほど。そう言うことじゃったか……道理であのとき――」
ユメが思い浮かべているのはマイア村での戦闘時のことだろう。
それにしても精霊か……。
断言したい。『絶望勇者』の世界に精霊は2体しか存在しない。
聖神が顕現したときの姿と邪神が顕現したときの姿である。
つまりユメは――いや、そもそも邪神に生み出されたんだもんな。
おそらく俺のせいで世界設定が全然機能していないけど……そう言うこともあるか。
……いや、待てよ。エルフは精霊と相性がいいっていったい――
「よし!これで全員揃ったし、魔将ヒルウァとやらの話を詳しく聞かせてもらおうかな」
ユメのことで少し緩んだ空気をそのままに、なぜか楽しそうなリーシアさんに質問攻めにされ、ヒルウァと戦ったときの話をアインの件を隠して話した。
何がとは言いません。
ですがリーシアさんはミリア以上です。
何がとは言いません。