救世主転生 ~死にたくなかったので、勇者覚醒イベントの攻略不能ボスを倒して勇者を救おうと思います!~ 作:嵐山田
クラリスが紹介してくれた物件たちはどれも素晴らしいものばかりだった。
かつての大貴族や辺境伯が手放した別邸などが大半を占めており、どれも使われなくなってから年月は経っているものの、状態は良好とのことだった。
だが……
「さすがにこの価格は……」
クラリスの紹介してくれた物件はまず賃貸物件ではない。それも仕方の無いことで王都の一等地に住むものは相応の身分が求められるためである。
よって、必然的に購入することになるのだがこの金額がとてつもない。
前世から考えてもこれほど身分の違いによる世界の差を感じたことは無いだろう。
何を隠そうこれらの邸宅を購入するにはあと4、5回ヒルウァを倒し、その魔核を全て金に変える必要があるのだ……。
「価格……ですか?でもロティスはクラス7の魔族を討伐したのですよね?これくらいポンと出せるのでは?」
おおぅ……クラリスお姫様の無自覚攻撃。
それを俺以外に言ったらだめだぞ!
「いやいやクラリス……その額は無理だ。全財産でも一桁足りないよ……」
「なっ!?街ひとつどころか国家の危機になりかねない魔族を討ったロティスに支払われた報酬が、その程度なのですかっ!?」
程度って……これだけあれば一生毎日一食は外食して、デザートまで食べても遊んで暮らせるよ。
さすがは王族。スケールが違うな。
「ヒナっ!ギルドへ行きますよ!」
ちょ、クラリスちゃん!?
「クラリス様……お気持ちは分かりますがこれ以上は控えるべきかと。王族が物件を斡旋している時点で相応以上の報酬なのです!これ以上はロティス様たちが他の貴族に悪目立ちしてしまいます!」
ヒナさんっ!?
ヒナさんが真面目に仕事してるとこ、初めて見たかも……。
「……なるほど。そうですか、ですがそれでは……」
クラリスの顔が目に見えて曇っていく。
張り切って紹介してもらった手前、ちょっと申し訳ない。
すると、クラリスが用意してくれたリストを眺めていたエモニがある物件を指さして言った。
「ねぇねぇ、ここなら大丈夫そうじゃない?安いし部屋いっぱいあるし、キッチンも充実しててお風呂まで着いてるよ!」
「風呂!?風呂じゃとっ!?」
ユメが我先にとエモニの言う物件を見る。
エモニが指さした物件は確かにエモニの言う通りの条件の家だった。
ただ一つ大きな赤い印がつけられていることを除いては。
◇◇
「ああ、そちらの物件は……」
何かを言いにくそうにしているクラリス。
うん、分かるよ……こっちの世界では引越しなんて滅多にしないだろうからエモニたちが知らないのはしょうがない。
だが、俺は知っている。
あれは十中八九事故物件の表示だ。
この世界でも事故物件とかあるんだ……というのが素直な感想だが、元日本人としてはあまり積極的に住みたいと思う家ではない。
「ロティス!ここ見に行ってみようよ!」
「うむ!ワシもそれが良いと思うのじゃ!」
でもウチのお姫様方は大層お気に召された様子だ。
ちらりとミリアの方を見やるも、特に否定している様子はない。
まあ……見に行くだけなら……。
「じゃあ、見に行かせてもらうか。いいかなクラリス?」
「え、ええ。もちろん。ヒナ、馬車の手配をお願い」
「かしこまり……ました」
若干引きつった顔で馬車の手配に行くヒナさんを見送った後、このことをどうやって伝えるか俺は頭を悩ませた。
◇◇◇
「ふーん、事故物件って言うんだ。でも、それって昔のことでしょ?関係ないんじゃない?」
結局、そのいわくつき物件に行く途中の道でそれとなく伝えて見たのだが、反応はこの通りだ。
「まあ、それはそうなんだが……そう言えばクラリス、あの家で起きた事故ってどんな事故なんだ?」
そう言えば俺もどんなことがあったかを聞いていなかったと思い、聞いてみる。
「それが、ですね……。今、私たちが向かっている物件は元々はとある王国貴族の子息が住んでいたのですが、その子息はあり得ない浮気性でして、いわゆるハーレムを自宅に形成していたようでして……」
……とても、とても嫌な予感がする。
「それで?」
ミリアが続きを促す。
「それで、その……ハーレム自体はうまく回っていたようなのですが、ある日その男がハーレムに囲っている以外の女性と駆け落ちしたらしく……残された女性たちは生活が立ち行かなくなり、何人かは帰りを待ち続けて亡くなったのだとか……」
自意識過剰かもしれないが、なぜかみんなの視線が俺に集まっている気がする。
……どうも、男1女3でコントラクターパーティを組んでいるハーレムクソ野郎ロティスです。今は追加で王女とその護衛も含めて男女比1:5です。
いや、でもハーレムじゃないし!
「……ティス!ロティス!ついてるよ?降りないの?」
おっと、被害妄想に浸りすぎていたようだ。
「悪い悪い……ってうおお!」
降りた先に見えたのはいわゆる洋風の豪邸。
道に面してこそいるもののよく手入れされた木々が視界を遮るようになっており、中心のやたら大きな門からは普通に生きていれば一生縁のなさそうな豪邸が顔を覗かせる。
「皆さん中へどうぞ」
ヒナさんが門を開けて中へ入れてくれる。
「管理人からは特に問題ないと言われていますが、よくご覧になってください」
見た感じは確かに事故物件に見えない普通の豪邸だ。
屋敷の中に入ってみてもその印象は変わらず、女性受けのよさそうな家具が多いことを除けば目立っておかしな点は感じられない。
「ロティス!ワシはここが気に入ったぞ!」
「ロティス!私もっ!あのランプとか可愛いよ!なんか薄いピンクに光るの!」
……この世界は電気の代わりのエネルギー源として魔核を利用しているはずだが、こんなただの雰囲気づくりのためだけに利用できるほど余っているのか……。
まあ、みんなが気に入ったならここで決めちゃってもいいか……そう思ったときだった。
「キャーー!」
一人で別行動をしていたミリアの悲鳴が屋敷全体に響き渡った。