救世主転生 ~死にたくなかったので、勇者覚醒イベントの攻略不能ボスを倒して勇者を救おうと思います!~   作:嵐山田

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第二十話 領地と婚約

「ミリアっ!?」

 

 悲鳴を聞いた俺たちは一目散に声の方へ走りだした。

 

「どういうことじゃ?ここには特に何かの気配は……む?これは……」

 

 二階への階段を駆け上がっているとユメが何かを察知したみたいだ。

 

「ユメ?何か分かったのか?」

 

「……見ればわかるじゃろう」

 

 俺が聞き返すも、もうミリアの悲鳴が聞こえる部屋の前まで到着したため、実際に見た方が早いというユメ。

 俺たちは恐る恐るその部屋の扉を開けるとそこは、おそらくハーレムとして暮らしていた女の私室だったのであろう部屋だった。

 そしてそこに半透明で下半身がない二人の悪霊のようなものに恨み言を吐かれているミリアが居た。

 

『前世の男と今世でも一緒に居られるなんてどんな徳を積んだのよっ!』

『しかも子供の時から自分で育てて来たなんて!羨ましすぎるわっ!』

 

 ……うん、どういう状況だい?

 

「あっ!私のロティス!見て見てこの子たち、レイスなんだって!さっきクラリスちゃんが話してた男の帰りを待って亡くなった人たちだよ!」

 

「えっ!?レイス!?ミリアさん大丈夫なのっ!?」

 

 目の前にレイスが現れたというのに全く怖気づく気配もなく、駆け寄るエモニ。

 

『なっ!?なんなのこの子は!?愛されているを通り越して推されている?ちょっとこの子たちどうなってるの?』

『でも、この子には少し同情もできるわね。全く意識されてない……』

 

 レイスもレイスで何故か敵対心ではなくミリアやエモニに対する嫉妬心だけを滲ませている。

 

「なあ、ユメ……」

 

「ワシに聞かれても答えられん……見てもわからなかったのぅ」

 

 まあ、ユメがあの反応になってしまうのも仕方ないかもしれない。

 そもそもなんでエモニは無警戒に突っ込んでいったんだ?本能的に敵じゃないと判断したとか?

 まあ、エモニは勇者でこの世界の主人公だしな……。

 

「わぁ!これがレイスですか!?初めて見ました!ヒナ!私たちも混ざりましょう!」 

「えぇ!?クラリス様!?」

 

 ……クラリスちゃんも全然警戒してなかったわ。

 

 主人公とか全然関係なさそう。

 

 ◇◇◇

 

 レイスは魔物の一種だ。

 だが、人間の霊というのは珍しい、というか存在していいのだろうか?

 魔物とは元を正せば魔族によって生み出された兵器なのだ。

 でも、この人たちはそうではないだろう。

 おそらく前世で言う所の地縛霊とかそっちの霊だ。

 

 害はなさそうだが……。

 

 今も視線の先でエモニたちと仲良く話している。

 あきれた視線を送っていたユメもいつの間にか向こうに加わっており、扉の入口にはいつの間にか俺一人だけがぽつんと残されていた。

 

「ロティス!この人たちいい人だよ!」

 

 うんうん、そうなんだろうね……。

 

「お、おう!よかったな?」

 

 いい人だよ!と言われて俺は一体どんな反応を求められているんだ。

 まあ、事故物件だしこういうこともあるか……なんて思考を放棄していると、レイスたちが俺の方にユラりと近づいてきた。

 

『ハイパースペックねこの子』

『そうね……これだけの力があれば、あのゴミと同じ未来を辿ることはなさそうね』

 

 ???

 レイスたちはじろじろと俺を舐め回すように見ながらそんな会話をしている。

 

『まあ、これなら合格でいいんじゃないかしら?』

『そうね、何かあったら私たちが呪ってあげましょう』

 

 何やら物騒なことを呟くとレイスの二人は俺たち全員を見下ろせるくらいの高さまで浮かび上がり、全員に向けて言った。

 

『あなたたちを認めてあげるわ!』

『この家に住む許可を上げる!』

 

「やったねロティス!」

「これで拠点も決定ね!」

「うむ、ワシもここは気に入っていたしの」

 

 一つだけ言えることは、この家の権利は王家の所有なので別にレイスの許可はいらないということだけ。そのほかについては俺はツッコミを放棄した。

 

 ちなみにこの家の異常なまでの綺麗さはレイスたちのおかげだったらしく、今後も俺達がいない間も綺麗に保ってくれるらしい。

 ……ありがとう?

 

 ◇◇◇

 

 一通り家中を見て回った後、やたらと広いダイニングルームに集まった。

 ミリアの悲鳴がなければあの場で決めていたことだし、別にこの拠点を購入することに反意はないのだが、なかなかどうして厄介なおまけつき物件だったな……。

 

「ありがとねクラリス!おかげでいい家に住めそうだよ!」

 

「いえいえ、皆さんのお力に慣れたのなら幸いです!」

 

「ふふっ、にぎやかになりそうね!ロティスと二人の家も良かったけど、こっちも楽しそうだわ!」

 

「ロティス!ワシは早く風呂に入ってみたいのじゃ!」

 

 まあ、でもみんな満足してくれてるみたいだし何でもいいか。

 

「よし、じゃあクラリス購入手続きの方も頼んじゃっていいのか?」

 

「はい!もちろんです!ヒナ!」

 

「はい!手続きの方は万事滞りなく、後はこちらに家主となる方の拇印をいただくだけで完了します」

 

 ヒナさんってもしかして有能なのか?

 ……でも確かに王女の護衛に抜擢されるような人だもんな。

 

「それじゃ、これでお願いします」

 

「はぁはぁ!これがろてぃしゅきゅんのっ指紋っ!――ンンッ、これで契約は完了となります。あとは代金をお支払いいただけば晴れてここはロティス様邸となります!」

 

 ………………。

 指紋で興奮するのはどうなんですかねヒナさん。

 人の性癖にケチをつけるつもりはないけどさ。

 

「代金も渡しちゃっていいのかな?」

 

「あ、はい!もちろんです!」

 

 俺はコントラクターバッジを外し、同じく外してくれたヒナさんのバッジと合わせる。

 コントラクターバッジには前世で言う所のカードのような機能が搭載されている。

 大きな買い物をコントラクター同士でする際にはこうしてバッジを合わせて、金銭の受け渡しが可能となっている。

 原理は知らないがとても便利でありがたい。

 

「はい!確認できました!これで名分が揃いましたね!クラリス様!」

 

「ええ!うまくいきました!」

 

 支払いを終えるとクラリスとヒナさんが顔を見合わせて喜んでいる。

 ……そこはかとなく嫌な予感がした。

 

「えーっと、なんの話?」

 

「小さいですが、この家の敷地をロティス領と認め、子爵として叙勲いたします!」

 

 ………………

 ………………

 ………………

 

 はぁっ!?

 なぜ?一体どういう風の吹き回しだ?

 それに爵位の叙勲なんてそれこそ国王や他の貴族の承認がないと……。

 

 そこまで考えて俺の脳裏には二人の人物が浮かび上がった。

 国王ディバンと公爵家次男のユーリ……。

 仮にも最高権力者とそれに次ぐ公爵家の承認があれば、こんな無理も通してしまえるかもしれない。

 

「クラリス様!それだけではないでしょう!」

 

 ただでさえ状況に付いていけていないのに、まだ何かあるの!?

 ヒナさんにそう言われると少し顔を赤らめたクラリスが真剣な顔でまっすぐと目を見て、

 

「そうでした!ンンッ。ロティス……あなたに婚約を申し入れます!」

 

 と、とんでも発言をぶつけて来た。

 

「「「「はぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?」」」」

 

 それまで横で聞いていたミリアたちも含めた絶叫がロティス領に響き渡った。

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