救世主転生 ~死にたくなかったので、勇者覚醒イベントの攻略不能ボスを倒して勇者を救おうと思います!~   作:嵐山田

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第二十二話 いざ、銀翼へ

 クラリス達が帰った翌日の朝、王都での拠点を確保した俺たちは銀の翼ダンジョンに向けての準備をしていた。

 

「夢幻も無限も調子は良さそうだな」

 

 ヒルウァとの戦闘の後、大して使ってはいないが刀の手入れは毎日してきた。

 どちらも初めて振るったときよりも美しくなっているのではなかろうか。

 

「あとは回復系のアイテムがあるといいんだが……」

 

「王都の聖神の泉は大きいからちょっと値が張るけど、神殿でポーションが買えると思うわ」

 

 俺の呟きに何度か王都に来たことのあるミリアが答えた。

 ゲームにも聖神のポーションという名前で登場したアイテムのことだろう。

 

「よし、じゃあ神殿に行こうか」

 

「え、もしかしてロティス、今日ダンジョンまで行くつもり?」

 

 エモニが少し残念そうに言う。

 

「え、おう。面倒ごとはさっさと片付けた方がいいし、まあ今日は一階層で様子見して、指輪で飛ぶのは後日にしてもいいけど」

 

「……そうだね!先に仕事を片付けてから王都を観光すればいいよね!」

 

 そういえば確かに王城行ってギルド行って、ここを買ってまだ王都生活は二日目なんだよな。

 エモニもユメも観光を楽しみにしていたし、先に回ってあげればよかったか……。

 

「そうじゃ!後回しにしづらい面倒ごとはさっさと片付けるに限るのじゃ!」

 

 と思ったが、ユメは宿題を先に片付ける派だったようだ。

 

◇◇◇

 

 神殿に寄ってから、まずはギルドに顔を出した。

 

「銀翼への挑戦ですか!最近、魔物が強くなったと言って避けられていたので大歓迎ですよ!皆さんクラス5なんですね!若いのにすごいです!頑張ってください!」

 

 王都四大ダンジョンの一つと言われる銀の翼ダンジョンは月の街の光閉ざす森ダンジョンとは違ってギルドによって正式に管理されている。

 そのため、挑戦前にはギルドへの申し出が必要で、クラスや人によってはテストがあるとも聞いていたのだが……テストどころか大いに歓迎を受けていた。

 それにしてもこの受付嬢、ノリがいい系の人というか……なんとなく関西出身の友達を思いださせるな。

 

「あ、ありがとうございます。魔物が強くなったんですか?」

 

 この辺りの細かい情報はゲームには登場しない。

 だって原作エモニは無申請のまま大量のダンジョンをはしごで攻略するからね。

 

「はい、そうらしいんですよ。先日も銀翼を主な活動拠点に据えるクラス6コントラクターがリーダーのパーティも当分は潜らないっておっしゃられてましたね~」

 

 ……おいおいおい、そんなダンジョンに簡単に許可だしちゃダメでしょう!

 いや、こちらとしては出してもらえないと困るんだけど。

 

「それは結構大事ですね……」

 

「あ、やっぱりやめておきます?なら違約金を……」

 

「いやいややるけど、その手法は詐欺だよね!?」

 

 思わず、ノリツッコミをしてしまった。

 ギルドがその手で儲けだしたらこの世界終わっちゃうよ?

 あり得ない程の影響力を有しているんだから。

 キャッシング機能付きのバッジをコントラクター全員に持たせられるくらいのとんでもない団体が詐欺はまずい。

 

「ふふふ、冗談です。マスターからとてつもない実力者だとお伺いしていたので、本来なら実力や実績に応じた判断が一度上層部を挟んで行われてますよ」

 

 事後情報公開でコントラクターが死んだなんてことになれば、ギルドにとっても悪名にしかならないからな。

 冗談でよかった。

 

「……なんだ、そう言うことでしたか。じゃあ、俺たちは行きますね」

 

「はい、でもロティスさんたちも気を付けてくださいね~」

 

 百戦錬磨の笑顔で手を振ってくれる受付嬢に軽く会釈をしながら俺たちは銀翼に向けて歩き出した。

 

 ◇◇◇

 

「銀翼のダンジョンってどんなところなんだろうね?そう言えば私ダンジョンに入るのは初めてだ!」

 

 道中まるで緊張感のないエモニがそんなことを呟いた。

 

「そういえばそうだったわね。ゲート酔いには気を付けるのよ?」

 

「ゲート酔い?ってなに?」

 

「呼び方はロティスがつけたんだけどね。ダンジョン特有の魔力であるダンジョン香につられてダンジョンに入るとダンジョン内ではいきなりダンジョン香が一切なくなってそのギャップで酷い眩暈とか吐き気みたいな症状を引き起こすのよ」

 

「えぇ……なんか怖くなってきたかも。でもロティスは10歳くらいの頃に一人でダンジョンに入ってたよね?大丈夫だったの?」

 

 エモニとミリアから忘れてないからね?とでもいうかのような視線を向けられながら俺も思いだす。

 そういえば俺はダンジョン香の副作用も酔いみたいなものだからと慣れで克服しようとしたんだった。

 

「あ、あぁ……俺はダンジョン香には完全に負けたな。ひどい目に遭ったよ」

 

「えぇっ!?ロティスでもひどい目に遭うなら私は……」

 

「いや、エモニ違うぞ?俺は何も知らずに一人で行ったせいでそんな目に遭っただけで、しっかり身体強化してダンジョン香に当てられないようにしておけば何も問題ないさ」

 

 哀愁を漂わせてしまったせいかエモニが予想以上に怯えてしまった。

 これが原作ではダンジョンを見つけたら突撃していく凶暴勇者なのだから人間の本性とは分からないものだ。

 原作のエモニが果たして正常なエモニだったのかは定かではないのだが……。

 まあ、もう俺の中のエモニはこの隣を歩くちょっと重めな女の子で確定しているので今更気にしたりはしない。

 

「ゲート酔いか……ワシはそんなもの感じなかったがのう」

 

 久しぶりに絶望勇者時代のエモニに思いを馳せていると今度はユメがぽつりと呟く。

 

「ユメはそもそもがゲートの出身だからなんじゃないか?ただの想像だけど」

 

「うーむ、まあそうじゃの。……ワシっていったい何なのじゃろうか」

 

 この間の精霊化の件もあってか、最近のユメはこうして自分の存在について悩んでいることが増えたような気がする。

 ただ俺たちはエモニ以外が絶望勇者にとって完全にイレギュラーな存在であるため、作品知識がある俺でも何も言えることがないのが歯痒いところだ。

 

「何でもいいだろ。ユメは俺の相棒だろ?……ま、こんなセリフじゃ気休めにもならないかもだけどな」

 

 せいぜい俺にできるのは少し格好つけてみるくらいだ。

 

「……カカッ、そうじゃな。ワシが何者で在れど、ロティスの相棒である事実は変わらぬか」

 

「ユメちゃんずるい!元々は私が相棒だったのに!!」

 

「二人とは違うけど私だってコントラクターとしてはロティスの相棒なんだからね!」

 

 少し励ませればいいかぐらいのつもりで言ったのだが、思いのほかユメが嬉しそうにしてくれたようで良かった。

 エモニとミリアが余計なことを言わずにいつも通りの反応をしてくれたのも大きいのかもしれない。

 

「「「ねえ、ロティス!誰が一番の相棒なのっ!?」」」

 

 うんうん、ここまでがテンプレってね……。

 

 ◇◇◇

 

 やいのやいのの騒ぎながら歩き続けて約3時間。

 月の街のそれとは明らかに格の違うそれが俺達の目の前に姿を見せた。

 

「ここが銀翼……存在感のオーラがすごいな」

 

 変わらず不自然に存在するゲートだが、ここは光閉ざす森ダンジョンとはまた違った迫力のようなものを感じさせる。

 

「そうじゃな。ここは評判以上に手ごわいやもしれぬの」

 

「うん、ダンジョンに入ったことがない私でも分かるよ。ここは一筋縄じゃいかなそうだね」

 

 ダンジョンを前にすると先ほどまでの緩んだ雰囲気は吹き飛び、二人とも真剣な表情になる。

 事前説明のおかげもあってかエモニがダンジョン香に当てられている様子は見受けられない。

 

「でも、今回は最初からみんな一緒だし、大丈夫よ。じゃあ行きましょうか!」

 

 皆が真剣になり集中する中でも、余裕を崩さないミリアの言葉に俺は軽く頷き、銀の翼ダンジョン内へ一歩を踏み出した。

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