救世主転生 ~死にたくなかったので、勇者覚醒イベントの攻略不能ボスを倒して勇者を救おうと思います!~   作:嵐山田

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第二十三話 分断

「ここが、銀翼の世界か……」

 

 SAN値チェックが必要になりそうな不気味な植物が顔を覗かせる部分は光閉ざす森ダンジョンと同じだが、このダンジョンには明確な違いがひとつあった。

 月のような何かが頭上に存在している。

 

「なんだか、気持ちの悪い植物?がいっぱいだね。ダンジョンってこういうものなの?」

 

「そうね。月の街のダンジョンにもこんな植物が生えていたわ」

 

 初ダンジョンのエモニも強い焦りや不安を見せる素振りはなく、大丈夫そうだ。

 

「ロティス、確かここから魔族のところまでワープできるのじゃったな?」

 

「ああ、あのジーンって言う魔族が言うにはそうらしい。だからユメ、刀になっておいてくれるか?」

 

「うむ、わかったのじゃ」

 

 ジーンの言葉によれば、指輪の力でワープできるのは三人までということだったため、ユメには刀になっておいてもらう。

 今のユメがどういう扱いになっているのかは分からないがこれならおそらく問題ないだろう。

 

「よし、じゃあみんな今からこの指輪を使ってみるけど、もし俺以外の誰かがここに残された場合はすぐにダンジョンを出て待っていてくれ。あまりに遅い場合はギルドへ連絡を頼む」

 

「そっか、確証はないんだもんね……でも、分かった」

 

「そうね、魔物が強くなっているという話もあったし、それがいいでしょう。でもロティスも無理しないでね?魔族がロティスに直接その指輪を渡してきた以上、ロティスが対象から外れるってことはないでしょうから」

 

「ああ。じゃあ、行くぞ!」

 

 今一度二人と顔を見合わせて、右の人差し指に嵌められた骨のような素材で作られた指輪に魔力を流していく。

 すると、少し光沢のあるだけだった無骨な指輪がいつか見た魔方陣のように赤黒い光を放ち始めた。

 その光は俺達の周囲をどんどんと飲み込んでいき、気づけば周りが見えなくなっていた。

 

 特に動きや揺れも感じず、少し待っていると周囲を包んでいた光が徐々に引いていく。

 

 そして俺はただ一人、全く同じ場所に取り残されていた。

 

「……よりにもよって俺か。意図が読めないな……ユメ、いるか?」

 

 一人残された俺は念の為、腰に携えた愛刀に呼びかける。

 しかし予想通り反応は返ってこなかった。

 

「俺はダンジョンには一人で挑む宿命でもあるのか?」

 

 自嘲気味に呟くも、声が空虚に木霊するだけだった。

 まあ、エモニやユメが一人で残されるよりはマシだ。

 こうなった以上俺のやることは一つ。最速で銀翼のルギアの待つ六階層までたどり着くのみ。

 幸い刀が無くなった訳では無い。

 とりあえず、踏破されている三階層を目指して俺は走り出した。

 

 ◇◇◇

 

 暗い光、いや、闇の中からようやく辺りが見えるようになったのはロティスがあの指輪を使ってから体感でも数分程度時間が経ってからだった。

 

 そこは王都サンシャインの王城で見た謁見の間のような格式高い空間だった。

 違いがあるとすれば、王城のような玉座がここにはないことだろうか。

 

「……皆はどこに?ロティスっ!ミリアさんっ!ユメちゃんっ!」

 

 ボーっと辺りを見回してからその異変に気が付いた。

 ここには私しかいない。

 

 ……どうしよう?

 あの指輪が正常に動いていたなら違う場所に来ている私の方に少なくとも後二人は来ているはず。

 まずはみんなを探そう、そう思ったときだった。

 

 カン!カン!と金属がぶつかり動くような音が聞えて来た。

 

「なにっ!?」

 

 頭上から聞こえる音の方に目をやると、どうやっても斬り落とせなそうな頑丈な鎖で繋がれた檻が吊り降ろされてきた。

 

「檻……?って中で倒れてる二人はっ!?」

 

 そして降りて来た檻の中を見て私は驚愕した。

 天井から吊るされるその檻の中にはまさに今探しに行こうとしていた二人の姿があったのだ。

 

「ミリアさんっ!ユメちゃんっ!!」

 

 少しの安堵とそれ以上の焦りを感じて呼びかける。

 でも二人は少しの反応も見せない。

 そしてロティスの姿はどこにも見当たらなかった。

 

 ロティスのことは気がかりだけど、今動けるのは私だけ、なんとか二人を助けなきゃ!

 ……魔法で檻を落としてみる?

 いや、落とせるとも限らないし、中の二人に被害が及ばないとも限らない。

 

 ……他にできることは?

 ………………。

 

 勇んで考えて見たけれど、私一人でできることは何も思いつかなかった。

 

「私……私は……何が……」

 

 いざ一人になって思い知る。

 私はみんなに比べて無力だ。

 

 思い返してみれば最初からそうだった。

 

 コントラクターの試験の時も私はロティスについていっただけ。

 ミナさんにはロティスの身体強化魔法に追いつけるだけですごいと言われたけど、あの時私がやったのは、ロティスに言われて変なおじさんと戦っただけ。

 それも危険の少ないギルド内でのただの模擬戦。

 

 ハイオークと戦ったときもそうだ。

 私が助けたいって言ったのに、上位魔法を無駄うちしてロティスに傷を負わせた。

 自分の中の力に任せて、あの場のロティス以外を全部殺そうとしてそれをロティスに止めてもらった。

 

 魔将ヒルウァとの戦いのときも。

 私は避難を手伝っただけ。

 ミリアさんは一人であり得ない数の魔物や魔族を倒していたし、ロティスとユメちゃんに関してはクラス7のヒルウァを倒して見せた。

 私はそれをただ見ていただけ……。

 

 もちろん、ロティスたちと一緒に戦えるように努力はしてきた。

 ロティスが言うには15歳で全属性の上位魔法が使えるのは天才らしい。

 でも、きっとミリアさんもできるし、もちろんロティスだってできる。

 

 いつもは額面通りに受け取れた言葉が、今になってただの気遣いだったんじゃないかという気がしてくる。

 

「私は……無力……」

 

 内心では気が付いていた。

 このパーティの中ではどう考えても私だけ足手まとい。

 もし仮に私が一般的な天才なのだとしても、このパーティにいるのは世界でも一、二を争う才能たちなのだ。

 

 心に暗い影が差す。

 その影は収まることを知らずに私を飲み込んでいくような気がした。

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