救世主転生 ~死にたくなかったので、勇者覚醒イベントの攻略不能ボスを倒して勇者を救おうと思います!~   作:嵐山田

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第二十四話 【Side:エモニ】追い打ち

 それは突然だった。

 何かの気配を感じて足元に縫い付けられていた視線を上げると、目の前には黒いモヤのような何かが現れていた。

 そのモヤはだんだんと形をとっていき、ロティスよりも少し背の高い男性ぐらいの大きさになり、やがて見覚えのない一人の男が現れた。

 

「無力感に打ちひしがれるお嬢さん。どうも、魔侯爵ルギア様の側近ジーンと申します」

 

 王城で見た使用人の人たちようなきれいな所作で腰を折ったその魔族はジーンと名乗った。

 

「な、なにっ!」

 

 その魔族からは私が相対してきたどの魔物とも違う異質な気配が放たれていて、私は咄嗟に距離を取り、臨戦態勢を取った。

 

「まあまあ、そう警戒せずに……本来なら救世主も一緒にと思っていたのですが、良い機会だったのであなたと二人でお話しする機会を設けさせていただきました」

 

「……私と話を?」

 

「ええ、そうです。時にエモニさん、あなたはどういう人が無能だとおもいますか?」

 

 その魔族はどこからともなく現れたテーブルとチェアのセットに腰を掛け、対面に私も座るように促しながら質問をしてきた。

 

「……どういうこと?」

 

「そのままの意味ですが、そうですね……例えばある三人組のコントラクターパーティがいたとしましょう。そのうちの二人は紛れもない天才、誰もが認める実力で実績を積み上げています。打って変わって三人目は秀才。常人よりは優れていることに間違いないでしょうが、このパーティでは一段も二段も見劣りする。この場合の秀才は無能でしょうか?」

 

 まるで私の心をすべて見透かされているような例えだった。

 

「……」

 

 いや、実際に見透かされているのだろう。

 でも、それでも、他人に言われたそれを認めてしまうことは私にはできなかった。

 

「ふむ、答えられませんか。まあ、いいでしょう。私は……私の主は無能を嫌うのです」

 

 私に一瞬視線を向けるとジーンは立ち上がった。

 

「……何が言いたいの?」

 

 私も同じように立ち上がる。

 

「簡単なことですよ。救世主の仲間にあなたは必要ないということです!」

 

 そう言うと同時にジーンは私に向かって魔法を放ってきた。

 

「くっ……」

 

 見たことのない黒い魔力の塊を火属性魔法で相殺する。

 

「もし、あなたが救世主と、ロティス様と共に在りたいと願うのならば、その力を持って私に証明してくださいっ!」

 

「……いいよ、やってやる!私だって、ロティスの役に立つんだ!」

 

 ここまで言われてしまえば、私に引き下がるという選択肢はなかった。

 私は手始めに火属性上位魔法スルトを放つ。

 しかし、それはあっさりと正体不明の魔法でかき消されてしまった。

 

「……っ!?」

 

「その程度で救世主の役に立つ?笑わせますねぇ!」

 

「うるさいっ!ここで、一人でも戦えるって、証明してやるんだっ!」

 

 次は立て続けに土属性上位魔法テルースを放つ。

 そして放った巨大な岩陰を目隠しに使い、全力の身体強化魔法でジーンへ接近、相手が魔法を相殺した瞬間に殴りかかった。

 

「ふむ、なかなかの工夫ですが……まだまだですねっ!」

 

 しかし、私の不意を突いた攻撃は簡単に見切られた。

 いや、見切られる以前に読まれていたのだ。

 振りかぶった右の拳で空いた私の右頬にジーンの拳が突き刺さる。

 

「ぁがっ……」

 

 ノーガードを突かれたその一撃は重く、私は簡単に吹き飛ばされた。

 しかし、痛みはすぐになくなった。

 

「痛く……ない?……どういうことっ!?」

 

「ああ、言い忘れていました。私の攻撃はあなたにはダメージを与えません」

 

「……何を言っているの?」

 

「こういうことですよ」

 

 ジーンが指をパチンと鳴らす。

 すると王城で見た絵画のような大きさの長方形のモヤが私たちの頭上に現れた。

 

 そしてそこにはロティスの姿が映し出された。

 右頬を押さえながら近くの木に吹き飛ばされているロティスが。

 

「……まさかっ!?」

 

「ええ、そのまさかです。ここであなたが受けた攻撃は、今急いでここへ向かっている彼に飛んでいきます」

 

「……そん、な」

 

「分かりますか?あなたが無能なばかりに、今、救世主が攻撃を受けました」

 

 私の、私のせいでロティスが……。

 

「分かりましたか?救世主の仲間に無能は……いえ、あなたは必要ないのです!」

 

 私が……必要ない……。

 私のせいで……ロティスが傷を……。

 

 もう一度ロティスが映し出された長方形に目を向ける。

 ロティスは口から血の混ざった唾を吐きだすと、何事もなかったかのようにまた走り始めた。

 

 ……そんなに大きなダメージではなさそうだが、私がロティスに攻撃をしてしまったようなものだ。

 私はどうすれば……。

 

「絶望に暮れている暇があるのですかっ!?」

 

 今度は一変してジーンが攻勢に出てくる。

 咄嗟に両手で受けようとして、急いで回避をする。

 

 今の私が受けるダメージは全てロティスの元に向かってしまう。

 考えて戦わないと、ロティスが危ない。

 

 ……でもそうだ、攻撃さえ受けなければいい。

 ロティスがここまで来てくれれば、こんな魔族、簡単に倒してくれる。

 

 そう思った私は、攻勢の戦い方を止めて、とにかく相手の攻撃を避けることにした。

 

「ほほう……いくら無能とは言え救世主の仲間。回避に専念されるとなかなか進みませんね」

 

 ジーンはそう言うと何を思ったか私に背を向けた。

 そして、天井から吊るされている檻に向かって魔法を放った。

 

「危ないっ!!」

 

 咄嗟に身体強化を足に集中させ、風属性魔法も併用して全速力で檻と魔法の間に入る。

 

「水属性上位魔法フォルネウ――」

 

 間に入ってから水属性魔法で相殺を試みるも、中途半端な魔法では相殺しきれず私は上空の檻に叩きつけられた。

 だがやはり痛みはなく……。

 

「ロティスっ!!!」

 

 私の視界には戦闘中に地面に叩きつけられ、今にも魔物の攻撃を受けようとしているロティスの姿が映った。




これ以上はエモニちゃんが……。
次話はロティス視点です。
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