救世主転生 ~死にたくなかったので、勇者覚醒イベントの攻略不能ボスを倒して勇者を救おうと思います!~   作:嵐山田

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第二十五話 不可視の攻撃

 事前に調べておいた三階層までの階段の位置まで最速で駆けた俺は、ものの数分で現在の最高到達階層である三階層に到着していた。

 

「やっぱり進むごとに景色が異様になっていくんだな……。今回は幻影魔法の影響を受けているわけではないだろうし……まあ、取り合えずここもさっさと突破しよう」

 

 銀翼のダンジョンで現れる魔物はその名の通り、月のようなものに照らされると翼が銀色に煌めくワイバーンのような魔物だった。

 空中を飛び回られるため戦うとなると厄介だが、その分無視もしやすい。

 姿を隠す隠密の魔法に、時折大きな魔法で視線を逸らせてやれば簡単に撒くことができた。

 

 俺の刀術、空刃ならば魔物が陸にいようが空中にいようが関係はないが、今は一刻の時間も惜しかった。

 

 三階層をしばらく駆け回っていると四階層へ続く階段を見つけた。

 

「あれは……リザードマンか。設定上のクラスは4だけど、ここが第三階層であるかつあいつがこの階層の階段の守護者だとするとクラス5程度の実力はあると見た方がよさそうだな」

 

 だが、今更同クラス程度の魔物に後れを取る俺ではない。

 隠密状態のまま、夢幻に手をかける。

 

「魚谷流刀術『断光』」

 

 俺の持ちうる手段の中で圧倒的な速さをもつ一太刀での先制攻撃。

 光さえ断つその瞬閃が開戦の合図となった。

 

「GYAAAAAAA!」

 

 一太刀を浴びせられてからようやく俺の姿を視認したリザードマンは怒りに打ち震えるような声を上げる。

 

「あんまり大きい声を出さないでくれ。急いでるから増えるのは困るんだよ」

 

 リザードマンは左手に握った無骨な剣で斬りかかってくる。

 よく考えればこの世界で剣士と打ち合うのは初めてかもしれない。

 こういう機会じゃないと対剣士用の刀術を使うときもないし、少しありがたくもある。

 いくら剣術を修めているからとはいえ、使わなければ錆びていくものだからな。

 

 そう考えながら、対剣士用刀術の独特の構えを取る。

 刃を上に向けて待ちの構え。

 

「魚谷流刀術『飢狼』」

 

 振り下ろしたリザードマンの一撃を紙一重で逸らせて、そのまま斬り上げる。

 親父曰く、飢えた狼は賢く、機を逃さないらしい。

 この一太刀はそんな狼のごとく、相手の攻撃の瞬間を狙い斬る。

 

 ドサっという音と共にリザードマンが倒れ込み、こと切れる。

 

「ふぅ……これで三階層は踏破っと」

 

 リザードマンからドロップした黄色の魔核を拾い上げ、俺は第四階層への階段を上がった。

 

 それにしても、王都のコントラクターなら三階層程度余裕で踏破していてもおかしくなかったと思うけどな……。

 そう思いながら四階層を駆ける。

 

 この階層に入ってから、辺りの植物からも敵対的な反応を感じるが、何なのだろうか?

 攻撃というよりかは監視されているような、視線のようなものを感じる。

 

「まあ、実害がないなら問題はない。さっさとここも踏破しちゃおう」

 

 なんとなく不気味なものを感じながら、さらに気を引き締めてダンジョンを走った。

 

 それから少しした時だった。

 

「ぐはっ……!」

 

 突然右側の頬を殴り飛ばされたような衝撃を受け、近くの木に叩きつけられた。

 

「っぃてて……何だ突然?」

 

 大したダメージではなかったが完全に無警戒のところに受けた攻撃で吹き飛ばされてしまった。

 

 落ち着いて辺りを見回すも魔物など敵影は見られられず、本当にわからなかった。

 ……不可視の攻撃か。それも気配も無しに飛んでくる。

 

 これはほんとに残されたのが俺で良かったな。

 このくらいのダメージなら問題はないだろうが、エモニやミリア、ユメが殴られている姿は見たくも考えたくもない。

 

 不意に殴られたことで口内が切れてしまい、不快な味がするようになった唾を吐き捨てて、より警戒を強めながらスピードだけは落とさずに次の階段を探した。

 

 ◇◇◇

 

 今度の階段は亜竜と呼ばれるようなワニもどきのドラゴンと二体のリザードマンが守っている様だった。

 

「三体か……それにあのワニドラ、相当タフそうだぞ……」

 

 ここまでに出て来なかった亜竜はダンジョン外ではクラス5程度の魔物。

 外に現れれば、この間のマイア村程度なら簡単に滅ぼせる程度の実力だ。

 

 それがダンジョンの四階層の守護者……クラス6は覚悟した方がよさそうだ。

 

 先ほどのようにリザードマンに叫ばれて魔物を呼ばれては面倒だったため、先に周りの魔物を一掃してから亜竜たちに挑むことにした。

 

「ワイバーン三体が近い、とりあえず魔法で落としておくか……風属性上位魔法ボレアス!」

 

 自在に空を飛び回るワイバーンの内、少し離れた位置を飛ぶ一体に向かって風の上位魔法を放つ。

 俺の放った風の刃は、見立てではそれだけで首を落とせる程度の魔法だったのだが、予想に反して首を中程度まで切り裂くにとどまった。

 

「……そう言うことか」

 

 魔法を放ってみて、このダンジョンの攻略がなかなか進まなかった理由をようやく理解した。

 ここの魔物は異様なまでに高い魔法耐性を持っているようだ。

 

 確認のため、もう一体のワイバーンに向けて同じく風属性上位魔法を放ってみる。

 すると同じように首を切断するには至らず、倒せはするものの明確に魔法に対する抵抗力を見せた。

 

「さしづめ、魔法ダメージ半減のダンジョン効果ってところか?おそらく勇者魔法なら関係ないんだろうが……」

 

 絶望勇者のゲーム内ではエモニの圧倒的な強さで気にならなかったため、今まであまり考えて来なかったが、ダンジョンにはそれぞれ特徴のようなものがある。

 魔法ダメージ半減や消費魔力倍化などなど高位のダンジョンになるほどそれもまた強くなるため、それが原因でここの攻略は滞っていたのだろう。

 

 それでも上位魔法で倒せることには変わりはない。

 怒ってなのか、生存本能か、無我夢中でこちらに向かって突っ込んでくる最後のワイバーンにも風の刃を当てて倒し、改めて亜竜の元へ戻った。

 

「さて、ワニドラちゃん。勝負と行こうじゃないか!」

 

 あの亜竜に粘られるのは非常に厄介だ。

 できることなら初撃で亜竜を倒し切り、落ち着いて二体のリザードマンを相手にしたい。

 一撃で屠るなら二刀だな……。

 

 隠密状態のまま夢幻と無限を抜き放ち、深呼吸をして精神を整える。

 

「救世主《ヘラクレス》」

 

 この世界で新たに得た力も発動し、万全の体勢。

 隠密を切って飛び上がり、体を斜めに傾けて亜竜に二刀を叩き込んだ。

 

「魚谷流二刀術『竜頭龍尾』!」

 

 ヒルウァをも討った俺の最強の一撃は亜竜の脳天を叩き斬り、狙い通り一撃で亜竜を屠ることに成功した。

 

「よし!続けて残りも――ぐはぁぁぁっ!!!!」

 

 亜竜を倒し、リザードマンへ追撃をかけようとしたときだった。

 左腕に鋭く、そして重い痛みを感じ思わず絶叫する。

 地面に激しく叩きつけられると同時に刀が地面へ落ちた音がして理解した。

 

 剣士の敗北は刀を落としたときと教え込まれた俺だ。俺が戦闘中に刀を落とすはずがない。

 つまり……。

 

 飛びかかってくるリザードマンよりも自分の左腕が気になり、尾との方に目を向ける。

 するとそこには俺の左腕の肘から先が黒く焦げ、その少し先には剣を握ったままの左手が焼け落ちている光景が目に映った。




新技!カウンターの刀術「飢狼」です!
久しぶりの救世主も「竜頭龍尾」も出せて嬉しいですが……。
ロティス大ピンチですねぇ。
次話はまたエモニ視点です。
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