救世主転生 ~死にたくなかったので、勇者覚醒イベントの攻略不能ボスを倒して勇者を救おうと思います!~   作:嵐山田

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リーシアさんはギルマスの人です。


第三十一話 【Side:リーシア】天啓?

 

 王都の一等地に堂々と拠を構えるサンシャインギルド。

 その中に彼女は二つ、与えられている部屋があった。

 一つは格式ある高級志向の装丁で整えられた一室、ギルドマスターの執務室だ。

 彼女は普段、主にこの執務室で書類と睨み合い、厄介な貴族や依頼請負人と睨み合っている。

 

 そしてもう一つ。

 最近はめっきり使わなくなっていたため、部屋の隅には若干のほこりが見えるその部屋は、研究室のような独特な雰囲気を醸し出している。

 この格式高いギルドにはそぐわないその部屋で彼女は頭を抱えていた。

 

「なんなのよ!この魔核!見れば見るほどわからないんだけど!」

 

 サンシャインギルドでギルドマスターを任されるほどの人望や実力を備える彼女、リーシア・マルスにも迷うことはあるのだ。

 

 ――ロティスくんたちの話しではこの魔族……魔将ヒルウァは神聖魔法が使える魔族だったんだっけ?

 となれば、この魔核にもそれに属する力が宿っていると考えるのが一般的だろう。

 いつもなら、魔核の持つ力についてあれこれ迷うことはなかった。

 それは彼女の持つ魔具のおかげである。

 着崩したシャツになぜかよく似合うそのメガネ型の魔具は魔核の持つ力の質を測ることができるという代物だ。

 

 各ギルドのギルドマスターならば皆持っているその魔具の中でも、リーシアに与えられているそれは別格の性能を誇る逸品だった。

 フレームには金属とは思えないほどに軽い希少な素材が使われ、レンズには鑑定系の力を持つ魔核が用いられている。

 その魔核もクラス6の上位に位置する魔核で、これまでに彼女はクラス7の魔核が持つ力もこの魔具によって鑑定してきた。

 

 しかし今、相対しているこの魔核の性能や力は全く持ってわからないのだった。

 

「どうしようかしらねぇ……1,2週間で加工できるなんて言っちゃった分、そろそろ渡してあげたいのに……」

 

 メガネの奥に覗く彼女の透き通るような碧眼にも今では曇りが見えそうだ。

 綺麗に伸ばされた金髪もここ数日の徹夜のせいで痛んできてしまっている。

 

「……今日は帰ってリフレッシュした方がいいかしらね」

 

 自信を持っていた髪を手で梳きながら、そう思って数日ぶりの帰り支度を始めた。

 

 ◇◇◇

 

 そこそこ大きな屋敷に帰る。

 特に変わったところはなく、王都に住む人ならばどこかの貴族の別邸だろうと思うことだろう。

 

 マルスという家名を持つ通り、リーシアも王国貴族の一人である。

 しかし、彼女はロティスと同じくらい特殊な立場にあった。

 サンシャインギルドのギルドマスターという職業柄、王都から離れる訳にはいかない。

 そのために治めるべく領地などはなく、貴族ではあるものの王都にあるこの屋敷が彼女の本邸であった。

 

「はぁ……ただいまぁ~」

 

「おかえりなさいませ、リーシア様」

 

「うぅ~ミラ~聞いておくれよ~」

 

 玄関の扉を一歩踏み越えた途端、彼女のギルドマスターとしての仮面は剥げ落ちる。

 そんな猫かぶり主人を抱き留めるのがこの家の使用人であるミラのいつもの役目だった。

 

「リーシア様、お話の前にお風呂へ入ってください。4日も帰られませんでしたよね?不潔です」

 

 だが、抱き留めるだけで主に従順なだけの忠犬メイドではない。

 ミラはお猫様メイドなのだ。

 

「そんなぁ~不潔なんて酷いじゃないか~。それが徹夜で仕事をしていた主への態度かい?」

 

「私はありのままの事実をお伝えしただけですので」

 

「……分かったよぉ。その代わり、お風呂を上がったら私の話に付き合ってもらうからね!」

 

「はいはい、お付き合いいたしますよ」

 

 やれやれと言う顔をしながら、ミラは主の着替えを用意する。

 疲れているなら早く寝ればいいのにとは口にしなかった。

 

 ◇

 

 時間の感覚を忘れていたが、ミラの言う通りなら4日ぶりのお風呂だ。

 貴族になって良かった点は数少ない。

 立場も相まって相応以上の権力を持ってしまっているゆえにリーシアは面倒ごとに巻き込まれることが多かった。

 しかし、この自宅についているお風呂という設備はそんな面倒ごとを忘れさせてくれる最高の存在だ。

 

「ん~4日ぶりともなるとシャワーでも体に染み渡るわねぇ~。はぁ……でも、ほんとにどうしようかしら」

 

 シャワーを浴びてリラックスをしていてもやはり魔核の加工についてが頭から離れることはなかった。

 なんとかふと思いついてくれないかしら……。

 

『……の魔核……持つ力……神聖……再生』

 

「えっ!?なにっ!?」

 

 神にもすがりたい気分でそんなことを思うと脳内に声が響いてきた。

 

「どうかされましたかっ!?リーシア様!」

 

 着替えを用意しに来てくれたのだろうミラが突然叫んだ私の声に反応する。

 ……ミラが驚いているということはミラの声が聞えたのではない。

 なら、さっきの声は一体……?

 

「リーシア様?大丈夫でしょうか?」

 

「え、ええ。大丈夫よミラ。さすがに体に疲れが溜まっていたみたい」

 

「……そうでしたか。それでは、着替えは用意しておきましたので、ごゆっくり」

 

 ミラは微妙に納得していなさそうだったが、流石に主のシャワーに突入してくるような子ではない。

 こちらを気にしている様子はあったが、その気配は少しづつ遠退いていった。

 

『あの子……腕……邪魔……ない物』

 

「またっ!?」

 

 さっきから聞こえるこの声はなんなのだろう。

 でも、「魔核、持つ力、神聖、再生とあの子、腕、邪魔、ない物?」は明確に聞き取れた。

 聞き取れたというか、その部分だけでもなんとか伝えようといった感じだろうか?

 

 『必ず……頼む』

 

 最後にそれだけを伝えて脳内に響いたその気配は消失した。

 

「……冷静に考えましょう」

 

 最初の言葉はおそらくあの魔核の持つ力の情報だと考えられる。

 

 急に聞こえて来た信憑性のない声によって与えられた断片的な情報。

 だが、私は直感的にその情報が正しいと感じていた。

 

「つまりあの魔核の持つ力は予測通り再生ということ。おそらく神聖魔法由来という推測も間違いない」

 

 シャワーを止めて浴槽に浸かり、さらに思考を深めていく。

 厄介な重さから解放され、肩が少しすっきりした。

 

 二つ目の言葉は「あの子、腕、邪魔、ない物」だったはず。

 あの子……誰かしらね。

 考えられるのは私に魔核を持ってきたロティスくんとエモニちゃん。

 それに精霊だと思われるユメちゃんだ。

 ミリアちゃんは子って感じがしないし、きっと違う。

 

 次に腕。

 これは順当に考えると魔具をつける場所を指すのではないだろうか?

 でも気になるのは邪魔とのつながり。

「腕の邪魔にならない物」という可能性もある。

 

「悩ましいわね……」

 

 突然聞えて来た天啓とも呼べる謎の声。

 直感的に魔核関係のことだろうと思ったが、全くの見当違いの可能性もある。

 ……こんな不思議な経験を私がすることになるとはね。

 

「ふふっ!面白いじゃない!」

 

 そう言ってリーシアは思い切り立ち上がった。

 水飛沫が舞い、豊かな双丘が跳ねる。

 

「弱気になっている様じゃだめね!」

 

 すぐに浴室を飛び出すと着替えもそこそこにミラを呼んだ。

 

「ミラっ!悪いんだけど外出の準備をお願い!あと話し相手が欲しいからあなたも一緒にギルドに行くわよ!」

 

「ええっ!?今からですか!?もう夜ですよっ!?」

 

「この思い付きを逃すわけにはいかないのよっ!」

 

「……仕方ありませんね。お供いたしますよリーシア様」

 

 こうして私はミラを連れて5日目の作業に向かうことにした。




リーシアさんは動かしていてとても楽しいキャラです。
もっと本筋に絡めたい。

そして新キャラのミラさん。
おそらくそこまで出番はなさそうですが、リーシアさん付きの唯一のメイドです。
猫系メイド……とは?
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