救世主転生 ~死にたくなかったので、勇者覚醒イベントの攻略不能ボスを倒して勇者を救おうと思います!~   作:嵐山田

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第三十三話 仲間の絆

 ルギアに認められたことで魔王の支配力とやらに対抗する反逆の力を手に入れた俺は、エモニの魔法でギタギタになったルギアの居城で三人が起きるのを待っていた。

 目覚めたときにまたエモニが暴走しかねないため、魔族の三人には帰ってもらった。

 三人とは言ってもアインとルギア、それに引きずられるジーンと言う形だったが。

 

「それにしても、エモニが覚醒したのにルギアが生きていたのは意外だったな……まあ、ダンジョンが消滅しなくて本当に良かった」

 

 どこか緊張感が抜けたような表情で眠る三人を眺めながら呟く。

 

 勇者の力、あの力は圧倒的だ。

 原作ゲームでもエモニの前に立ちはだかる者は全て灰燼に帰す、そんな力だった。

 まあ、予想外は予想外でもいい方に転んでいる。

 ダンジョンの攻略と消滅は訳が違う。

 

 ダンジョンには一応攻略という概念がある。

 それがダンジョンの主、銀翼ならルギアに認められること。

 基本的に相いれない存在同士の人間と魔族だが、そこはゲーム世界信仰より力なのかもしれない。

 そんなわけで力を認められれば、そのダンジョンは攻略したという扱いになり、ジーンの胡散臭い指輪がなくともダンジョン内では転移をすることが可能になるのだ。

 

 一方消滅はダンジョンそのものを消してしまうこと。

 光閉ざす森ダンジョンがこの例だ。

 ダンジョンの主たる魔族が死に、後継が現れなかった場合などはダンジョンゲートが消滅し、ダンジョンと俺たちの生活する世界とのつながりが断たれる。

 

 ここ銀翼は王都四大ダンジョンの一つだ。

 ここを目当てに王都へやってくるコントラクターたちも数多く存在する。

 そんなダンジョンが消滅してしまった場合、王都に与える経済的影響はいくらあの国王ディバンでも笑って済ませられるほどのものではないだろう。

 

 消滅させる許可が下りるのはダンジョンブレイクが対処不能となった時くらいだ。

 この世界において魔族の討伐例は少なからず存在するが、ダンジョンの消滅は光り閉ざす森が初めてだったはず。

 しかもあれはヒルウァがストイを殺した結果であり、俺たちはそのままダンジョンから出て来たヒルウァを討伐しただけでダンジョンを消滅させたのではない。

 それなのに俺に子爵位を送るなんて話になっている、ここを消滅させていたら間違いなく権力闘争の荒波に飲まれることになっていただろう。

 おそろしやおそろしや。

 

「良く寝てるな~特にユメが寝ているところなんてなかなか見られないぞ」

 

 手持無沙汰で暇になった俺は申し訳ないとも思ったが、彼女たちの寝顔を観察してみることにした。

 

 ユメは基本的に人の姿でいることが多いが本質は刀だ。

 おそらく眠らなくても大丈夫だし、眠るときは刀に戻っていることが多い。

 

「黒髪はこっちだとあまり見ないからなんだか懐かしい気分になるよな……」

 

 ユメの髪は前世の女性を彷彿とさせるような艶やかな黒髪だ。

 もう日常になっていたせいであまり気にしてこなかったが、この和服も相まってより日本を思い起こさせる。

 

 すぅすぅと小さく寝息を立てるユメはなんとも、こう、庇護欲を刺激されるものがあった。

 

「ワシが……ロティスの相棒じゃ。そこを譲るがよい……ミリアよ」

 

 むにゃむにゃと寝言を喋る。

 寝言でもその話をしているのか……。

 

「そうは……させないわ。ロティスは私のよ」

 

 ユメの寝言に呆れていると、今度は隣に眠るミリアが呟いた。

 しかも内容がユメに対抗しているように聞こえるのは気のせいだろうか。

 

「なにを……言っておるのじゃ。ロティスはワシのものじゃ」

 

「いいえ、私のよユメちゃん」

 

 ………………。

 目を閉じたまま言いあう二人……さては起きてるな?

 そう思って試しにユメの頬をつついてみる。

 

「ぬっ!なんじゃロティ……あ」

 

「あ、じゃないわ!起きてるのかよっ!ミリアも!何時から寝たふりを?」

 

 案の定だった。

 

「私もユメちゃんも起きたのはついさっきよ。そしたらロティスが寂しそうな顔をしてたからいたずらしようと思って」

 

 てへっ♪なんて効果音が付きそうな仕草をして見せるミリア。

 寂しいというか郷愁を感じていたというか……。

 

「はは、ありがとう。でも、寂しくはないから大丈夫だぞ?」

 

「そう?それならいいんだけど……」

 

 ミリアは俺の腰かける瓦礫の横に座り、まだ納得はしていないという様子ながらもそれ以上追及はせず、頭を撫でてくれる。

 

「それでロティス。これはどういう状況じゃ?」

 

 ユメはそんな俺の足の間に陣取り、今の状況を聞いてきた。

 

「ちょっと色々あったんだよな。濃い時間だったよ。まず、あの指輪が俺以外を転移させる指輪だったみたいでさ――」

 

 それから俺はエモニが起きるのを待ちながら、今に至る経緯を二人に説明した。

 

「なるほどのう。……エモニが勇者とは」

 

「そうねぇ……昔から見てたけどそんな素振り見たことなかったから全然気が付かなかった」

 

 エモニの力についてはもう二人に話してしまうことにした。

 もう完全に身内みたいなものだし、話さない理由はないだろう。

 

「まあ、普通は気が付かないさ。積極的に使って欲しい力でもないからな」

 

 俺がそう言うと二人も頷いて同意してくれた。

 

「それでロティス、その腕は大丈夫なのか?」

 

「そうね私も気になるわ。ロティスの腕を落とせる敵がいたなんて……」

 

 エモニの話しのあとは呪われたように黒くなってしまった俺の腕のことに移っていった。

 

 ……二人の身代わりにエモニが受けた攻撃でこうなったなんて正直に話したらどうなるかわかったもんじゃないな。

 せっかく消滅せずに済んだダンジョンが再び危険に晒されかねない。

 

「ああ、大丈夫だよ。というか違和感とかは特にないんだ。ただ少し……いやかなり力が強くなったことは否めないけど」

 

 この腕については帰ってから考えるべきだろう。

 正直俺もまだ何がどうしてこんなことになっているのか理解できていない。

 

「そういえばクラス7に近い魔物を私一振りで倒したとか言っていたわね」

 

 やけに私の部分を強調するミリア。

 

「なんじゃ?ワシではできなかったとでも言いたいのかの?ミリア」

 

 同じように感じ取ったユメが喧嘩ならば買うぞと言わんばかりの態度を示す。

 ……あーあー、ちょっと隙を見せるとこれだよ。

 

「二人とも落ち着いて。夢幻も無限もどっちも俺の相棒なんだから。な?」

 

「「そんなことはわかってる!」のじゃ!」

 

 お、おおう。

 じゃあ、どうすればいいのよ……。

 

 誰か助けてくれと思ったとき、俺たちの騒がしさで目が覚めたのかエモニが起き上がった。

 

「あ、エモニ!おはよ――ぐあっっっ」

 

「ロティスっ!みんなっ!ごめん、ごめんね。私が弱かったから……」

 

 起き上がるや否やユメをサンドのも構わず飛びついてきたエモニを受け止める。

 エモニの声は弱く震え、目から溢れる涙を拭おうともしない。

 

「何言ってんだエモニ。お前は立派に二人のことを守ったし、俺は依頼を完遂できた。最高の結果だぞ?」

 

「そうよ。謝るべきは私たちだわ。ここに来てからずっと寝てたみたいだし」

 

「そうじゃぞエモニ。お主はワシらを守って戦ってくれた。なのに力になることもできずすまんかった」

 

 なんとか俺たちの間から顔を出したユメとミリアもエモニを抱きしめてそう言い聞かせた。

 

 それからはエモニが落ち着くまでそのまま三人で慰め続けた。

 

 ◇◇◇

 

「そろそろ落ち着いたか?」

 

 エモニの泣き声が聞こえなくなったところで声をかける。

 

「……うん」

 

「よし、じゃあ帰ろうか。今度はちゃんと転移できるみたいだし」

 

「……もう転移はやだ。歩いて帰らない?」

 

 今回のことが相当響いたのか、エモニの手が震えている。

 

「そうね!私もダンジョンに来たのに寝ていただけなんていただけないもの!いいわ、歩いて帰りましょう!」

 

「ワシも戦いたいと思っていたところじゃ!」

 

 そんなエモニを見かねてかミリアとユメもその提案に賛成している。

 

 ……まあ、俺は駆け上がって来たから大体の道は覚えてるしそう時間もかからないか。

 

「よしわかった。じゃあ、入口を目指してダンジョン探索と行きますか!」

 

「「「おー!!!」」」

 

 こうして俺たちは通常とは正反対のダンジョン探索を始めるのだった。

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