救世主転生 ~死にたくなかったので、勇者覚醒イベントの攻略不能ボスを倒して勇者を救おうと思います!~   作:嵐山田

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第三十四話 忙しない日常

 あれから二日ほどかけて、しっかりとダンジョン探索をして俺たちは外へ帰って来た。

 

「ダンジョンって意外と面白いところだね!」

 

「そうか? まあ、良い気分転換になったたら良かったよ」

 

 魔物相手に思う存分戦ったおかげかエモニもすっかり元気を取り戻し、普段通りの調子だ。

 

「そうね、特に五階層あたりのダンジョン効果は良い訓練になったわね」

 

 魔法の威力が下がるダンジョンの効果下でもミリアの魔法は強かった。

 一発一発の威力は俺の方が上回るかもしれないが、その速度と正確性は流石というほかなかった。

 

 「まあ、最も活躍したのはワシじゃがの!」

 

 エッヘンと胸を張るユメだが、これは決して誇張などではない。

 普段は刀として俺と共に戦うユメだったが、今回はあえて刀に戻らず人の姿のまま戦っていた。

 リーシアさんが精霊になってきているのではと言っていたがこれもあながち間違いではないのかもしれない。

 陽炎としての力を刀にならずとも操り、魔物に幻術を見せてリザードマンの大軍を一人で壊滅して見せたのだ。

 

 と、三人が大活躍してくれたおかげで帰り道の俺はただついて歩いていただけのようなものだった。

 

「みんなお疲れ様。とりあえず報告の前に一回帰ろうか。風呂に入りたい」

 

「そうだ! うちにはお風呂があるんだった!」

 

「テレサとソーカもおるしの」

 

「そうね、今度はロティスのお風呂に突撃させないようにしなきゃ!」

 

 そんな話をしながら、王都までの道を歩いていると向かい側からたくさんの人が歩いてきた。

 そして俺たちを見つけるとその人込みをかき分け大きく手を振ってこちらに走ってくる人がいた。

 

「ロティス様~!!」

 

 ロティス……様?

 

 呼ばれ慣れないその敬称に違和感を覚えていると隣でエモニが手を振り返した。

 

「あっ! ヒナさん!」

 

 ……風呂に入りたかったんだがなぁ。

 これはどうやら、もう少し頑張らなきゃいけなさそうだ。

 

 おそらくコントラクターだと思われる集団を引き連れて走ってくるヒナさんの顔は若干、いや大分緩んでいるがただの出迎えではないだろう。

 

「エモニ様先日ぶりです! 国王ディバン様の命により、クラリス様の名代としてお迎えに上がりました。至急王城までご同行をお願いいたします」

 

「ええっ! 何かあったの?」

 

 エモニが大げさなほどに驚く。

 

「はい。 なんでも国の一大事だとか……」

 

 国の一大事? でも、国王の命って言ってる辺り、王様が魔に飲まれたとかではないだろうし……。

 

「ロティスとおると退屈せんのう」

 

「ふふっ、私のロティスだもの!」

 

「……ユメもミリアも軽いな。仮にも王命を受けている状況なんだが?」

 

 そう言って見せるが、二人とも、何をいまさら?とでもいうかのような顔で俺をまっすぐ見返してきた。

 

「はあ……ヒナさん。お迎えありがとうございます。急ぎますか?」

 

「はい。お疲れのところ大変申し訳ないのですが、このまま王城に足をお運びいただきたく存じます」

 

 クラリスの名代ということもあってか、今日はやけにヒナさんの口調が堅い。

 表情は相変わらずだが……。

 

「分かりました。それと……そのコントラクターたちは?」

 

 俺はヒナさんの後ろに控える数十人規模のコントラクターたちの方へ顔を向けた。

 

「ああ、彼らはですね……半分はクラリス様の出された緊急依頼、ロティス様一行を護衛するという依頼を受注されてここへ来た者たちです。残りの半分はロティス様方が出て来られた後のダンジョンの確認を行う者たちです」

 

 ……緊急依頼って、クラリスちゃんやりすぎだよ。

 まあギルドとしても、銀翼クラスのダンジョンに入れないままって言うのは問題があっただろうから、このうちの半分はそう言う理由もあってだろうな。

 

「なるほど、では帰りはお任せしましょう。みんな! 迎えの馬車に乗せてもらおう」

 

 俺たちはヒナさんが引いてきた空の馬車に乗せてもらい、周りをたくさんのコントラクターたちに固められながら、優雅に王都へ戻るのだった。

 

 ◇◇◇

 

「さて、ジーン。お前自分が何をしでかしたのか理解しているか?」

 

 白銀の翼ダンジョン六階層では、復興工事が始まっていた。

 そんな中、ルギアの忠臣であったジーンはロティスたちと対面していた部屋よりもさらに地下にある牢に繋がれていた。

 

「……申し訳ありません」

 

 鉄格子を隔てて、ルギアはジーンを問い詰める。

 

「救世主のあの左腕、見たか?」

 

「微かに……ですが」

 

「あれは間違いない。邪神の力だった。あのままでは……救世主が死ぬぞ」

 

「……申し訳ありません」

 

 ただ謝るだけのジーンに苛立ち、ルギアが鉄格子を殴る。

 鈍い音が地下牢に響き、強固な鉄格子がひしゃげた。

 

 ルギアとてこの怒りを部下に向けるべきでないことなどよく理解していた。

 だが、狂ってしまった魔王を救うことのできる可能性がある、救世主という存在に死を近づけてしまったことへの怒りはどうしようもなかった。

 

「……どうにかならないのか」

 

 強気なルギアからは聞いたことのない弱音が漏れる。

 

「……ヒルウァ様の魔核に適当な加工を施すことができれば……」

 

「それをどう伝えるというんだ! それに邪神の力だぞ! いくらあのヒルウァの魔核とて対抗しきれるとは考えられん!」

 

「……申し訳――」

「それについては私にお任せください」

 

 コツコツと足音が響く。

 

「……アインか。どうするつもりだ?」

 

「聖女を動かします。聖女の魔力とヒルウァ様の魔核が合わされば、あの邪神の力へも抵抗できましょう」

 

 影から不意に現れたアインは簡単にそう言って見せた。

 

「聖女だと!? 聖神信仰者によってまるで神のごとく祀り上げられている人間ではないか! 一体どうやって動かすというんだ!」

 

「お忘れですかルギア様。私の元主、ヒルウァ様は元人間、それも聖神信仰者に通じておられました。私が人間の社会にも簡単に溶け込めていたのは、教会を基盤に立場を築いていたからです。少し思考を誘導して、聖女を王国へ向かわせれば、あの救世主ならば万事うまく運ぶでしょう」

 

 そう言って、綺麗に一礼をすると音もなく姿を消した。

 

「ジーンよ。お前、アインをどう見る?」

 

「……最も魔族らしい魔族かと。他に尽くすように見せて必ず己が勝っている、そんな男かと」

 

「……そうか」

 

 武力で成り上がったルギアは参謀としてジーンを重用していた。

 その参謀にここまで言わせるアインには、どうも一定以上の信を置くことができなかった。

 




二章後半、銀翼編完結です!
銀翼編は戦闘描写が多めでしたがどうだったでしょうか?
個人的には格好よく書けたと思っています!(自画自賛)

さて、次章三章はロティスの左腕と聖女、フィネレとマーズのダンジョンブレイクがテーマになってくる予定です。

更新をお待ちいただけると嬉しいです!

また、カクヨムの近況ノートにて各章のIFルートを限定公開していますので、ご興味がありましたらぜひ!

それでは、ここまで読んでいただきありがとうございます!
ぜひ、今後も救世主転生をよろしくお願いいたします!
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