救世主転生 ~死にたくなかったので、勇者覚醒イベントの攻略不能ボスを倒して勇者を救おうと思います!~   作:嵐山田

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第九話 驕りと焦り

 倒したハイコボルトの魔核を回収しに倒した場所へ近づく。

 

「これは……」

 

 そこにはクラス4相当であることを示す黄緑色の魔核が落ちていた。

 ……道理で手ごわかったわけだ。

 上級魔法が操れるほどの魔力量を有する俺の中位魔法はそこそこの威力があるはず。

 しかし、あいつは魔法耐性持ちの武器があったにしても、二度も俺の魔法を受けきって見せ、さらにまだ特訓中で不完全ではあるが圧縮した中位魔法でも倒し切ることができなかった。

 

「これでもう一匹ハイコボルトがいたら、本格的に危なかったかもな」

 

 それにしても、一階層の階層主がクラス4相当の魔物だったなんて……。

 たしか、ここを統べる伯爵ストイはクラス5程度ではなかったか?

 

 俺の知っている絶望勇者との違いに若干の不安を感じる。

 

「まあ、とりあえず今日はさっさと帰ろう。多分また強くなったしな!でも圧縮はもっと練習しないと」

 

 しっかり魔核を回収すると、念入りに身体強化魔法をかけ、気配を消してその場を後にすることにした。

 

 ◇◇◇

 

 ミリアはロティスを探して街中を歩き回っていた。

 

「おかしいわ……もしかしてロティス、一人で依頼《クエスト》に!?」

 

 その思考に至った瞬間、ミリアはものすごいスピードで走り出していた。

 

 コントラクターの死因第一位はソロでの依頼だ。

 ミリアほどの使い手になるとチームでの依頼の方が逆にやり辛くなったりすることもあるのだが、クラス3程度までのコントラクターで死ぬ者のほとんどは実力を過信し、報酬量に目がくらんだ結果ソロでギリギリの難易度の依頼を受注し死亡する。

 

「ロティスっ!だめ、あなたがいない世界じゃ私は――」

 

 

 ギルドに飛び込んだミリアは受付のカウンターに飛びつくと息を整える暇もなく声を上げた。

 

「今日、ロティスは来てませんか!?」

 

「ミ、ミリアさん!?どうしたんですかっ!一旦落ち着いて」

 

「いいからっ!ロティスは?来たの?」

 

 すると受付嬢からではなく、隣りの酒場に居たコントラクターがミリアの方へ駆け寄った。

 

「ロティスなら朝に何かの依頼を受けて森の方へ行ったぜ?」

 

「ほんと?それ間違いなくロティスだった?」

 

 自分より頭二つ分以上大きい男に掴みかかる勢いで質問するミリア。

 

「あ、ああ、あの銀色の髪は間違いなくロティスだったと思うぜ」

 

 銀髪、それは紛れもないロティスの特徴の一つ。

 それを聞いたミリアは圧倒的に体格で勝る大男も気圧されるほどの圧を放っていた。

 それほどまでにミリアは焦っていた。

 

「ミリアさん!ロティス君の受けた依頼が分かりましたよ!」

 

 ミリアの焦りように異常事態と感じたギルドの職員が今朝の受注記録を持って走ってくる。

 

「ロティス君の受注以来はオークの討伐ですね。でもこれならロティス君たちの実力なら問題ないのでは?」

 

「違うんですっ!今日、エモニちゃんは熱だして寝てて、ロティス一人なんですっ!」

 

 ミリアがそう言った瞬間、ギルド内が一気に静かになる。

 ここにいるもの全員が状況を察したようだ。

 

「私、探してきます!」

 

「あ、待ってください!そんな一人で探すなんて無茶ですよ!」

 

 ギルド職員の叫びもむなしく、ミリアは一人森へと飛び出していった。

 

◇◇◇

 

「ふう、さすがにクラス4相手は厳しかったな」

 

 もうすぐダンジョンゲートが見える位置までやっと戻って来ることができた。

 

 それにしても今回は良い経験になった。

 ダンジョン酔いの克服。

 クラス4相当の魔物との一騎打ち。

 そして何より、魔法耐性持ちの武器と早いうちに対面できたことが大きい。

 

 ああいう特殊効果は、初見で使われて対処が遅れるということが一番怖い。

 それを一騎打ちで、正面から戦って打ち砕くことができたのは大きな経験だ。

 これからの、特に俺を殺すイベントボス、魔将ヒルウァとの戦いまでまだ十分時間があるうちに理解できたことは俺の生存に大きく関わってくるだろう。

 

 ようやくゲートが見えてきた。

 

「今日はさすがに疲れたな。ミリアもエモニもいないし、帰ったらすぐに寝よう」

 

 入って来た時と同じ、白いモヤをくぐる。

 また視界がぐるぐると回り、俺は思わず目を閉じた。

 

「よし、ちゃんと帰ってこれた……な……」

 

 あれ……なんだか足元が……。

 はじめて入って戻って来たときより酷いゲート酔いが俺の身体を襲う。

 なぜだ、もう俺の身体はゲート酔いに適応しているはず。

 

 まずい、この状態でここで倒れでもしたら……。

 

 辺りはもうすでに魔法無しでは視界が得られないほど暗くなってきている。

 夜は魔物が活発になる時間だ。

 幸い、ダンジョンのゲート付近の魔物はほとんど狩りつくしたからゲートからの魔物は心配しなくても大丈夫だろうが、問題は森の魔物だ。

 

 ここは半径20mほどの更地。

 しっかり身を隠せる場所まで30mは歩かなければならない。

 

 ゲート酔いの原因は一体何なんだ……。

 意識を失いかけながら、そんなことを考える。

 

「――ィス!ロティスっ!」

 

 まさに今倒れ込む、といった瞬間、俺は柔らかい何かに抱き止められた。

 

「ロティス!大丈夫!?どうしたの?ねえ、ロティス!」

 

「……ミリア?どうして……?」

 

 俺は回転する視界に恩人で、大切な人の顔を見た。

 

「そう、私だよ!よかった、意識はあるのね。詳しいことは帰ってじっくり聞かせてもらうけど、とりあえず今は寝ていいよ」

 

「ご……めん」

 

「いいから、とりあえずお疲れ様」

 

 ミリアのその言葉で俺の精神力は限界を迎え、意識を手放した。

 意識を手放す瞬間懐かしい温かさが自分を包んでいくのを感じた。




魔核の色による強さの違い
弱→強
水、青緑、緑、黄緑、黄、橙、赤
現状確認されているのはこの7色。ここから基準クラスが測られる。
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