余談ですが、本作での貨幣価値は『1金貨=20銀貨、1銀貨=20銅貨』で行わせていただいております。
「お待たせしました、アインズ・ウール・ゴウン殿。私の泊まっている宿なら問題無いとのことでしたので、ご案内させていただきます」
彼女が村の中へ戻ってから、数分くらいは経っただろうか。
再びアインズの前に姿を現したヘーラの言葉に従い、彼らは閑散としているカルネ村へと足を踏み入れた。
つい先程兵士達の襲撃に遭ったばかりということもあって、カルネ村の状態は〈
外周付近の家々は扉や窓が全て無残に破壊され、室内は隠れ潜んでいるかもしれない村人を見つけるためか、タンスが倒されていたり机はひっくり返されていた。
だが村の中へと進んでいくうちに、そういった建物は目に見えて減っていく。
代わりにあるのは、例のハムスターによって殺された兵士達の亡骸。
ハムスターのことが相当恐ろしかったのか、兜の隙間から見える瞳は大きく見開かれている。
アインズが視線を横に向けると、指を組んで祈りを捧げながら死んでいったのであろう、頭を潰された兵士の死骸が映った。
(神に祈りを捧げるくらいなら、虐殺なんてしなきゃいいのに。…………でも、これをやったのってあのハムスターなんだよなー…………)
アンデッドとしての種族的特性からか、死体を見ても彼が恐怖や嫌悪を感じることはない。
だがそれを巨大なハムスターが行ったという、キュートとグロが正面衝突したかのような事実は、今もなおアインズの頭の中でグルグルと回っている。
あの瞬間受けた衝撃は、NPC達が意思を持って動き出した転移初日のそれにも匹敵するかもしれない。
(…………ハムスターのことについては一旦忘れよう。……それにしても『アンデッドは恐ろしい』という考え方は盲点だったな。道理で俺のことを聞いた村人達がやけに怯えていた訳だ)
脳内からハムスターを追い出した彼が振り返るのは、彼女と村人達が交わしていた会話の内容。
アインズはヘーラが村人達に話を付けると言ってこの場を去った後、何もせずにただ突っ立っていた訳ではない。
彼はヘーラが何か良からぬことを企んでいないかを確認するために、遠くで魔獣達と共に控えているアウラにスキルを使用させることで、彼女の会話を盗聴及び監視させていたのだ。
それにより判明したのは、この世界に於けるアンデッドが、『生者を憎み本能的に襲い掛かってくる恐ろしい存在』、一言で言ってしまえば『生命の敵』という認識のされ方をしているということ。
ユグドラシルで長い間使っていたアバターだからか、それともアンデッドとなったことで精神に何らかの変化があったからなのかは分からないが、アインズは自身の肉体に対して恐怖など微塵も感じていない。
だが人間どころかハムスターまでがアインズに対して怯えの感情を見せているともなれば、流石に何らかの対策を講じる必要があるだろう。
うっかりこの姿のまま町にでも出て、ナザリックと国との全面戦争が始まってしまったとなれば目も当てられない。
自分達の強さがどの程度なのかも分かっていない現状で、そんな事態はまっぴらごめんだ。
(今度この世界の存在と接触するときには、どうにかして体を隠す必要があるな。まあ、それでも邪悪な魔法詠唱者には見えるだろうけど)
そしてもう一つ分かったことがある。
それは目の前を歩くヘーラが恐らく一般的ではない、かなり特殊な視点の持ち主だということだ。
というのもアウラの報告によると、村人達やハムスターとは違い、ヘーラだけはアインズに対し恐怖の感情を抱いていないように見えたらしい。
それどころか彼女は、『アンデッドの中には、彼のように高い知性を備えた者も存在する。実際、私はそういうアンデッドと会ったことがある』という旨の発言をし、村人達を納得させていたのだという。
恐怖を抱いていないことに関しては然程不思議ではない。
彼女は村人達と違い、ちゃんとした武器や防具を持っているのだから、ある程度の戦闘経験があるのだろう。アンデッドと戦ったことだって、一度や二度ではない筈だ。
問題は彼女が村人達に話した、高い知性を備えたアンデッドのことについてである。
(村人達がその言葉に驚きを示していたことから推測するに、知性を持ったアンデッドというのは普通じゃないらしい。となると彼女の言っていることが本当だった場合、そのアンデッドは俺と同じユグドラシルプレイヤーの可能性も少しだけある。…………これはもしかして、初手からアタリを引いたか?)
無論、今彼女が話していたことが全て、村人達のことを丸め込む為の嘘という可能性もある。
だが『ナザリックだけがこの世界に転移してきた』というのはあまりにも出来過ぎている話。
自分達以外にもユグドラシルプレイヤーが転移しているという可能性は、慎重派のアインズにとって間違い無く考慮すべき案件だろう。
(…………もしかしたら、ギルメンの皆もこの世界に────)
ふと彼の脳内によぎるのは、かつて共に過ごした
共に高難易度ダンジョンを攻略し、馬鹿みたいに排出率の低いドロップアイテムのために奔走し、数多のPKプレイヤーを返り討ちにした。
それは現実世界で人との関りを持っていなかった彼にとって、何よりも輝かしく楽しかった思い出。
もしそんな彼らと再び会えたのなら────
「どうされましたか、アインズ様?」
「いや、少し考え事をしていただけだ。他意はない」
「そうでしたか。もしあの女がアインズ様の気分を害するようでしたら、すぐ私にお申し付けくださいね?」
「お、おう…………」
いつの間にかアインズの傍に寄っていたアルベドが、やけに真剣な口調で身をすり寄らせてくる。
全身鎧の隙間から見える彼女の瞳が、人型の存在として有り得ない程の大きさに見開かれている気がするが、気のせいだ。
うん、きっと気のせい。
そうして閑散とした村を進むこと数十秒、一行はヘーラの泊まっている宿へと到着した。
テーブルと椅子くらいしか置かれていないそこは、豪華絢爛なナザリックとは比べ物にならない貧相な様相。
だからだろうか。宿に入った瞬間、アルベドが不快感から一瞬その身を震わせた。
殺意とまではいかないものの、人が浴びれば硬直してしまう程度の重い気配が、宿屋内部に充満していく。
だがヘーラとの取引を前に緊張していたアインズは彼女の気配に気付かず、またヘーラもあまり気にしていないのか何も言わずに放置している。
しかし彼女の傍に控え、その上気配の察知なども可能な職業を習得しているセバスは、アルベドが内心ブチ切れているということに内心冷や汗を流していた。
彼はナザリックに属する者の中では珍しく、善悪の指標であるカルマ値がプラスに偏っている。
その上、設定をあまり細かく書き込まれていなかった彼は、その思考回路が創造主たる“たっち・みー”によく似ていた。
故にハムスターなる獣を扱って
そんな彼がアルベドに対し、『何かのきっかけで彼女の感情が爆発し、取引そのものを台無しにしてしまうのでは?』と心配するのは、至極当然のことであろう。
「さて、アインズ・ウール・ゴウン殿は情報を求めているということでしたが、その前に幾つか確認しておきたいことがあります」
「ほう…………それは、私のことに関してですかな?」
「ええ。まず先程お見せしていただいた指輪に関してですが、あれは一体どこで手に入れたのですか?」
(ん? こんな指輪の入手場所なんて聞いてどうするつもりだ? これはダンジョンのモンスターがドロップしたアイテム……ああでも、ユグドラシルのダンジョンで手に入れたって言うのは、プレイヤーがいるかもしれない以上少しリスクがある…………いや、俺がアンデッドだから、どこかで人間を襲っていないかの確認をしたいってことか?)
アインズは質問の意図を探ろうとし、幾つかの可能性を脳内に浮かべる。
だが彼は元々一介のサラリーマンでしかなく、相手の情報を話術で引き出すなどという芸当はあまり得意ではない。
「…………これは、昔ある国で売られていたものです。今はいない仲間の為に買ったんですよ」
故に彼は彼女に対して、当たり触りの無い回答をすることにした。
これ以上沈黙を続ければ、不要な誤解を招くだろうと考えたためだ。
上手く答えられたかとヘーラの顔色を窺ってみれば、そこに浮かんでいたのはどこか優し気な笑み。
どうやら彼女の気に入る答えを提示できたらしい。
「ふむ…………アインズ・ウール・ゴウン殿は、そのお仲間のことをとても大切にされていたのですね」
「……? ええ、まあ…………。それで、その指輪を貴方に場合、どの程度の情報をいただけるのでしょうか? この辺りにどんな国があるのかだけでも、教えていただけると嬉しいのですが」
「そうですね……………………単刀直入に言ってしまうと、この指輪を相応しい人物に渡せば、国家機密情報くらいは手に入れられると思います。金貨に換算するなら、1000万枚は妥当でしょう」
…………ヘーラの口から出てきた言葉を前に、アインズの思考は完全に停止した。
幾つかの言葉が、意味の籠っていない音声だけの形で彼の脳内でグルグルと回る。
そうしている内に、精神抑圧が働きアインズの意識は現実へと強引に引き戻され────
(────はぁ!? こ、国家機密情報!!? 何でそんなものが突然出てきた!? ていうか金貨1000万枚ってなんだよ!? ユグドラシルの金貨で考えても絶対そんな値段はしないぞ!!?)
全く予想していなかった彼女の言葉を前に、無き心臓が飛び出る感覚を覚える。
きっと彼の種族が人間であったのなら、驚きのあまり椅子から転げ落ちていたことだろう。
だが後ろでNPC達が見ている手前、ここで取り乱し支配者として相応しくない姿を晒すことは許されない。
幸いなことに、骸骨としての肉体に加え何重もの精神抑圧が作用してくれたことで、彼の動揺がヘーラやNPC達に気付かれるという事態にはならずに済んでいる。
それにここで彼女に侮られれば、取引が不利な方向に進んでいってしまう可能性だってあるのだ。
アインズは心の中で深呼吸し思考を整えると、『ここまでのことが全て想定済みだったのだよ』と思わせるような態度で、両手を組みながら口を開いた。
「ほう、随分な値段で買い取っていただけるのですね」
「勿論です。……アインズ・ウール・ゴウン殿の言葉が嘘ではなく本当であるのならば、この指輪には第七位階の魔法が込められているのですよね?」
「下等生物如きがアインズ様の言葉を疑う────」
「よせ、アルベド。……ヘーラ殿の言う通り、この指輪には第七位階魔法〈
魔法の中には〈
「…………取引の前に一つ質問させてほしいのですが、よろしいでしょうか?」
「なんでしょう?」
「……アインズ・ウール・ゴウン殿は、第何位階の魔法まで使用することができるのですか?」
瞬間、宿屋に旋風が吹き荒れる。
その理由は単純明快。アルベドが右手に握っていた3Fを、常人であれば知覚不可能な速度で振り上げたのだ。
先程まで後ろに控えていたセバスも、いつの間にかアインズの傍に寄りいつでも彼の身を守れるように構えていた。
きっとアインズが右手を上げ止めさせなければ、次の瞬間にはアルベドの3Fが振り下ろされ、衝撃で宿屋自体が粉々に吹き飛んでいたことだろう。
普通に考えれば、取引相手に刃物を向けるなどあってはならないことだ。
しかしアインズはアルベドやセバスに苦言を呈することなく、瞳の代わりに宿った眼光に警戒の色を滲ませ、真っ直ぐにヘーラを見つめていた。
それも当然のことだろう。
相手がどの程度の魔法を使えるのかが分かるだけで、相手のレベルやクラス構成についてある程度の予測は立てられる。
そしてレベルやクラスが予測できるのなら、それだけ戦闘は有利に進められる。
言ってしまえばこの質問は、最早戦闘行為に等しいのだ。
「…………ヘーラ殿、質問の意図を聞かせてもらってもよろしいでしょうか?」
「勿論です。……まず前提として、
「…………そうですか」
ここにきてアインズは、何故ヘーラが交渉決裂どころか、村を巻き込んだ戦闘が開始される可能性を知っていてなお、この質問を投げかけてきたのかを理解した。
アインズが見せた指輪に込められた魔法は、この世界基準ではまず有り得ない領域のもの。
だがそれはあくまでも“この世界”に限った話。
もしそれの作成場所が別の世界であるならば作成は可能。
そして彼女は、その別世界のことを知っている様子。
であるならば、彼女が言いたいことにも何となく推測が付いてくる。
つまり彼女が聞きたいのは────
「ですがこの前提には一つだけ例外があります。この世界には約百年周期で、異世界より神が降臨なされると極少人数の間で語り継がれているのです。…………質問を変えましょう。貴方は『プレイヤー』ですか?」
……………………
「…………あ~、疲れた」
ヘーラとの取引を無事に終えたアインズは、
その後玉座の間にて『アインズ・ウール・ゴウンを不変の伝説とせよ』という指針を掲げ終えた彼は今、自室のベッドに寝転がっていた。
付いてこようとするメイドには、『これから今後の綿密な計画を立てるから、アルベドが来るまでは部屋の外で待機せよ』と頑張って説得したので、現在アインズの自室には彼しかいない。
ここまでほぼずっと誰かを供としていた彼にとって、今は一人で寛げる貴重な時間。
なればこそ、支配者としては相応しくない溜息が出てしまうというのも仕方が無いことだ。
(さてと、どこまで読んだんだっけか)
アインズがインベントリから取り出したのは、数百ページはあろうかという分厚い資料の束。
適当なページを開いてみれば、そこにはある国に関しての様々な情報が
資料に刻まれた字は少々汚いが、内容を読み取れない程ではない。
それに本来であれば日本語なんて読み書きしない彼女が、いつか来たるプレイヤーの為にわざわざ日本語を使ってくれているのだから、それにケチを付けるのは良くないだろう。
(それにしても、まさかこんなに上手く話が進むとは…………)
アダマンタイト級冒険者ヘーラ…………いや、人でありながらアンデッドとなった特異な少女、絶死絶命ことアンティリーネとアインズが行った会談は、結果から言ってしまえばナザリックに大きな利益をもたらすものであった。
何せナザリックは金貨やアイテムといった物理的な対価を一切支払うことなく、彼女からこの世界についての情報を大量に得ることができたのだから。
無論彼女が偽の情報を掴まされていたり、もしくはこちらにとって都合の悪い情報を流していない可能性もあるため、ナザリックの方でも情報収集を行い、その正誤確認を取らなければ全面的に信用することはできない。
だがそれでも、何もないところから情報を集めていくよりかは、ある程度情報が揃っている上で、それを精査していく方が何倍も楽なことに変わりはないのである。
(っと、あんまりのんびりしている暇もないな。アルベドとデミウルゴスが来る前に、俺もこれをなるべく読み込んでおかないと)
あまりにも大きく豪華絢爛なベッドから起き上がったアインズは、辞書のような資料をパラパラと捲りながら、カルネ村で行われたアンティリーネとの会談を思い出す。
彼女の問いに対してアインズは、正直にプレイヤーだと宣言した。
迂闊と言われればそうなのかもしれないが、彼は『どう回答するのが正解なのか分からないけど、わざわざ嘘を付いてまで濁したら却って無用の疑いを掛けられるかもしれないし、それなら正直に答えた方が後々面倒にならないかな』と考えたのだ。
そんな彼の回答を得たヘーラは、アインズに一つの取引を持ちかける。
その内容は『私達に対して、貴方の持つ力である程度の保護を約束してほしい。その対価として、私は貴方達にできる限りの協力を約束する』というもの。
正直なところ、アインズはこの取引を受けるかどうかについて、半分は賛成だがもう半分は反対といった考えであった。
賛成すれば、アインズはこの世界について調査するための足掛かりを得られる。
反対すれば、アインズは未知なる外部との接触というリスクを最小限に抑えられる。
双方に存在するメリットとデメリットは、どちらも転移したばかりの彼らにとって、決して無視できない重大なもの。
だからこそアインズは、ヘーラに『どうして保護を欲しているのか』と聞いた。
もし彼女が何者かにその命を狙われていたりして、それから逃れるために保護を欲しているのなら、この取引を即座に拒否しなければないからだ。
しかしヘーラが口にした答えは、ひどく単純なもの。
同時にその回答は、彼女がアインズの信頼をある程度得られるものでもあった。
(『もう家族を失いたくないから』か…………)
そう言い放った彼女は、不要な疑いは持たれたくないという理由で“母親”を呼んだ。
突如として部屋に現れたそれは、死霊系に特化した魔法詠唱者であるアインズですら見たことのない、この世界特有と思われるアンデッド。
後頭部から生えた無数の触手に、肉のほぼ残っていない細身の肉体。
言葉すらまともに発せていないそれに対し、ここまでほぼ表情を変えていなかったヘーラは、初めて外見年齢相応の、少女らしい可愛げな表情を浮かべていた。
明らかに人ではないそれに甘えるその姿を見て、きっと普通の人間ならば狂気や気味悪さを感じるのだろう。
だがアインズはその光景に対し、不快感を一切抱けなかった。
「同情、なのかなぁ…………」
アインズの脳内に浮かぶのは、ユグドラシルで最高の仲間達と出会うよりも前の記憶。
愛する息子の為に過度な労働を続け、最後にはその命すら削り切ってしまった、優しくて愚かだった母親の記憶。
彼女はこの話題についてあまり触れられたくなかったようだったし、アインズも他人の家庭内事情に興味を持っている場合ではないため、これ以上踏み入ることはしなかった。
それでもアインズは、少なくとも『家族や仲間に対する想い』という点に於いて、彼女は信頼できると思うのだった。
……………………
「…………ふぅ、緊張した」
アインズ様がカルネ村を訪れてから数十分、取引を終えた彼らが帰還するのを見送った私は思わず息を付く。
いくら彼の中身が一般人なのだと知っていても、その振る舞いはナザリックの支配者として相応しい重圧を伴っている。
それに彼の後ろには、彼のことを洗脳してでも自分の物にしようとする
いくら戦闘慣れしている私でも、あれに細心の注意を払いながら情報を提供するというのは、正直なところ並の戦闘訓練よりも緊張した。
でもまあ、結果良ければ全て良し。
アインズ様一行がさっさと帰ってしまったから、法国との戦いによる非敵対の証明はできなかったけど、最低限の成果…………協力関係の構築はできたから問題はないわ。
「ヘーラ様! ご無事でしたか!?」
「姫!! 何か酷いことをされたりはしなかったでござるか!?」
一行の姿が見えなくなったからか、村の端に隠れてもらっていたハムスケや村人達が出てきて、私のことをとても心配してくれた。
ハムスケが大きな顔を近付けて、異常がないかと私の匂いを嗅いでいる。ちょっとくすぐったい。
初めて見たときは立派な魔獣だと思ったけど、しばらく一緒に過ごしていると、確かに可愛く見えてくる。
アインズ様が元居た世界だと、小さなハムスケがペットとして売られていたらしいけど、何となく納得できる気がするわ。
「何もされてないわ。あのアンデッドはとても知的な方だったし、この村に来た理由も、ちょっと道に迷っていただけだったみたいよ」
「本当でござるか? 洗脳とかされてないでござるか?」
「されてないわ。それに、精神作用系への対策はちゃんとしてるし」
そんな彼らに対し、私はアインズ様の評価を違和感のない程度に上げられるような返答をする。
…………実のところ、アインズ様を村に入れていいか村人と相談し始めたくらいから、妙な視線を感じているのよね。
大方ニグレドの監視か、或いはアウラのスキルなんでしょうけど。
まあどちらにせよ、ナザリックの者による監視なのは間違い無い。
だからこそ、村人達が彼らの不興を買わないように誘導しなければならないのだ。
「さて、お客さんも帰っちゃったことだし、夜が来る前に村の復興といきましょう。ハムスケは死体処理、私はトブの大森林で木を切ってくるから、皆は少し待っててね」
死体は後でこっそりグリムに引き渡して、スキルの餌にでもしてもらおう。
鎧は…………溶かして売れば、村の復興費用くらいにはなるのかしら?
アンティリーネ
アインズと協力関係を築くという、最大の関門を何とか乗り越えた。
ちなみに彼女が用意していた日本語資料には、各国の情勢とか魔法のこととか、まあとにかく色んなことが書かれている。
勿論、表沙汰にできないようなことも書いてある。
アインズ
アンティリーネからとんでもない資料を貰った。既に複製済み。
アンティリーネのことは完全に信用しきっている訳ではないが、少なくとも彼女の母親に害をなさなければ味方でいてくれるのだろうなという確信はある。
アルベド
簡単に起動する爆弾。しかもかなり賢い。
アンティリーネをどこかのタイミングで殺そうと思っていたが、アインズが直々に害さないと宣言してしまったため計画が頓挫した。
ただしアンティリーネへの感情は前回から既に変化しており、アインズと共にナザリックへと帰還する頃には彼女に対し『戦闘能力を除けば敵にはなり得ない。上手く扱えばアインズ様の寵愛を受けるための良い道具になる』と思っている。
セバス
ナザリックの家令兼執事。アンティリーネと戦わずに済んでホッとしている。
アウラ
遠くからアンティリーネのことを監視していた。
ハムスケに対しては『良い皮だなぁ』くらいの感情しか抱かなかったが、少しの間だけ姿を現したグリムには、外身と中身が違うかのような何とも言えない違和感を抱いた。
ちなみに、本来であれば盗聴や監視はアウラに任せなくともアインズの魔法で行える。
今回そうしなかったのは、魔法を行使し無防備な姿を晒す訳にはいかなかったことと、アンティリーネの気配察知が何に対し発動するのかの実験が目的だったから。
カルネ村の村人達
アンティリーネが無事に戻ってきてくれてとても安心している。
本作の彼らはアンティリーネのことを、原作のアインズくらい信用しているので、万が一の場合は囮になってでもアンティリーネのことを逃がそうとしていた。
フールーダ
しれっと第八位階まで扱えるようになったが、本作ではこの辺りが限界。
クラス構成は魔力系魔法詠唱者職が中心ではあるものの、精神系や信仰系の魔法も最低限扱える。
ハムスケ
可愛い。