道外れの絶死絶命   作:池の鴨

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今回はおまけとして、原作と似たような展開になったので丸々カットされた、アゼルリシア山脈での出来事が後書きにて軽く語られています。

それと全く関係無い話ではありますが、アンティリーネが戦争を引き受けたことで、百年の間に周辺国家からエルフの奴隷という存在は消滅しています。

この場合、イミーナの種族ってどうなるんですかね?
彼女の父親が自主的に来たエルフか、元奴隷エルフかで変わってきそうなものですが…………


この世界の死の支配者(オーバーロード)

 ここはスレイン法国より南西、エイヴァーシャー大森林に建国された国家、アンティール共和国の端にある訓練場。

 

 本来であれば、多くのエルフ達がここで魔法や武器の扱いを学び、何故か攻めてくる法国兵(エルフ達は法国とエルフ国の戦争理由を一切知らされていない)に立ち向かうべく、必死に訓練を積むのだろう。

 

 だがアンティール共和国において、戦闘訓練というのはあまり重要視されておらず、それよりも新たなる魔法の開発や、マジックアイテム作りの研究に力が入れられている。

 

 かれこれ百年以上に渡り、人類国家の中ではトップクラスの軍事力を誇る法国と戦争を続けていながら、何故エルフ達は兵士としての訓練を積まないのか。

 

 …………それはこの国が、かのエルフ王さえも凌駕する最強の守り神によって守護されているということを、全てのエルフ達が理解しているからだ。

 

────〈可能性超知覚〉、〈疾風超走破〉、〈能力超向上〉、〈絶腕絶撃〉、〈六空連斬〉、〈六空連斬〉、〈六空連斬〉、〈六空連斬〉、〈六空連斬〉、〈六空連斬〉!

 

 この国が持つエルフツリーの技術と、グリムが扱う数多の防御魔法を融合させることで建てられ、今もなお改良工事が続けられている訓練場の内部。

 

 床が爆発する程の勢いで飛び上がり空中で半回転、逆さまの状態で天井へと着地したエインヘリヤルが、流れるように様々な武技を発動させていく。

 

 第六感を研ぎ澄まし、本能的に相手の行動を予測する〈可能性超知覚〉。

 移動速度と俊敏性を人外の領域にまで上昇させる〈疾風超走破〉。

 肉体能力を一時的ではあるものの、数倍にまで上昇させる〈能力向上〉の上位武技〈能力超向上〉。

 全てのダメージを、壊滅的なまでに向上させるオリジナル武技〈絶腕絶撃〉。

 そして、かの王国戦士長が持つ大技の〈空斬〉バージョンである〈六空連斬〉。

 

 英雄級を超えた者達にしか許されない、常人離れした武技を計十個同時に発動させたエインヘリヤル。

 

 彼女はその顔に一切の疲労を浮かべることなく天井を蹴り飛ばし、六回分の〈六空連斬〉により放たれた三十六発と共に訓練相手…………アンティール共和国の守り神たるアンティリーネへと襲い掛かる。

 

〈可能性超知覚〉、〈疾風超走破〉、〈能力超向上〉、〈絶対回避〉!

 

 対するアンティリーネはと言うと、この程度何ら問題は無いといった様子で幾つかの武技を発動させ、こちらもエインヘリヤルの方へと大きく一歩踏み出した。

 

 迫る刃は全て、アダマンタイトすら断ち切ってしまう鋭利さを持つ。

 それこそ圧倒的な力を持つ100レベルのプレイヤーや、始原の魔法を扱える真なる竜王でも無ければ、少し触れただけでサイコロステーキになってしまうだろう。

 

 しかし、音速を超える速度で獲物を囲うように飛来するそれは、アンティリーネに一発も当たることなく後方へと飛んでいった。

 

 基礎的な肉体強化の武技に加え彼女が発動したのは、これまた自力で編み出したオリジナル武技。

 

 目を瞑って戦闘訓練を繰り返すうちに得た、半径10m以内の状況を完全に把握する〈領域〉の派生武技〈空間把握〉。

 そして〈可能性超知覚〉と〈超回避〉を同時に発動し続けることで生み出した、脳内で把握している攻撃全ての軌道を読み切り避けることを可能とする〈可能性超回避〉。

 

 これら二つの武技を併用することで編み出した複合武技、全方位から迫る攻撃を最適な形で避けるという効果を持つ〈絶対回避〉は、集団戦に持ち込まれた際、最低限の負傷で逃げられるようにという考えの基作られた、対ナザリック用武技の一つである。

 

〈絶腕絶撃〉、〈超斬撃〉!

──〈超斬撃〉、〈即応反射〉!!

 

 敵を見失った三十六の鋭刃は、思うがままの挙動を描いて厚い壁や床をズタズタに引き裂き、一瞬のうちに訓練場を荒れ果てた状態へと変貌させる。

 

 しかしここは、尋常ならざる暴れ様で戦う彼女の為だけに作られた特別な訓練場。

 グリムのスキルや優秀なエルフの魔法詠唱者達によって、自己再生能力を極限にまで高められたエルフツリーによって形成されている訓練場は、刻まれた傷を一秒も掛からぬ間に完治させてみせた。

 

 が、次の瞬間には新たな傷が訓練場の壁に刻まれる。

 

 刃と共に迫るエインヘリヤルの刺突を〈絶対回避〉により難無く避けたアンティリーネは、即座に攻撃用の武技を発動させ反撃を加えようとした。

 

 しかしその攻撃を、敢えて同じ武技により相殺したエインヘリヤルは、大鎌に注意を向けているアンティリーネの腹部に向けて、高すぎる身体能力と勢いに任せただけの強力な蹴りをかましたのだ。

 

「ぐうっ!?」

 

 苦悶の声を上げ吹き飛んだアンティリーネは、勢いを殺しきれずに壁へと激突。

 どこぞの岩盤を思わせる形状のクレーター中央にて、力なく項垂れている。

 

 そんな彼女の状態など気にせず、エインヘリヤルは次の一手を考え実行に移した。

 

 原作ではマーレの〈小災厄(ぷちカタストロフ)〉ですら削り切れなかった彼女のHPを、この程度の物理ダメージで削り切れる訳がない。

 

 今項垂れているように見えるのだって、エインヘリヤル以外にはまず知覚できないであろう刹那の出来事。

 もしここで勝利を確信しようものなら、コンマ一秒も掛からずに起き上がったアンティリーネによる、手痛い反撃を食らうことになるのだろう。

 

 だがそれで十分。

 エインヘリヤルにとってコンマ一秒にも満たない一瞬というのは、それこそ戦況をひっくり返せる程に大きな攻撃チャンスなのだ。

 

 アンティリーネへと向かって疾走したエインヘリヤルは、いつ彼女が動き出しても対応できるように、その肉体を瞬時に観察する。

 

 彼女の手には、まだ力が入っていない。

 

 距離は眼前。

 もし彼女が最速で大鎌を振るったとしても、エインヘリヤルの一撃には間に合わない。

 

 彼女が全力で回避に徹するのならばそれもよし。

 いくら〈絶対回避〉を発動させているとしても、この体勢からの回避にはそれなりの隙が生まれる。

 

 どっちに転ぼうとも、自身が優勢であることに変わりはない。

 

 そう判断したエインヘリヤルは、最大火力の攻撃で一気にトドメを刺そうとし────

 

〈流水加速〉、〈絶命斬────っ!?

 

 振り被られた大鎌がアンティリーネへと触れ肉体を切り裂く寸前、彼女は自身の武器を手放した。

 

 生命線である筈の武器を手放すという凶行を目にしたエインヘリヤルの意識が、手放された武器に向いてしまうというのは、生物として当たり前の事。

 それは先程、大鎌同士のぶつかり合いを餌にして、アンティリーネに蹴りをお見舞いした彼女もよく理解している。

 

 しまった、と思ったときにはもう遅い。

 

 自身から意識が逸れたと確認したアンティリーネは、程よく鍛えられた四肢を思いっ切り壁に叩き付けた反動により急加速。

 

 一瞬無防備な姿を晒したエインヘリヤルの腹部へと、お返しとばかりに強烈な蹴りをめり込ませた。

 

────ッ!!

 

 不意の一撃というのは、威力はどうあれ形勢を十分に逆転させうるもの。

 このままではペースを握られると焦ったエインヘリヤルは、敢えて体勢を整えようとせず、吹き飛ばされることでアンティリーネから距離を取るという選択をした。

 

 無論、彼女はすぐにでも先程のエインヘリヤルみたく、大鎌を手に持ち疾走してくる筈だ。

 しかし壁際で蹴り飛ばされたという位置関係の問題上、エインヘリヤルがもう片側の壁に激突するという事態にはなり得ない。

 

 そこまで思考したエインヘリヤルは気付く。

 …………アンティリーネの姿がどこにもないのだ。

 

 訓練場は自身の傷を直ぐに癒すため、木屑や土煙が舞い上がることはまずない。

 つまり、そういう類のものに身を潜め接近するという戦法は不可能。

 

 エインヘリヤルの脳内に浮かぶのは困惑の二文字。

 

 だが焦りは禁物。

 訓練中である以上、相手が逃げ出す事は無い。ならば冷静に〈絶対回避〉を発動させれば────

 

「遅い」

 

────ッ!?

 

 死角から響くその声に、エインヘリヤルの肉体は僅かだが驚き、ほんの少しの隙を晒す。

 

 不味いと感じながらも、〈即応反射〉により体勢を立て直した彼女は、同時に〈絶対回避〉を発動させアンティリーネを捕捉しようとした。

 

 …………予想通りというべきか、アンティリーネは既にエインヘリヤルの真後ろ。

 いつの間にか握られていた大鎌は、驚く彼女の肉体を今すぐにでも切り裂かんと、その鋭い刃を煌めかせている。

 

 エインヘリヤルは思考する。

 彼女はいつの間に死角へと回り込んでいたのか。

 

 答えは簡単。

 エインヘリヤルが吹き飛ばされると同時に、アンティリーネはそれ以上の速度でエインヘリヤルの背後へと移動。急ブレーキにより崩れた体勢を〈即応反射〉で無理矢理起こし、同時に大鎌を振るったのだろう。

 

 ここまで考えたエインヘリヤルは気付く。

 自身が焦っていたということを、アンティリーネはきっと見抜いていたのだと。

 

 訓練開始から早半時間。

 これまで一切動かなかった戦況が傾きかけたとなれば、勝利という餌に釣られた敵の行動は単調になる。

 そしてその傾きを、思わぬ反撃によりひっくり返されそうになれば、どうにか心を落ち着かせようと行動してしまう。

 

 アンティリーネはその思考を予測し、武器を振るうことや〈絶対回避〉による回避行動を一切考えていない、速度に全振りした急接近を決行した。

 もし相手が無理矢理体勢を整えていれば、武器を振るうどころか躱すこともできずに攻撃を食らってしまうという、大きなリスクを背負いながら。

 

────〈流水加速〉!!

────〈流水加速〉!!

 

 次の攻撃は必ず避けろ。

 さもなくば確実に死ぬぞと、〈可能性超知覚〉により研ぎ澄まされた第六感が告げている。

 

 エインヘリヤルは追加で武技…………今の彼女が最大出力で扱えば、一時的に十倍近くの俊敏性を得られる〈流水加速〉を発動したが、それは必殺を放とうとしているアンティリーネだって同じこと。

 

 さっきとはまるで逆の状況だ。

 

 すでにその一撃は放たれる寸前。

 もし今からエインヘリヤルが最速で大鎌を振るったとしても、アンティリーネの一撃は大鎌ごと彼女を切り伏せるだろう。

 

 エインヘリヤルが全力で回避に徹したとしても、彼女にとっては問題になり得ない。

 いくら〈絶対回避〉を発動させているとはいえ、眼前で振られる音速を超えし攻撃を無傷で乗り切るともなれば、その後の行動を捨てた全力の回避が必要とされる。

 

 後者を選択するしか、生き残る道はない。

 その後に手痛い連撃を食らってしまうということは、最早変えようのない決定事項だ。

 

 ならばここでダメージを食らうことはもう仕方が無いとして、その後はどう反撃に出るべきか、そうエインヘリヤルが考えていた時だった。

 

────ゾクリ

 

──ッッ!?

 

 それは先程声を掛けられたときとはレベルの違う、本来アンティリーネから生み出されたエインヘリヤルが、決して感じる筈のない過度な恐怖。

 

 背筋が凍るような感覚を前に、エインヘリヤルは半ば本能的に足の動きを止める。

 

 これにて勝敗は決した。

 全身を強張らせてしまったエインヘリヤルは、これから何をしようにも一から行動を組み立てなければならない。

 

 そんな余裕など、振られたアンティリーネの一撃を前にしてある訳がない。

 コンマ一秒にも満たないその隙は、彼女達にとって余りにも大きなものなのだ。

 

 だがエインヘリヤルは、恐怖を抱いたことに疑問は持たなかった。

 彼女は主人から与えられし命令…………全力で主人を殺せというそれを実行するべく、間に合わないと知りながらも〈即応反射〉を発動し全力で回避に努める。

 

 …………実のところ、エインヘリヤルが恐怖を抱く寸前まで、彼女達は武技以外の技術、つまりはスキルや魔法を一切発動させずに戦っていた。

 

 その理由はいくつかあるが、一番に挙げられるのはエインヘリヤルに課せられた制約にある。

 

 〈ワルキューレ〉のクラススキル、〈死せる勇者の魂(エインヘリヤル)〉は自分を増やし、なおかつ指示した通りに自動で戦ってくれるという強力なスキルだ。

 しかしその代償として、生み出された彼らは魔法やスキルを十分に使用できない。

 

 だからこそアンティリーネもここまで、スキルや魔法を使用せずに戦ってきた。

 しかし今、彼女はエインヘリヤルに向けてある魔法を使用し、抗えぬ恐怖によってその動きを強引に鈍らせたのだ。

 

 彼女がルールを破ってまでトドメを刺しに来た理由はたった一つ。

 要するにこれは、訓練終了の合図なのだろう。

 

────〈絶命斬刺〉!!

 

 エインヘリヤルへと向けて繰り出されたそれは、戦闘の天才であるアンティリーネが、習得するのに十年以上を費やした最強の武技。

 

 魔法、スキル、武技による防御どころか、刺突や斬撃に対する完全耐性すら突破する一撃は、〈ワールド・チャンピオン〉が扱う最強スキル〈次元断切(ワールドブレイク)〉には及ばぬものの、〈魔法最強化(マキシマイズマジック)〉により威力を高められた〈現断(リアリティ・スラッシュ)〉を凌駕する。

 

 決着は一瞬。

 アンティリーネの大鎌は、エインヘリヤルの構えた大鎌ごと彼女を真っ二つに切り伏せた。

 

 あまりの破壊力を前に空間は裂け、瞳に映る風景が一瞬歪む。

 発生した風圧は不可視の刃となって、訓練場に深さ10mはあるであろう溝を刻みこんだ。

 

 防御の無効化が付与されていないただの余波だけで、第十位階魔法にも匹敵する防御機能と再生能力が、何十にも掛けられた訓練場は崩壊寸前の様相へと早変わり。

 

 それを、外見だけならば成人にも満たないであろう少女が放ったというのは、何かの冗談だと決めつけた方がまだ納得できる。

 

 …………だが、これだけは言っておこう。

 

 原作時点での戦闘能力を優に超えた、神人という言葉すら生温い今の彼女がナザリックと敵対した場合、その末路は原作に於けるワーカー達以上の悍ましいものになるだけだ。

 

 結局のところ、一個人でしかない彼女が軍たるナザリックを打倒するなど、前提から間違っている話なのである。

 

「フシュ──」

「ん、ありがとう。さて、それじゃあ私は一度エ・ランテルに戻るから、グリムは先にカルネ村まで行っててね」

 

 故に彼女は、その知らせを受け動き出す。

 

 グリムから水の注がれたグラスをアンティリーネは受け取ると、それを傾け中身を一気に呷る。

 そしてすぐさまグリムの〈上位転移(グレーター・テレポーテーション)〉を利用し、彼女はエ・ランテルへと戻っていく。

 

 その直前、アンティリーネの顔に浮かんでいたのは、不安と期待の入り混じった何とも言えない表情であった。

 

 

……………………

 

 

 エ・ランテルに戻った私は、冒険者組合へと顔を出し、自身への依頼が届いていないことを確認。

 そして受付嬢に『暫くカルネ村で過ごすわ』とだけ言っておき、直ぐにエ・ランテル北東に位置する開拓村、カルネ村へと向けて出立した。

 

 エ・ランテルからカルネ村までの距離は、徒歩でも半日で到着できる程度。

 駆け足くらいの速度で街道を進んでいけば、昼頃に出立しても日が沈むまでには辿り着ける。

 

 全身鎧の騎士が何もない平坦な街道を、馬にも乗らず駆け足で進んでいくというのは、何とも言えないシュールさを感じさせる光景だけど、馬を借りるよりもこっちの方が楽なのよね。

 

 それに今回は緊急の用事。

 馬を借りるための時間だって惜しい。

 

「お久しぶりです、ヘーラ様」

「久しぶり、村長さん。最近の調子はどう?」

「相変わらずです。まあ、ハムスケさんがいる分人手には困りませんけど」

 

 ハムスケ、またの名を『森の賢王』。

 それはエ・ランテル唯一にして、リ・エスティーゼ王国三番目のアダマンタイト級冒険者となった私、“純白の閃光”ことヘーラが達成した偉業の一つに挙げられる大魔獣だ。

 

 エ・ランテルの吟遊詩人(バード)達は当時の状況を『血に飢えた大魔獣を、英雄が屈服させた。魔獣は狂気から目覚め、恩人たる英雄の騎獣となった』という感じで歌っているらしいけど、ことの真相はそんな感動的なものではない。

 

 そもそもの話、森の奥でのんびりと寝ている筈の彼女が、突然薬草採取中のンフィーレアと私に襲い掛かってきた理由は、原作にてアウラの使用したスキルと似た、恐怖効果のある魔法をグリムが使用し誘導したから。

 

 それに彼女を敢えて殺さなかったのも、今後の活動に必要だったからというだけのことであり、狂気に犯されていたから救いだしたなどという、崇高な理由など一切存在しない。

 

 要するにハムスケ関連のストーリーは、全て私の名声と今後の手札を得るために行った茶番劇。原作同様の所謂『マッチポンプ』という訳ね。

 

 それをここまでそれっぽい話に仕立て上げちゃうんだから、吟遊詩人の想像力というのは凄まじいの一言に尽きるわ。

 

「それは良かった。ところで、そのハムスケは今どこに?」

「多分、お昼寝中だと思いますよ」

 

 そういう訳で、私の騎獣となったハムスケには現在、カルネ村の守護獣という立ち位置になってもらっている。

 

 その主な理由は、トブの大森林に於ける生態系バランスの維持。

 ハムスケはあれでもトブの大森林を支配している強大なモンスターの一匹。消えればその縄張りにモンスターが流れ込み、付近の村に危険が及ぶ可能性があるのだ。

 

 ちなみにこの意見の発案者は、私と護衛の契約を結んでいるンフィーレア・バレアレ。

 カルネ村出身のある村娘に恋心を抱く彼ならそう言うと予測はできていたし、間違ったことは何も言っていないので私もその意見に賛同。ハムスケはカルネ村に預けられることとなった。

 

 この一件によりヘーラという冒険者は、()()()()()()()()()()()()()()()()という立ち位置を手に入れることに成功。

 狙い通りの成果が得られたので私としては文句なし。

 

 一応ンフィーレアに恩を売れたという功績もあるけど、赤いポーション自体はアンティール共和国で生成できちゃってるし、こっちは正直なところあまり関係ないわ。

 

「…………前から思っているのだけど、あの子ちょっと寝過ぎじゃない? 私、ハムスケがまともに働いているところって、一度も見たことないわよ」

「まあ、あれだけの力を秘めた魔獣なのですし、その分休息も必要だということなのでしょう」

 

 村長と私が目を向けた先、村の隅に建てられた小屋から見えるのは、仰向けの状態でスヤスヤと眠る巨大なモンスターの姿。

 

 私がある程度稽古を付けてあげたからか、今のハムスケは幾つかの武技を習得できているし、そのレベルも50近くにまで上昇していた。

 

 とは言え何事も継続が大事。

 久しぶりに戦闘をしてみたら、体重が増えて体が思うように動かない、というのはフィクションだから笑えるのであって、ノンフィクションで起これば笑い話では済まされない。

 

 …………明日にでもなったら、もう一度叩き直してやろうかしら?

 

 

……………………

 

 

 その後、村長の厚意に甘えて夕食に同席させてもらった私は、宿屋代わりの空き家──内部はしっかりと掃除され清潔に保たれている──に招待された。

 

「さてと、ここからが本番ね…………」

 

 私は、薄着の状態でベッドに寝転がり深い溜息を付く。

 

 普段悩むことのあまりない──何かこう言うと、私が考えなしに行動する馬鹿みたいに聞こえるわね──私がここまで深刻な表情を浮かべているのは、今日の昼頃にグリムから届いた、ある報告が原因である。

 

『王国最強の戦士、ガゼフ・ストロノーフ抹殺計画』

 

 法国の最高執行機関会議にて決定されたそれは、肥沃な土地に建国され、法国からの援助も受け続けていた筈なのに…………いや、受け続けていたせいで堕落したリ・エスティーゼ王国を、隣国であり敵対国であるバハルス帝国に取り込ませるための第一歩。

 

 まずは貴族派閥を上手く唆すことで王国最強の戦士、ガゼフ・ストロノーフから王国の秘宝たる装備を全て剥ぐ。

 次に帝国兵の鎧を纏い偽装した法国兵に村人達を殺させ、彼を辺境の村にまで誘き出す。

 最後に法国が誇る亜人殲滅部隊、陽光聖典の者達によって彼を抹殺し、王国の持つ戦力を大きく削ぐ。

 

 それは『堕落した者に生きる資格無し』という、ある意味人類の守護者を名乗るこの国らしい計画だ。

 

 きっと最高執行機関の皆様方は、こう考えているのだろう。

 

『第四位階の召喚系魔法を行使し、その上優秀なタレントを持つニグン・グリッド・ルーインが隊長として出撃しているのだ。まず間違い無く任務は成功するだろう。

とはいえ万が一のこともある。ガゼフがフル装備で出撃できたときのことも考えて、最高位天使を召喚できる法国の秘宝も渡しておこう。これで王国を帝国に併合させる準備ができるぞ』

 

 …………と。

 

 残念ながら、その予想は大きく外れることとなる。

 だってこの戦いには、法国が想定していなかった最大のイレギュラー、超越者(オーバーロード)が介入することになるのだから。

 

「まずは数日後、彼と上手く接触できるかどうかね。興味を引く手段は用意してあるけれど…………」

 

 綺麗な星空を見たアインズ様が、その美しさに酔い呟いた『世界征服なんて面白いかもしれないな』という独り言。

 これをデミウルゴスが真に受けてしまう関係上、ナザリックとはなるべく早くに関係を作っておきたい。

 

 一番良いのはこのお茶目発言を彼が発する前に関係を作り、そもそもその言葉を言わせないという手段を取ることだけど、それは限りなく不可能に近いだろう。

 

 何故ならトブの大森林を調査せよという類の依頼が無い今、ナザリックが転移してくる場所にまで私が行く必要などない。

 

 つまり、まるでナザリックの転移を予測していたかのような行動に対する、完璧な理由付けが私にはできないのだ。

 

 というかもし接触に成功したとしても、アルベドやデミウルゴス──特にアインズ様のことになっても緩まないデミウルゴス──とかいう化物頭脳の持ち主を前に、上手いこと話を持っていける気がしないわ。

 

 それにここまでのことを全て完璧にこなしたとしても、例の発言を止められるのかは不確定ときた。

 

 ずっと昔、ツアーに『世界を上げるつもりはない』みたいなことを言ったような気がするけど、どうもその約束は守れそうにないわね。

 

「まあ、ナザリックが人間国家を支配しきるまでの間は、それっぽいことを言ってどうにか我慢してもらいましょう」

 

 閑話休題。

 だからこそ私は、カルネ村での帝国兵騒動に介入し、彼が丁度使用しているであろう〈遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモート・ビューイング)〉を通じて、アインズ様の目に触れるという作戦を決行することにした。

 

 この作戦ならば、丁度カルネ村にいたことも『ハムスケの様子を見に来た』という理由で説明することができるし、相手にするのもアインズ様とアルベドだけで済む。

 

 何より陽光聖典を撃退することで、自身が法国のスパイではないということをそれとなく証明できるというのは、私にとって大きな利点となるわ。

 

 …………それともう一つ。

 白い鎧の騎士が人々を守る様子を見て、ユグドラシル時代にアインズ様…………いや、モモンガ様を救った『たっち・みー』さんのことを思い出してくれないかな~という、少し卑怯な考えもあったりする。

 

 まあ、正義のために戦う彼と自分のために戦う私じゃ、その本質は全く異なるのでしょうけれど。

 

「『誰かが困っていたら、助けるのは当たり前』ねぇ…………」

 

 私は生物を殺すことに対して、抵抗や罪悪感などというものを基本的に持ち合わせていない。

 

 何故なら、強者の気まぐれで弱者が死ぬというのは、多分どの世界だろうとも変わらないことだからだ。

 

 生まれながらの強者である私には、有象無象の弱者から全てを搾取する権利がある。

 どこぞの神官辺りが聞いたら顔を顰めそうなものだけど、少なくともこの世界に於いてはそれが絶対の法則。

 

 六大神の言葉を借りるなら『弱肉強食』とでも言うべきかしらね。

 

 だから私は原作…………この世界とは違う運命を辿った世界の私が敗北し、ろくでもない末路を迎えることに関しても、あれこれ文句を言うつもりなんてこれっぽっちもないわ。

 

 ただ、そんな末路を知ってしまった以上じっとしてはいられない。

 

 私はこれまで直接的、間接的に関わらず数多くの人間を殺し、亜人を殺し、異形の化物を数え切れないほど殺し、少しでも強くなろうと努力してきた。

 

 全ては、あの日私が見た最悪の運命から逃れるために。

 

 …………でも時々、それは本当に正しい行為だったのかと思う時がある。

 

 ただ生き残ることだけを目標にするのなら、大陸中央にでも逃げてひっそりと暮らせばいい。

 

 だというのに私は、人間らしく生きたいという我儘のために、百万を超える命と幸せを奪いながら、戦力の増強を繰り返してきた。

 

 …………こんな私のことをナズルおばちゃんが知ったら、いったいどう思うのだろうか…………?

 

「…………フシュォォ──?」

「……ふふ、ありがとう。あなたは優しいわね…………」

 

 私の心境を察してか、〈完全不可知化(パーフェクト・アンノウアブル)〉を解除したグリムが、頭部の触手を器用に使って私のことを抱き締めてくれた。

 

 私の忠実なしもべであり、最強の半身であり、ずっと昔に亡くなった母親(ナズルおばちゃん)代わりの存在。

 

 家事全般がやけに得意だったり、私が落ち込んでいるときに優しくしてくれるのは、私がそういう存在を無意識のうちに望んでいたからなのでしょうね。

 

「…………うん、もう大丈夫。ここまで来ちゃったんだから、もう後戻りなんてできないし、クヨクヨしてても仕方が無いわ」

 

 泣いたところで何も変わらないというのは、百年前にファーイン(クソババア)から嫌という程教えられている。

 

 言い訳なんてする必要はない。

 最終的に自分が幸せになれるのであれば、それが一番正しい行為なのだから。

 

「さて、それじゃあ今夜もアベリオン丘陵から死体を…………あ、そういえばハムスケにも言っておかなくちゃね。私が半分くらいアンデッドだってこと」

 

 

……………………

 

 

 〈ソウル・アドラー〉。

 日本語に訳すのならば、『魂を掴む者』とでも言うべきか。

 

 それは白金の竜王(プラチナム・ドラゴンロード)たるツァインドルクス=ヴァイシオンを始めとした、“真なる竜王”が修めている優秀なドラゴン専用職業(クラス)であり、『始原の魔法を扱うための魂を貯蔵し、様々な用途に変換できる』という、非常に優秀な効果を持っている。

 

 …………もしこの職業を、サイコメトリーに近い能力を持つ者が得たら、一体どうなってしまうのか。

 

「…………ッッ!?!?」

 

 その日、いつものように聖域を守護していたルーファスは、懐かしき気配を感じ思わず立ち上がった。

 

 そのプログラムに刻まれし『冷静な指揮官』という設定が、彼を落ち着かせようとする。

 だが心はそれ以上の興奮に包まれ、なおも体の震えが収まることはない。

 

 それはきっと、仕方の無いことなのだろう。

 だって聖域の向こうから感じるそれは、少し弱くはあるけれど、明らかにあの御方のもの。

 

 かつてこの地を守り、最後には────

 

『後は好きに生きるといいよ。…………まあ、アンデッドに生きろなんて似合わないかもしれないけどね』

 

 ────といって、二度と帰ってこなかった己の主人、スルシャーナと同様のものなのだから。

 

 しかしそれと同時に、彼は忌々しき気配も感じ取っていた。

 

 それは、かつて不敬にも主人に牙を向こうとした、不遜なる竜王のもの。

 

 最後には主人と協力して戦ったのだと知っていても────

 

『お前達がもっと頑張っていれば、この地に最後まで残られた偉大なるスルシャーナ様は、無事に帰ってこられたものを…………!!』

 

 ────と、憎まずにはいられない不倶戴天の存在。

 

「……………………」

 

 もしそれが偉大なる主人の帰還ならば、今すぐにでも彼の元へと向かい、その身にお仕えするべきだろう。

 

 もしそれが仇敵たる八欲王や主を見捨てた竜王ならば、自身の持つ権能を全て行使してでも、その者を滅ぼさなければならないだろう。

 

 アンデッドである筈の心は歓喜と憎悪によって掻き乱され、言葉にもならぬ絶叫を上げ、最後には──秘宝は一つも破壊していないとはいえ──聖域内部で大暴れをするという暴挙にまで至った。

 

 …………そして一日後、あらゆる可能性を考慮した上で、最終的に自身の目で確かめるしかないという結論に達した彼は、彼女の元を訪れる。

 

「……? あなたは、…………ルーファス様?」

 

 そして彼は彼女と対面し、そしてアンデッドであるにも関わらず、歓喜のあまり瞳すら嵌っていない虚空から涙を流した。

 

 あの方がこの地を去ってから、早四百年。

 

 亡くなられた主人らの血を継ぐものは数多く現れたが、彼らは結局主人そのものではない。

 

 主人らの後継者ということで見守っては来たものの、人類のみを守ると宣言した彼らにとって、アンデッドである自らは不要の身。

 

 それでもいい。

 創造主たる存在達の子孫を、遠くからでも見守れたのならそれで満足だ。

 

 …………それはどうやら、強がりだったらしい。

 

 主人と共に戦い、共に死ねずに生き残ってしまったことが悔しかった。

 誰にも真の意味で仕えられず、ただ一人墓守のように過ごしていることが寂しかった。

 もう二度と私の創造主は帰ってこないのだと、その事実を認めることが怖かった。

 

 アンデッドという特性上、表面上には決して現れなかったが、彼は持ち主のいなくなった聖域の奥で、ずっと泣いていたのだ。

 

 だが、そんな感情はもう過去のもの。

 

 スルシャーナ様は今、この地に復活…………いや、新たな姿に転生なされた。

 どうやったかは知らないが、あの御方は竜王の権能を以ってして生まれ変わり、再び彼の前に現れて下さったのだ。

 

「…………」

「……え? は? ちょ、ちょっと待って。ルーファス様? なんで私の前で跪いて??」

 

 彼女こそが偉大なる御方の魂を継ぎし者。

 なればこそ、この身はこれから彼女の思うがまま。

 

 ルーファスは全身全霊を以って誓う。

 スルシャーナ様の魂を宿したこの少女を、あらゆる障害から守り切ろうと。

 

 もう二度と、あの日の悲しみと過ちを繰り返さないためにも。

 

「いや、一度待ってほしいというか。その、私の外見はどこからどう見てもスルシャーナ様じゃないっていうか、そもそも私は────…………え? 嘘? 精神が抑圧……とまではいってないわね。…………じゃなくて、いや、どういうこと??」

 

 彼女の名前はアンティリーネ・ヘラン・フーシェ。

 またの名を絶死絶命。

 

 ある者の行動により、本来ならばありえない奇跡を身に付けた彼女の種族には、いつの間にか〈死の支配者(オーバーロード)〉が追加されていたのだった。




アンティリーネ・ヘラン・フーシェ
もう一人の、そしてこの世界のオーバーロード。
なんのこっちゃと思った方は、是非とも『オーバーロード4巻に関する作者雑感』で検索してみて下さい。

彼女が今どういう状態なのかについての詳細は、次回のキャラクター紹介に回します。

ちょっとした質問&回答タイム

Q:なんで彼女が〈ソウル・アドラー〉を習得しているの?
A:ツアーにでも聞いて。

Q:彼女がこの世界のことを、物語の世界であると認識したことと関係あるの?
A:ある。ツアーにでも聞いて。

Q:なんで種族が死の支配者(オーバーロード)半森妖精(ハーフエルフ)の二つになってるの?
A:〈ソウル・アドラー〉が影響してちょっとバグったから。詳しくはツアーにでも聞いて。

Q:ツアーはこのことを知ってるの?
A:アンティリーネが全力で隠しているから知らない。多分知ったら即殺しに来る。

グリム
デケムを素体として、〈ソウル・アドラー〉で滅茶苦茶強化した『カロンの導き』による〈最高位不死者創造(クリエイト・オーバー・アンデッド)〉を、これまで掴んできた魂マシマシで使用した結果作り出された謎のアンデッド。
素体の良さに加えて、アンティリーネがその魂を融合させるレベルの勢いで生み出したため、恐ろしい程の戦闘能力を秘めている。
ちなみに彼女が無意識下に望んでいたからか、その性格は『アンティリーネが信じるナズルおばちゃん』そのものとなった。
無論ナズル本人はずっと昔に亡くなっており、老衰だった影響か魂はすり減っており蘇生も不可能。
グリムは一言で言ってしまえば、『ナズルおばちゃんのふりをしたアンデッド』。アンティリーネ本人もそのことは把握しているが、彼女はその上でグリムに甘えたり、好物のオムレツをねだったりしている。

ルーファス
アンティリーネのことを誰よりも大切に思っていると同時に、彼女が死んでしまうことを何よりも恐れている。
彼女が望むのならば、彼は何の躊躇いもなく法国を滅ぼす。
彼にとって一番大切なのは、国などではなく偉大なる御方なのだから。

戦闘訓練
基本的にエインヘリヤルやグリムと行っている。
訓練前にグリムが〈記憶操作(コントロール・アムネジア)〉を使用することで、アンティリーネは毎回相手の情報を完全に伏せた状態から戦い始められる。
そうやって百年間過ごした本作のアンティリーネが持つ最大の強みは、戦闘時に於ける高い状況判断能力と言えるだろう。
ちなみに、探知対策結界や防御結界を数百にも渡って張り巡らせた状態で、数年に一回マジの戦闘訓練を行うことがあるそうな。

ハムスケ
森の賢王。巨大なジャンガリアンハムスターともいう。
いつものように昼寝をしていたら、突然ゾワゾワッと得体の知れない恐怖を感じた。本能のままに走っていたら、偶々ンフィーレアの薬草採取に護衛として同行していたヘーラと遭遇し、ボコボコにされ彼女のペットとなる。
アンティリーネがアンデッドだと知って驚いたが、同時にその強さにも納得した。
ちなみにこの世界にハムスターは存在しないので、アンティリーネが『ハムスケ』という名前の意味を真に理解する日は多分こない。

ンフィーレア
カルネ村の村娘に恋心を寄せる薬師。
話をねじ込む隙間が無いため、予定していたストーリーを丸々カットされる羽目になった。
その内容は、
『ヘーラが冒険者登録をした数日後に彼の店へと赴き、アンティール共和国にて生産している赤いポーションを提供。
今後も継続して提供することを代償に、ヘーラを彼の専属護衛にすることと、赤いポーションの情報は決して外に漏らさないこと、そしてもしもの時はヘーラの言うことを優先して聞くよう約束した』
というもの。
利用価値は原作と違いあまりない。

赤いポーション
レシピは法国からパクった。素材は専用のエルフツリー。
グリムとかいうぶっ壊れ存在がいるためか、より上位のポーション作成にも成功している。


……………………


おまけ:カットされたアゼルリシア山脈編

フェオ・ベルカナ
山小人(ドワーフ)の国の旧王都。
原作ではフロスト・ドラゴンの一家がねぐらとしていたが、本作ではルーン技術研究の資料と資金調達、ついでにちょっとした息抜きを兼ねてやってきたアンティリーネによって、数十年前に支配されている。

オラサーダルク=ヘイリリアル
アゼルリシア山脈を支配していたフロスト・ドラゴン。通称『白き竜王』。
突然やってきたアンティリーネを前にして、「その身に纏う財宝を献上すれば、命だけは助けてやろう」などという言葉を口走ったため、原作同様即死した。
ただし本作ではその後、完全に拘束された状態で蘇生。百年間鍛えたことにより上達したグリムの〈記憶操作(コントロール・アムネジア)〉により『痛みを快楽と感じる』とかいう、どこぞの対魔忍みたいな脳手術を施された後、体を半分くらい切り取られ素材を回収されては蘇生され、また半分くらい切り取られては蘇生され…………という、無限素材生産機になった。
本人が嬉々として肉体を捧げ快楽に浸っている分、デミウルゴス牧場よりかは数倍マシ。

ドラゴン素材生産機
素材はある程度加工しなければ、蘇生した際に切り取った素材が消滅してしまうという仕様(多分独自設定)や、純粋に費用が掛かるという関係上、本来この素材回収は頻発して行うことはできない。
しかし前者はアンティリーネがスキルで生み出したアンデッド、後者は錬金術系統を収めることで習得できる鉱石生成の魔法(50レベル程度の金属が限界)や、〈森祭司(ドルイド)〉が習得できる土地作りの魔法をグリムがスキルで使用することにより解決している。
死亡時のレベルダウンについても〈ソウル・アドラー〉を上手く使えばすぐに蘇生しなくても解決できるので、最高位まで成長したドラゴンの素材は取り放題。
ドラゴンステーキも食べ放題。やったね!

キーリストラン=デンシュシュア
うれションドラゴンことヘジンマールの母親。フロスト・ドラゴンの中では結構賢い。
その賢さをアンティリーネに買われて、現在はフェオ・ベルカナに住むドラゴンの纏め役に任命されている。
ちなみにオラサーダルクが早期に退場した結果、子どもが増えなかったフロスト・ドラゴン一家の本作における合計数は十匹と少し。

ヘジンマール
うれションドラゴン。ちょっとおデブ。
オラサーダルクを容易く屠ったというアンティリーネに暫く怯えていたが、一緒に書物を調べたり魔法の研究をしていくうちに仲良くなった。
現在では第六位階魔法まで行使できるようになり、フロスト・ドラゴンの中でも上位の戦闘能力を得たが、相変わらず戦闘は苦手。
フールーダやセリーシア(ニニャ)とは魔法談義をよくしている。

ペ・リユロ
土掘獣人王(クアゴア・ロード)〉にして、各地のクアゴア全てを纏め上げた氏族王。
フロスト・ドラゴンに服従したふりをして、ひとまず強力な後ろ盾を得ようとフェオ・ベルカナを訪れたところ、何故か人間がドラゴンを従えているという事実を知った。
「私の支配下に入らない?」というアンティリーネの誘いに対し、「どのくらい強いか教えて」という旨の言葉を返したところ、全クアゴアの戦士vsアンティリーネという模擬戦が勃発。
結果はクアゴアの惨敗。アンティリーネは武器すら使わず、立ち向かってきた全てのクアゴアを素手でぶちのめし気絶させたという。

クアゴアの皆さん
アンティリーネに支配されたものの、その生活はあまり変わらなかった。
ドワーフを攻めるのが禁止されたときは顔を顰めたが、グリムが魔法で鉱石を生み出せると知ってからは一切文句も出ていない。
最終的には全員殺してグリムの糧にするかもしれないが、労働力としては結構優秀なので今のところその予定はない。

摂政会
山小人(ドワーフ)の国を治める者達。合計で八人いる。
フロスト・ドラゴンとクアゴアを引き連れたアンティリーネの訪問に混乱したが、アンティリーネの見た目が人間だったので、アインズの時ほどビビられることはなかった。

ゴンド・ファイアビアド
ルーン開発家のドワーフ。ただし本人にルーン工匠としての才能は無い。
突然摂政会に呼び出され、ルーン技術について知りたいというアンティリーネと出会った。
最初こそ何が目的なのかと疑っていたが、彼女がフェオ・ベルカナから持ってきたルーン技術の本や、彼女の熱意を理解し共にルーン技術の研究をしていくうちに仲良くなった。
酒は相変わらず苦手。

ルーン技術
本作においてのルーン技術は、『素材に秘められた潜在容量(データ容量)を使用して、新たな能力を付与する』という技術として扱う。言うなれば『鍛冶師が刻むデータクリスタル』。
そのためグリムが魔法でそれっぽく作った、アダマンタイトをふんだんに使った武器(50レベル相当)で試してみたところ、ルーン文字が6つ刻み込めた。


それと高評価、感想、お気に入り登録、本当にありがとうございます。
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