よう実 ハードモード リメイク版 作:クンクンクン
リメイク前と少し変化しています。大きな変化は次話以降からとなります。
アナタは、来年度から"高度育成高等学校"に通う予定の中学生です。
最近まで学校へ通うことに意味があるのかと思春期特有の悩みを抱いていたアナタでしたが、進路指導主事の先生にこの学校を勧められ、流されるまま受験することを決めました。
受験までの日にちが迫る中、依然学校に興味が湧かないアナタですが、流石に受験する学校のパンフレットを見たり、インターネットで評判を調べるくらいはしています。
なんでも、広大な敷地の中には校舎以外にもたくさんの施設があり、まるでデビルなサマナーが出てきそうな海上都市のようです。その中でも強調して宣伝されているのは"望んだ進路に100%進める"という、飲み放題3000円と言ってくるキャッチ並に信用できない怪しい謳い文句でした。
……ただ、アナタの心に引っかかる魅力がこの学校にはありました。
ふと人生を振り返ってみると、アナタは少々生き急ぎ過ぎていたのではと思えるくらいには危険なことを繰り返してきました。さながら漫画の主人公のようです。
両親の蒸発から始まり。残された借金の返済のために極道に脅されたり、怪しげな宗教団体に絡まれたり、それはもう口に出すことが憚られるようなこともしました。
思い出にも残っていない両親のためにいらぬ苦労を強制されてきたわけですが、既に問題は解決し、アナタを縛るものは何もありません。であれば、今後は自由に生きていくことができますが……アナタは自分のやりたいことが分かりませんでした。
目下の問題の対処ばかりしていたため将来の描き方が分からない今、必要なものは時間であるとアナタは判断しました。そして、時間を確保するためにも落ち着ける環境は必須です。
自分一人では解決できないことが世の中に溢れていることを知っているアナタは、問題を解決するために人と繋がり、利用し利用される関係を築いてきました。今では極道・宗教家・ホームレスなどバラエティー豊かなラインナップが揃っています。
ですが、そんな個性豊かな知り合い達はアナタに一人の時間を与えてくれません。これではじっくりと将来を考える時間を取ることも難しいです。
ならばどうするか。それは高度育成高等学校に入学すれば安易に解決できる問題でした。
高度育成高等学校に入学すれば、3年間外部との連絡を取ることは不可能ですし干渉されることもありません。つまり、3年間は自分の将来を考える時間を確保することができます。
3年という時間はなんとも絶妙であり、決断の早いアナタにとっては十分過ぎるほどの時間でしょう。その時間を使い燃え尽き症候群のようになっているアナタを満たすような何かを学校で見つけられればいいのですが。
アナタは、本日より高度育成高等学校に通う学生です。
高度育成高等学校に通うまでの間に何があったかと問われれば、学生らしく勉学に励んでいたとしか答えることができないため割愛させていただきます。
受験勉強を始めて数か月で難関と呼ばれる高度育成高等学校に合格してしまったことに先生や知り合いはかなり驚いていましたが、すぐにアナタのことを称賛し素直に祝福してくれました。
褒められることが嫌いではないアナタは普段感情を表に出さないのですが、アナタの顔を見慣れている人が見れば思わず二度見をするぐらいには上機嫌な顔を無防備に晒していました。
アナタは過去を振り返り良い気分になっているようです。これは珍しい。
「ふふっ」
しかし突如として小さな笑い声が耳に入り、アナタは反射的に笑い声の発生源である隣へと顔を向けました。
アナタは少しだけ恥ずかしい気持ちになりましたが、瞬きを1回する頃には恥ずかしいという気持ちも消えました。
知り合いでもいたのかな?と疑問に思いながら姿を確認すると、どうやら初対面の人間の女のようです。
女はこちらが顔を向けた時には既にこちらを見ており、少しだけ間を置いて「すみません」と詫びてきました。
「アナタの表情がなかなかに変わらないものですから、つい。緊張されているのかなと」
強がりに聞こえるかもしれませんが、アナタは特に緊張していないと素直に答えました。
「……そうですか。確かに、国が未来を担う人材を育成すると宣言し、合格することが難しい難関校のようですからね。一体どんな教育がされているのか、緊張するのも無理はありませんよね」
女は無表情のアナタと違い微笑を浮かべ、話を繋げてくれました。アナタは会話を繋げることが苦手なため、黙って話の続きに耳を傾けました。
「パンフレットには未来を担う人材を育てる学校とありますが、アナタはどんなことをする学校だと思いますか?」
アナタは暇なバスの時間を女と話してもいいし、無視して1人の時間を堪能してもいいでしょう。
さて、アナタはなんと答えようか。
浮かんできたのは3つの選択肢でした。
『なんかすごくすごいこと』
『人体実験だ』
『
アナタの悩む時間はものすごく短く、周囲の人間から即断即決の擬人化と呼ばれたこともあるぐらいです。
すぐに何を答えるか決めたアナタは、冗談めかすように『人体実験だ』と答えました。
返答を聞いた女は2、3回瞬きをしてからくすりと笑いました。
「なるほど。確かに、学校というのは視点を変えれば人体実験場のようなものですよね。どうすれば効率よく学習させることができるか、クラスという枠組みを設けてどのような人間関係を構築するのかなど、穿った見方を変えればキリがありません」
女は思っていた何倍も真面目に答えを返してくれました。
アナタはもっと漫画や特撮に出てくるような改造を思い浮かべていました。
「もっとも、未来を担う人材をどのようなものとして学校側が定義しているかで前提は変わってきますがね。社会の歯車として優秀な人材を作りあげるためか……日本に眠る天才という原石を発掘し、磨き装飾しお披露目する場なのか。ふふっ、アナタにとっては退屈な場所かもしれませんね」
女の頭の中では高度育成高等学校はすごい場所になっているんだなと、アナタは思いました。
「では、どのようなカリキュラムで……と、もうそろそろ着きそうですね」
正直なところ既に会話がめんどくさくなってきていたアナタは、そろそろ学校に着くというバスのアナウンスに少しだけ感謝しました。
「これからは同じ学舎の生徒ですね」
アナタは少し驚きました。隣にいた女のことで把握していたのは性別が女であることと
確かによく見ると、パンフレットに載っていた高度育成高等学校の制服を着ていました。
その後、女から話が振られることはなく。学校に着く前までの数分間は互いに無言で過ごすこととなりました。
アナタはその間何をしていたのかというと、一人でぼーっとしている時間を堪能していました。
アナタは、学校でもこんな穏やかな時間を過ごそうと決めました。
何事もなくバスが着き、アナタはついに高度育成高等学校に足を踏み入れました。
バスを降りようとした時、アナタはふと先ほど話していた
校門前で手荷物検査などを受けた後、敷地内を進んでいくと。卒業した中学とは比べ物にならない広さにアナタは少しだけ驚きました。
チラリと辺りを一瞥すると、学校というよりかは一つの街みたいで、なんでこんなに広くする必要があるのだろうかとアナタは疑問に思いました。
アナタは合格通知書と一緒に届いた、入学時のオリエンテーションの日程を鞄から取り出します。
まずは自分のクラスを掲示板にて確認し、教室へ向かわなければならないようです。想定したよりも近くにあった掲示板を見つけて、アナタは自分のクラスを確認しました。
どうやらアナタは"Aクラス"のようです。アナタはB型だからBクラスがよかったな、などとどうでもいいことを考えながら教室へ向かいました。
教室へ着くと何人かの生徒は集まっていましたが、アナタはどちらかと言えば早く着いた方のようです。
特にすることもなく席に座ってぼーっと待っていると、スーツを着た男が入ってきました。周りを見渡すと教室の席は埋まっており、いつの間にか全員集まっていたようです。
「遅刻者は……いないようだな。まずはおはよう。これから3年間君たちの担任を務める英語科の真嶋智也だ。時間も押しているため自己紹介などはホームルームや授業の時に回させてもらう。また、学校説明を行う前に明言しておくが、卒業までの3年間は"全体"でクラス替えを行うことはない。そのことは留意しておいてくれ」
アナタはクラス替えが行われないなんて珍しいなと思いながら、話の続きを聞きました。
「早速だが、今日から学校で使用してもらう"学生証端末"を渡す。その名の通り学生証として機能し、それがなければ学生生活を送ることが困難となる。不具合などがある場合は速やかに教員に知らせてくれ。そして、学校のルールについての案内も渡しておく。入学前に事前に配ったものと内容は変わらない。詳細は明日のオリエンテーションで触れるが、今一度ルールを把握しておくことを推奨しておく。ちなみに、ルールは端末からも確認することは可能だ」
アナタは配られた端末に目を向けました。学校のルールについては入学前に合格通知書と共に来た薄い冊子にも書かれていましたが、わざわざ端末に載せるほどの内容があるのかと疑問に思いました。
許可は出ていませんが、アナタは端末を起動させて"学校校則"と表示されているアプリを見ることにしました。
ざっと見てみると、外部との接触禁止や一部私物の持ち込み禁止などの事前に知らされていた内容の他、Q&Aやトラブルの対処法など色々と書かれていて、それなりに読み応えがありそうです。後でまた読んでみようと、アナタは思いました。
「次に学生証端末の使い方を説明する。使い方としては、君たちが普段使っているスマートフォンと同様の使い方で問題ない。授業、連絡、学校の施設、日常生活に関するアプリなどが既に入っていて、初期登録はすでに済ませてある」
流石は日本国内でも特に異彩を放つ学校です。生徒一人にスマートフォンのような端末を与えて、独自のアプリまであるそうです。
「そして注意点だが、その端末からは企業などが提供しているアプリをダウンロードすることができない。納得することは難しいだろうが理解してもらえると助かる」
真嶋先生の説明に少しだけ周りがざわめきます。アナタは特に不満を抱いていませんが、なぜダウンロードできないのかその理由を知りたくなりました。
「そして、君たちが普段使用しているインターネット回線などは"原則"使用不可能だ。そうだな……動画を見たり、検索エンジンなどを使い調べ物をしたりすることは基本できないと思っていてくれ。その他の禁止事項については資料や端末に記されているため、確認するように」
真嶋先生の話が一区切りついたのを見計らって、一人の生徒が手を挙げました。クラスメイト達の中には声に出して質問しようとしていた者もいたようですが、その前に手を挙げた生徒がいたため、言葉が出ることはありませんでした。
しかし、その生徒に対して真嶋先生は「質問の時間はこの後取るため、先に説明をさせてくれ」と言いました。手を挙げた生徒は会釈して、手を下ろしました。
「疑問は多々あるだろうが、ひとまずは説明を再開させてもらう。……本日は入学式終了後自由時間となるため、君達には端末による決済のやり方を説明しておく。端末の電源をつけて、決済アプリを開いてくれ」
アナタは言われた通り決済アプリを開きました。開くと、自分の学生番号と顔写真が載っており、残高表示を見ると10万ポイントが入っていることを確認できました。額が予想よりも多かったのか、周囲がざわめいています。
「驚いたか? 君たちには早速10万ポイントほど支給している。このポイントを使って、以後君たちは学校生活を送ってもらう。使用用途は多岐に渡り、基本的にこの学校で買えないものは"ない"。1ポイントの価値は1円と判断してもらって構わない。原則としてこの学校で入手したポイントを日本や各国に流通している通貨などと両替することは不可能だ。この学校のみで流通しているお金と捉えてもらって構わない」
アナタには10万ポイントが何をもって設定された数字なのか考えて、家賃、水道代、電気代などがここから引かれるのかな? と、考えていました。
なんせ10万ポイントもあるのです。今のうちに一人暮らしの予行演習のようなものを学校側がカリキュラムとして用意していても不思議ではないでしょう。
「このポイントは毎月1日に振込まれる。ただ、10万ポイントあるからといって無駄遣いはしないように。ポイントは有限であると自覚して行動してもらいたい。詳しい説明は、冊子などから確認するようにしてくれ。気になる項目があったら確認し、分からなければ職員室に来てくれれば私が対応しよう。……最後に、ポイントは生徒間同士で授受することが可能だ。しかし、暴力の行使による脅迫などでのポイントの移動や自分以外の端末を使っての決済などイジメと判断される行為をすれば、該当生徒には処罰を覚悟してもらう。学校側がイジメに対して常に目を光らせていると思っておけ」
真嶋先生が少しだけ脅すように言葉を締めた後、間を空けてから「ここまでで、何か質問がある者はいないか。質問があれば挙手をしてくれ」と聞いてきました。
周りのクラスメイト達は質問の内容をまとめているようですが、一際早く手を挙げた生徒がいました。それは先ほど手を挙げた生徒のようです。
「君は……"葛城"か。では質問を聞こう」
「ありがとうございます。二つほど質問させていただいてもよろしいでしょうか」
「あぁ。ただ、他にも質問したい生徒がいるはずだから、手短にな」
「分かりました。一つ目の質問なのですが、インターネットが使えないとはどういことでしょうか。勉強に支障が出る生徒もいると思うのですが」
「当校は独自の閉域ネットワークを構築している。学校の情報、君たち生徒や私たち教職員の個人情報の流出を阻止するためだ。例えば不特定多数が目にする掲示板などに情報を漏らされても困るからな。……それに最近色々とあってな。この学校はあらゆる意味で特殊だ。国内だけでなく国外からのサイバーテロも懸念している。こういった理由などから、"君たちの端末"からインターネットにアクセスすることはできない」
「……ありがとうございます。最後の質問なのですが、家族などへの電話や手紙でのやり取りなどを行なった場合の罰則はどのようになるのでしょうか。また緊急時の……例えば家族が逝去した場合はどのような対応になるのでしょうか」
「家族への電話は"君たちの端末"からは不可能だ。電話をかけられるのは同じ端末……つまり、この学園の生徒や職員室にある端末にしか掛けることができないし、メッセージを送ることもできない。なので、通話によるやり取りなどの罰則は気にする必要がないだろう。また、親類の葬儀などが行われる場合は特例を認め、学校外へ出ることを許可している。ただ、学校側が事実確認できなければ不可能だ。まぁ、君たちの親には既に学校側の連絡先を登録してもらっている。多少のタイムラグはあるだろうが、迅速に伝えることは約束しておこう」
「質問に答えていただきありがとうございました。また、質問があれば伺わせてもらいます」
インターネット禁止の理由は妥当だと思いますが、そんなに隠すことなんでしょうか? むしろこういう教育をしているから学校に沢山入ってきてくださいと宣伝するのが普通だとは思いますが。
「想定よりも時間が押しているため、質問者は次で最後にしてもらう。では他に……では"坂柳"」
「ありがとうございます。私からも二つ質問させていただきますが、よろしいですか?」
「あぁ」
「ありがとうございます。一つ目は、先生のおっしゃった"原則"とは一般的な意味で捉えてもよろしいのでしょうか?」
「…………あぁ。誤用しているつもりはない。一応これでも国立高校の教員だからな」
「これは失礼致しました。では最後に、今配られているこのポイントを増やす方法はありますか?」
「…‥申し訳ないが、毎月1日に配られる以外の方法をこちらから明言することはできない。私のこれまでの言葉から察してほしい」
「なるほど……そうですか。質問に答えていただきありがとうございます」
「……では、ここで質問を締め切らせてもらう。基本的には職員室にいるようにするから、また質問があれば遠慮なく来てくれ。それでは、入学式が始まるまでは教室で待機だ。時間になったらまた呼びに来る。それまでは節度を持って自由に過ごしてくれ」
真嶋先生が退出した後、周りのクラスメイト達は最初の方こそ自分たちの席に座って大人しくしていましたが、隣や周りに話しかける人間がちらほらと現れてからは、大きくもなければ小さくもない静かな会話を始めていました。
アナタはというと、手荷物検査の時などに没収されてしまった携帯などがないため暇を潰す道具がありません。また、今は端末を見る気分でもなかったため、特になにもすることはなくボーッとしていました。
しかし、ボーッとしていられたのも1分程で、後ろから「ちょいちょい」と背中を突かれたため、後ろを振り返りました。
「悪いね。なにぶん、周りが話しているんもんだから俺も誰かと話がしたくなったんだ」
声を掛けてきたのは、髪型検査などでよく女子が注意されていた触覚を垂らして、横側を刈り上げている男でした。
アナタはこの男と対話してもいいし、無視をして1人の時間を引き続き過ごすこともできます。
さて、アナタはなんと答えようか。
浮かんできたのは3つの選択肢でした。
『君の名は?』
『……(無視をする)』
『同じだ。自分は話したくなかった』
アナタは『同じだ。自分は話したくなかった』と答えると、男は間を置き、少しだけ唸った後、あ、と口を開けました。
「……い、いきなり冗談か。……冗談だよな? でもそれあんまりやらない方がいいと思うぞ。真顔で言われちゃ、冗談でもびびっちまうよ」
どうやらアナタのジョークは伝わったようです。知り合いの極道に、最初の自己紹介は立場や関係をはっきりとさせるための大事なきっかけだと教わり、以後は意識して自己紹介でどのように対応をするか考えるようにしています。
アナタは一人の時間を確保したいと思っていますが、だからと言って誰とも関係を持たないとは考えていません。ヒトリボッチでいることにメリットを感じないからです。
アナタは冗談も言える、時々話し合うくらいの仲を目指して、男との対話を進めようと決めました。
「まぁ、少しだけ意外だったよ。教室に入ってきた時に顔を見たら全然表情が動いてなかったし。おっかないやつだと思ってたが、面白そうな奴で良かった」
アナタはよくヤベー奴だとか面白い奴と言われることが多いため、特になんとも思いませんでした。
「おっと、取り敢えずは名前だな。俺の名前は橋本。"橋本正義"だ。まさよしは正義って書く。中途半端なキラキラネームみたいな名前だが、よろしくな」
男……橋本君は慣れているように、自虐を少しだけ交えながら自己紹介してくれました。
名前を教えられたら、こちらも名前を返さなければ失礼でしょう。
『灰原皐月。親の一番の思い出が皐月賞で勝ったことだから、この名前になったらしい』
橋本君に倣い、アナタも名前について一言添えて名乗りました。この自己紹介を聞いて笑った知り合いはあまりいませんが、アナタが今出せる全力の自己紹介です。
「お、おぅ。あんたの真顔で言われると、めちゃくちゃヤバい親臭が半端ねぇな」
どうやら橋本君には、アナタの自己紹介は合わなかったようです。
橋本君は少しして、しまったという顔で「すまない、言い過ぎた」と言いました。
見た目に反して気遣いができる人だと、アナタは思いました。
「しっかし。なんだかすごい学校に来ちまったよな。いきなり小遣いを10万とは、流石はお国の学校って感じだ」
橋本君は切り替えが早いようで、すぐさま別の話題を用意してくれました。
「なぁ、灰原はこの学校をどう思う?」
さて、アナタはなんと答えようか。
浮かんできたのは3つの選択肢でした。
『人体実験してそうな学校』
『刑務所みたいな学校』
『競馬ができない学校』
アナタは『競馬ができない学校』と答えました。
「確か、そろそろ皐月賞だったか? いや、ウチの親もやってるみたいだから競馬は少しだけ知ってるんだが。……って、俺らがやっちゃダメでしょーが」
橋本君はアナタの答えにちゃんとツッコんでくれました。
「……はぁ。けど、インターネットが使えないのは不便だよな。ちょっとしたことでもネットですぐ調べる現代っ子には、ストレス溜まるんだろうなぁ〜」
橋本君は机に突っ伏しながら、早くも憂鬱そうにしています。アナタはそんな彼を無視して端末を操作して会話のタネを探すことにしました。
「にしても、個人に専用端末まで用意してあるなんてどんだけ金が掛かってんだよって話だよな。それに10万ポイントだろ? クラスが4つで学年全体で見ると……2400万かぁ。買い物できるってことは金みたいなものだろ? それを全学年で毎月ってなると……」
橋本君が話している傍ら、アナタはいくつか面白そうなアプリを発見しました。アプリはどれも見たことがないもので、名前に"高度育成高等学校"と付いているため、この学校は独自にアプリを開発しているのかもしれません。
早速アプリを開いてみると、学校の敷地内の案内図があの大型ショッピングモールのように番号で振り分けられています。
「何見てんの?」
立ち直りが早い橋本くんは、アナタが何をしているか聞いてきました。知り合いの
アナタは『地図アプリ(高度育成高等学校ver)』と伝え、橋本君も自分の端末から同じアプリを開きました。
「見たことねぇアプリだな。どれどれ……あ、なんか見たことあると思ったらイオンの地図だこれ。……ふーん。このアプリ使い勝手が良さそうだぞ。店のところを押しただけで販売リストやら何やらずらりと出てきた。…………まぁ、流石に学校にホテルとかはないか。後、エロい店もないな」
橋本君はアナタにギリギリ聞こえる程度まで声を落として、ぼそりと呟きました。
確かに、エロい店……風俗やアダルトショップがないようですが、それも当然でしょう。
しかし高校生にもなれば、セックスをする年頃ではないのかと思い、アナタは避妊や妊娠についてどのように対応しているのか少し気になりました。
「まぁ、探索あるのみだな。…‥お裾分けってわけでもないけど、俺からも面白そーなやつを教えとくよ」
橋本君はそう締めくくると、アナタに自分の見つけた面白いアプリを紹介してくれました。
アナタは自分の端末からそのアプリ……"情報共有掲示板"を開きました。ただ、端末を配られてから時間が経っていないせいか、誰も書き込みを行っていません。
「いや、やっぱこの学校すごいわ。これって、多分だけど1年生専用のやつだろ。学校側が用意したインターネット以外の愚痴捨て場なのかね」
アナタはこういう類の掲示板サイトは興味が湧かず見たことがありませんが、便所の落書きと変わらないものだと教えてもらったことがあります。
「まぁ、こういったところに思わぬ情報が眠ってるかもだ。なんか面白そうなもの見つけたら教えるよ」
まるでゲームに出てくる親友キャラみたいだなと、アナタは思いました。
入学式が始まるまで、橋本君とたわいもない雑談をしていると、真嶋先生が来て、アナタ達は入学式の会場に向かいました。
入学式に関して、アナタが特に覚えていることはありません。誰それが授業の担当で、どのように学校生活を送ってくれなどという話に微塵も興味が持てなかったからです。同じクラスの生徒達は真面目に話を聞いていたようですが、アナタは目を開けたまま夢の世界へと旅立ちました。
………………。
……ふわふわとした生暖かい空間から帰還したアナタが最初に耳にした声は真嶋先生の声でした。どうやら入学式は終わり、再び教室へと向かうようです。
体育館から教室へと帰るアナタは、静かに帰るクラスメイト達に少しだけ驚きました。卒業した中学では、クラス単位で移動する時は話し声が絶えなかったからです。名門校だから大人しい子が多いのかな、と妙な偏見があるアナタは一人納得しました。
その後教室へ着き全員を席に座らせた後、真嶋先生は明日の日程を確認しておくようにと言って、少し声を低くし「最後に」と言葉を続けました。
「二年生や三年生の先輩に怪しげなことを言われても真に受けたりしないように。しつこいようなら、私に言うか、他の先生を頼ってほしい。……では、今日はここで解散とする。明日に疲れを残さぬよう、早めに休んでくれ」
クラスメイト達は返事を返しませんでしたが、真嶋先生は少し間をおいて教室から出ていきました。
アナタはこれから自由時間を過ごすことになります。学校を探索してもいいし、教室でクラスメイト達と交流し人間関係を広げるのもいいでしょう。
さて、アナタはなにをしようか。
浮かんできたのは3つの選択肢でした。
『教室に残る』
『一人で家電量販店に行く』
『ひとまず寮に帰る』
本作の設定は原作とアニメと独自のちゃんぽんです。
例
・学生証カード✖️→端末のみ
・HP掲示板✖️→アプリ掲示板
など、細かいものが幾つかあります。
リメイク前の作品でお気に入り登録や評価・感想を下さった方には申し訳ないのですが、前作は消去する予定ですのでよろしくお願いします。