よう実 ハードモード リメイク版   作:クンクンクン

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謝罪

 

 

「申し訳ないが、試験範囲のいくつかが変更になった。だが君たちならばこのテストを退学者を出さずに"必ず"乗り越えられる。……以上で朝のホームルームを終了する」

 

 テスト2週間前にテスト範囲の変更が発表されました。なんと、全ての教科の範囲が変わっています。

 これには周りも不満気な表情になっています。アナタはどうかといえば、そういったこともあるかと納得しました。

 

「失敗はする、人間だもの……とか言えれば気楽なんだが、こっちからすればあんまりだよな。……というかこれ、わざとじゃね? 全教科とか普通ありえないだろ」

 

 橋本君も不満気です。まぁ、失敗することは誰にだってあると思うのですが、流石に全教科変更となると故意を疑うのは当然でしょう。

 

「ま、今考えてもしょうがないか。それより、お前"森下"とはどうなったんだよ? あれから色々あったんだろ?」

 

 橋本君が言う"森下"というのは、アナタがカラオケルームにて頰を叩いたクラスメイトであり、それをきっかけに交流が生まれた"友達"です。

 

 

 

 

 

「急に悪いな森下。こいつがちょっと言いたいことがあるみたいだからさ、ちょっと外までついてきてくれないか?」

 

 試験範囲変更から遡ること数日前の放課後。アナタが森下さんの頰を叩いた次の日のことです。

 アナタは橋下君に連れられ、森下さんの席に行きました。橋本君はアナタを気遣ってか、教室内ではなく外に森下さんを連れて行こうと周り聞こえない声で会話を切り出します。しかし、あの現場を見ていたクラスメイト達は何事かとこちらに視線を向けています。

 橋本君の風体やいきなり頬を叩くアナタのコンビということもあってだいぶ怪しいのですが、森下さんは軽く頷き、着いてきてくれることになりました。

 

「取り敢えず俺が切り出してやるから、お前の第一声は『ごめんなさい』だ。余計なことはなしだぞ」

 

 森下さんと少し距離を置いて橋本君はアナタに指示を出してくれました。ここまで世話を焼いてくれる同年代の人間はアナタにとっても初めてなのでとても新鮮です。

 

「こんなところまで悪いな。こいつからカラオケルームの時のことで言いたいことがあるんだ」

 

 校舎から少し離れた人通りが少ないところまで来ると、橋本君は指示通り話を切り出して、目線でこちらに合図をしました。

 

 さて、アナタはどうしようか。

 浮かんできたのは3つの選択肢でした。

 

『今度は拳をくれてやる』

『ごめんなさい』

『 je vous aime』

 

 アナタは『ごめんなさい』と軽く頭を下げました。

 橋本君は不安そうに森下さんを見ていますが、当の森下さんはアナタに叩かれた方の頬を押さえ、驚きの感情を込めた目でアナタを見ています。

 

「確か……灰原皐月、でしたね。……すみません。人気のない静かな場所に連れてこられたので、てっきり集団暴行でもされるんじゃないかと思っていたのですが。まさか謝られるとは思っていなくて」

「……え、えぇ〜。じゃあ、着いてきちゃダメだろ」

「いえ、橋本正義。同級生に着いてこいと言われたのは初めての経験で興味があったから着いてきたのです。思えば、誰かに頬を叩かれたのも初めての経験でした。あの時、上手く応えることが出来なかったのですが。私は何と言えばよかったんでしょうか? お父様にも打たれたことないのに、とかどうでしょうかね?」

 

 どうやら森下さんはアナタ達に集団暴行をされると思っていたようです。

 

「灰原皐月、アナタの謝罪は受け取りました。もしよろしければなのですが、私と"お友達"になってはいただけないでしょうか? 連絡先を交換しましょう」

 

 私はアナタに興味があります、と言葉を締めて森下さんは端末を取り出しました。特に断る理由もないのでアナタも端末を取り出します。

 森下さんは少しだけ嬉しそうに、慣れない手つきで電話番号を見せてきます。

 その後チャットアプリにも登録し、友達登録の仕方が分からない森下さんへやり方を教えるために彼女の端末を見ていると、チャットアプリの登録欄の名前がアナタのものしかないことを知りました。

 

 ふと、アナタは極道の知り合いが以前言っていたことを思い出します。

 

 どんなものであれ女に初めてを刻むの興奮する。特に消えない傷跡は最高、とのことです。

 

 アナタは少しだけ知り合いの気持ちが分かったかもしれません。

 

「今日は良い日になりました。それではまた明日」

 

 森下さんは連絡先を交換した後、すぐに寮の方へと帰って行きました。

 

「……なんというか、変な子だな」

 

 橋本君は帰って行く森下さんを見ながら言いました。

 確かに、森下さんは少し変わっているのかもしれません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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