よう実 ハードモード リメイク版   作:クンクンクン

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テスト1週間前

 

 

 テスト1週間前。そろそろテストが始まりますがアナタは特に何も変わらぬ日々を過ごしています。かといって、勉強を全くしていないというわけではありません。

 アナタはテストを問題視していませんが、勉強をしない理由にはなりません。受験することを決めてから習慣になっている勉強は退屈も紛らわせてくれるもので、アナタにとっては暇つぶしの一環のようなものとなっています。

 放課後は自室でしか勉強をしないアナタですが、少し環境を変えてみようと思い今日は図書館に足を運びました。

 

「おや、灰原皐月ではないですか。こんな所で奇遇ですね。私は勉強でもと思い来たのですが、あなたは?」

 

 アナタが図書館に入ろうとすると、入り口付近で森下さんと遭遇しました。

 アナタは図書館に来るまでの経緯を要約して伝えました。

 

「なるほど。……もしよければ、これから一緒に勉強でもいかがですか? ついでに掲示板や学校の話なども」

 

 森下さんの申し出をアナタは断ってもいいし、受けるのもいいでしょう。もっとも、特に断る理由も用事もないため、アナタは森下さんと2人きりで勉強会を行うことにしました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これが友達との勉強会。1人でやる勉強の方が効率的だとは思いますが、気分を変えるという意味ではいいのかもしれません」

 

 アナタと森下さんは少人数で座れるテーブル席に着き勉強会を始めることにしました。同学年の誰かと一緒に勉強をするというのは、アナタにとって授業以外では初めてのことです。

 ですが、いざ勉強しようにも森下さんの手元には勉強道具はなく、アナタのことをじっと見つめてきています。何か話したいことでもあるでしょうか?

 

「…そういえば、灰原皐月。先生の言っていたテストを"必ず乗り越えられる"という言葉……それに私はひどく違和感を覚えたのですが、あなたはどう思いましたか?」

 

 どうやら勉強ではなく考察の時間のようです。アナタは勉強道具を仕舞いながら考えます。

 森下さんは違和感があると言いますが、必ず乗り越えられるという言葉を教師である真嶋先生が言うことにアナタは違和感を感じません。

 ですが、テストで赤点を取ると退学の可能性があることを先生は明言していました。

 退学するかもしれないのに、必ず乗り越えられる。言葉をまとめてみると矛盾していることが分かります。

 

「退学するかもしれないのに、必ず乗り越えられる。信頼の籠った言葉と受け止めることは簡単ですが、私は何か裏があると思っています。いわゆる、このテストには必勝法がある。というやつでしょうか」

 

 テストの必勝法など勉強するほかないと思うのですが、クラス内でなら答案の共有やカンニングペーパーを用意してもいいのでしょうか。

 もっとも、秘密裏に進めるならテスト中も巡回している先生の目を掻い潜り、監視カメラの死角となる席にいなければ成立しません。

 そんな事をするよりも普通に勉強をした方が点数に期待できるでしょう。

 

「学校がカンニングペーパー前提の試験を作る可能性は低いでしょう。となれば、教室内……いや、学校のどこかにテストの答えを隠しておくとか?」

 

 アナタにはテストの答えを生徒に見つかる可能性がある場所に隠す必要性が分かりませんが、必ずということは確実性の高い方法があるのでしょう。

 ですが、テストをどうにかするというやり方よりは、退学者をどうにかすることができる可能性を示唆していたという方がまだ納得できます。

 なぜなら、アナタはその答えを知っているからです。

 

「退学者への救済措置? ……なるほど、確かにそんなものがあれば退学者を出すことなく乗り超えることも不可能ではありません。……しかし、1億ポイントですか。平均生涯年収の半分以上も必要とは、学校は私たちの金銭感覚をどうしたいのでしょうね」

 

 入学して1月程度の一年生に要求してもいい額ではないでしよう。

 1億ポイント必要なんて後出しをして、生徒に退学が簡単に起こり得ることを意識させ緊張感を与える。なんて考えでもあるのでしょうか。

 

「赤点一つで即退学なんて、露見しようものなら色々なところから叩かれそうですが。これはあくまでも学校の方針で、私達が考えることではありませんね。灰原皐月の話を鵜呑みにするならば、救済措置があるわけですからまだ……いや、ひょっとしたら救済措置は退学が決定する前にも使えるのでは?」

 

 退学前というと、退学する原因をどうにかするために何かできるということでしょうか。

 

「まだ仮定でしかありませんが……例えば退学する原因を赤点として、その赤点をどうにか出来たら退学することはありませんよね?」

 

 当たり前の事ではありますが、退学する原因がなくなれば退学をする必要はないでしょう。

 おそらく森下さんは、その原因を無くすこともまた救済措置と同じ様に対処することができるのではと言いたいのでしょうか。

 

「そうです。例えば赤点なら、問題となるのはテストの点数になります。退学を取り消すためにポイントを使うことができるならば、テストの点数をどうにかするためにもポイントを使うことができても不思議ではありません」

 

 まぁ、退学をポイントでどうにかできるのなら点数を買うことも不可能ではない、という考えは納得できるものです。 

 しかしながら、退学が決定しているのにその原因を消してしまえるなんて仕様を学校側が許してくれるのでしょうか。前もって点数を買っておくなどの保険みたいなシステムならまだ分かるのですが。

 

「先生に聞けば答えてくれるでしょう。……そもそも赤点を取らなければいいという話ですけどね」

 

 アナタと森下さんによる救済措置についての考察がひと段落したところで、少し離れた席から場違いな大きい声が聞こえてきました。

 

「おい、暴力を振るう気か? マイナスになるかもしれないぞ?」

「減るポイントなんざ持ってねーんだよ!!」

 

 どうやら図書館にて、掴み合いの殴り合いが始まりそうです。

 

「図書館を利用しているにしては大きな声を出して勉強をしていたグループ。あそこが元凶ですか」

 

 森下さんは視線を騒動の中心なにあるグループに向け、少しだけ嬉しそうにしています。森下さんは暴力が好きなのでしょうか? 

 

「嬉しそうでしたか? 私としては嬉しいというよりも興味が湧いたといった方が正しいです。ポイントが減るという事実を知っていてなお、暴力を振るうに足る理由があるのか。私はそこが気になります……ところで話は変わるのですが。灰原皐月はこの学校がどのようにして合格基準を出しているか考えたことがありますか?」

 

 森下さんが質問してきている最中、揉めていた2人の間に1人の女が仲裁役として入っていきました。

 その女はあっという間に事を納めて、赤髪の男と揉めていた男は近くにいた仲間と共に図書館から出て行きました。

 アナタはその様子を眺めながら、森下さんの質問に答えます。

 クラスポイントによってクラス毎に格差が出来ているのは、坂柳さんや葛城君達が言っていたように勉強や学校生活が関わっているのでしょう。しかし、格差を見る限りでは一概に成績の優秀な生徒を集めたというわけではなさそうです。となると、学校の成績以外で何か目を見張るものがある生徒が選ばれているのではないでしょうか。

 

「なるほど。学力以外を見ているというわけですか。ですが、一芸に秀でているものこそ、この学校に来ないのでは?」

 

 アナタは学力以外のモノを重視していると言いましたが、より詳しく言うならいくつかのタイプを選んでいるのではないかと考えています。  

 例えば、学力も高く運動も得意だが、コミュニュケーション能力に致命的な問題がある場合はDといった具合に、大きな欠点を抱えているものは例え基礎能力が高くとも能力が低いクラスに当てられる。欠点と美点を考慮して選んでいるのではないでしょうか。

 ですが、この判断基準では生きてきた環境に問題があるアナタがAクラスであることに疑問が生じます。現実的ではありませんが、生まれや環境を一切考慮せず能力のみを見ているのでしょうか。

 だとすれば驚愕すべきことです。全国……は言い過ぎかもしれませんが万単位の子ども達を能力のみを見て選抜するなど人間にできることなのでしょうか。

 

「情報が足りないですね。クラスポイントの減少を目安にするならば……Dクラスなどはクラスポイントが0と非常に悲惨な結果となっているので、授業態度などを知りたいところです。灰原皐月はDクラスに知り合いはいないのでしょうか?」

 

 アナタは以前、Dクラスを含めた全クラスを橋本君と共に調査をしたことがありますし、たまに櫛田さんから愚痴のメッセージや電話が来ます。

 B組はA組と比較しても授業態度にほとんど差はなく、Cクラスもまたある時を境に授業態度がとても良くなったそうですが、その原因が脅迫や暴力によって改善されたという話です。最後にDクラスですが、授業態度は壊滅の一言でまとめられます。私語、席移動、端末操作、寝る、遅刻。最低でもこれらを常習的に行なっているようでした。

 

「少なくとも、優秀な生徒ばかりを集めている学校ではないのでしょう。言い方は悪いですが、劣等生をあえて生み出すことで上位の生徒に安心感を与えることを目的としているとしか思えません。ポイントなんていう目に見える分かりやすいステータスもありますからね」

 

 アナタとしては敵対するかもしれないクラスには成長せずそのままでいてもらったほうが楽なのでありがたい話です。

 しかし追い詰められたらなんとかしてやろうと躍起になる人間がいることをアナタはよく知っていますし、それをアナタ自身が結果で証明しました。

 追い詰めても全てを根絶させるまで油断するな。身に染みて理解しているアナタはこの先、櫛田さんのためにDクラスを追い詰めなくてはいけません。

 

「結局、勉強はしませんでしたが、お喋りだけでいい時間になってしまいました。こんなことは初めてで中々に楽しかったです。名残惜しいですが、そろそろお開きにしましょうか」

 

 アナタは頭の中のプラン構築を止めて、頷きました。

 端末の時間を確認すると17時30分。終わるには妥当な時間でしょう。

 

「では、また明日」

 

 アナタは森下さんと別れ、寮へと帰りました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 寮へ帰り、アナタが自炊をしていると端末にメッセージが入りました。

 

 "成功"

 

 短い文章ですが、アナタには何を意味しているのかよく分かりました。

 

 アナタは最初の一手でDクラスを潰そうと考えています。

 

 アナタにとって日常だったギャンブルの時間が久しぶりにやってきました。

 

 

 

 

 

 

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