よう実 ハードモード リメイク版   作:クンクンクン

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坂柳さんと葛城くんと②

 

 

「……今日は灰原がDクラスと契約した件についての話を聞こうと思っていたんだが。坂柳も同じか?」

「えぇ。私も気になっていたので、いつかは聞こうと思っていたのですが。間の悪いことに灰原君とはすれ違いが多くて……」

「……そういえば葛城。それに坂柳もだが。お前達はなぜ灰原がDクラスと契約を結んだことを知っているんだ?」

「それについては"情報共有掲示板"を見たからだ。一年生のみが使えるアプリが入っているから見てみるといい」

「私はDクラスの方から少々。ですが、葛城君の言う通り掲示板にはその類の噂が連日に渡って書き込んでありますよ」

 

 龍園君も言っていましたが、現在の掲示板はDクラス関連の話題で持ちきりです。

 掲示板は現行しているものと過去のアーカイブされているものがあるようで、今現行しているスレッドは30程度でしょうか。エロ本を見つけたなどの高校生らしい話題から、学校の怪談のようなものなど。かなり雑多な掲示板となっています。

 しかし、最近の掲示板のスレッドの殆どはDクラスについてのことばかりです。

 アナタは現行している"Dクラスの借金女王Hの失策wwwwww"というスレッドを見てみることにしました。

 

「最初に誰が投稿したのかは不明ですが、AクラスのH。……灰原君がDクラスに対し理不尽な契約をしたという内容が、過去の掲示板で取り上げられていました。ですが、次第に契約の内容や灰原君ではなく、契約することを決めたDクラスのとある人物が話題の中心になっています」

「内容はDクラスのHについて……名前は出ていないが、おそらく堀北鈴音のことだろう。クラスメイトに聞いた話では、この掲示板で個人名を書くと違反ワードとして検知されスレッドが消されるらしいが……イニシャルなどにすれば、しばらくは問題ないらしい。まぁ、性格や容姿などが書かれていれば誰でも分かるため意味があるかは分からないがな」

 

 内容としては、H……堀北さんへの悪口言い合い大会のようなものでしょうか。単純な罵倒や、こういった罰を与えてやるなどのイジメの打ち合わせのようなやり取り。果ては、堀北さんがいつ退学するか賭けようとする流れも見られます。

 

「内容は堀北の人格否定が大半だ。IDから誰かを特定することはできないが、複数の人間が堀北を貶しているのは確かだ。……おそらくDクラスの人間がな」

「なんでDクラスの人間が……。むしろ擁護する立場なんじゃないか?」

「契約内容をある程度知っていて、契約をすることを"決めたらしい"堀北さんに対する恨みを持つ人間となればDクラスの人間しか考えられません。それに、灰原君はAクラスのHと名前は正確に出てはいませんが、堀北さんを策略で嵌めた人物として見られている可能性が極めて高いです。Dクラス内で契約を結んだ相手として灰原君の名前が伝えられていても可笑しくありませんし、掲示板で契約の内容について詳細に触れられているのも根拠の一つとして見ていいでしょう」

 

 掲示板での堀北さんはかなりの人気者のようで、坂柳さんの言う通りDクラスの人間が恨みのあれこれをぶつけているのでしょう。

 もっとも、契約を提案したアナタ以上に、堀北さんに向けてヘイトが集中している状況が何故作られたのかアナタには心当たりがありますが、わざわざこの場で言うこともないでしょう。

 それに、Dクラス以外の人間が悪ノリして堀北さんに攻撃している可能性も否定できません。

 

「……普通の掲示板ならなんとも思わないが、顔を知っているかもしれない一年生の誰かが書いていると思うと途端に気味が悪くなる。伏字にはなっているが、堀北に売春まがいのことをさせようと書き込んでいる奴もいる。……学校側はこの状況をどうするつもりなんだ? 明らかにイジメの範疇だろう」

「一応、内容が過激になりすぎたり名前以外にも設定されている違反ワードが検知されるとスレッドは消されるらしいですよ。……ですが、この掲示板は氷山の一角でしょう。例え掲示板そのものを止めたとしても、チャットアプリや電話などの連絡手段もありますし、例えそれらを使わなくとも打ち合わせは直接会えば事が済みます。掲示板の様子を見るに、いつ堀北さんへの本格的な虐めが始まっても可笑しくありませんが。学校側はどう対処するのでしょうね?」

「この掲示板について、俺は先生に聞きに行ったことがある。学校の対応としては、実名を出したり特定の人間への人格否定や脅迫まがいのことをした生徒はチャットアプリの履歴の確認や掲示板のIDを特定され、プライベートポイントを没収されたり、所属しているクラスのクラスポイントを減らしたりするペナルティが与えられるようだ。普通の学校のように謝罪をさせるだけではなく、イジメに分類される問題はポイントの支払いで解決することもよくある事だそうだが……」

 

 学校側の言い分を悪く言い換えるなら、ポイントさえ払っていれば多少のオイタはやってもいいということなんでしょうか。

 

「……やはりこの学校はおかしいな。未来を担う人材ではなく、ポイント……金があれば何をやってもいいという思想を植え付ける学校としか思えん」

 

 とは言っても、現実的な罰となるとポイント辺りが妥協点ではないでしょうか。それ以上は退学や停学、警察のお世話になるぐらいしかないでしょう。

 それに、こういった言葉を不用意に使うと賠償金が発生するから気を付けようを実践形式で学ばせている。という肯定的な見方もできるなと、アナタは思いました。

 

「…‥話が逸れそうだから戻すぞ。正確な情報ではないかもしれないが、掲示板では灰原がやったと確信しているような話や、契約をした時のやり口の情報などが書き込まれている。どれも荒唐無稽に思えるが、これらの内容は真実か?」

 

 アナタは一通り見ましたが、確かに掲示板に載っている情報とアナタとDクラスの間で行われた契約には類似点が見られます。しかし、やり口に関しては想像で書かれている内容だと断言できるでしょう。

 

「流石に俺も、灰原が堀北のハメ撮……げふんげふん。脅すための動画を持ってたり、Aクラスの男を貸してやるから……なんて、ことはないんだな」

 

 櫛田さんの動画はいまだにアナタの手元にありますが、堀北さんをハメ撮りした覚えはありません。

 それに、アナタはそもそもハメ撮りを手段で使わないでしょう。脅すことを目的にするのであれば殴ったり蹴ったりする暴力を使う方が圧倒的に楽だからです。

 知り合いの極道曰く、脅したいし強姦したいけど時間がない。そんな時は裸に剥いて適当に腹を殴れと。実演しながら教えてくれたことがありました。

 裸に剥くことで精神的なことがどうたらと言っていましたが、アナタはまだ実践したことがないのでその効果の程がよく分かりませんし、ハメ撮りと労力がさして変わらないように思えます。おそらく、知り合いの極道の性癖なだけでしょう。結局、腹を一通り殴ったら普通にセックスをし始めていました。

 アナタは似たような事を実際にやられたことがありますが、別に服を脱がされて寒いなくらいの感想しか出てきませんでした。

 

「ですが、掲示板の情報を鵜呑みにして、灰原君のように多額の借金を負わせるために過激な行動をする生徒が出てくるかもしれませんね。なんせ、実際に成功しているわけですから。……そうは思いませんか灰原君?」

 

 そんな役にも立たないことを思い出していると、坂柳さんがアナタに話を振ってきました。

 確かに成功はしましたが、あの契約はDクラスに殆ど時間が残されておらず、選択肢が殆ど無い状態に追い込んだからこそ成り立つものです。

 それに成功例があるからこそ、互いに警戒し合い、下手な契約は絶対に結ばないと慎重になる人間が増えるんじゃないでしょうか。

 

「出来ると分かった人間が、やらない理由がないでしょう。もっとも、ポイントの重要性を理解している人間が灰原君のように大胆な手を使うかは分かりませんがね」

「……とりあえず、話すことは尽きないがそろそろ本題に入らせてもらいたい。このままだと、時間がいくらあっても足りないからな」

「……はぁ。結局、私要らなかったじゃない」

 

 葛城君が話を区切り、神室さんは愚痴をこぼします。

 神室さんはあまり発言をしておらず、話自体に興味がなかったのか偶にウトウトしていて、アナタが坂柳さんの持ってきたお菓子を取る時に少し動いたりすると肩を跳ねさせてこちらを怪訝な目で見てきます。

 アナタが森下さんにしたビンタが頭に強く残っているのか、自分も叩かれると思ったのでしょうか?

 

「私はまだお話ししても構いませんが」

「確かに今までの情報交換は有益だった。だが、俺の本題は違う。灰原、お前に提案があるんだが……」

 

 葛城君は坂柳さんの方をチラリと見て言葉を続けました。

 

「どのような内容でDクラスと契約を結んだのか、その詳細を教えてもらいたい。……そして出来るなら、その契約はAクラスのために使って欲しい」

 

 使って欲しいと言われても、具体的にどうすればいいか伝わってこなかったので。アナタは葛城君に契約をどう使うのか聞きました。

 

「お前は今Dクラスの生徒からヘイトを集めているだけじゃなく、他のクラスの注目も集めている。掲示板の情報でしかないが、かなりのポイントをもらう契約なんだろう? その契約を悪用しようとお前個人を狙ってくる人間や、不満を溜めたDクラスの人間から直接暴力を振われる可能性も十分に考えられる。そこで、その契約をAクラス全体のものとして扱い、獲得できるポイントをクラスのため……例えば情報の購入や取引に使わせてもらいたい。それに、Aクラスを維持するためにも「ちょっといいですか?」……なんだ、坂柳」

「いえ。葛城君が随分と傲慢な物言いをされているので、つい口を挟みたくなってしまって」

「なんだと? 俺はAクラスの為に……」

「だって、契約は灰原君が頑張って掴み取った成果ですよ? それをいきなり、危険だから俺に寄越せ管理してやると言われて、素直に従う人間はいませんよ」

「だが、Aクラスを維持するためには灰原の協力が必要なのはお前にも分かるだろう」

 

 アナタは別に気にしてはいませんし、葛城君の言い方にそこまで傲慢さは感じませんでした。

 しかし、Aクラスを維持する為にDクラスとの契約は本当に必要なのでしょうか? アナタには契約が必要となる場面があまり思いつきませんが、詳細を知らない葛城君や坂柳さんは有効的な使い方を既に考えているのでしょうか。

 

「そうですね。もし灰原君が私に今後のクラスの方針とその契約についての一切を任せてもらえるなら……あなたにはAクラスの金庫番のポストを約束します。役割としてはAクラス全体のポイントの管理をしてもらう事になるのでしょうか? 一見大変に思えるかもしれませんが、私の許可さえ取ってもらえればある程度自由にポイントを使ってもらっても結構ですし、他にも相応の見返りを用意しますよ」

「傲慢なのはどっちだ……。第一、ポイントの管理を一個人に任せるなど、どれほどの反発が」

「私ならその反発も抑えられますよ。そういえば、葛城君は灰原君に一体どんな対価を渡すんですか?」

「……Aクラスに残ることが、俺たちの最大の目的だ。それに、灰原の行動によって全員がAクラスに残るために、クラス全体に尽くす流れを作ることができれば」

「ふふっ、それなら葛城君自身が他クラスから契約を取るなり、ポイントを集めるなりしてクラスに奉仕すれば良いのでは? あなたがやろうとしているクラス作りは、働き蟻から一方的に搾取して働かない蟻に奉仕させるものです。知っていますか? 働く者へ報酬が出るのは現代社会では一般常識なんですよ? それを怠るようでは、クラスは道半ばでバラバラになってしまうでしょうね」

「だが、Aクラスの維持のために協力するのは当たり前のことだろう! Aクラスに残り卒業することが最大の報酬じゃないのか!!」

「その報酬に魅力があればの話ですが……と、私達だけが話していてはいけませんね。灰原君はどうですか? 私と葛城君、どちらに方針を任せるべきだと思いましたか?」

 

 いつの間にやら、アナタとDクラスの契約を葛城君と坂柳さんに任せる決断を迫られていました。

 内容をまとめると……

 

 葛城君は"Aクラスのために契約を使って欲しい。けどAクラスに残るためなんだから報酬なんていらないよね?"

 坂柳さんは"報酬も出すしクラスでの立場も保証するよ。でも私の方針には従ってもらうし契約は好きにさせてもらうよ?"

 

 と、こんな感じでしょうか。一見すると葛城君側にメリットはありませんが、坂柳さん側も要らぬ厄介事を背負わされる可能性が高いでしょうし、そもそも金庫番というポストにアナタは微塵も魅力を感じていません。

 この契約はあくまでも櫛田さんとの約束を守るために必要だったもので。ついでにクラスの一つでも潰せたら楽だなぁと思っていた泡銭のようなものです。

 要するに、手放しても惜しくはないのですが。果たしてこの2人に契約を譲り渡す選択をしても良いんでしょうか?

 

 さて、アナタはどうしようか。

 浮かんできたのは3つの選択肢でした。

 

『先に2000万ポイント払ったほうに契約を売ってやる』

『特に関係のない神室さんに契約を譲り渡す』

『気に食わないので誰にも契約を譲り渡さない』

 

 

 

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