よう実 ハードモード リメイク版   作:クンクンクン

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少し時間が飛んで、事件の審議の打ち合わせです。原作にない設定(今更)が登場しますので、承知の上でお読みください。


審議の準備

 

 

 

 

 7月7日。須藤君の暴力事件はどうやら確定的であり、今日はその事件をどうするかの"事前打ち合わせ"が行われます。

 なぜアナタがその場居合わせているのかというと、今回の事件における"裁判員"のような役割を持った一人として招集されたからに他なりません。

 

「ではこれより、Cクラスの石崎大地・小宮叶吾・近藤玲音……そしてDクラスの須藤健と堀北鈴音にまつわる一連の暴力事件についての事前打ち合わせを始めたいと思います。進行は私、生徒会書記の橘茜が務めさせていただきます。そして、今日の打ち合わせには当日の審議で客観的な立場から議論し判断して頂くためにランダムで選出された生徒にも参加してもらいます。三年Aクラスから堀北学。二年Cクラス"鹿賀島奈那美"。一年Aクラス灰原皐月。以上の3名には今回の事件をどうするか意見を出して頂きます。また各クラスの担任の先生と、Dクラスの櫛田さん、綾小路君も参加します。異論はございませんか?」

 

 以前刑務所にお勤めに行っていたという知り合いの極道の顧問弁護士から聞いた話では、裁判ではあらかじめどんな内容にするのかの打ち合わせがあるようで、本番で進行がグダグダにならないように証拠を共有しておくのが普通だそうです。

 別に事前打ち合わせなどせず普通に審議をすればいいんじゃないのか、第三者の生徒は関わらず先生がどうするか判断しないのか、そもそも時間を使って裁判もどきをやる必要があるのか等、この場にいる事に対する疑問はまだ他にもありますが、アナタは受け入れることにしました。

 

「ではまず事件の内容を整理していきたいと思います。須藤君。暴力事件が起こったとされる6月28日に何をしていたのか簡潔に説明してください」

「俺はその日、小宮と近藤に呼び出されたんだ。そこにいる灰原にやられた借金を無くす準備ができたってよ。それで……その、堀北と一緒に行ったんだ」

「小宮君、近藤君。これは本当ですか?」

「はい、事実です。須藤君がとても困っていると噂を耳にしたので、同じ部活の仲間として僕は彼を助けようと思い声をかけました。そして助けようとしたのですが……」

「てめぇ‥‥ッ! それも結局嘘だったじゃねぇか!」

「僕達は嘘をついていません。須藤君は無理矢理僕らからポイントを奪おうとして……現に僕らは怪我も負っていますし」

「それもお前らから……っ!!」

「落ち着いてください須藤君。それで、呼び出された須藤君はその後何をしましたか?」

「……チッ! その後は、条件が飲めねぇから言い合いになって、一緒にいた石崎が俺を殴ろうとしたから殴り返してやったんだ。そんで、小宮も近藤もこっちを殴ろうとしてきたから同じようにしてやったんだ。正当防衛だぜ、これは!! ……それに、堀北も一緒に居たから守らなきゃってなってよ。それで殴ったら石崎や小宮が訴えてやるだのポイントを貸さないだの言ってきたから、無視してそのまま帰ったんだ」

「石崎君、小宮君、近藤君。須藤君のこの話は真実ですか?」

「いいえ、違います。須藤君はこちらの出した条件が気に食わないからと、いきなり殴りかかってきて。殴るのをやめて欲しかったら無条件でポイントを貸せと言ってきました」

「嘘ついてんじゃねぇ!! 大体あんな条件飲めるかっての!!」

「堀北さん。小宮君達の話は真実ですか?」

「……」

「……堀北さん? えっと、大丈夫ですか?」

 

 

 

 

 

「暇、してますね。私も暇ですので、少しお話しませんか?」

 

 もっとまとめて話してくれないと分かりづらいと思いながら、アナタは窓の外をボーッと眺めていると、隣に座っている女から声をかけられました。確かアナタと同じく選出された鹿賀島さんだったでしょうか?

 

「君は確か永木と知り合いでしたよね? どういった経緯で知り合ったんですか?」

 

 アナタは食堂で会ったと言いました。

 

「珍しいですね。彼は奥手でいつも周りの目線を気にしながら生きてるのに、自分から話しかけるなんて」

 

 鹿賀島さんは驚いているようですが、永木との会話はどちらかといえばあっちから話しかけてくる方が多いんじゃないでしょうか。

 

「彼が嬉しそうに話してましたよ。気が合いそうな友人ができたと。彼の芸術性は高く評価されていますが、独特の感性をしていますからね。友達認定したのは君が初めてなんじゃないでしょうか。……ところで、話は変わるんですが。"金貸し"に興味はありませんか?」

 

 金貸しというと、あの金貸しでしょうか。アナタはこの学校に金貸しを生業とする人間がいることを知らないので、話を聞いてみることにしました。

 

「その認識で問題ありません。金といっても、ここではポイントですね。どこかの誰かがひいこら稼いだポイントをあっちこっちに捌いてくのが仕事です。聞けば君は既にそこそこの契約を取ったみたいじゃないですか。それを学校全体の規模でやってみたいとは思いませんか? 今なら特典として"面白いところ"に案内してあげますよ」

 

 アナタは金を貸す側にそこまで興味がないので断りました。

 

「そうですか。気が変わったらいつでも言ってください。私達はいつでも歓迎しますよ。……それにしても長いですね。こんなどうでもいいやり取りを見せるために呼んだ生徒会長のパソコンは後でクラッキングしておくとして、部屋の前にはパッケージ剥き出しの妹物AVを山積みにしておきましょうか」

「おい、聞こえているぞ。一年生を金貸しに勧誘するな」

「生徒会長が上からものを言える立場ですか? 自分の立場をわきまえてから発言しては?」

「貴様に言われるまでもなく自分の立場は自覚しているつもりだ」

 

 そういえば、なぜこの学校では裁判ごっこをして生徒間の問題を解決しようとしているのかアナタは疑問に思っていたので、生徒会長に理由を聞いてみることにしました。

 

「…‥遊びか。確かにそう受け取るのも無理はないが、この学校ではそれがルールだ」

 

 アナタは学生が主体となって扱える問題じゃないと思うのですが、そこのところはどうなんでしょうか。

 

「いいことを言いますね。生徒の証言が必要とは言え、なぜ生徒如きが問題の判断を裁判員よろしく下さなくてはならないのか。私には分からないので生徒会長に聞いてみましょう」

「……あくまでも選出された俺たちの役目は意見を出すことだ。最終的な判断は学校側が下す。それに……」

「こほん!こほん! えー、生徒会長。一応事件の内容はまとめ終わったのですが、次に進んでもよろしいでしょうか?」

「……問題ない。今日中に事件の内容はまとめて、明日には書類にして関係者が目を通せる状態にしておく。もちろん機密文書のため、ここから持ち出しての閲覧は禁止とする……それと橘、今の俺は生徒会長ではなく当日の審議に参加する一生徒だ。生徒会長呼びはやめろ」

「あ、すみません。まなぶ、げほんげほん! ……こほん。堀北君。では、次の議題へ移ります。須藤君への処罰についてなのですが、選出された皆さんはどんな処罰が適切かと思いますか?」

「な……っ!? 俺は悪くねぇ!! あいつらから殴ってきたんだ!」

「静かにしてください。今、あなたが喋ることを認めていませんよ」

 

 アナタは全く話を聞いていなかったので、判断するに足る情報が全然ありません。

 

「少し、三人で話し合う時間をもらえないか。それまでは各自休憩とするので、30分後に再びこの部屋に来てくれ」

「分かりました。では、関係者の皆様は30分後に集まるようお願いします」

 

 生徒会長は無駄話をしていたアナタ達を気遣ってか、休憩時間を取ってくれました。

 

「……出て行ったか。ちょうどいい、この時間で灰原に話しておきたいことがある。鹿賀島、お前も出て行ってくれないか?」

「嫌です。アナタには頼めば何でもヤラせてもらえそうな橘茜さんが身近にいるじゃないですか。いたいけな一年生まで狙うなんて、生徒会長としてどうかと思いますよ?」

「……久しぶりだ。短絡的な言葉を使って他人を罵倒したい気分になったのは」

「バカ・ハゲ・インポ・短小・ワキガ・インポ・ハゲ・インポ・インポ・インポ……短絡的な言葉というのはいいものですよね。内容がなんであれ、嘘偽りの匂いがあまりしないので」

「……はぁ。取り敢えず、事件について話すぞ。お前達はちゃんと話を聞いていたか?」

「何を言っているんですか? どうでもいい話をまともに聞いているわけないじゃないですか」

 

 アナタも聞いていなかったと言いました。

 

「……灰原、お前もか。取り敢えず簡単にまとめるぞ。お前達も考えろ」

 

 生徒会長はとても疲れた顔をしています。

 

「まず、須藤は28日に近藤達に特別棟へ呼び出された。須藤曰く、借金をどうにかするための条件が呑めず、殴りかかろうとして来た石崎を逆に殴り、小宮や近藤にも襲われそうになったから暴力で対処したらしい」

「そういえば、あの一緒にいた堀北鈴音さんでしたか。あれは噂の生徒会長の妹ですよね。あの子はなぜ事件現場に?」

「……本当に聞いていなかったのか。堀北鈴音もまた須藤と同じく、借金についての話をする為にあの場所へ呼び出されていたらしい。……話を戻すぞ。近藤たちの主張は須藤とは逆で、須藤が殴りかかってきて、近藤達に殴るのをやめてほしければタダでポイントを貸せと言ってきたそうだ。証言の中で共通しているのは、須藤が暴力を振るい怪我をさせたことのみだ」

「それで、借金の条件はなんだったんですか?」

「条件は、須藤曰く"堀北鈴音を輪姦させてもらう代わりに2000万ポイントの借金を肩代わり"……する、らしい。そして近藤たちの主張は"2000万ポイントを借りるアテを紹介する代わりに紹介料として50万ポイントを貰う"というものだったそうだ」

「ふむ。一つ気になるのですが……貸すのはどこの誰なんですか?」

「……それについては誰も明言していなかった。貴様等のせいで、追求する機会を逃してしまってな」

「自分のミスを他人のせいにしないでください。そこが一番大切なところじゃないですか」

 

 アナタは生徒会長のまとめた話を聞いてもどちらの主張が正しいのか分かりませんでした。監視カメラの映像や目撃者はいないのでしょうか?

 

「監視カメラの少ない場所だったからか映像は残っていない。そして、目撃者も現在誰も名乗り出てこないため存在する可能性はかなり低いだろう」

「なら既に結論は決まっているじゃないですか。暴力を振るった方は停学。呼び出した方には厳重注意。落とし所として文句はないでしょう。例え、"罠に嵌められた"のだとしても、確かな証拠がなければこれ以上の審議は必要ないかと思いますが?」

「……近藤達が実際に怪我を負っているからといって、決め切るにはまだ早い。それに気になることがある」

「なんですか?」

「須藤が近藤達に呼び出されるまでの期間が不自然なところだ。須藤曰く、6月4日に近藤から声をかけられて借金についての話をしたそうだ。だがなぜ、近藤達は28日に須藤と堀北鈴音を呼び出した。借金を返すアテがあったから話を持ちかけたのに、それだけの期間が空いたのはなぜだ?」

「それは今回の事件に関係ないでしょう。あくまでも争点は暴力を振るった側にどれだけの罰を与えるかです。もっとも、相手が訴えを取り下げない限りですがね。……それにしても、ただ一人の女子高生を抱くために2000万も出そうとするなんて。人によっては不純と言えるのか微妙なラインですね。あなたはどう思いますか、灰原君?」

 

 アナタにとって金は借金を返済するための手段でしかありませんでした。金を払って肉体関係を築くことはおかしい事ではありませんし、不純ではないと答えました。

 

「私は不純だと思います。愛は金で買えない。私は既にその結論に至りました。金を払うことは私の価値観で相手を貶めてしまう。それに何より自分の思いを穢す行為だと私自身が決めました。重要なのは何より相手の価値観です。靴を舐めて服従すればいいのか、何も疑わず盲目的に付き従い奉仕すればいいのか。それを相手から提示されればいいのですが、自分で探さなければ意味がありません。そして、探し出すことはどんなことよりも難しい。でも、だからこそ愛おしさを感じるんですがね」

 

 聞いてもいないのに思っていたより長く自論を語った鹿賀島さんに、生徒会長は呆れた目線を向けていました。

 

「現段階の情報をまとめておくぞ。今の所、新しい証拠はなく。まともな証拠が本人達の話と石崎や小宮達の怪我くらいしかない。須藤は自身が殴ったことを認めているため罰を与えるのは確定しているが、それをどの程度にすればいいのかを現段階で決め切ることができない。よって、今から3日後の7月10日に審議を執り行う事にする。当日までに新しい証拠を提出すれば、それを当日の審議でも証拠として認めることにする。……異論はないな?」

「では、私はもういらないですね。当日には来ますので後は適当にお願いします」

 

 生徒会長と鹿賀島さんの二人で事件をどうするか決めてしまいました。アナタも特に異論はないので、鹿賀島さんと同じくもう帰ってもいいのでしょうか。

 

「……灰原。お前には話しておきたいことがある。後5分ほどだが少し時間をくれないか?」

 

 生徒会長は鹿賀島さんを止めることなく見送った後、アナタに話しかけてきました。

 話したいこととは何でしょうか。アナタは席を立つのをやめ、生徒会長の話を聞くことにしました。

 

「堀北…‥鈴音についてだ。あいつが一年生の掲示板でどんな扱いをされているかは知っているか?」

 

 アナタは知っていると答えました。

 

「今では複数の人間が掲示板であいつの誹謗中傷をしている。あいつ自身の失態とはいえ、掲示板の内容は少し度が過ぎている。意図的にあいつを狙って攻撃をしているのは何故か……その理由は分かるか?」

 

 アナタは分からないと答えました。

 

「この掲示板は火種が大きくなりそうだから独自に調べさせてもらった。結果、誰が書き込みをしたのか、誰がスレッドを立てたのかは粗方把握することができた。最近はCクラスの生徒が中心となっているが、あいつの失態に関する最初の投稿をした人物はDクラスでもCクラスでもなかった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一年Aクラスの橋本正義。灰原……貴様は奴と交友関係があるそうだが、何か知っているか?」

 

 

 





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