よう実 ハードモード リメイク版 作:クンクンクン
会話多めです。
審議の内容は、原作に少しの追加要素を入れただけなのでバッサリ割愛しています。
「……審議の規定時間が経過しました。ではこれより選出された皆様には今回のDクラスとCクラスの審議に対し、どのような判断を下すのが適切かを決めていただきます。15分程時間を取りますので、隣の会議室に移動をお願いします」
アナタは生徒会長と鹿賀島さんの後ろに付いていき、会議室を出ました。
出る間際、入院している病人並みに顔色の悪い堀北さんの顔がアナタの視界に入ってきました。
「お前達はどうするつもりだ?」
「人の意見が聞きたいのなら、最初に自分の意見を言うのが筋というモノでは?」
会議室に入ると、早速生徒会長がアナタや鹿賀島さんに意見を求めてきました。
鹿賀島さんは生徒会長の意見を聞いてからでないと話さないそうなので、アナタも生徒会長の発言を待つことにしました。
「…‥俺は、今回の審議の内容で判断を下すなら、須藤を"有罪"にすることが正しいと思っている」
「理由は?」
「簡単だ。例え相手が挑発してきたとしても怪我をさせている。殴られそうになったからといって殴り返すのは愚の骨頂。如何なる経緯があろうと、須藤の罪は消えない。お前達もこの点に関しては認めざるを得ないだろう」
「ですが、今回の審議では新たな証拠が出てきましたよね。須藤君と妹さん、それにCクラスの方々。今回の事件に関係する人間が全員捉えられている"写真"です。あの胸が大きい……確か、"佐倉さん"が撮ったものです。この点に関しては?」
「証拠としては弱い。それに、石崎が居るからと言ってCクラス側に暴力を振るう明確な意思があったかは不明だ。近藤達の"須藤が暴力を振るってくるかもしれないから石崎に付いてきてもらった"という言い分にDクラスは、須藤に危害を加えるために石崎を呼んだのではないかと異議を唱えていたが、結果的にCクラスは正しい判断をしたと言える。それに、石崎が居ることにおかしな点はない。バスケットボール部員同士での話し合いならともかく、最初から借金についての話し合いが目的だったからだ」
「成程。では、私は須藤君を"無罪"としましょうか」
「…‥理由は?」
「まだ審議を終えるべきではないと判断したからです。生徒会長は"目撃者の証言"を信じないのですか?」
「確かに、"Dクラスの佐倉"の証言はあった。だが、その証言は本人が見たという記憶だ。写真を撮っているため現場に居合わせたのは証明されているが、肝心の写真はただ5人がその場にいる事しか分からない。"Cクラスの石崎達から殴りかかって来た"事を証明するには不十分だ」
「Cクラスの先生にも色々と言われていましたが、写真を撮っている以上その場にいた事実は覆りません。一部始終を見ていないと判断するのは早計ですし、佐倉さんが見ていないという証拠もありません。例え被告側のクラスに所属しているからと言って、現状唯一の目撃者である佐倉さんの意見は、十分立派な証拠だと私は思いますがね」
「……灰原、お前はどう思った?」
生徒会長と鹿賀島さんの長い話し合いを船を漕ぎながら聞いていたアナタは、欠伸をしてから須藤君を"無罪"にすべきだと言いました。
「その理由は?」
鹿賀島さんは理由を聞いてきましたが、理由は明白です。先程までの会話で出てこなかった"証拠"が、須藤君のみが罰を受ける理由にならない事を証明出来るかもしれないからです。
「……Dクラスの"櫛田"が提出したアレか」
「おぉ。確かにあの証拠は見逃せませんね。なんせ、須藤君を罠に嵌めようとした記録に他なりませんから」
アナタは印刷された紙に記されている証拠に目を向け、この証拠をどう判断するのかを聞きました。
「"櫛田とCクラスの生徒のチャットでのやり取り"。内容は確か……」
チャットの文章を要約すると"石崎達が須藤と堀北を嵌めようとしているのを聞いてしまった。6月28日に特別棟に呼び出し決行すると言っていた"と、いう内容がこの審議の前日に櫛田さんの元へ送られてきたそうです。
「この証拠も決定的とは言い難いですが、貴重なCクラスの生徒からのリークです。櫛田さんの元へは昨日届いたらしいですが、生徒会長はどうお考えで?」
「……無視はできないが、信頼はできない。確認のため、そのチャットを送った生徒本人を召喚するか、学校側にCクラスの生徒本人か確認を取ってもらわない限り、俺は証拠として認めない」
「随分と酷なことを要求しますね。そのチャットを送った生徒は勇気を振り絞って櫛田さんに文章を送った筈です。生徒会長ともあろう人が、善良な生徒を疑うなんて。橘さんが突然号泣し出しても知りませんよ?」
「橘はそんなに器用な奴じゃない。……それに、櫛田がポイントや契約を用いてDクラスに有利な、捏造された証拠を入手した可能性もある」
「おや、確かランダムで選出された生徒や審議に参加する生徒はポイントのやり取りや契約をするにも制限があったはずです。各担任の先生から説明がされているはずですから、それは考えにくいのでは?」
「例えポイントで入手したモノではないにせよ、その証拠は事件以降に送られたモノだ。DクラスやCクラスの生徒のみならず、他のクラスの人間も事件の詳細を把握するには十分な時間があった。それに、須藤や石崎達に話を聞いた人間ならばそのメールを作ることは容易だろう。よって、正確な日時や場所を知っていたとしても、Cクラスの生徒が送ってきたとは断定できない。そのメールは石崎達が事前に犯行を企てていたという決定的な証拠とは言い難い」
「ふむ。生徒会長の懸念は最もですが、そろそろ時間も迫っています。……どうでしょうか、ここは取り敢えず審議を延長しませんか? 判断を下すには怪しい証拠が揃っていますし、一方的に"有罪"とは断定できないでしょう?」
「……そうだな。では、今日の審議において俺は須藤を"無罪"と判断しよう。鹿賀島、お前も須藤が"無罪"で異論はないな?」
「……おや、もしかして灰原君がここで"無罪"だと言えば須藤君は"無罪"になるのでは?」
「灰原、お前は須藤を"無罪"にするべきだと言っていたが、その意見に変更はないな」
アナタはググッと伸びをしてから、生徒会長の方を向き答えました。
須藤君は"無罪"にすべきだと。
「……そうか。では、俺たち全員の意見は須藤を"無罪"にするという事でいいんだな?」
「須藤君が怪我を負わせたという問題は残っていますが、それは先生方が指導してくださるでしょう。……ところで生徒会長。一つ、よろしいでしょうか?」
「知りたい情報でもあるのか? 何故、俺がDクラスを無罪にすべきだと意見を変えたのか。あるいは、生徒会長としての立場でこの審議に参加していない理由か?」
「いえ、そんなどうでもいいことではありません。この後の審議の流れについて言いたいことがありましてね。実は今回の審議が始まる数分前に、私の元に証拠品を持った生徒が見つかったという情報が入りました。さてどうしたものかと皆さんに伝えるか判断を迷っていたら、いつの間にか審議が終了していたんですよ」
「如何なる理由があろうと、16時50分までに会議室に来なかった生徒へ審議の参加資格はない。よって、その証拠とやらはこの審議において無価値なモノだ」
「ですから、私は須藤君を"有罪"にしようと思います。……という事なので、審議を延長しましょうか」
「失礼します。そろそろ時間ですが、意見の方は纏まりましたか?」
鹿賀島さんが意見を変え、生徒会長が眉間に皺を寄せ、アナタは眠気を堪えきれず再び欠伸をする。そんなタイミングで、橘さんがノックをしてから部屋に入ってきました。
「……橘。俺たちの意見は分かれた。よって、審議は延長とする」
アナタは拳を強く握り締めている生徒会長を見ながら、昨日鹿賀島さんに『1000万ポイント払うなら考える』と言ったことを思い出していました。
「中々、あなたも欲が深いですね。一応確認させていただきますが、なぜ私があなたに1000万ポイント支払わなければならないのか。その理由をお聞きしても? 100万ポイントも充分破格なポイントだと思うのですが」
アナタは100万ポイント程度では、"約束を破る"意味はないと答えました。
「……成程。あなたは既に"買収"されているのですか。答えなくても構いませんが、相手は生徒会長ですか?」
アナタは鹿賀島さんに、そちらの"依頼人"と"契約内容"を明かすなら教えると答えました。
本当に鹿賀島さんに依頼人が居るかは不明ですが、鹿賀島さんがアナタに何もしないことを望んできた理由から推測することは可能です。
鹿賀島さんの説明では、"有罪"か"無罪"かを決めるのがアナタの役割です。また、全員一致でなければ審議が延長されるという点から、確実に有罪か無罪かを決めるためには意見を統一する他に、全員を買収して意見を統一させるなど手段は限られるでしょう。
では、アナタが何もしなければどうなるでしょうか? 答えは、特に意味はありません。ただ審議を伸ばすためなら、鹿賀島さん自身がアナタや生徒会長の意見の反対を主張し続ければいいだけの話です。
そこで、何故アナタが何もしないことを鹿賀島さんが求めたという話になりますが、考えられるメリットはアナタが誰かに買収される可能性があったら面倒になるからでしょう。なぜ面倒になるのか、それは鹿賀島さんに何かかしらの計画がある、もしくは依頼を請け負っているからと考えるのが普通です。
アナタには鹿賀島さんが具体的に何を企てているのかは分かりませんが、鹿賀島さん自身が計画を立てているとは考えづらいと判断しました。
生徒会長については不明ですが、あくまでも鹿賀島さんはランダムで選出された生徒だろうとアナタは思っています。
根拠は薄いですが、鹿賀島さんがこの立場を買収したところで、この審議に参加するメリットが全くないと思ったからです。勿論、同じ立場であるアナタにもメリットはありません。
となると、誰かの依頼を受けてその依頼を達成するために、アナタには何もしないで欲しいと買収を仕掛けてきた。という結論をアナタは出しました。
文章に纏めると長々としていますが、要は鹿賀島さんにはなんとなく依頼人が居るかもと思ったから、アナタは櫛田さんの時と同じようにカマを掛けただけです。
「そんな事でいいんですか? 私の依頼人となる"予定"だった人物は"生徒会副会長"です。嫌いな人間にもちゃんと頭を下げられる副会長に免じて一考したのですが、メリットがあまりにも無いので止めることに"今"決めました」
鹿賀島さんはアッサリと依頼してきた人物を明かしました。
副会長の顔や人物像を知らないためなんとも言えませんが、その副会長はどんな契約を鹿賀島さんに持ちかけたのでしょうか。
「とてもシンプルです。"審議が終わるまでの間、どんな取り引きを持ちかけられても断る"。そんな当たり前の事をお願いするために、副会長は私に300万ポイントを払うそうですよ」
一見メリットがある内容にしか思えませんが、鹿賀島さんにどんなデメリットが発生するのでしょうか。
「まず、審議にランダムで選ばれた生徒やその関係者は、審議が始まり終わるまでの期間、"示談交渉"などを除いて他者とのポイントのやり取りや契約を結ぶことを禁じられています。買収を防いだりするためには妥当なルールでしょう。勿論、裏道はありますがね」
裏道とは、もしかすると口約束でしょうか?
「最もやりやすい方法は確かにそれですね。現に、私も副会長も契約書の類は用意していません。もっとも、灰原君が何もしないと即断していれば審議が終わった後に100万ポイントを払うため、ボイスレコーダーを使い仮契約を結ぶ予定でした。端末などでも代用できるので、口約束よりも確実性のある裏道の一つですよ。ただ、これらの方法は拘束力がなく、やり逃げされる恐れもあるので利用する際は慎重にやらなくてはいけません。……さて、以上があなたの求めた内容です。口約束ではありますが、あなたの依頼人の事を教えて頂けますか?」
アナタは"彼"と口約束をしただけで、契約書を取り交わしたわけではありません。
それに、彼の名前や計画の内容を口に出すことを止められているわけではありませんし、本当に大切な情報なら他人にベラベラと喋ったりしないでしょう。
アナタは鹿賀島さんに、彼がこの審議を使ってやろうとしていることを教えることにしました。
「成程。名前と顔は知りませんが、あなたと同じ"一年生"にしては視野が多少広いようですね。……灰原君、一つ提案したいことがあるのですが」
アナタも、彼との約束を達成するために同じ立場である鹿賀島さんと手を組む事が出来れば楽になると思っていました。
「気が合いますね。しかし、私が手伝うのは交渉の場を整えるまでです。その成否については責任を負いかねます」
アナタも彼の行う交渉にまでは関わらないので、その点については問題ありません。
しかし、鹿賀島さんが自ら協力を提案してきたことにアナタは少なからず驚きました。何かアナタには想像もつかないメリットが鹿賀島さんにはあるのでしょうか。
「強いて言うなら、灰原君の匂いが好きだからです」
なんとも個人的な欲求に従った決め方です。具体的にどんな匂いがするのでしょうか。自分の匂いがどんな捉えられ方をしているのか気になったアナタは鹿賀島さんに聞いてみました。
「冗談めかして言ったつもりなのですが……そうですね。私の好きな人と同じ匂いが微かにするんです。だから協力したくなった、というだけですよ。決してあなたが好きだからとか、そういう事はないので安心してください。……無いとは思いますが、知り合いだったりしませんか?」
名前が分からないのでなんとも言えません。その人物の名前はなんと言うのでしょうか。
「恋する乙女の口から好きな人の名前を引き出そうとするなんて、あなたは酷い人ですね。例え100億積まれようが、私の口から名前を出すことはないでしょう」
経緯はともあれ、アナタと鹿賀島さんはDクラスとCクラスの審議において協力関係を築くことが出来ました。
アナタの当面の目的は審議を伸ばし、CクラスがDクラスに"示談交渉"を持ち掛ける事ができる状況を作る事です。
アナタは櫛田さんとの個人的な契約で一年以内に堀北さんを退学させなくてはなりません。Dクラス全体を叩く必要性は感じませんが、堀北さんを退学させる手段は増やしておくことに越したことはないでしょう。
さて、アナタに話を持ちかけてきた彼……"龍園君"は搾りカスのDクラスをどうするのでしょうか。
アナタは鹿賀島さんと審議をどのように延長するかの打ち合わせや、協力の対価についての話し合いをして、明日に備えました。
原作にない証言
①櫛田とCクラス?の生徒のチャットのやり取り
②鹿賀島の元に届いた情報