よう実 ハードモード リメイク版 作:クンクンクン
今までもそうですが、今話から更にオリジナル要素が強くなります。
アナタは少しだけ疑問に思った事があったので『生徒会長と話す』ことに決めました。
「そうか。……悪いが人気のない場所に変えさせてもらうぞ。あまり多くの人間に聞かせる話ではないからな」
「橘さん、どうやら生徒会長は灰原君に告白をするみたいですよ。私よりも先に、なんで灰原君に告白しちゃうんですかぁ!! ……って、止めに入るなら今しかありませんね」
「そ、そんな……。まさか、堀北君がほ、ホモだった……なんて。ははっ、頑張ってアピールしてきたはずなのに。なんだぁ、どう足掻いても私に勝ち目がないわけだぁ」
「待て、誤解だ。ただ話しておきたい事があるだけで」
「どうしてもというわけではないので良いのですが、なんだかムカついてきました。灰原君、私は生徒会長に嫌がらせをする準備がありますので、また時間のある時にでも話をしましょうね」
「……あ、鹿賀島さん今度は何をする気ですか!! また部屋の前に匿名であれなビデオが入った大量の段ボールを置くなんて嫌がらせはしないで下さいよ!! …‥堀北君、私はそれでもあなたのこと……っ」
鹿賀島さんを追いかけて橘さんも出て行きましたが、場所を変える必要はあるのでしょうか?
「……いや、いい。俺からの話は少し長くなる。先に質問があれば答えるが……何かあるか?」
アナタは一つ疑問に思ったことがあったので聞いてみることにしました。
それは、堀北さんの出した音声の証拠です。確かにあの証拠は重要ではありましたが、あんな後出しは許されてもいいのでしょうか? どんな判断基準で認められたのかアナタは少し気になっていました。
「確かに、審議に大きな影響を与える証拠を個人の判断で隠すのは本来なら認められない事だし、認めてはいけないことだ。ましてや、その当事者が隠していたという事実が明るみになれば、実際の裁判ならば罪に問われてもおかしくない。だが……正直なところ、学校側が認めたから証拠として取り扱ったに過ぎないだろう。お前も言っていたが、あくまでも生徒が主体となるこの審議は所詮ごっこ遊びのようなものだ。そんなごっこ遊びは正すべきことだが、それは現行している学校の制度を変えることのできない俺の……俺達の不徳だ。お前が気にすることではない」
ごっこ遊びにしては取り扱うものが遊びの範疇で済ませていいものではないと思いますが、アナタはそういうものかと納得することにしました。
「聞きたいことはそれだけか? では、俺からお前に聞いておきたい事がある。……お前は、今回の審議における鹿賀島の行動をどう思った?」
アナタは鹿賀島さんと口約束をして、審議を伸ばす事に協力して貰いました。しかし、側から見ても鹿賀島さんの言動にはそこまで不自然なものを感じませんでした。最後に有罪へと急に切り替えた鹿賀島さんについても打ち合わせ通りではあったのでアナタにとってはおかしな事ではなかったのですが、事情を知らない生徒会長はその点について気になっているのでしょうか。
ただ、アナタが強いて感じた違和感を挙げるならば、生徒会長が鹿賀島さんの新しい証拠を持った生徒が見つかったという信用できるかどうか分からない情報をあっさりと信じていた事です。
「……まず、鹿賀島についていくつか教えておこう。お前は勧誘されていたから分かっているとは思うが、あいつは学校内で流通しているポイントの貸し借りを大々的に行える"唯一"の人間だと言っていい。所属は2年Cクラスではあるが、3年にも大きな影響を持つ。故に、人脈もかなりのものを築いている。ポイントだけでなく情報収集能力においても、この学校で奴の右に出るものはいないだろうな。完全に信用はしていないが、奴の集めた情報は無視できない」
どれほどの規模かは分かりませんが、金貸しができているということは、相当な量のポイントを保有していなくては成り立ちません。
そんな立場になれるのは学校の運営ぐらいしかないと思いますし、そもそもそんな金貸しのような立ち振る舞いを大っぴらにやれていることにアナタは違和感を覚えます。学校側も放置しておいて良いこともないでしょうに、対処などしないのでしょうか。
「簡単な話だ。鹿賀島は、その学校に"認められている"から大手を振って金貸しの真似事ができている。確かに、なんらかの理由をつけて鹿賀島のポイントを没収すれば解決する話だろうが、学校側はそれをしない。俺も理由を問うたことはあるが、はぐらかされるばかりだ。……だが、学校側の誰しもがそんな現状を認めているわけではない。例えば、救済措置であるポイントが異常に高い事を知っているか? 退学者を救う場合は1億ポイント。Aクラスに移籍する場合も1億ポイント。普通の方法では到底集まらないポイントに設定されている。少しでも"奴ら"のポイントを削り、Aクラスで卒業する人間を選別するためにもな」
それが何の対策になるのでしょうか? ただポイントのない人間をあっさりと切り捨てるために作られた下策としかアナタには思えません。
「……そうだな。だが、これが限界だった。"奴ら"の資金を削り、その"地盤"を揺るがすためには少しずつ事を運ぶしか方法がない。たとえそれが焼け石に水だと分かっていてもな……。先達の地道な努力によって、奴らに対抗するために大量のポイントを集める機会を多く作ることはできた。要らぬデメリットも作ったが、少なくとも今まで積み上げてきた成果は反撃のきっかけとなる1手に繋がるものであったと俺は信じている」
生徒会長はアナタに愚痴を聞かせたいから呼び止めたのでしょうか。
アナタは誰かの愚痴を聞く趣味はないので帰ろうとしますが、生徒会長に腕を掴まれました。
「本題に入る。俺は、現在の学校の制度や環境を変えたい。……いや、取り繕うのはやめよう。学校の現状を知り気に食わないと思ったから、この学校に蔓延る"穢れ"を浄化したい。ポイントでおおよそのこと全てが誤魔化せ都合よく改変できてしまう制度、ただ1人の生徒の意思によって学校での立場を全て失い退学する環境、それらを変えようともせず傍観し干渉しようともせず不都合を隠蔽する学校関係者。……この学校にはあまりにも理不尽が多すぎる」
それは生徒会長の仕事ではないんじゃないでしょうか。ただ1人が声をあげた程度で変わる事はないとアナタは思いました。
「だが、少しづつなら変えることはできる。そして、それらを成す為の1番の障害は鹿賀島だ。奴の持っているポイントをどうにかしなければ、現在の制度や環境を変えることは夢のまた夢だ」
学校側がたかだか1生徒のポイントも奪えないようなら、夢にさえならないと思いますし、同じくただの1生徒の生徒会長に何かできるとはアナタには思えません。
それに、ポイントを奪ったところでどうするというのでしょうか。
「俺一人では無理だが"策"はある。そして俺は、お前"にも"この学校を変えるために手伝ってもらいたいと思っている」
お前にも、ということは複数人に声を掛けているということでしょうか。
「鹿賀島の息がかかっていない……息がかかる前のお前たち1年生の中から選び声を掛けていくつもりだ」
具体的な案が分からなければ頷けるものも頷けません。アナタは生徒会長の策がどのようなものなのか聞いてみました。
「まず前提として、鹿賀島はなぜ大量のポイントを保有しているのかについて説明しておく。奴が現在個人で保有しているポイントはおおよそ"5000億"。加えて、奴の息のかかった人間のポイントも合算すると、"6000億"程だという情報を、信頼できる学校の運営側の人間から聞いた」
ドラゴンボールの如くポイントが盛大なインフレをしていますが、どうしてポイントを大量に貯めさせるまで放置していたのでしょうか。
「鹿賀島がなぜ大量のポイントを持っているのかその理由を聞かされた。……理由を聞けばなんてことのないものだ。学校側が、鹿賀島にポイントを"支給している……ようだからだ"。また、鹿賀島のように金貸しを行う生徒が歴代に渡ってこの高度育成高等学校にいたことが判明している。現在の鹿賀島が大量のポイントを保有しているのは、学校側からの支援と、その歴代から受け継いだポイントを保有しているからだと考えられる」
つまり、前々から学校側が支援を受けているポイントの貸し借りを差配できる生徒がいて、今の代では鹿賀島さんがその役目を担っているという事でしょうか。
ですが、何故学校はそんな役割を持つ人間を必要としているのでしょうか。そんなことをすれば変に贔屓していると批判があるはずです。それに、"ようだ"だの"考えられる"だの、随分と歯切れの悪い物言いばかりする生徒会長は、鹿賀島さんが大量にポイントを持っているという確たる証拠を持っていないのでしょうか。
「今に至るまで学校側が不正にポイントを支給したというデータは残っていないそうだ。おそらく、システムに関連する人間がこぞって隠蔽しているんだろう。そのせいか、学校側でも知っている人間はごく僅か。知る人間が少なすぎることもあるが、証拠と呼べる証拠もないため批判も生まれない。それに、金貸しについて大々的にやっていると言ったが、鹿賀島自身が保有している手持ちのポイントを殆ど動かさないため、他の生徒の端末に全くと言っていいほど形跡が残っていないらしい。あくまでも動いているのは、奴が自由に動かせる人間のポイントだけだ。5000億という数字はあくまで目安で、それ以上のポイントを保有している恐れがある。だから5000億は最低限の数字だと思っていてくれ」
5000億という数字をどうやって割り出したのか、ポイントをたくさん持っている理由、学校が生徒に金貸しまがいなことをさせている点などツッコミどころは多々ありますが、アナタにとってはどうでもいい事です。
アナタはさっさと本題を話せと、曖昧なことしか言わない生徒会長に苦言を呈しました。
「まぁ待て。実は、歴代に渡りポイントを貸す立場に居る生徒にはとある共通点がある事が分かった。それは、力を持つ"政治家の子供やその関係者"であるという点だ。勿論、鹿賀島もその例に当てはまる。奴の父親や祖父は政治家一族で、かなりの影響力を持っているらしい。……この高度育成学校はおおよそ20年程前、現内閣総理大臣の鬼島さんによる推進もあって設立された国立の学校だ。総理はクリーンな政治家として多大な支持を得ているのは知っていると思うが、この学校の設立には多くの人間が絡んでいる。当然、総理のようにクリーンではない政治家や資産家達……勿論、鹿賀島の親族もな」
つまり、学校側が設立を支援した政治家の子供達やその関係者に忖度して金貸しという役割を与えているという事でしょうか。学校に政治の話を持ち込むのはどうかと思いますし、後々汚点となり得る役割を与えている理由がアナタには分かりません。
「そこは推測するしかない。だが、なぜ金貸しのような役割を持つ生徒がいるかその理由について知る意味は薄いだろう。……あくまでも俺達の目的は、鹿賀島を始めとした大量にポイントを保有する生徒達の摘発と所持しているポイントの没収だ。隠しようもない決定的な証拠を突きつけ、最大の問題点である大量のポイントを個人が所有している現状を解決する。そして、それを契機に学校側の信頼できる大人達に制度の改正を訴え、大規模な改革を実施してもらう。……大まかな理想の流れはこのような感じだ」
存在しないかもしれない証拠を探すのは結構ですが、なんらかのアテはあるのでしょうか?
「もちろん、証拠が出てくるかもしれない怪しいと思える場所の目星はつけてある。お前は、"テーブルゲーム研究会"という部活がこの学校にあることを知っているか?」
アナタは部活動説明会で一言しか発していない部活の事だと思い出しました。印象には残っていますが、具体的な部活内容は全く知りません。
「その部活の部活棟がある場所はこの学校の海沿い近く、陸地と近い場所に建てられている。大きな壁に四方が囲われているため目立つのもそうだが、他の部活と比べても活動拠点が謎に包まれている」
そう言えば、以前坂柳さんが話していました。確か会員証がなければ入れない場所だったとアナタは記憶しています。
「よく知っているな。お前の言う通り、テーブルゲーム研究会の部活棟には会員証が無ければ入ることは出来ない。これだけでも十二分に怪しいが、加えて鹿賀島はそのテーブルゲーム研究会に所属している。……この施設には何かあると思わないか?」
それだけ怪しい要素が揃っていれば何かあるのは確定しているでしょうが、そのテーブルゲーム研究会を調べる事と、鹿賀島さんをどうにかする事に何か関連性はあるのでしょうか。
「一応、テーブルゲーム研究会がどんな活動をしているかは把握している。囲碁、将棋、チェス、麻雀などの卓上で出来るものを始めとしたゲームを研究しレポートに纏めて、校外で行われる大会にも参加していて実績もある。これだけ聞けばただの普通の部活だが、他の部活動と同じく"ポイントを賭けて"ゲームを行っているという噂がある」
金銭のやり取りが発生する部活などアナタは聞いた事がありませんが、難癖つけてガサ入れでも何でもすればいいのにとアナタは思いました。
「正すべき事だが、ポイントのやり取りは他の部活でも行われている、学校が黙認しているグレーゾーンだ。俺たちも部活内での賭け試合などを取り締まるよう動いてはいるし、証拠さえあれば端末などを調べる口実を作ることもできる。実際に取り締まりを強化した事による成果もあってか、証拠さえあれば会員証がなくともテーブルゲーム研究会の部活棟に入り堂々と証拠を探すことは出来るだろう。だがおかしな事に、テーブルゲーム研究会がポイントを賭けている証拠が"全く"見当たらない。端末を確認しても怪しいと思えるポイントのやり取りの一切が記録されていないんだ」
それはおかしな話です。ポイントが記録されていないということは端末にポイントがないということです。端末のポイントを使えないのであればポイントを賭けたゲームをする理由がありません。金は使えてこそ意味があるのもです。増やすために行うゲームをしておいてポイントのやり取りが残らないなんて事はありえないでしょうし、そもそも賭けるポイントを何処から持ってくるのかという話です。
もっとも、そのやり取りさえも記録から消してしまえるなら話は別でしょう。あるいは、パチンコ店と同じ三店方式のようなやり方をしているのかもしれません。
「……それについては心当たりがある。鹿賀島が複数の生徒と結んでいる契約だ。もしかしたら奴は、ポイントを賭けさせる代わりに契約を結ぶことを条件に賭けをしているのかもしれない。実際に鹿賀島と契約を結んだ生徒の中には、テーブルゲーム研究会の会員だという生徒もいた」
もし契約を結ぶ代わりにゲームをさせているのだとしたら、鹿賀島さんは何のメリットがあって金貸しをやっているのでしょうか? それに、生徒が態々契約を結んでしまうほどのメリットがゲームにあるのかも謎です。
「…‥それはまだ分からない。そもそも、鹿賀島が契約を結んだりポイントを貸したりする事で発生するメリットが分からない。贅沢な学校生活を送りたいのであれば十分過ぎるほどのポイントがすでに手元にあるはず。愉快犯という線も考えられるが、それにしてはやる事が用意周到過ぎているし、学校側が愉快犯に大量のポイントを任せるのか疑問が浮かんでくる。いくら有力な政治家の子供だからといって、他にも候補がいるはずだ。……なぜ、鹿賀島であるのかその理由については判明していない」
大事な所ですが、どうやら生徒会長は情報を持ち合わせていないようです。
ここまで長々と話を聞いてきましたが、アナタにとっては鹿賀島さんがどのような目的を持っていようが関係のない話です。
ポイントを大量に持っている生徒がいようが、契約をたくさん結んでいる生徒がいようが、学校の制度や環境が穢れていようが、アナタは現在の学校の環境で満足しています。
アナタは、最初から学校内の何かを変える予定も意思もないことを伝えるべきだったと反省し、口に出してその事を生徒会長に伝えました。
「……ポイントによる退学の回避や買収など、この学校は後ろ暗いことを率先してやらせようとする傾向がある。手段として褒められたものではないだろうが、金がそれほど重いものであると学ばせようとする学校側の思惑は伝わる。……だが。たった一人の人間の意思によって、大勢の生徒の学校生活が脅かされていいわけがない。本人の実力によって築き上げた財産ならいざ知らず、学校と手を組み贔屓されただけの人間が持っていいほど、この学校におけるポイントの価値は軽くない。そんな環境だとしても、お前は満足できると言うのか?」
アナタは理不尽には慣れているため問題ないと返しました。
「これだけは言っておく。鹿賀島は、お前が想定している以上にこの学校内を自由にできる。退学させたい人間が居ればポイントと契約を用いて必ず退学させるだろう。……少なくとも、鹿賀島の前にポイントの貸し借りを学校から任せられていた"あの男"なら必ずやる」
あの男というのは誰かは知りませんが、退学させられるならさせられたで仕方がないとアナタは済ませるでしょう。今だに将来の目標は何も見えておらず想像もできていませんが、それでもいいかと現実を受け止め、アナタはいつでもポジティブな思考に切り替えることができるでしょう。
「……一応、ダメ元で聞いてみるが。俺達と協力して学校の改革を手伝う気はあるか?」
さて、アナタはどうしようか。
浮かんできたのは3つの選択肢でした。
『面倒臭いと言って、断る』
『曖昧に返事をして、その場を濁す』
『報酬次第ではやる、と言う』