よう実 ハードモード リメイク版 作:クンクンクン
船外にて、無人島を1週間1000ポイントで生活するという試験が始まりました。
まずアナタ達は生活をする上で必要となる、拠点にできるスポットを見つけに行くために移動しなければいけません。
Aクラスは葛城君が拠点候補になりそうな場所に目星をつけていたのでひとまずはそこへ向かおうと話がまとまったのですが、移動を始める前に、熱中症対策のための水と島の地図などを描くためのメモ代わりとしてノートとペンを購入しました。ちなみに水は540mlペットボトルが40本入った一箱が20ポイント。ペンとノートは1セット2ポイントを5つ購入し、ノートとペンは地図が書ける生徒や字や絵が上手い生徒を選出して、地図を書きながら歩くそうです。
それぞれそのクラスが拠点を探そうと動いている中、Aクラスは"全員"で葛城君が船に乗っている時に見つけたという開けた道まで行くと、人が生活できそうな洞窟を発見することができました。
洞窟の中に入ってみると拠点として使うための機械があったのですが、まだ他に良い拠点があるかもしれないということでリーダーと拠点は決めず、洞窟の入り口周辺に荷物を置いて、周りを探索をすることになりました。
機械の下側には占有していないと拠点として使用できないと大きく注意書きがありましたが、荷物を置いたり中を見るくらいなら許してもらえるのでしょうか?
リーダーと拠点を決めるまでは同行すると言った真嶋先生に話を聞くと、グレーゾーンらしいですが問題ないそうなので、アナタは探索メンバーと共に島の探索を始めました。
探索をする前に大まかな役割分担を葛城君が決めました。洞窟に入る他のクラスがいないか確認する見張りと洞窟内の構造を確認、そして体調が少し優れない人間を入れた10人。周囲により良い生活拠点がないかなどの探索と他クラスの拠点や様子の確認などをする29人で1グールプ4人(一部5人)となり、探索時間は1時間となっています。時間については事前に貰った腕時計をしているため問題ありません。
グループを分ける時、葛城君は空気が悪くなるのを嫌ってか、坂柳さん派閥の全員を一まとめにして探索組に振り分けていました。現在、葛城君派閥と坂柳さん派閥はアナタなどの中立のどっちつかずの生徒を除き、若干葛城君の派閥の方が数が多い状況です。加えてもう一つの派閥のリーダーである坂柳さん本人が不在のため誰も葛城君に文句が言えずいいなりに……かと思いきや、意外にも神室さんが積極的に発言して、坂柳さんの代理のような立場で動いていました。本人は面倒くさそうにしていましたが、ちゃんと指示を出してメンバーの割り振りをしています。
ちなみにアナタは探索組です。以下、アナタと共に探索するメンバーを紹介していきます。
「灰原皐月。この無人島の直射日光は相当なものだと思うのですが、日傘や帽子の支給はないのでしょうか? 学校が日焼け止めだけで済むと本気で考えているとしたら想像力が欠如しているとしか言えません。共に直談判しに行きませんか」
メンバーその1、森下さんは日差しが相当鬱陶しいのか日傘や帽子が欲しいようです。アナタも日差しが強いところはあまり好きではないのですが、直談判するほど困ってはいません。
「確か帽子や日傘は1つにつき1ポイントだったはずだ。全員分買うとなるとそこそこの痛手だが、体調不良になられるぐらいなら希望者を募って買うのも一つの手か」
メンバーその2、葛城君はてっきり拠点に残るか、同じ派閥の人間と探索するのかと思いきや、何故かアナタの探索に同行してきました。するつもりはありませんが、アナタが怪しいことをしないかの監視をするためでしょうか。
「……」
メンバーその3は名前を知らない女です。いつの間にか一緒に探索する事になっていましたが、アナタは女の名前を知りません。流石に4ヶ月近く同じクラスにいて名前を知らないのは失礼かなと思ったアナタは森下さんに名前を聞きましたが、森下さんも知らないようです。
いつものアナタならすぐに興味をなくして終わるところですが、この女はかなり愉快な挙動を見せてくれます。
例えばアナタが視線を感じるなと思って後ろを振り返ったら、女は慌てて顔を下げて、アナタが前を向くまで視線を合わせないように下を向いてオドオドしているのです。
試しに森下さんに振り向いてもらうと、アナタの時と同じような反応をします。まるでダルマさんが転んだをやっているようで、森下さんとアナタはかなりの頻度で後ろを振り返り、女と目が合うかどうかの賭け事をしたり、地図を書いたりしながら探索を進めました。
「おや、この無人島では野菜が自生しているのでしょうか?」
アナタ達が歩き始めて20分くらいでしょうか。葛城君先導の元、人工的に手入れされた道をいくつか見つけ、スポット化出来る機械の場所を見つけましたが、生活をするには不便そうな立地でした。
探索としては十分な成果もあるのでそろそろ帰ろうかと話していたタイミングで、森下さんがトマトが生えている小さな畑を発見しました。
「簡易的なビニールハウスと支柱……明らかに人為的なものだろう」
「冗談です。……ふむ、このトマトは虫食いがあまり見られないので、最近までしっかりと人の手で管理されていましたね。農薬だけではここまで綺麗になりません。普通のトマトの成長は約4ヶ月と聞きますが……これは、常温で追熟することまで考慮されています。この青さなら1〜2日は日に晒さないと美味しくないでしょうが、十分食べられるでしょう。まぁ、美味しくいただきたいならもう少し収穫を待った方がベターですが……私たちが収穫することも考慮して準備しているなんて、学校の正気を疑ってしまいます。もっと他にリソースを割くべきところがあるでしょうに」
森下さんは生えているトマトを一通り確認した後、中々の知識をアナタ達に披露してくれます。まるでトマト博士みたいです。
「小学生の時の自由研究で、放置している緑のトマトがなぜ赤くなるのか気になったので調べたんです。まさかこんなタイミングで役に立つ時が来るとは思いもしませんでしたが」
森下さんは得意気に、トマトはナス科であることや生食用と加工用で種類が違うなどトマトにまつわる雑学をアナタに教えてくれました。
「流石にこの量を俺たちだけで収穫するのは難しいな。……だが、この場所を他のクラスに発見されるかもしれない。いくつか取っておきたいんだが、大丈夫か?」
「いえ、まだ完熟していないので素手で取るのはかなり苦労します。ハサミなどの切るものを持ってきた方が効率がいいです。それは他クラスも変わらないと思いますので、焦らずハサミなどを購入してから来ても問題ないでしょう」
「……そうか。なら、ここまでの道のりをメモして一旦帰るとするか。最初の段階でノートとペンを買っておいて正解だったな。おそらく、ここ以外にも野菜や果物などが育てられている場所があるはずだ。もし帰り際に発見したら俺に伝えてくれ。メモをしておく」
葛城君は来た道を戻りながらここまでの道順を丁寧に書き残しています。
人工的な道もあり、拠点とする予定の場所からそこまで距離が離れていないので迷うことはないと思いますが、木に囲まれていると景色の変化が分かりづらく方向感覚が狂う恐れがあります。
アナタも道に迷わないように気をつけなければいけません。
「まず、1時間程だが探索ご苦労だった。早速成果を報告し合いたいところだが、その前にポイントを使って仮設トイレを3つほど買おうと思っている。拠点近くだからということもあって、真嶋先生が許可をくれたから問題はないが……神室たちも異論はないな?」
「……あの携帯トイレじゃ限界があるからそれでいいと思う。そろそろトイレに行きたいやつもいると思うから」
「取り敢えず、仮設トイレを設置してもらいトイレ休憩を挟んだ後で話し合いにしよう。そうだな……洞窟の中のスポット付近を集合場所とする」
ということで、トイレが設置されるまで休憩となったので暇になってしまいました。ちなみにトイレは一つ20ポイントで、現在のAクラスの残りポイントは890です。
真嶋先生曰くトイレの設置には20〜30分程かかるそうなので、この時間を使って一人で寝泊まりできる場所を探し行こうと思い洞窟内を探索することにしました。
「探索ですか。いつ出発します? 私も同行しましょう」
アナタと森下さんは洞窟内を見てまわりました。
結果、この洞窟がかなりの広さを持っていることを確認することができました。
「所々整備されて補強されている箇所もあるので崩落の心配はしなくても大丈夫ですかね。広さは……大きな空間が5つぐらいでしょうか? 丸天井のある部屋では焚き火をしても大丈夫そうですが……問題は地下水脈ですかね。硫化水素や汚染されているなどの問題はないと思いますが、安全面を考えると水は購入する方がいいかもしれません。ただ、この洞窟だけで暮らしを完結させることができるのはいいですね。リーダーも洞窟に無理やり入って来られない限り分からないので、中々当たりのスポットを見つけられたんじゃないでしょうか」
生徒が使うことを想定して作られたであろう人工洞窟はかなり使い勝手が良さそうです。
ただ、天井のある部屋は男女で分かれて使うでしょうし、もう二つの部屋はどちらも天井に穴が空いていて雨が降ってきた場合どうしようもありませんので寝泊まりには向かないでしょう。
取れる選択肢はスポットのある空間で寝るか、新たに雨風を凌げるスポットを見つけるか、雨が降らないことを祈って寝るぐらいしかないでしょう。
そろそろ洞窟の中にあるスポットに人が集まり始めている頃でしょうか。アナタと森下さんは集合場所へと向かいました。
前回の話で腕時計の描写を忘れていましたが、普通に配られています。