よう実 ハードモード リメイク版   作:クンクンクン

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部活説明会

 

 

 アナタは『教室に留まる』ことにしました。

 特に急ぎの用があるわけでもないですし、何をするか決めるためにも座って考えていたい気分でした。

 真嶋先生が出て行った後、教室の大半はざわざわとしており、小さな集団が二つほどできていました。

 

「お、今日は教室から直ぐに出て行かないんだな。昨日は面白いイベントがあったてのに、見逃すなんて灰原も勿体無いことしたよなぁ」

 

 アナタは橋本君がして欲しそうな質問をしてあげることにしました。

 

「昨日の放課後、教室で何があったか? まぁ気になるよな。簡潔にまとめると……自己紹介して、その後にリーダー争いのゴングが鳴ったて感じだな。ほら今、二つの小さな集団ができてるだろ?」

 

 確かに、綺麗に集団が分かれています。と言っても、どちらも仲良しが数人集まったくらいの規模で、リーダー争いという単語と関係ないように思えます。

 

「その中心にいるのが、昨日先生に質問してた奴で……名前は坂柳と葛城って言うんだが。灰原が出て行った後にクラス全員で自己紹介したんだよ。そんで自己紹介が終わって坂柳が学校のルールについて話し合いませんかって言ってから、何人か生徒引き連れて何処かへ行っちまったんだ」

 

 まだ詳しく知っていそうなので、橋本君に何故リーダ争いという言葉を使ったのかと聞くと、彼はニヤリと笑って答えてくれました。

 

「教室を出ていく前にな、葛城が坂柳に一緒に考えないかって誘ったんだよ。でも坂柳は「明日答え合わせをしましょう」なーんて言って、出て行っちまったんだ。それで、中立の奴や葛城の近くにいた奴とかが、戦いが始まったーとか騒いでるわけよ」

 

 橋本君の特徴は掴めていそうだけど、全然伝わってこないモノマネを聞きながら、アナタは二日目にしてクラス内で派閥争いのようなものが発生していることに少しだけ驚きました。

 

「って言っても。どっちも規模がまだまだ小さいし、争ってすらないんだけどな」

 

 アナタは、橋本君はどっちの派閥に入りたいと思っているのか聞いてみました。

 

「俺? どうせなら可愛い女の子がいる方がいいけど、ちょーっとこの学校はきな臭すぎるから迷い中。どっちかと言えば、今の所は坂柳派だな。灰原は?」

 

 アナタは集団に属することの強みを理解していますが、所属する集団を見誤り、手ひどい目にあった人間を何人か見たことがあります。

 それに、アナタは橋本君の言った二人の人物に興味も抱いていなければ、魅力も感じていません。

 アナタは、どちらも興味がないと答えると、橋本君は体を一瞬ビクリとさせて「マジか」と呟きました。

 

「……ま、今はいいか。それで、話は変わるんだが部活の説明会は行くか?」

 

 そういえばアナタは永木から部活動説明会に来ないかと誘われていました。

 しかし、アナタは説明会に行かず別のことをする事もできます。ポイントについて考えたり、学校を探検するのもいいでしょう。

 

 さて、アナタはどうしようか。

 浮かんできたのは3つの選択肢でした。

 

『資金調達をするためのアイデアを考える』

『部活動説明会に行く』

『学校を探検する』

 

 アナタは特に断る理由もないため、橋本君と『部活説明会に行く』ことにしました。それに部活動説明会は今日だけのイベントです。他のところへ行くにしても優先してまでやりたいことじゃありません。

 

「よし、それじゃあ一緒に行こうか」

 

 アナタは部活説明会まで時間があるため、一旦橋本君と別れて寮に荷物を置きに帰りました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そろそろ時間となるのでアナタは端末だけを持って寮を出て、説明会の会場である体育館へ向かいました。

 会場前は少しだけ人だかりができており、中には既に100人ほど集まっているようです。

 開始時間まで暇なアナタは何をして待っていようかと考えていると、アナタの姿を見つけた橋本君が手を振りながら近づいてきました。

 

「さっきぶり。始まっても来ないから、ドタキャンされたかと思ったぜ」

 

 アナタはそんなに時間が経っていたのかと端末の時計を確認すると、開始時間が5分ほど過ぎていることに気づきました。

 アナタは少々時間に関してルーズなところがあるので、ゆっくり来すぎたのかもしれません。待たせた橋本君に一言謝ると、気にしていないと手でジェスチャーして応えてくれました。

 

「機材トラブルでちょっと遅れるってよ。ま、そろそろ始まりそうだけどな」

 

 橋本君がまだ始まっていない原因を教えてくれるのとほぼ同じタイミングで、司会の声が聞こえてきました。

 司会は今日アナタが2度ほど出会した橘さんがやるようで、謝罪を一言入れてから説明会を始めることを宣言しました。 

 

「なぁ、どの部活がいいと思う? 俺は着物美人がいる茶道部が良さげだけど、雰囲気が身内っぽい感じで肩身が狭くなりそうだよな」

 

 説明会自体は特別変わったことをしていません。つまらないと言っても過言じゃないでしょう。アナタの通っていた中学校では実演なども交えた説明会をしていましたが、舞台上には各部活の代表しか並んでおらず。いずれも口頭だけの説明で終わっています。

 説明が終わった後は直ぐに舞台から降りて、部活の代表者は簡易ブースのような場所へと向かっていました。

 アナタにとっては目新しさもない短い説明ばかりで、どんな部活なのかもいまいち伝わってきません。これは後で活動している場所に行って体験して確かめてみてくれということなのか、と勝手に解釈したアナタはもう帰りたくなっていました。

 ただ、中盤辺りで"テーブルゲーム研究会"の代表の生徒が「テーブルゲーム研究会」と一言だけしか喋っていないのが、アナタの印象に残っています。もしこの説明会が終わっても覚えていれば、足を運んでみるのもいいでしょう。

 

「意外と終わるの速いな。もっとワチャワチャした感じかと思ったけど、これが国立の普通なのか?」

 

 とてもつまらない説明会ですが、複数あった部活もようやく最後の紹介がされるようです。アナタと同じく、近くにいる女生徒もあまりの退屈さに体調を悪くしているのか顔が青褪めていました。

 ただ一方、盛り上がりを欠く説明会とは違って、それを聞いている生徒達の私語は絶えません。どの部活に入るか放課後何をするのかそんな話がアナタの耳にはいくつも入ってきます。

 

「俺は嫌だなぁ、こんな雰囲気でしかもトリの説明を務めるなんて」

 

 この体育館の緩い雰囲気のなか説明することになった生徒に橋本くんが同情の視線を向けていますが、視線を向けられている生徒は飄々としています。見かけたことのあるあの眼鏡は、もしや生徒会長ではないでしょうか。

 どうやら彼がトリを務めるようで。もしかしたら生徒会長というのは部活で勝手に名乗っている役職だったりするのでしょうか。

 しかしその生徒会長ですが、発表の順番だというのに一言も言葉を発さず、じっと体育館に集まっている一年生を見下ろしているだけです。

 

「キンチョーで台本ぶっ飛んだんですか〜」

「眼鏡がぶっ壊れて字が読めないんですか〜!」

「ヒトラーの真似事かよ。厨二くさいぞ〜!」

 

 体育館の出来上がった雰囲気がそうさせるのでしょうか、いつまで経っても何の説明を始めないため、周りからヤジが沢山飛んでいました。

 アナタは咄嗟にしては中々面白いヤジを飛ばすもんだなと感心しながらそれらを聞いています。

 中には私怨混じりの「ハゲーーー!!」や「童貞インポ野郎!!」などの1年生が発したとは思えないヤジもあり、会場の雰囲気は盛り上がりのピークを迎えています。

 もしかしたらこの学校の伝統に、最後に舞台に残った生徒にヤジを飛ばすというのがあるのかもしれません。アナタは少しだけ会場の雰囲気に流されそうになっている橋本君に意見を聞いてみました。

 

「そんな学校が国立とか、日本終わってないか?」

 

 最もな意見を言われました。

 会場はその後数分ほど盛り上がりを維持していたのですが、ピークを過ぎれば後は下がるだけです。次第にヤジを言う声が減り、そこそこの生徒が体育館から出て行ったところで静かになりました。

 

「私は生徒会長を務めている堀北学です」

 

 先程まで小馬鹿にされていた生徒会長は、何事もなかったかのように話し始めます。普通あのようなことを言われては羞恥で体が震えたり声が上擦ったりしそうなものですが、ハッキリとした言葉で説明を続けているのは流石生徒会長と言うべきなのでしょうか。一方司会の橘さんはプルプル震えてこの会場にいる生徒達を一生懸命睨んでいます。

 

「上級生が卒業し、生徒会も人員補充のため一年生から立候補者を募っています。資格や条件などはありませんが、生徒会と部活の掛け持ちは原則受け付けていません」

 

 この少し変わった学校での生徒会の仕事はどのようなものになるのか、朝の件のように学校の揉め事を解決する風紀委員のようなこともしているのでしょうか。だとするならば大変そうな罰ゲームみたいで、やりたくないなぁとアナタは思いました。

 

「それから、私たち生徒会は甘い考えによる立候補を望みません。我が校の生徒会は学校の"清浄"を執り行うことを至上命題とし、学校側も生徒会に期待しています。この志に共感し、共に学校をより良くするために尽力できる人材を我々生徒会は待っています」

 

 いつの間にやら周りの生徒は先ほどとは違い静かに話を聞いていて、説明が終わり生徒会長が舞台から降りた後も静かに司会の案内に従って入部手続きの受付場所へと向かっていきました。

 

「いやー、凄かったなヤジ。にしても、あの状況で普通に説明始めるとかメンタル強すぎでしょ生徒会長」

 

 確かに、あの状況から普通に説明をするのはすごいと思いますが、結局生徒会がどのような仕事をするのかが全く分からなかったため、アナタは少しだけ残念な気持ちになりました。

 

「さて、灰原は部活どうする?」

 

 どうするも何も、部活の雰囲気や、やっていることがよく分からなかったため、判断するには情報が不足しています。

 アナタはひとまず、様子を見てから決めることを伝えました。

 

「だよな。大会の成績とか練習内容とかだけ言われてもピンと来ないわな」

 

 橋本君もまた決めあぐねているようです。そんな会話の中、橋本君のポケットから電子音が鳴りました。

 

「あー、へー、ほー……はぁ」

 

 端末を確認し、呻き声のようなものをあげてからため息を吐いた橋本君は、アナタの方をチラリと見ました。どうやらアナタに用があるようです。

 

「昨日、集まりがあったって言ったろ? 葛城と坂柳の。実は俺、様子見で坂柳の方へ行ったんだけどさ……」

 

 橋本君は言いづらそうにしています。

 アナタはいくつか予測を立てて、一番確率の高いものを橋本君に言いました。

 

「……お見通しか。灰原の言った通り、坂柳がお友達を誘ってこいってよ。まぁ、行くか行かないかは任せるわ」

 

 さて、アナタはどうしようか。

 浮かんできたのは3つの選択肢でした。

 

『橋本君の顔を立てて、坂柳に会いに行く』

『テーブルゲーム研究会の部室へ行く』

『生徒会室へ行く』

 

 

 

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