よう実 ハードモード リメイク版   作:クンクンクン

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交渉〜翌日

 

 

 アナタは取り敢えず『彼女の姿を撮影し、脅しに使う』ことに決めました。

 最大の根拠は直感ですが、彼女の今の姿は致命的な弱点であると思ったからです。

 人には絶対に晒してはいけない弱点というのがあります。アナタの経験則ですが、それらの弱点は人為的に作り出される場合が多いです。

 例えば借金を作ったり、負債を作らせるなどが最たるものではないでしょうか。アナタの親もそれにやられた口で、その威力は借金と子供を残して自殺するほどです。アナタは飛び火した火種をなんとか消火することが出来ましたが、その威力の片鱗を実際に体験しています。

 こんな閉鎖環境で誰かの悪口を言う。言葉にしてみれば大したことはないかと思いますが、間違いなく彼女の信用に大きな傷をつけることができるはずです。

 例え小さな弱点であっても、今後のためにも使える手札は増やしておくことに越したことはありません。

 現在の屋上はそこまで暗くもなく、彼女の顔をしっかりと映せて、自分の姿も死角になっている上に、環境音もあまりないという、まさに盗撮するにはうってつけの環境です。

 早速アナタは今もなおストレスを口から発散させている彼女の姿を端末のカメラに収めることにしました。

 

「その位置はいいんだけど……やっぱり、このマイクじゃ拾える音質良くないなぁ。僕も君のように動画に切り替えようかな?」

 

 永木は永木でどこかにマイクを設置しているのか、ノートパソコンとヘッドセットをしながらぼやいています。

 傍から見ればなんとも珍妙な二人組ですが、やっていることは悪質です。

 

「ふぅ〜……だいぶすっきりした。……っ、と」

 

 しかし悪事というのはいずれ露見するもの。彼女が突然後ろを振り向き、撮影しているアナタはその視界に捉えられてしまいます。

 とはいっても、ドアの隙間から見える端末が彼女の視界に映り込んだだけなのですが、盗撮にうってつけの環境はアナタの端末を完全には隠してくれませんでした。

 

「誰!!!?」

 

 彼女は誰かいると確信をもち、声を上げます。

 

 さて、アナタはどうしようか。

 浮かんできたのは3つの選択肢でした。

 

『言い訳をする』

『動画を使い脅す』

『永木を生贄に差し出す』

 

 しかし、アナタが選択するよりも早く彼女は大股でこちらに近づいてきました。

 

「全部見た? 盗撮魔さん達」

 

 とりあずアナタは言い訳をしようと口を開きますが、言葉を発するその前に、彼女はアナタの端末を奪うために手を伸ばしてきました。

 しかし、アナタは彼女の動きに対応することができます。伸ばして来た手を躱し、彼女の目的である端末を右上に移動させ、彼女の視線を右側に向けます。

 そして、開いている左手でアナタは彼女の髪の毛を掴みました。

 

「ぎぃ!!!」

 

 彼女は髪を掴まれた激痛に怯み、髪を掴んでいる手をどかすために両手を向かわせます。

 しかし、アナタはその行動を予測していました。

 アナタは髪の毛を離した代わりに、向かってきた彼女の左手を掴み背中側へと回り込んで押し倒しました。

 

「ぶっ!!」

 

 顔面をぶつけないようにしたつもりでしたが、少しだけぶつけてしまったようです。

 歯などが折れていたら面倒ですが、髪の毛を掴んで彼女の口元を見ても流血は見られなかったのでアナタは一安心しました。代わりに額から少し血が出ているようですが、この程度なら問題ないでしょう。

 

「おぉ。意外と肉体派なんだね。ところで、君は怪我はしていないだろうか? 取っ組み合いの時にどこかを痛めたとかはしていないかい?」

 

 アナタはこの状況をどうするか彼女の背中に乗りながら考えていました。

 こちらの手札は彼女が悪口を言っている動画と永木の録音していた音声のみ。対して彼女は額に怪我をしていて、明確に暴力を振るわれている状況です。どちらが悪いのかと言われれば10:0でアナタが悪いでしょう。

 

 そんな状況に追い込まれたアナタですが、解決する方法はあるのでしょうか。

 

 さて、アナタはどうしようか。

 浮かんできたのは3つの選択肢でした。

 

『屋上から突き落とす』

『取り合えず裸に剥いて撮影会』

『撮影した動画で交渉する』

 

 今のところ彼女を追い詰めることに意味はないので、アナタは『撮影した動画で交渉する』ことを目的に会話をしてみることにしました。

 

「……ねぇ、離してくれない。こんなことして、あんたらタダで済むと思ってるの?」

 

 彼女の要求はもっともですが、交渉の基本は強気でいることだとアナタは思っています。

 取り敢えずアナタは、先ほど撮った動画を掲示板に流すと言ってみることにしました。

 

「……っ!!? やっぱり撮ってたのね。そんなことしてみなさいよ。どんな手段を使ってでもあんたを地獄に叩き落としてやる!!」

「地獄の底か。さて僕が落ちるのはダンテが巡った地獄か、日本の地獄か。それらの景観に興味はあるけど、僕はまだ生者でいたいから君の提案には乗れないな」

 

 永木はズレたことを言っていますが、彼女の手段には興味があります。一体どんな手段をもって地獄に落とすのか、アナタは興味本位で聞いてみました。

 

「誰が言うか。私は種明かしするほど馬鹿じゃない。……確か、あんたAクラスの奴よね。はっ! 勉強しか取り柄のないAクラス様には到底思い付かないやり方よ。せいぜい余裕ぶりながら待ってなさい。直ぐに地獄を見せてやるわ!」

 

 中々強気な女のようです。そして、アナタのことも最低限ながら知っています。

 そういえば、以前Dクラスの生徒がAクラスに訪ねてきたと橋本君から聞いたことがあります。

 確か、胸が大きくて童貞が好きそうな性格してる女。

 取り敢えずアナタは彼女がDクラスの生徒ではないかとカマをかけてみることにしました。

 

「へぇ、知ってんの。そうよ、あんたらが見下してるDクラスよ。で、あんたは見下してるDクラスの生徒に自殺した方がマシだって思わせられるような目に合わせられるの。でもね、私は一切なんの罰も受けずに、死んだあんたを嘲笑ってやる。だからとっとと、この手を離せ!!」

 

 彼女の発言でDクラスであることが確定し、アナタが彼女に対してきれる交渉の手札が増えました。

 さて、これでこの場を収めることができる手筈は整いましたが、それでも成功するかは彼女の気分次第です。

 というわけで、アナタは彼女に対して交渉を持ちかけました。

 

「交渉? この状況で? あんた、どっちが不利か分かってんの? 10:0てそっちが悪いのに、交渉もクソもないでしょう」

 

 アナタは彼女にポイントで困っていることはないかと聞きました。

 

「あんたに心配されるほど落ちぶれてない。まさか、ポイントでも渡して機嫌でも取ろうっての? 答えはNOよ。あんたからポイントを貰うよりも、あんたを地獄に落とす方がもっと大切。そうね、今持ってるポイント全部渡して、撮影した動画消して、自主退学するなら許してあげなくもないわ」

 

 ここで再びアナタは彼女にカマをかけることにしました。

 さっきまでの彼女の行動と永木の情報を思い返しながら、彼女への殺し文句を決めます。

 

 アナタは、誰か退学させたいやつがいるのかと聞きました。

 

「……それって、冗句のつもり? さっきから散々言っているんだけど。退学させたい奴ランキングは今のところあんたがNO.1よ」

 

 直接暴行を加えられた相手を過剰なまでに敵視するのは理解できますが、アナタや永木に害を加えるよりも、撮られた動画を流出される方が怖いと思っているでしょう。それは最初の反応で確信しています。

 そして退学させたい人間がいるというのも、そこまで的外れでないとアナタは思っています。

 もしも彼女が退学させたい人間を選ぶならその基準は何か。先程の、彼女のストレス発散の時に見せる本音を知っている。もしくは彼女に多大なストレスを与えている。あるいはその両方に該当する人間でしょう。

 

「ほら、自分でも分かってるじゃない。退学させたい奴はあんた。そして、ついでに後ろにいるカビ臭いあんたもよ」

 

 勿論、その条件に当てはまる人間はアナタと永木でしょう。何故なら彼女の本音を聞いてしまったからです。

 しかし、本音を知っているアナタや永木以外にも、ストレスの原因であろう人間をアナタは知っています。

 それは、アナタ達に気付かれる前に彼女が罵倒していた人間の中でも個人名で呼ばれていた、たった1人の人間。

 

 アナタはまるで確信しているかのように、"堀北"を退学にさせてやる。と言いました。

 勿論、アナタは確信していませんし。当たれば嬉しいなぐらいの期待しか込めていません。

 

「……ふーん。一応話は聞いてあげる。内容によっては考えてやるわ」

 

 ですがどうやら、アナタは彼女の関心を惹くことに成功したようです。

 アナタは彼女への更なる一押しのため、永木へ質問をしました。

 

「退学させるためにはどうすればいい、ね。あまり勧められた方法じゃないけど無いわけじゃないよ。特別試験……例えば定期試験で赤点をわざと取らせるとか、学校側にバレないように虐めて退学に追い込むとか。探そうと思えばいくらでもあるんじゃないかな? ……後は現実的ではないけど力技かな。ポイントで退学させることも一応は可能みたいだよ。メリットは低いけどね」

「……え、ポイントで退学させられるの?」

「確か、強制的に退学させるのに"10億ポイント"だったかな。やったことがあるって話は聞いたことがないし、多分学校に申請しても却下されると思うけどね」

「……馬鹿馬鹿しい噂ってわけね。聞いて損した」

 

 彼女の関心が別の方へと行っていますが、必要なピースが永木の口から出ました。

 アナタは永木に質問して得た情報を元に補足を加え、彼女に堀北なる生徒を退学させる手伝いをすると言いました。

 もっとも、アナタは彼女の動画という最強の手札を持っています。彼女は強気な態度をとっていますが、この手札がある限りアナタの優位は動かないでしょう。

 ですがアナタには気掛かりなことがあります。それは以前坂柳さんが言っていたクラス同士の対決が行われるのでは? という推測です。

 アナタは、どうしてもAクラスで卒業したいとは考えていません。

 しかし、今回の定期試験のように個人の実力によって決まるものならば問題ありませんが、何かの間違いで理不尽に退学させられるような目に遭うかもしれません。そんな時、協力できる他クラスの人間がいれば何かの役に立つでしょう。何の役に立つかもしれませんが、保険は大事です。

 それに脅しによる協力関係はいつか破綻します。相手にメリットがある交渉はとても大事だとアナタは既に学んで経験しています。

 なんともあやふやな理由ではありますが、アナタは1人の人間を退学させる手伝いをすることを決めました。

 

「…………ふーん。まぁ、堀北を退学にしたいのは本当だし。協力させられるやつがいるのは悪くないかな。ただ、協力させてあげてもいいけど、最低条件として撮った映像や音声をこの世から全て消すこと。隣にいるあんたの奴も含めてね。それができるなら考えてもいい」

「僕のもかい? 言い値で買ってもいいんだが、彼のためか。彼の言葉に同意するなら、僕の音声も消すことにするよ」

「ただ、さっきも言った通り。必ず動画と音声を消すこと。私がやるから端末を貸しなさい。ちゃんと消せたら私も今日あったことは学校にも言わない。……それで、本当に協力してくれるんでしょうね?」

 

 虐める方法や退学に追い込む方法は今のところ明確には見えてきませんが、それでも何かの手伝いをするぐらいならできるでしょう。

 

「じゃ、この手を離してくれる?」

 

 アナタは余計なことをしたら髪をむしると言って手を離しました。

 

「はぁ〜ぁ。なんで入学早々こんな目に遭わなきゃいけないんだろ。ったく、私の頭禿げてないでしょうね」

 

 彼女は制服についた汚れをはたき落とし、アナタに掴まれていた部分の髪の毛の有無を確かめています。

 アナタはハンカチをポケットを入れておくタイプの人間なので、彼女に額を拭くように言ってハンカチを渡しました。

 

「いらないよ、そんな汚いもの。じゃ、早速消させてもらうから早く渡して」

 

 アナタは口約束を信じないタイプの人間です。このまま何の保証もなく最強の手札である動画を消すつもりはありません。

 

「……じゃあ、どうするつもり? 私は絶対にこの条件だけは譲らないから」

 

 それについてはアナタに考えがあります。

 アナタは彼女の電話番号を聞いて、早速ポイントを送金しました。

 

「なにを……って、100万!? なんで、こんなポイントどこから」

 

 こういう時は質入れです。アナタは手付金として彼女へ100万ポイントを送金し、もし動画や音声が掲示板に流れるようなら好きにしてもいいと言いました。

 ただ、そのポイントは今後重要になるかもしれません。あまり手をつけないようにと言い含めておきます。

 

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ! 私はポイントよりも動画を!」

 

 ですが、こちらには動画があります。この動画か残っている限り、彼女も下手なマネはできないでしょう。

 こちらも譲歩したのですから、彼女にも妥協してもらわなければ話は平行線のままです。

 

「〜っぅ!! 分かったわよ! ただし、絶対に動画は消させてもらうから!! 堀北を退学させたら、あんたはその動画を消しなさいよ! そして、もし半年以内に退学させられなかったら自主退学しなさい!! ……それなら、こっちも妥協してやるわ」

 

 アナタは永木に契約書の類はこの学校で有効かどうか聞きました。

 自主退学する気はサラサラないので実質無条件のようなものですが、それで彼女が納得するなら作成するのも吝かではありません。

 しかし、半年というのは少し難しいかもしれません。アナタは後で1年以内に変えてくれないか交渉することを決めました。

 

「勿論有効だよ。さらに学校側が認めれば、双方の同意がない限りほぼ確実に契約はなされる。よかったら僕が用意しておこうか?」

 

 アナタは契約書にサインしたことはありますが作ったことがないので、自分で作ってみたいと言いました。

 

「いいよ。なら、契約書の様式データを送っておくから参考にしてくれ」

 

 アナタは永木に礼を言ってから、彼女に自分が契約書を作ってもいいかと尋ねました。

 

「いやよ。そうね……明日、私も一緒に作るわ。時間は連絡するから。……明日、掲示板とかで噂になってたら、覚悟してよね灰原君」

 

 契約書を契約する双方で作るという事になりましたが、これで一息つけそうです。

 

「お疲れ様。やはり盗撮や盗聴は軽率にやるものではないね。あのスリルは悪くない高揚感を与えてはくれるけど、それに見合ったものがあるかと言われれば……微妙だね。もう一度やりたいとは思えないかな」

 

 屋上から出る彼女を見送ると、永木が声をかけてきました。

 今日の結果は軽率な行動に伴うアナタ自身の過失です。流石に気を緩めすぎたと後悔したアナタは、もう今日以上の隙を見せることはないでしょう。

 

「そう言えば。彼女の様子を見るに、君や僕の動画はかなり有効なモノだったと思うんだけど。どうして彼女に協力する気になったんだい?」

 

 アナタが彼女を脅す手も有効ではあると思いますが、人間を追い詰めすぎるのは良くありません。

 遺書でも残して自殺されるのは厄介です。アナタはそれによって被る被害がどれほどのモノかよく知っています。

 

「彼女は自殺するよりも燃え上がるタイプだと思うけどね。……それにしても、あんなにも退学させたい人間がいるなんて。よっぽど嫌なやつなんだろうね、堀北って人は。……ん? 堀北?」

 

 殺すのを手伝ってくれと言われるよりかは面倒くさいですが、この学校には退学させる手段が虐めによる自主退学以外にもあるので助かります。

 最後にアナタは永木にあることを聞きました。

 

「……あぁ、それはもちろん。じゃあ、また何かあったら呼んでくれ。喜んで協力させてもらうよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アナタがクラスメイトの頰を叩いた次の日、何事もなかったかのように席に座っているアナタは幾人かの視線を感じながらホームルームが始まるのを待っていました。

 

「よ、よぉ」

 

 ホームルーム開始数分前に来た橋本くんが挨拶をしてくれました。アナタは挨拶を返します。

 

「なぁ、あのあと謝ったか?」

 

 意を決したように、真面目な雰囲気で橋本くんはアナタに問いかけます。

 昨日の放課後はなかなかのイベントがあったため忘れかけていますが、橋本くんの発言でアナタは完全に思い出しました。

 謝ったというと、あの眠っていたクラスメイトにでしょうか。アナタはカラオケルームで既に謝罪はしたと言うと、橋本君はやっぱりかぁ〜と言いながらため息を吐きました。

 

「あのな。その場で謝罪したら、次の日もごめんなさいしとくのが普通なわけよ。教室で毎日顔を合わせるわけだし、こう言うのはこまめに解消しなきゃそのままズルズルいって終わり……」

 

 橋本君は言いたいことを言い終える前に、ホームルーム開始のチャイムが鳴ります。続きは休憩の時だなと言って、橋本君は口を閉じました。

 

「真嶋先生。残りの時間を私に使わせていただくことは可能でしょうか?」

 

 ホームルームに関しては何もなく、終了まで5分ほど時間が余りました。真嶋先生は静かに過ごすようにと言ってホームルームを終えようとしますが、こもタイミングを見計らっていたのか葛城君が挙手をして真嶋先生に許可を求めます。

 真嶋先生は特に悩むそぶりも見せず葛城君に許可を出しました。一体何を話すのでしょうか。

 

「まず、みんなの朝の時間を拘束してしまい申し訳ない。手短に話させてもらうが、俺たちはテスト期間中に勉強会を開く予定だ。確定はしていないが、この学校の評価対象の中でも学力が大きな点を占めていると俺は見ている。根拠としてC・Dクラスはともかく、授業態度や普段の生活態度などA組と大差ないB組とクラスポイントの差が開いているのは、やはり学力の差だと考えるからだ。そのため、今の地位を保守するためにも基礎学力の向上は必須だと考えている。今のところ10人ほど勉強会への参加を確約してくれている。場所は今日から教室を使い、2時間程度を予定している。途中参加ももちろん歓迎するので気軽に参加してほしい」

 

 葛城君は勉強会のお誘いを告知して、椅子に座りました。

 アナタは坂柳さんがどんな反応をするのか見ることにしました。勉強会は坂柳さんも企画していたことです。彼女も対抗して何かするのでしょうか。

 

「……」

 

 坂柳さんは黙って見ているだけで、ホームルームは終了します。

 授業が始まるまでの合間に葛城君派閥の人たちがいそいそと勉強会のお誘いをしていました。

 アナタと橋本君のところにもお誘いが来たため派閥云々は関係ないのでしょうが、流石に坂柳さんと、その坂柳さんといつも一緒にいる神室さんに声をかける人はいませんでした。ちなみに、鬼頭くんには葛城君本人が声をかけていましたが、呆気なく振られていました。

 

 その後の授業は試験範囲の内容を既に教えているにも関わらず、少し急ぎ目に先生達が授業を進めていきます。

 国立の学校だからこんなものかとアナタは納得しますが、ふと、どうでもいい考えが頭の中に浮かびます。

 それは、この学校が成績をどのように処理しているのかです。

 例えば、提出物やテストなどで教科ごとに成績を決めるのか、もしくは小学生のように教科以外の成績も付けられているのでしょうか。クラスポイントやプライベートポイントなどこの学校でしか使えない評価項目はどんな扱いなのでしょうか。

 真嶋先生の言葉が正しければ、Aクラス以外の生徒は進学・就職するにしても普通の高校でも出る成績が必要になるでしょう。

 そんな、今考えてもどうしようないことを考え時間を浪費していると、いつの間にか授業が終わりあっという間に終業の時間です。

 

 さて、アナタには放課後に予定があります。彼女……櫛田さんと契約書類の作成を一緒にするというものです。

 

「よし、こういうのは早いほうがいいからな。とっとと行くぞ灰原」

 

 しかし、現在のアナタは橋本くんに腕を掴まれ頰を叩いたクラスメイトの元へと連行されています。

 いつものようにどうするか決めようとしていると端末が震えたことに気づきました。

 送り主は櫛田さんで。内容を要約すると。今日の放課後は無理だから夜にやろう、という内容でした。アナタには否定する理由もないのでそれで大丈夫だと返信し、頰を叩いたクラスメイトへの謝罪が今日の放課後の予定になりました。

 

 

 

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