息を切らした様子も無くグラウンドにたどり着いた五条は、目の前にいる者の背中を見つめた。
緑谷。何故最後、自身は彼に対する妨害を行わなかったのか。
本当に、気まぐれのようなものだった。普段誰かに情けを掛けることも大してなければ、勝ちを譲るなどもっての外。体育祭のような、より重要な行事であれば尚更である。
……これは、心を打たれた、というヤツか?
自身の心情の変化が、五条にはいまいちよくわからない。ただ、一つだけ言えることがある。
(次は、もう無い。オマエがどれほど頑張ろうと、オマエを蹴落として一位に行く)
これは、自戒でもある。緑谷の性格だ。あれだけ勝とうとしているくせに、いざ自分に手を抜かれたと知ったら、怒るに違いない。情けは人の為ならず。
それに、やはり自分も勝ちたいことには勝ちたいのだ。
一度これについては頭から忘れよう。そうして改めて二回戦で一位を奪ってやるのだ。
『予選通過は上位42名!!!残念ながら落ちちゃった人も安心しなさい!まだ見せ場は用意されてるわ!!』
一応の心情の整理を行う内に、どうやら二回戦出場の選手が確定したようであった。42名。かなり減ってはいるが、実態はほとんどがヒーロー科の生徒達である。依然として状況にあまり変わりは無いだろう。
『さーて第二種目よ!!私はもう知ってるけど~~……何かしら!!?言ってるそばから、コレよ!!!!』
引き延ばしの末にミッドナイトが指さしたモニターには、「騎馬戦」の文字が映し出されていた。
……騎馬戦??
いや知ってはいる。知ってはいるのだ。人数的にやったことがなかったくらいで。せいぜい二人で出来る肩車程度である。だがしかし、……これはもう。
(ワクワクするだろ!!フツー!!!)
決めた。俺が絶対上になる。初めてやるなあ、騎馬戦。どんな戦術が強いんだ?自分だけの最強の騎馬を作れるのかな。え?これって一回しかやんないワケ?
完全にテンションがお祭り気分である。いや、体育"祭"なのだから間違ってはいないのだが。先ほどまで「一位を奪ってやる」などと言っていたのは何処へやら。嬉しそうな顔を、最早周囲にも全く隠さず、目を輝かせていた。
そんな五条を知ってか知らずか、ミッドナイトによるルール説明は続く。
騎馬は2から4名で自由に構成。各自騎馬が
そして、肝心の保有Pについてだが。
『与えられるPは下から5ずつ!42位が5P、41位が10P…といった具合よ。そして……1位に与えられるPは1000万!!!!』
緑谷の顔が一瞬で凍り付く。その顔面からは滝のように冷や汗が流れ始めていた。皆が皆、そちらの方を向いている。当然だ、どこからでも決勝進出を狙えるハチマキ。これを狙わない手はないだろう。
『上位の奴ほど狙われちゃう……下克上サバイバルよ!!!』
***
さて、チーム決めの交渉タイムである。
この15分間の内に最強の騎馬となる人物を探さねばならない。……とはいえ、五条自身、障害物競走2位の結果により、205Pの高得点を持っている。なので、先ほどからひっきりなしに勧誘の声が──。
……閑古鳥が鳴いていた。
「なんでだよ!!俺2位だったんだぞ!!!もっと人気あるべきだろ!!」
思わず五条は不満の声を上げた。実際3位の轟や4位の爆豪はその通り熱烈な勧誘を受けているのだ。1位の緑谷なら兎も角、なぜ自分も?
実際五条が不人気な理由は幾つかあった。
まず、轟や爆豪に関しては、障害物競走でほとんどずっとトップ争いをしていた印象が強い。シンプルに強いというイメージを持たれているのだ。
大して五条は、結果だけを見れば、最後の最後に突然2位まで上がってきたのだ。第二関門でのトラブルや、第一関門での様子を大して知らない者からは、"ポッと出で現れて2位をかっ攫っていった運の良い奴"位の認識なのである。確実に強いかどうかわからない相手とチームを組み、しかもその高得点を狙われやすくなるハイリスク。
有り体に言えば戦績が地味だった。
また、"個性"においても、周囲からいまいち理解されていないことも拍車を掛けていた。
五条自身が持つ能力は、確かに強力である。しかし、周囲にとってはわかりやすい強さの"個性"を持っている轟や爆豪に比べると、五条自身が使うのをセーブしていたのも相まって、何をしているのか遙かによくわからない"個性"なのである。
また、"個性"を知っているA組の者からしても、未だにわかりにくさがあることに加え、今までの様子から明らかに"個性"の制御がしきれていない五条は、どうしても安定性に欠ける選択肢であった。それならば、仮に断られるにしても、まず先に轟や爆豪を当たるのが安パイであった。
有り体に言えば"個性"が地味だった。
兎も角、誰にも声を掛けられないのであれば、仕方が無い。自分から動いてやるとしよう。
地味に傷ついたプライドで虚勢を張りつつ、そうして移動をしようとしたとき、待望の声がやってきた。
「五条くん!まだ騎馬って決まってなかったりする?」
「!……緑谷かあ」
「え?うん、ダメだった?」
推定ラスボスが来てしまった。違う、そうじゃない。俺はオマエと戦いたいだけであって、仲間に加わるつもりはなかったのだ。
しかし、先ほどまで誰にも呼ばれなかった寂しさも相まって、とりあえず話だけは聞くことにした。場には既に飯田と麗日が集まっていた。イツメンである。
「飯田くんを先頭に、僕・麗日さんで馬をつくる!そんで麗日さんの"個性"で僕と飯田くん、五条くんを軽くすれば機能性は抜群!騎手の五条くんは"個性"を使用してハチマキを防衛し続けてほしい!五条くんは身長も高いしフィジカルも申し分ないから、15分間の逃げ切りにしても十分盤石な体勢で挑める……!」
騎手確約……?!!何という魅力的な提案……!緑谷、オマエさては大物だろう。こんな悪魔の提案をしてくるなど……。いや、俺は、今度こそオマエを倒そうと……。けど、この機会を逃したら…………。
「…………さすがだ、緑谷くん……。だがすまない、断る」
大いに惑わされている五条を尻目に、飯田が冷静に話し始める。
「入試の時から、……君には負けてばかり。素晴らしい友人だが、だからこそ……君についていくだけでは、未熟者のままだ。控え室で五条くんも言っていたことだが……、君をライバルとして見るのは爆豪くんや轟くんだけじゃない」
「俺は君に、挑戦する!」
そう振り返って歩む飯田の先には、上鳴、八百万、……そして轟がいた。つまり、そういうことらしい。
「飯田くん……」
「…………あれ?五条くん、どうしたの?顔が真っ赤だよ?」
「……………………いや」
俺は何を考えていたんだ。
いくら騎馬戦が楽しそうだからって、目先の利益にとらわれて、大局を見失うとは。心の中とは言え、1位を緑谷から取ると決めた以上、あまりにもダサすぎるムーブをしすぎている。
おまけに、飯田についでのごとく控え室のこと言われたし。ゴメン飯田。それムカついて言っただけだから完全に忘れてたわ。
「なんか汗もダラダラだけど……大丈夫?」
「えっと……やっぱり俺も、挑戦というか、オマエから1位取ってやるっていうか……ともかく!!緑谷、オマエとは組めない!!!」
「えっ」
ええいままよ。居たたまれなくなって捨て台詞を吐いてその場から逃走してしまった。
おかしい。今までの人生、こんな制御できないことなかったのに。ふざけていても、任務はこなせていたからか?いや、そうじゃない。きっと今まで、自分の興味を犠牲にしてまで、別の事をしたいなんて思わなかったんだ。だって、本気で「勝ちたい」なんて気持ち、生まれたことなかったから。緑谷に勝ちたい気持ちと、騎馬戦を楽しみたい気持ちと……。ええと、こういうときってどうすればいいんだ?
完全にショートした頭でフラフラと歩く。障害物競走の時といい、今といい、やはり今日はどこかおかしい。熱でも出したのだろう。こんなにも顔が熱いのだし。
……しかし、どれだけ頭が働かなくとも、自分が緑谷の提案を蹴ったのは事実。つまり、再び組む相手を探すところから始めなければならない。
(もう既に断ったモンは断ったモンだし。緑谷の提案は頭から消し去ろう、……今度こそ!!!)
そうして改めて周囲を見回すが、先ほどの交渉に思いのほか時間が取られたからか、すでに幾つかチームが出来上がってきているようだった。
アテがあった飯田とは異なり、五条は完全にノープランである。急いで誰かまだ空いている人を探さなくては。
そう目を凝らした五条の視界に、ある人物が写る。一抹の光を見いだしたように、五条は躊躇無く彼に近づき話しかけた。
「尾白ーっ!!!俺と組もうぜ!!!」
USJでなんだかんだ五条と一緒だった尾白である。見たところ、完全に組が決定したようには見えなかったし、それに、B組のよくわからない連中よりもよっぽど組みやすい!この状況においては、かなり最良に近い相手だ。しかし、なんだか様子がおかしい。
「……尾白?聞いてんのか?」
返事がない。流石にこの距離で聞こえないというのはおかしい。そう不審に思い五条は正面に回り込む。
──そこには、表情の抜け落ちた顔が在った。
「……?どうした……」
「…………騎馬、組んでくれるんだ?」
「なんだよ、いまっ…?!」
尾白の様子を確認する間に、話しかけてきた謎の声。それに適当に返事を返そうとした瞬間、突如として身体が凍り付く。
手足一つ動かせない。身体が言うことを聞かない。この現象は──。
(呪言の、類い……?!!)
「いやあ、ちょうど一人足りなかったんだよね。助かるよ」
そうして笑うのは紫髪の少年。見覚えがあった。体育祭の前にA組へ敵情視察しに来たうちの一人。たしかヒーロー科ではなかったような。
いや、そこは問題じゃない。考えるべきは、コイツの素性より、コイツの"個性"についてだ。
呪言。言葉をトリガーとして人を操る術式。
だが、それとこれとは似て異なるようだった。そもそも呪言では、1フレーズ分の命令文を聞かせるに留まるはずだ。しかし、紫髪のコイツは、命令文を入れていない上、その後もずっと身体の言うことが聞かないのだ。耳を呪力で守ったとしても、解放されるそぶりは全くない。
…………呪力で?
「あんた、障害物競走の時2位だったんだろ?まあ目立ちはしちゃうけど……それ以上に強いってことだもんな」
五条からの返事はない。彼の貌も尾白と同様に、生気が抜け落ちていた。両腕を真下に投げ出したまま、棒立ちの状態になっている。
それを見て紫髪の少年、心操は皮肉のように笑った。
彼の"個性"は洗脳。自身の呼びかけに対して返事をした相手を、洗脳することができた。それは、相手が予選2位の強者であろうと変わらない。
「ともかく、心強いよ。これであんし、…………っは?」
ぺきり。嫌な音がした。聞き馴染みのないその音に、反射的に心操は音の出所に目を向ける。そうして、目の当たりにして、血の気が引いた。
────五条の左手の小指、それから薬指があらぬ方向へ捻れていた。
「!!っはあ、よっし!!自由になった……!!」
「おまえ……正気かよ……?」
こいつは。自らの指をグチャグチャにした痛みで、洗脳から脱出したのだ。完全にイカレている。とても正気とは、心操には到底思えなかった。
そもそも、勝手な"個性"の使用は洗脳で禁じていたはずだった。一体どうやって……?
「おい、そこのオマエ。仮にオマエが何度俺の自由を奪おうと、俺はどんな方法をとってでも絶対に支配を解くからな。余計なことすんじゃねえよ」
「……!!」
口元に笑みを浮かべながらそう言い放つ五条。体による痛みへの生理反応としての汗は流れつつも、その表情自体には余裕が見て取れた。
自らの体を使った脅し。こちらに利もなければ、虚勢の可能性だってあった。従う必要などない。そのはずである。
だが、こいつの様子を見ていると。
心操の視界の端に、一瞬折れた指が映る。
(……やりかねない)
心操には、そこまでして、五条に"個性"をかけることは出来なかった。悔しさに、拳を思いきり握りしめる。
(……お?ようやくわかってくれた?)
一方の五条は心操の予想通り、勿論実行するつもりでいた。
彼が洗脳にかかった後、不自由な体の中で、唯一なぜか呪力のみは自由に動かせた。それに気づいた瞬間、躊躇もなく無下限術式によって自らの指を破壊したのだ。
もう少し穏当な方法も考えはしたが、どうすれば目覚めることが出来るのかわからない以上、ある程度強めの刺激でなければと、このまま強行したのである。
おそらく感覚的に、その判断は間違いではなかったようだ。
「……よし。まずはオマエの"個性"について洗いざらい吐け。あ、ちゃんと尾白と多分そこのもう一人も解放してからな」
(計画が丸つぶれだよ、畜生)
心操は、観念したようにため息を吐いた。
***
「洗脳?!初見殺しがすぎるだろ!!」
「上手くいったと思ったんだけどなあ」
心操から聞いた"個性"は、呪言とはまた別方向に強力なものだった。
彼のこの"個性"であれば、相手が知らないのも相まって、ハチマキなど奪い放題だろう。しかも、"個性"使用による大きなデメリットもない。これは、呪言と比べて明らかなアドバンテージである。
だがしかし、そのための仲間まで洗脳するのはいただけない。
「別にいいよ。もう全部バラしちゃったし、煮るなり焼くなり好きにすれば」
「……?何言ってんだ。組んでくれんだろ、騎馬」
心操はポカンとした顔をした。それを無視して五条は話し続ける。
「それじゃあまず騎馬の位置関係だ。まず俺が騎手だろ?んで下は……、えーとB組のオマエ。"個性"何持ってんの?」
「ちょ、ちょっとまて」
「なんだよ心操。まだなんかあんのか?」
「大有りだ。なんでおまえが騎手なんだ」
……本当は一つ目の話にツッコミたかったが、それ以上に二つ目を看過できなかった。
「いやだって……俺騎手に向いてるらしいし。そう言われたし」
「それはケースバイケースだろ。ていうかそもそも全員の"個性"を把握すらしてないのに勝手に決めようとするなって言ってるんだ」
…………それはまあ、そうだ。頭の中では自分が騎手なことがいつの間にか大前提になっていた。流石に把握してから為らなければ。
「ええと……そういうわけで自己紹介させてもらうよ。僕はB組の庄田二連撃。"個性"はツインインパクトで、強い衝撃を与えたものに、もう一度衝撃を与えることが出来るんだ」
「庄田は知らないだろうから俺も。A組の尾白猿夫だ。"個性"は見たとおりこの尻尾さ」
「俺もする流れ?……五条悟。"個性"は……呪力っていうエネルギーを使って身体能力高めたり、バリア張ったり、ものを引き寄せたりできる。最後のは負担大きいんで基本使う予定ナシ」
「さっきも言ったけど。俺は心操人使、普通科所属。"個性"は知っての通り洗脳だ」
「…………よし、じゃあ俺騎手な」
「おい待て、なんでそうなる」
「ええ?把握したしもういいじゃん?」
「五条……もう少し話し合ってから……」
「流石に横暴だ!」
非難轟々。
くそ、俺は騎手になりたいだけなのに。なんてめんどくさい奴らだ。こちとら人生で初騎馬戦なんだぞ。華々しい初戦にさせてくれよ。
「フィジカル強いやつが上なんだろ?じゃあ俺じゃん」
「それだったら庄田と尾白もいいことになる。おまえ一人に絞る理由にはならない」
「それに、フィジカルが高い人を騎手に回すと言うことは、騎馬の機動力が落ちると言うことでもある。一概にそれが最善手と言えるわけじゃないんだ」
「…………尾白は?」
「え、俺は……。……まず五条が騎手であるっていう前提で話すのはやめた方が良いとは思う。別にこれは五条が騎手だと駄目だ!って言いたいわけじゃなくて、ただ、それぞれのできる戦術的な役割から洗い出すのがいいんじゃないかな」
別に否定ではない。
その言葉を聞いて、五条はようやく押し黙った。ここまで躍起になって強引に進めていたのは、ここで引き下がったら騎手になれないと思っていたからで、その可能性があるのであれば、とりあえずは引き下がることにした。
「はぁ……時間がない。話を進めよう」
「先に心操くんが言ってくれた通り、フィジカルが強めであるのは僕と尾白くんと五条くんか」
「言いたいことはわかる。俺を上下どっちに配置するかだろ?」
心操が先んじてそう言った。
「いや、下じゃねえの?そりゃ」
「俺は三人ほど機敏に動けない。何せ"個性"はああだし戦闘訓練も何も受けてない普通科だからな。……そんな俺が下に配置されたら他2人の足を引っ張る可能性がある」
「このメンバーの強みが薄れるって訳か……」
「そうだね。心操くんの"個性"自体は強力だし、そうしたら心操くんを上に……」
「いやいやオマエら待てって!!なあ!」
この話の流れに口を挟むのは、当然五条である。彼にとってこの展開は不都合以上の何物でもない。
「……なにか問題があるのか?」
「あるだろ!!デッカい問題がさ!!オマエら全員自分の身長言ってみろ!!!ちなみに俺は190な!」
「……俺は177cm」
「俺は169だけど……」
「僕は165cm……あっ」
「気づいたか?そうなんだよ。仮にオマエらの言うとおり心操を上にしたとする。じゃあ残りの下の騎馬を支える人間の身長は!!」
「190,169,165…………」
「……どう考えてもバランス悪いだろうが!」
五条の力説に三人はハッとする。一つの話題にとらわれて、根本的な部分を見落としていた。
しかし、それはそれで問題がないわけではない。
「けど、そうしたらさっき話してたフィジカルの問題が……」
「あのさあ、フィジカルが強いってさっきから一纏めにするけどさあ。俺と尾白と庄田!この三人の中のフィジカル差も考えるべきだろ!!」
「確かに、そうだね……」
「俺は、尾白と庄田、オマエらより遙かにフィジカルが強い自信がある!言っただろ?呪力……"個性"で身体能力上げられるって!!なんなら個性把握テストの結果も言ったらいいか?」
「……俺との差と、結局同じか」
三人の目に、迷いが生まれていた。しかし、まだ絶対的な決定打ではない。
「ていうかそもそも俺はバリア張れんだよ!!壊れたりしない!絶対的なバリア!!!ハチマキ絶対取られねえよ!!」
…………ああ、勢いに任せて言ってしまった。これがあると、試合が塩になりそうで嫌だったのに。五条は言いたいことを全て言い終えて、一息ついた。
「……あんたってさ」
「ああ?」
「意外とちゃんと頭回るんだね。てっきり自分のことしか考えられない馬鹿だと思ったよ」
「はあ?俺馬鹿じゃねえし!!」
「最初はどう説得しようと考えたものだよ」
「丸く収まりそうでよかった、よかった」
「な、何だこの空気……」
妙に暖かいような温度が流れている。おい、尾白。よくわからない視線をこちらに向けるんじゃない。やりづらいんだよ。
「とりあえず、最初の主張通り、騎手は五条でいいだろう」
「ようやくか……。長い道のりだったわ」
「あっ、もう後数分しかない!」
「急いで残りの位置も決めよう」
騎手が決まってからはトントン拍子だった。
中央の騎馬は安定した人がいいということで、庄田の担当に。一時尾白と迷われたが、左右の身長差が大きくなってしまうことと、尾白の尻尾が彼の後方に生えているため、中央ではその"個性"をあまり生かせないと判断された。
その尾白は、自身の攻撃のみに関わるとはいえ、呪力が感知しづらくなっている五条の左目だったり、メンバーの多くが右利きであることから、そのカバーのために、左側へ。
そして、心操は右側で自身の"個性"を使いつつ、全体のサポートに回ることとなった。
『さァ上げてけ鬨の声!!血で血を洗う雄英の合戦が今!!狼煙を上げる!!!!』
そして、ついに開始の時が来た。歯を見せて笑う五条は、Pハチマキをしっかり頭に巻き付ける。
庄田二連撃、45P。
尾白猿夫、155P。
心操人使、75P。
五条悟、205P。────TOTAL、480P!
「っしゃ!行くぞ!!」
望みの片方は叶えられた。──ならば、後は勝つだけだ。
多分序盤の議論のかき乱しがなければ、他の三人からも自然に五条騎手云々の肯定的な意見は出ていたと思います。
まあ、結果的には同じですから!