最強じゃない五条のヒーローアカデミア   作:せり

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3.面白い男

「おー、なかなか広いじゃん」

 

 あれから数日。

 "個性"使用のための施設の許可が出た五条がいるのは、雄英の体育館γ(ガンマ)。通称「トレーニングの台所ランド」、略してTDLである。このどこか危ない名前の体育館は一見何の変哲も無いが、一つの特徴があった。

 

「悪いねセメントス。つきあってもらって」

「いえ、俺もあなたに何度も世話になりましたし……。それに、彼の"個性"を見るには何かものが必要なんでしょう?適任ってやつですよ」

 

 雄英教師のプロヒーローの一人、セメントス。彼の"個性"は「セメント」。触れたコンクリを粘土のように自在に操ることが出来た。

 この"個性"によって、TDLでは様々な形状の地形やものを用意することが出来る。ものがなければ効果がわかりづらい無下限術式の確認をしたい五条にとって、これはありがたい話だった。

 

 目の前の何の変哲も無かった床が盛り上がり、いくつか石や岩のようなものができあがる。かと思えばセメントスはその岩と床との接地面を限りなく細くするようにして、千切るように個体として床から切り離した。

 彼は五条の"個性"をサイコキネシスだと聞いていたため、床にくっついたままの地形の状態では、動かすのも大変だろうという細かな配慮である。五条は普通に岩を破壊できるので、その心配は無用だったわけだが。

 

 目の前でどんどんと形を変えるコンクリートを見る五条は、素直にその"個性"に感心していた。

 

 いくら材料が限られるとはいえ、これだけの質量をいとも簡単に操っている。ものを操る術式には赤血操術や付喪操術などがあるが、操作の規模が段違いだ。しかも、セメントスの様子を見る限り、これが限界というわけでもなさそうだった。

 術式と"個性"、似ているようで案外違うもんだなと五条は考える。寧ろ、"個性"の方がよりなんでもあり感が強いのではないだろうか。

 

 だからといって遅れをとるつもりはさらさら無かった。五条には片目になったとはいえ六眼と無下限術式がある。

 セメントスが操作を終えたのを確認すると、腕の筋肉をほぐしながら前へ出る。ちゃんと体を動かすのはいつぶりだろうか。なまりになまった体に活を入れるように頬をぺちぺちと叩き、腕を前方に構える。

 

 現状五条が行える術式操作は二種類。一つは、自らに近づくものを止めるニュートラルな無下限呪術。そしてもう一つはものを引き寄せる術式順転「蒼」。

 前者は病室でもちょっとした小物をつかって使えることが既に確かめられている。故に今回試すのは後者の方だ。こちらは下手に使えば部屋が崩壊しかねない代物である。

 

 まずは、試しに少し前方にある軽い石を引き寄せようと五条は呪力を込めた。ところが。

 

「最初は軽めに……、っておわあ?!」

 

 五条によってつくられた引力は、五条の想定よりも高い出力をもち、目標の石どころか近くにいた五条の体まで引きずり込んだ。即座に術式の行使を止めるも、体の勢いは止められず、同じように引きつけられた岩と正面衝突をおこす。

 幸い頭などの大事な部分はぶつけることはなかったが、五条はその場でまともに岩と接触した腹を抱え、蹲った。

 

「ってぇ、くっそ……」

 

 完全に想定外だった。まさかここまで大幅に出力操作を失敗するとは。

 後ろからセメントス達の中止するかという心配の声がかかるが、五条はそれを断る。まだ確かめたいことがいくつかあるのだ。

 

 今度は五条よりかなり遠くの離れた岩を目標とする。目標とする出力は最大。五条は再び腕を構え、呪力を自らの術式に流し込む。

 岩のところに目標通り最大出力の引力が出現した。そこまではいい。今度はその反応を自らの周辺を円を描くように一周させようとした。

 

 しかし、うまくいったと感じたのは最初だけ。反応点は円を描くのでなく、そのまま初動と同じ方向へまっすぐ飛んでいってしまった。反応点が壁に衝突する前に五条は舌打ちをして術式の行使を打ち止める。

 

 想像以上だ。想像以上に酷いことになっている。六眼を片方破損することがこれほどまでに呪力操作精度に響いてくるとは。

 今の五条の現状をまとめるならこうだ。

 

①ニュートラルな無下限術式は使える。

②術式順転「蒼」の細かな出力の調整が出来なくなっている。(最大出力などは問題ない)

③「蒼」の反応点の操作性も低下。直線軌道のような単純な指向性しか持たせることができない。

④術式の複数操作がほぼ不可能。

 

 ①から③は今まで見たとおりである。④については、先ほど「蒼」を使う際に五条がふと気づいたものだ。正直戦闘においては②と③以上に致命的といってもいい。なにせ二つ以上ということは、無下限術式による防御と、術式による攻撃との併用も不可能ということであるからだ。術式で攻撃する際に今まではなかったはずの隙が必ず生まれてしまうのである。

 そしてさらに、ダメ押しかのように五つ目もある。

 

「……あーあ、しんど」

 

⑤術式を使うことで異様に疲れやすくなっている。

 

 いくら片方が最大出力だったからといっても、まだ五条は二度「蒼」を試し打ちしたばかりである。それでいて五条の脳みそは軽い頭痛を訴え始めていた。六眼片目分、呪力の効率が悪くなっているのだろう。

 先ほどのニュートラルな無下限術式と「蒼」の併用ができないというのも、おそらくこのことが原因だ。ここからさらに術式を使うのは、出来なくもないが相応の苦痛が伴ってくることだろう。

 

 散々な結果に五条は思わずその場でしゃがみこんだ。そして、大きく息を吐き出す。

 あのとき呪力の核心をつかめそうだったのは何だったのか。なんなら遠くなったんじゃねえの?そこまで思考して、ふと五条の頭に数日前の体に正のエネルギーが流れていたことがよぎる。

 

 反転術式。もしかしたらできるようになっていないか?先ほどの落胆した気分から一転、期待するように五条は呪力の操作を行い始めた。

 

 しばらくして、先ほど強打した腹の痛みの引きが、わずかに早くなったように感じた。右目で自らの体を見れば、確かに正のエネルギーが生み出されているのが見える。

 ただ、その生成量は微々たるものだ。無下限術式に流し込んで攻撃に転用するにはあまりにも少なすぎる。いわば、僅かに捻った蛇口から流れるチョロチョロした水だけで、バケツをいっぱいにしようとするレベルだ。

 

 それでも、反転術式が任意でできるようになったというのは非常に大きいことだ。今は出力が貧弱でも、回数を通して大きくしていけるように鍛えればいい。

 最悪、今の現状だけでも軽い治癒バフとして役に立つだろう。以前よりもマイナスなことだけではなかったのはまだ幸いである。

 

 少し元気を取り戻した五条は、とりあえず出来るのはここまでかなと立ち上がった。そのとき、体育館の入り口の方から大声が響く。

 

「こんな時間にだれか人がいる?……って、リカバリーガール!セメントス!どうもこんばんは!」

 

 日もほぼ暮れ暗い時間帯。そんな時に体育館の電気がまだついていたのが気になったのか。金髪で体格の良いその男は、体育館の入り口で笑顔で立っていた。恐らくたまたま施設周辺にいたのだろう。

 遠くからそれを見た五条は、見たことのあるその男の姿につい叫んでしまった。

 

「あーーー!オマエ全裸の奴!!!」

 

 なかなか失礼極まるあいさつである。

 その声を聞いて五条の存在にも気づいたその男は、気にせずに溌剌と五条にも話しかけてきた。

 

「俺のこと知ってくれてるのかな?うん、全裸はごめんね!"個性"の調整が難しくて。ああ、そうだ!」

 

 明るく話すその男は五条の方に近づいた。そして。

 

「一連ーーー!!?」

 

 五条に向かって突然そう声をかけた。体を五条の方に傾けて、耳に手を当てこちらの返事を待っているような体勢である。当の五条は意味をよく汲み取れず、ぽかんとした顔をしていた。思わず困惑が漏れる。

 

「は?」

「托生ー!っつってね!よォし初手から大スベリだ」

 

 どうやら彼なりのあいさつだったようだ。非常にわかりづらい。

 はっはっはと笑いながらそう話す男のことが五条にはイマイチよくわからない。ただ、個性だけでなく性格も大分愉快な人間であることはわかる。五条は面白い人間は好きだった。

 

「っとちゃんと自己紹介をしていなかったね!俺は通形ミリオ。雄英高校ヒーロー科2年B組なんだよね!君は?」

「五条悟。雄英には、えーっと…」

「五条は雄英の敷地内で大けがを負って倒れていたんだ。今は高校内で療養中だよ」

 

 自身をヒーロー科所属だと語ったミリオに対し、どうやって雄英生でもない自分が雄英にいるのかを説明しようとして言葉に詰まった五条に、リカバリーガールが助け船を出す。

 

「なるほど、そうでしたか!でもこの体育館にいるってことは、ある程度回復してきてリハビリ中って感じかな?」

 

 ミリオの予想は間違ってはいない。五条は自らの術式の状態を確かめにきたのである。そうしたとき、そういえばと五条はミリオの"個性"について思い出した。

 

「大体そんな感じ。ところで、俺が普段いる保健室から外の様子とか見えてたんだけどさ、あの"個性"ってどういうこと?なんで全裸になんの?」

 

 五条は直球で尋ねた。

 あのとき、遠くの窓から見る分には、基本の動きはわかっても、根本となる"個性"の仕組みについては結局わからなかったのだ。今はそのことについて聞く絶好の機会だった。なんなら実際に見せてもらえるかもしれない。

 

「俺のこと見ていてくれたんだ、嬉しいね!うーんと、俺の"個性"「透過」についてはどう説明しようかな!実際に見せるのが一番よさそう!!床だとまた全裸になっちゃうかもだから、えーと、あっちに岩が……」

「面倒くせえしそれより実際戦って見たりとかの実演する方が早くね?」

「え、でも今君療養中なんだろう?俺、()()()()()()らしいから戦闘はよした方がいいかと思うぜ!というかそもそも君が戦闘訓練受けてるかど──」

「はぁあ?」

 

 五条はミリオの言葉を聞いてたまらずひっくり返った声を出す。手加減。手加減、ね。まるで本気を出したらこちらが死ぬみたいじゃねえか。

 当のミリオに、悪意も見下しの気持ちも全くないことはわかっている。だが、だからといってこんな舐められたような言葉を言われて黙っているほど五条のプライドは低くなかった。

 

「いいや、やっぱ戦おうぜ。言っとくけど、手加減なんざ不要だから。オマエが本気を出したところで俺にはぜってぇ勝てねぇし」

「五条、まだ完治したわけじゃあないんだよ!」

「わかってるっておばあちゃん!この程度の喧嘩ぐらい自分で責任負うわ。そもそも()()()()()()()()()()()()しな」

「おお、言うね!それならいつも通りでいっちゃおうかな!」

 

 そういうとミリオはその場で足を伸ばして準備運動を始めた。五条もそんなミリオの前に立つ。不思議とその口角が上がっている。体育館の端ではリカバリーガールがカンカンに怒っており、セメントスは危なくなったらすぐ止めるとだけと二人に伝えた。

 

「よし、じゃあやろうか!」

 

 ミリオが立ち上がり、そう宣言する。

 五条は動かない。無下限による防御と「蒼」による攻撃、この二つが同時に使用できない以上、未だ未知な部分が多く高速移動してくる可能性が高いミリオ相手には、まずは受け手が良いと判断した。

 五条がまず守りに入ったのを察して、ミリオは動き出す。

 

 瞬間、ミリオの体が地面にめり込み消える。彼の"個性"によるものだ。かと思えば突然五条の背後に現れ、その鳩尾に向けて拳を繰り出す。しかし、その攻撃は五条の無下限術式によって阻まれた。

 

(バリアかな?じゃあこれなら)

 

 五条が何かしらのバリアを張っていると予想したミリオは、腕のみを透過させもう一度攻撃を行う。バリアを超えた段階で透過を解除し攻撃をあてようとしたのだ。

 しかし、五条のそれは本質的には壁ではなく、無限の距離である。そもそもミリオの拳は届いていなかった。

 

 自身の攻撃が透過をもってしてもあたらないとわかるやいなや、ミリオは五条の反撃を待つ体勢に入る。

 ミリオは五条の"個性"を知らない。仮に五条が遠距離タイプの攻撃手段を兼ね備えているなら、近接の攻撃手段しか持たないミリオにとっては不利になる。それを予想して、ミリオはあえて距離をとらなかった。

 

 実際、現時点でただのステゴロであればミリオに分がある。五条は身体能力こそ呪力によって強化しているが、素手のみの戦闘経験自体はそこまで多くない。いくら無下限で攻撃を受けないとはいえ、五条は効果的な攻撃をミリオに当てることができないでいた。

 故に、どうにか距離をとって「蒼」で一発で沈める。それが五条の理想だった。

 

 しばらく、互いの攻撃が当たらない拮抗状態が続く。しかし、五条の攻撃を避けながらたまに試すように攻撃を繰り出すミリオに対し、無下限のおかげで防御について考える必要の無い五条は、その意識を全て攻撃を当てるために割いている。結果的に無駄となる行動が多いのがどちらか。それは明白だった。

 

 五条が前方に円を描くように左腕を振るう。ミリオは体を屈めそれを避ける。その動きを予想していたか、今度は五条の右足が飛んでくる。ミリオは即座に全身を透過。地面へと緊急回避を行った。

 

(あ、まずいかも)

 

 体勢が整わないまま地面へ潜り込み、地上の出現先の調整が出来なかった。自身より少し離れた位置に現れたミリオ。正面では既に五条が掌印を組んでいた。

 

「術式順転、────"蒼"!」

 

 ミリオから近い位置にある壁の方へ大きめの反応点を生み出す。空中にいたミリオは、抵抗できずにその引力に引っ張られた。

 ミリオが「蒼」に触れる直前、五条は術式を解除。そのままの勢いでミリオは壁へと体が叩きつけられる。人一人の衝突音が体育館に響き渡った。

 

 ミリオは確かにダメージを受けたようだが、まだ決定打には足りない。もう一度五条は「蒼」を行使しようとした。

 

「……う゛っ!」

 

 その瞬間、五条の頭を激痛が走る。ミリオと会う前、何度か行った「蒼」の試運転。その負担がここにきて響いてきていた。五条は思わず頭を抑え、体をふらつかせる。

 

 その隙を逃すミリオではない。激突した壁から落ちる体の勢いそのままに、再び地面へと潜り込んだ。今度は体勢も整っている。

 気づけば、五条の目の前で拳を構えるミリオがいた。

 

「もらったよ!」

 

 一番初めに「蒼」を使ってこなかったこと。肉薄しているときにも使おうとしなかったこと。

 それらの行動から、ミリオは五条がバリアとの併用が出来ないことを見抜いていた。故に、距離が離れてしまったときから、「蒼」使用直後の隙だけを狙っていた。そして今、ミリオの拳が五条の体にめり込む。

 

 ────かのように思われた。

 

「甘ぇんだよ」

 

 ミリオの拳は宙で止まる。そこには再び無下限の術式が展開されていた。

 確かに五条は無下限防御と「蒼」との併用はできない。しかし、ニュートラルな無下限術式自体は、普段からよく発動していたことも相まって、その発動速度は「蒼」の比にならなかった。

 

 笑顔を見せる五条の額には汗が伝っている。実のところ、内心では少し焦っていた。その速度をもってしても、ミリオに対応できるかどうか五分五分だったからだ。それだけ、突然の頭痛によるロスが大きかった。

 

 完全にこの一撃で終わらせるつもりだったのか、ミリオは驚きに目を見開いている。今なら入るだろう。五条は右腕を振り上げた。そのままミリオの顔面へ向けて拳を繰り出す。

 が、突如ここでミリオが動いた。自身へと迫る五条の右腕の軌道に、左肩から腕を平行に合わせるようにひねる。

 

(……!!しまった)

 

 五条の攻撃はミリオの左腕の付け根に当たった。それと同時に、体が前方に思いっきり引っ張られる。ミリオの左腕が五条の右腕の服をつかんでいた。そのままミリオは、左腕の腕力だけで五条を思い切り上から床に投げつけた。見事な背負い投げである。

 

「……っ、誘ったな?」

「まあね!君がそのバリアを張るまでの時間が、俺の想定より短い場合があると思ったんだよね。バリアを張られたら俺の攻撃はもう当たらない。ただ、その状態でも()()()()()能動的に俺に触れることが出来るんじゃないかってね。まあ、確証はなかったぜ!」

 

 ミリオは五条からの攻撃をわざと受けることで、結果的に無下限の守りを突破していた。それも、只のカウンターではない。ミリオ自身、そこで万策尽きたかのように見せかけた。五条が勝ちを確信し、最も油断するタイミングを的確についてきた。

 

「あーなんだよー!これ俺が結局恥ずかしいだけじゃん!絶対勝てないとか言うんじゃなかった!」

「まあまあ、これでもときおり危なかったんだぜ?特に遠距離のあの引き寄せる攻撃!正直終わったと思ったよね」

 

 床に仰向けに倒れたままそう喚く五条に対し、ミリオはその横に座りこんで話しかける。

 二人の戦いに明確な勝利基準は定められていなかった。五条が2発、ミリオが1発。相手にそれだけ攻撃を与えただけだ。互いに相手に勝ったとも負けたとも思っていなかった。

 どこかが違えば片方の勝利になる、そんな薄氷の上に乗っているような絶妙なバランスでこの勝敗は成り立っていた。故に、後味は爽やかなものだ。

 

「つーか結局実際見ても"個性"よくわかんねーよ。考える暇もなかったし。どういう仕組みなんだ?」

「あっはっは!たしかにそうだよね!俺の"個性"は……、」

 

 戦闘前が嘘かのように盛り上がる二人を見て、リカバリーガールはやれやれと呆れている。

 

「……まあ、大事な怪我にならなくてよかったよ」

「彼、強いですね。あのミリオに対しても引けをとらなかった。将来はヒーロー志望だったりするんですか?」

「さあね。そうしたことはまだ聞いていないけど、もし本人が目指したいってなら支援はしてやりたいよ。あの子、ああ見えて()()()()のようだから」

 

 リカバリーガールがゆったりとした口調でそう話すのを聞いて、セメントスはそうですね、と笑った。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「俺、雄英入りたい」

 

 五条からのカミングアウトは突然だった。ミリオとの戦いから数日後のことである。リカバリーガールはそれを聞いて驚くこともなくそうかい、と返した。

 

「目指すのはいいが、あんた年齢いくつだい?」

 

 リカバリーガールがそう指摘すると、五条はギクッとした顔をした。リカバリーガールは五条と出会った初日、彼が高等専門学校の2年という経歴を書いたのを忘れていなかった。恐らく五条の実年齢は高校2年、16か17歳だろうと予想する。

 黙ったまま口をどもらせるだけの五条に、リカバリーガールは言葉を続ける。

 

「雄英は基本的に編入生を認めていない。だからあんたが急に雄英の2年として入ることはできない。ただまあ…」

「ただ?」

「…………あんた、戸籍が存在しないだろ。実年齢を証明するすべがないのさ。だからまあ、新しく戸籍を作る際に年齢を引いておけば次の雄英の入試は受けられるだろうね。新入生としてなら入学できるってわけだよ」

「……!ありがとうおばあちゃん!!」

「ま、入試の資格を得るってだけだから、実際受かるかはあんた次第さ」

 

 リカバリーガールからの受験の許可をもらった五条は、内心これで一歩前進だと息巻いていた。

 以前より、元の世界に帰るために自らの術式を鍛える場所を探していたが、ミリオと戦ったことで、想像以上に雄英という場所がそれに適していると気づいたのだ。

 

 それに、いつまでもリカバリーガールのところでお世話になっているわけにもいかず、最悪このままずっと戻れずとも、この社会で一人で何かしら生活できるようにはしたかった。

 バイトという手もあるが、経歴も素性も一切不明の男を誰が雇うだろうか。それならばいっそ(ヴィラン)を倒せれば良いヒーローの方がより許容されるだろう。

 なにより、リカバリーガールがこの雄英自体に務めているというのも大きい。

 

 そうした要因から、五条は雄英に入学することを決意した。しばらく傑と硝子に会えないのはやはり寂しいが、だからこそ、早く戻るためにも最短ルートを辿りたいのだ。

 

 ──雄英高校入試まで、あと4ヶ月。




原作の五条の近接戦闘の強さは、パパ黒との戦闘後に習得したと解釈しています。やっぱり最後には筋肉(フィジカル)が重要なんだよ……。
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