ウィズダフネ 短編 作:ドワスレイ
『昨日の部屋より誇り臭いね。まあ、屍人のあなたにはお似合いかな』
宿泊費をケチったことを根に持ってか、ルルナーデは痛烈な皮肉を吐く。そしてドアをすり抜けて廊下に出ていった。今日もほかの冒険者から情報を盗み聞くつもりだろう。
彼女の皮肉にも慣れたもので、私は何も聞こえなかったように木製の小さな椅子を引っ張りドアの目の前に陣取る。ノシッ、と椅子にもたれ掛かり、両足をダラっと伸ばす。これだけでも今日一日の冒険の疲れが吹き飛ぶようだ。
しばらく装備の点検をしているうちに、彼女が戻ってくる気配がした。私はなんの気もなしにドアの上方を眺める。
次の瞬間、白が見えた。
それは束の間のことで、すぐに青色のスカートによって隠されてしまう。しかし、仮面に隠された私の目は、その絵を脳みそに刻み込んだ。目を閉じ、先程の桃源郷を反芻する。
ああ、軽く刺繍のあしらわれたパンティ。つま先から太ももまで瑞々しい光沢を放つ素足。
心が洗われた気がする。
『ねえ、あなたは猥褻行為って言葉を知ってる? あるいは性犯罪者とか』
両手で軽くスカートを抑え、ドワーフに打たれた鉄塊すらも凍らせてしまうような視線を向けるルルナーデ。彼女の極寒の視線を浴びて、私は丁寧に首を横に振る。
『おかしいな。どっちもあなたを示す言葉なんだけど』
ふわ~お!
心外だ、と大袈裟に両腕をあげてアピールする。あまりに振りが大きかったせいで左手の小手が飛んだ。
それをじっと眺める可憐な少女は、相変わらずスカートを抑えたまま哀れみの視線を私に向ける。
それを受けて、さすがの私にも思うところがあった。
放り出していた姿勢を正し、椅子から降りて片膝をつく。彼女は何かを察して満足気に目を細め、腕を組んだ。どうやら許可が降りたらしい。
では遠慮なく。
私の左手は空を切る。手はスカートを貫通し、なんの障害もなくすり抜けた。残念、スカート捲りは失敗してしまった。私の嗜虐心は頭を打たれてしまった。
ため息とともに宙に掲げた左手を眺めると、その先に絶対零度の視線を浮かべる彼女の顔があった。『油断も隙も......』と彼女は呟く。なんの事だろうか。
私は再びため息をついて立ち上がる。仮面を放り投げ、部屋にひとつしかないベッドに身投げした。あ、全然柔らかくない。馬小屋の藁とどっこいどっこいだ。
『......はあ、あの登場の仕方は止めようかな。宙返り、結構気に入ってるのに』
何を言っている!?
私は大事なパートナーの悲しげなつぶやきに、飛び跳ねるように起き上がった。私の良心が酷く傷付いたのだ。いけない。彼女が間違った道に進まないよう、導かなくては。
聖職者顔負けの慈愛の心を胸に、私はルルナーデに懇切丁寧に道理を説いた。
宙返りをやめてはいけない。
それはあなたの長所だ。
もしやめてしまっては、顔と裸足だけが取り柄の女になってしまう。
せめて、せめて三つ取り柄のある女でいて欲しい。
私の熱い説得に、彼女は納得したように頷く。
『屍人のあなたがなぜ話せるのかずっと不思議だった。でも、今わかったよ。あまりに汚い心を持つから、悪魔が間違えて人間の皮を剥いでいったんだね』
彼女が何を言いたいのかよく分からなかったが、どうやら彼女は納得したらしい。良かった、これで宙返りは続けてくれるはずだ。
満足のいった私は、満足感を抱いたまま服を脱ぎ、用意された桶で体を拭く。ルルナーデはまだ感動が終わらないのか、ずっと私を見ている。屍人の体で見るところがないとはいえ、少々恥ずかしい。恥ずかしいから、とりあえずサイドチェストをした。
目が合うと、彼女はにっこりと微笑んだ。
『あなた、絶対ろくな死に方しないよ。まあ、既に死んでるようなものだけどね』
そのまま受け取るとまるで悪口だが、彼女が微笑むところから察するに、既に死んで浮遊霊となった彼女の幽霊ジョークか、幽霊感謝だろう。
私はニッコリ微笑んだ。
彼女もニッコリ微笑んだ。
ルルナーデのパンチィは白
異論は認めない