あけましておめでとうございます
今更ですが元はゲーム主人公とネメアという喧嘩で世界が滅びる夫婦の子供の予定でした 四コマのネタから
皇太子が行方不明者なのはやばいので農民にしました
「おーおー、派手にやったじゃねぇか。相変わらず舐められてんな、運び屋」
リヴィラの街はならず者の楽園ではあるんだが、俺みたいに弱そうで金持ってる奴は絡まれやすい。
今だって嫌いだって言ってんのに武器をちらつかせて酒を無理に飲ませようって連中が現れたから叩きのめした所だ。
意識と記憶が飛ぶ程度に顎をぶっ叩いて気絶したのを地面に転がしているとボールスが今頃になって出て来やがった。
おい、さっきから見てただろ、顔役。
「酒場でもねぇのに人に酒を無理に飲ませようとしやがって。此奴等自体も随分と酒臭いし……おぇ」
この男達が飲ませようとしただけだが、わざわざ持ち込んだらしい物の上に少し飲んだ形跡まである。
匂いを嗅げば妙な感覚で気持ち悪いし、他の酔っ払いにでも飲ませてやるか?
「こりゃソーマ・ファミリアの連中だな。金払って他のファミリアに同行して来たのは知ってんだが….おいおい、これってまさか本物か!?」
「本物か偽物かとかよく分からねえけれどよ。こんだけ酔っ払っててて酒の為に冒険者やってんのかって感じだな」
「……いや、実際その通りだろうな。ちょいと裏では有名な話だぜ? 酒狂いの連中だってな」
冗談で言ったんだが、マジで? デルガドの爺さんとか一時期飲んだくれていた酒好きだったが、それでも此処迄酷くなかったぞ?
ボールスは連中が俺に飲ませようとした酒の瓶の蓋を開け、少し神妙な感じで悩んでいる。
多分金だな。あの酒、金になるんだ。じゃあ、それを何で俺に飲ませようとした?
本物って事は偽物が出回る程のだけ酒なんだろうが……。
「これは俺が売っぱらっても良いか?」
「俺は放置してた。誰が拾っても関係無い。それで気を良くしたから暫く配送料金が割増になった。だろう?」
「ああ、そうだ。神様に聞いても嘘じゃないって言うだろうさ」
このやり取りは面倒だが割と大事な奴。神は嘘を見抜けるからな。取り引きに関する会話なんてしてませーんって言葉が嘘にならないからだ。
娼館に行く時もわざわざリヴィラの街を経由してるからな。
指を四本立てて俺を指すってこたぁ俺に四割……手間賃は面倒事の分って事ね。
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転がってる連中の締まりの無い顔を見る限りじゃロクなもんじゃねぇな。
……麻薬か? 悪徳商人が売りたがる奴。
「一応合法の品だよな?」
「怪しい物は入ってませんって感じだぜ? 下級冒険者じゃ夢中になり過ぎてくっだらねぇ真似してるけれどな」
成る程ね、ギルドだのガネーシャ・ファミリアがこんなの全く感知してねえ訳ないし、合法ですが問題ですって奴か。
荒くれ者だって自覚あるボールスも口をへの字に曲げてるし、随分と酷い感じみたいだな。
この程度で金が入るのは別に良いんだがどうもモヤモヤするんだよな。
今度デメテル様の所に畑仕事に行くとして、ベルゼーヴァで大暴れだ!
……この前は騒ぎになったし、下層の方で暴れるか。
本当は今から行きたいんだが、先約があるんだよなぁ……。
「なんとっ! 攻撃と共に精神力を吸い取る鎚とはな。他にはっ! 他には面白そうな物はないのか!?」
いやさ、アミッドから性病についての講座を散々受けた後、あの苦手判定した椿がホームに押し掛けて来たんだよ。
飯奢るからバイアシオン大陸の武器について詳しく教えろってな。
場所は豊穣の女主人、俺の前には立ち上がって身を前に乗り出した椿。この手のタイプは一度承諾しないとしつこいだろうからって引き受けたんだ。
それに、ここの店の料理、美味かったし悪くはない……と思ったのは間違いだった。
「常にエンチャントが発動している武器か。うーむ、それは魔剣と違って魔力を使い切っての破壊は無いのだな?」
「そりゃ壊れる時は壊れるが、魔力が枯渇して壊れるのは聞かねえな。ああ、エンチャントされた武器で凄いっつたら当代一の刀鍛冶、いや、ただの酔っ払いのデルガド爺さんが完成させた緋炎の宝剣だな」
「いや、酷い呼び方ではないか?」
「本人がそれで良いって言ってたんだ。自分の打った武器が虐殺に使われてからやる気無くして酒に溺れてたからな」
「……そうか」
それだからって初対面でただの酔っ払い呼ばわりしした姉貴は逆に凄い。クソ度胸だよ、あの人。
椿は先程まで食い気味だったが爺さんとか武器を打たなくなった理由を聞いた辺りで腕組みをして黙り込む。
自分か知り合いか、近い物でもあったのか? 良いや、話したいなら話すだろうし、話したくないなら聞いても話さないだろうからな。
「……それでその鍛冶師は武器を打たないままか?」
「いや、自分が認めたたった一人の英雄の為だけに打つってなったよ」
「……ふむ」
少しだけ満足した様に黙り込んだし、この辺で話は終えられる感じか?
憤怒の鎚は常時ブチ切れる呪いで終わるんだが、虚無の剣の方は話したくないし、闇の神器については黙っておくとして……。
「それで毒や麻痺を与える武器の手入れについて聞きたいのだが」
「ん? ああ、それもデルガド爺さんに習ったからある程度は……」
「そうかっ! 話せ!! おっと、先に宝剣についてだ!」
おっと、切り替え早いな、この女……。
むしろ一度大人しくなった分勢いが凄く、向かい合わせだったのが隣に移動して顔が近い。
あっ、ベルが居る。ここで飲み食いしたら儲けなんて一発でぶっ飛ぶだろうによ。
少し心配したが、よく見れば俺がやったみたいに先に金を渡して予算を決める感じにしたらしい。一応値段が高いのは分かってたからか結構持ち込んだみたいだが、絶対に予算ギリギリまでは持って行かれるな。
「精霊の力を封じたと聞いたが、具体的な方法でなくても構わんから何か教えろ。さあ!」
本当に承諾しなければ良かった。この人、苦手なタイプな上に酒臭い。どんだけ飲むんだよって感じで空いたグラスがテーブルに積み重なっているし……。
「えっと、そもそも宝剣を完成させる事になった経緯なんだが、親友とその身内が関わって来てな……」
あー、こうなったらヤケだ。さっさと全部話せるだけ話して今日で終わらせてやる。
「ほぅ。敵を斬る度に力がチャージされ、その力を使う事で物理や魔法を強化して放てると……」
「あっ、うん。例えば魔法の威力を数倍にしたりとかな」
姉貴は基本的に物理重視だったから物理強化ばっかだけれどな。
俺が分かる限りエンチャントの強さとかを教えるが、話が進む度に目が怪しく輝いて行く。これは実物を見せろとか言いそうだな……。
「言っておくが取りに戻るとか無理だぜ? 俺の魔法でも戻れない場所にあるし」
そもそも宝剣は姉貴が持って行ってる。封魔の槍は兄貴が使っていたし、今は物干し竿として活躍中だ。前のが折れちゃったからな。
……この様子じゃ槍について正直に言ったら怒られそうだぜ。
「だが、ランクアップを繰り返しステイタスを上げれば可能だろう。よし! 明日から手前と組め。経験値を稼がせてやろう!」
いやー、どうなんだろうな? ぶっちゃけオッタルを連れて行った場所でもアビリティが全然育たねぇし、あのオッさんより弱い奴と一緒に稼いでも無理じゃね?
胸を叩き、ドンッと任せろとばかりに張り切っちゃいるが断りたい。凄く断りたい。
「そんな事よりも倒した敵の力を吸収して強くなる槍について聞くか? 破滅の槍って名前なんだけれど……」
「よし! 今すぐ話せ!」
どうしよう。さっさと終わらせて娼館に行きたい。春姫の膝枕で癒されたい、凄く。
それからは一刻でも早く終わらせたくて話すべきでない事以外は話したさ、話し続けた。何なら魔剣とは少し違うが使い捨てで普通に販売している攻撃用アイテムについても話をさせられた。
「魔剣は使用者の技量は無関係なんだな」
「寧ろお主の大陸の方がどうなっておるのだ!? 普通は作った者の技量だろうに……」
「世界って広いんだな……」
それで済ませるなと小言を言われたが、俺に言われても困る。七色の軟膏についてもミアハに同じ事を言われたんだがな。
俺からすれば神が普通に暮らしているとか恩恵とか色々と妙なんだよな、どうなってんの?
「俺からすれば破壊不可能な武器とかの方が変だと思うんだが? どうなってんだよ、神の恩恵って」
「手前からすれば主の知る武器の方が異常だぞ? さて、他にも有るのだろう? 話せ! 直ぐに全部話せ! 何なら手前の胸を揉みながらでも良いから話せ!」
「それは遠慮する」
だって好みじゃねーし。
別に隻眼に抵抗は無いし、美人ではあるんだろう。胸だって大きいし、自分で軽く揺らす姿に周囲の男の視線も集まった。
でも、性格が苦手なので相手が神な場合同様に無理、何か対象外。
「そう言わず一度揉んでみろ。多分癖になるぞ」
「落ち着け、酔っぱらい。俺まで評判落ちたらどうしてくれるんだ」
酒の力も合わさってか椿は多分もう駄目だ。おい、ベル。こんな時こそ英雄の出番だぞ。俺をこの酔っぱらいのウザ絡みから解放してくれと強く願う。
小さな勇気こそ英雄への第一歩なんだから……。
「あ、あの! 昨日は助けてくれたのにすみませんでした! それとありがとうございます!」
おっ、ちゃんと言えたな。
声のした方を見ればベルが昨日の礼をちゃんと言えている所だ。ガチガチに緊張しちゃいるが、ちゃんとアドバイスした甲斐はあったな。
その勇気を俺の助けにも向けてくれたら助かるのにな、うん。
英雄だったら手の届く範囲は助けようとするもんだぜ?
「いえ、あの状況なら逃げても不思議ではありません。それにお礼は結構です。私は先日の一件もあってダンジョンが気になったから向かっただけですので」
「先日の一件?」
「ええ、ダンジョンで大滝が完全に凍り付くという異変が起きまして」
……アレかぁ。深夜テンションと春姫と会えない腹いせでおかしくなったとはいえ、何やってんだって感じだよなあ。
今の様子を見る限り、ベルの抱いてるのは恋心とまでは行かない感じか?
素敵なお姉さんに出会えて嬉しい、あんな風になりたい、お近付きになりたい、そんなんだろうな。
真っ赤になっているが、これでアドバイスしてなけりゃどうなってる事やら。
「あ、あの、何かお礼が……」
「いえ、お気になさらずに。それよりもシルが色々と話をしたいそうですので相手をしてあげて下さい」
そして少なくても今は恋心とまでは行かなくて良かったらしい。
冷たい様でちゃんと接してくれちゃいるんだが、他の女との交流を勧められるんだからな。
話を聞く限りじゃシルがベルを気に入り、弁当まで渡して店に呼び込んだって所か!
どうもリューはあの二人の仲を応援したいみたいだな。これが恋なら……うん、分かるよ。
俺もアトレイア様から見合い話を持って来られた事があるし、本当に憧れ程度で良かったな……。
「どうもあの店員に気に入られたらしいな、あの小僧は。リューも応援しているらしい」
「アレだな。孫娘の恋を応援したい祖母さんみたいなもんか? エルフだし、若く見えてもベルの祖父さんより歳上だろうしな」
「……聞かれても手前は知らんぞ?」
うん? だってエルフってのは基本的に外的要因以外で死なないんだよな? フェティも見た目の百倍生きてたし、オルファウスさんも実はひ孫が居るって聞いたぞ?
あの強そうなエルフも実は年齢四桁で孫の孫まで居たりしてな。随分と落ち着いた感じだし。
少なくても店長よりは年上なんじゃないのかと思ったが、エルフ相手でも年齢に触れるなって感じか。
へいへい、気を付けますよ。……椿も半分ドワーフなんだっけ? デルガドが百六十歳だったし、若く見えても実年齢は……ああ、自分にも当てはまるからな。
「そうだな。悪い、気を付ける」
エアの実質的な年齢もそうだが、長命種とはいえ他の種族と共に暮らしているのなら気になるんだろう。見た目は同じなのに相手側の種族からすると祖父母と孫位に歳が離れているんだって。
うん、多くの種族と仲間だってのに考えが足りなかった。
「何故だろうな? 謝られただけなのに凄い失礼な事を言われている気がするのだが」
「そんな事は無いさ。それよりももう少し話してやるよ。お詫びも兼ねてな」
「……おい、言ってみろ? 手前に対して何を考えたか言ってみろ?」
何を考えたって……うーん、どうやって誤魔化すべきか。
正直に年齢について考えただなんて言えず、俺は黙り込む。
「ご予約の団体様ご到着ですニャー!」
そんな時、空気をどうにかしてくれるみたいに良いタイミングで集団が現れた。
他のファミリアに加えて頭一つ二つ抜けた連中が多い集団、成る程な、アレがロキ・ファミリアか。
オッタルには及ばないものの集団の中でも特に強そうな
それより少し下らしいアマゾネスや獣人、そして例の風の精霊に縁がありそうな女。
……まあ、大丈夫か。
仮面にフード、そしてちょっと歌声を混ぜていたし多分バレない。
「おや、連中も来たか」
「人数増えたんだ。さっきみたいに興奮するのは止せよ? ……ちょいと便所行ってくる」
椿の意識が向こうさんに行って怒涛の質問が途切れた瞬間、俺は椅子から立ち上がって便器の方へと向かう。
「お楽しみ中だし、向こうから話かけられない限りは止せよ?」
途中、ベルがアイズとやら(誰がアイズかは知らねえ)にお礼を言いに行きたそうにしていたのを止め、集団の横を通り過ぎる。
視線を背中に感じたが、一応少し名が広まったからか、特に理由は無しか、どちらにせよ敵意は無いので別に良いか。
「……何処かで見た気がする」
「なんや、アイズたん。『運び屋』に用でもあるんか?」
今から料理を注文して宴が始まるって時、横を通り過ぎていった人を何処で見たんだろう?
凄く印象に残っていた気がするんだけれど分からない。
だから思わず背中を目で追っていたらロキの口から出たのは聞いた覚えのある名前。
ランクアップもしていないのに二つ名で呼ばれる新米冒険者。確かリヴィラの街で……。
「あの雑魚共を調子付かせる真似しやがった馬鹿か。放っとけ、アイズ。関わる価値なんて無ぇだろ」
「あー! 知ってるよ、アタシ。凄い回復魔法で大勢を癒して報酬は貰わなかったって人でしょ?」
「それが馬鹿だっつってんだよ。中層で深刻な怪我を負う程度の雑魚を癒して懐も傷ませないとか、全く学ばさずにダンジョンに潜らせる事になるだろうが。どうせ大怪我しても助けてもらえるって思ってんだよ」
ティオナが言った話も聞いている。全身の大火傷を負った人達を
《無詠唱魔法》》で癒したとか、治療院で病気も治したとか……。
でも、一番興味を惹かれたのは別の話、二つ名で呼ばれる由縁。
「地上からダンジョン奥へと一瞬で自他を飛ばす転移魔法。……それが気になるのか?」
「うん……」
私が強くなりたい。それにはダンジョン奥に向かう必要があるけれど、経験値なんて全然稼げない場所を通るのにも時間と手間が掛かる。
勿論水と食料も荷物になるし、半日で行って帰れる距離だとしても、その分を戦いに使えるのなら……。
「ロキ、情報無い?」
「……噂では下層以降まで行けるっちゅう話やな。
「!」
何処まで潜ったかは知らんが、とロキが言った時には思わず立ち上がっていたけれど、彼を追う前にフィンに服を掴まれて止められた。
「トイレまで追い掛ける気かい? その噂なら僕もボールスから聞いている。後で詳しく教えてあげるし、今は宴の時間で君は幹部だ。大人しくしていろ、アイズ」
「うん……」
言われるがままに座って宴に集中するけれど、楽しいはずなのに気が付けばトイレの方を見てしまう。
そのまま宴が進むと彼が出て来たけれど、声を掛けようとした時にベートの声がそれを遮った。
「おい、アイズ! そろそろあの話をしてやれよ! あのトマトみてぇになって逃げ出した情けねえ雑魚の話!」
彼が出したのは私達が逃したミノタウロスに殺され掛けたこの話。『疾風』と私がほぼ同時に助けたから無事だったけれど……。
「アイズともう一人が助けたから無事だったが、牛野郎の臭ぇ血を浴びてトマトみてぇになっちまってよ……」
ゲラゲラと下品な笑い声をベートさんが上げる中、私の心は沈んで行く。
そして彼が連れらしい人と一緒に出て行く時、背中を叩かれながら店の外に行くあの子の姿があった。
「あっ……」
慌てて追い掛けるべく立ち上がるけれど、彼が魔法名を唱えると光に包まれて一瞬で消えて行く。
最後に振り向いた彼は凄く嫌そうな目を私達に向けていた……。
「おーし。武器以外について話したんだし、追加報酬として第一級冒険者の力を見せてくれ。ベル、その内にリベンジする為にもミノタウロスの動きも見とけ。椿の揺れる胸にばかり集中すんなよ!」
「う、うん! って、元から胸ばかり見ないよ!?」
「にしてもこっちの酒の臭いって無理だわ。夜中にあの店行くの絶対止めとこう……」
新年早々に大勢に配ってる人から評価おとし玉もらいました
感想などのお年玉期待しています