英雄の末弟と英雄を目指す白兎   作:ケツアゴ

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同類

「へぇ、神の宴に眷属も招待か」

 

 昨日は本当に精神的に疲れた。でも、堂々と魔法が使えたのは良かったな。

 ノーブルでは夏に涼む為に氷を出す魔法を使い、それを砕いて室内に置いたりとかだったが、オラリオではそうは行かないもんな。

 

 ダンジョンでは使えるが、人の目を忍んでコソコソ使うのは少し不満だった故に手加減しつつも使えたのは満足だ。

 

 それで祭りでのモンスターの脱走やら問題があるものの流石は迷宮都市、騒ぎが収まれば屋台だのは再開されて楽しめた。

 

 うん、逃避は此処までにしようかな。

 

 目の前には姉貴からコミュ力と人望と実力の大半を抜いて、筋肉と身長と棒と玉を足したみたいな男が立っているんだが、差し出されたのは招待状。

 

「少人数を呼んでの軽い宴だ。畏まった服装も必要無い」

 

 いや、エルフが団長派なのを考えれば意外と人望はあったのか? 宴の招待状を持って来ましたって態度じゃないのを考えれば本当に意外だが。

 

「団長、気晴らしに同行したら? 俺が店番してるからさ」

 

「いや、どう考えても貴方に渡してる時点で……」

 

「団長はファミリアの代表だし、眷属を招待するにしても団長が対象なのが呼ぶのも行くのも筋ってもんじゃないのか?」

 

 正直に言おう、俺は行きたくない。さっさと終わらせたい時にちょっかい出して来たのが腹立って悪戯をしちまったが、公の場で喧嘩したのは俺の責任じゃねーし。

 

 なのに呼ぶとか気まずい! 水の中にポイ捨てしなかったんだから許してくれよ!

 

 一応張り紙は目を閉じて書いたし、書かれていた物を俺は一切見ていない、とかって誤魔化せないか? そんな浅知恵通じないよな……。

 

 ここまであからさまに拒絶の意思を建前を用意しつつ示したが、オッタルはどう出るのやら。

 言う事は間違ってない以上、俺が行くのを拒否しても無礼だと怒れないだろう?

 

「先程も言ったが簡単なパーティーだ。畏まる必要は無いし、フレイヤ様はお前に興味を持っている」

 

 ですよねー。そして脳筋、淡々と告げるな。愛想笑いをしろとは言わねえが、無表情で告げて来んな。

 こんなのを使者に寄越すとかネタか? アホじゃ最大派閥の主神は務まらねえもんな。

 

 もしくは断ればオッタルを寄越すって意思表示か?

 

「だろうねー。俺は指一本触れちゃいないし距離も開いていたのに態々ダンジョンで寝ていた副団長をギルドまで連れて行ったんだ。そりゃ持つだろう」

 

「ああ、その節は世話になった。……下手すれば俺も似た目に遭ってたのか」

 

「するって言いはしたが、実際にする気だったかは断言しねえよ」

 

 あの日、ダンジョン内部に送ってくれと頼んだ時を思い出してかオッタルは微妙そうな顔になる。

 

 表情変えられるんなら招待状を渡す時に変えろって思うんだが、そんな不器用だからこそエルフが自陣営なのに人望がないみたいな事を言ってたのかもな。

 

「団長なんだろう? じゃあ、尊敬してくれている幹部のエルフみたいな奴に応えられる様に頑張りな」

 

「尊…敬……? ヘディンが俺をか……?」

 

 なんで俺が変な事を言ってるみたいな目を向けられてるんだろうな?

 

 恐らくは本人に尊崇の念を表明していないんだろうが、団長だけでなく幹部まで不器用となるとフレイヤって実は苦労している?

 

 女神として大勢を魅しているんだから当然なんだろうが……。

 

「アンタ以外に誰が居るんだよ? まっ、側から見ないと分からない事もあるさ。知らない間柄でもないし、アンタの顔を立てて…。いや、そもそも主神が出るかどうか言ってないのに決めるのも筋が通らないか」

 

「道理ではあるな……」

 

 其処は抜かしたら駄目な部分だ。団長が代表と言ったが、家長とするなら主神は家そのもの。

 今は散歩に行っていて、多分無自覚に女を誑し込んでいるんだろうが、返事するのは戻ってからだ。

 

 そもそも宴というなら開催日時だって余裕……そんなに無いな。

 

 招待状を見れば開催日は今夜、まさかの当日配達に思う所はあったのか目を逸らす脳筋。

 

 うん……。

 

「胃痛にも俺の魔法は効果有るからな?」

 

「必要となれば頼む……」

 

 団長って大変なんだな。ウチも赤字の癖に無料配布しまくってた馬鹿だし、神に人間は振り回されるもんなのか……。

 

 てか、胃痛に悩んでるんだ。

 

 

 

 

 

 

「……おい、大丈夫か?」

 

「当然だ。この為に予定を詰めて来たのだからな」

 

「ミャアも母ちゃんに半日休みもらうの大変だったニャ」

 

 此処はダンジョン十八階の隅、人の目も耳も気にせずに居られる場所に集まったのは三人。

 

 アポロン・ファミリア団長 ヒュアキントス

 

 俺ことギル 一応ミアハ・ファミリアの暫定副団長

 

 それと酒場の店員のアーニャ 所属は黙秘。

 

 所属するファミリアも別々の俺達がこうして集まるのは後々面倒な事になりかねない。

 団員に繋がりがあるならファミリアも同じと見なすとして抗争に巻き込まれたりとかな。

 

 だが、俺達が集まる際に人目を避ける理由はもう一つ、それは共通点だ。

 

「捨てろとまで言われずに済んで助かった。仲間や自分の前で弾くなとは言われたが、この面々と場所なら問題有るまい」

 

「同感だ。うちの主神なんてデメリットのあるスキルを見逃したのかと心配しやがったんだぜ?」

 

「こっちも同僚が散々歌うなって言って来たニャー」

 

 俺達の共通点、それは仲間から音楽を禁じられるレベルの音痴だって事だ。

 

 程度の差があるんだが、俺なんてクリスピーにハープを習ったら、遠くで聞いてたオルファウスさんに闇の神器かと間違われた程。

 嵌った趣味だってのに姉貴達も人前で演奏するなって言われる程だ。

 

 

 ヒュアキントスもバイオリンを始めたら面白くなったのに敬愛する主神や団員から総スカンを食らったとか。

 

 アーニャも仲間から好きな歌を音痴と馬鹿にされ、俺達は別々にオラリオを囲む塀の上で楽しもうとやって来て出会った。

 

 そして三人で一緒に音楽を楽しんでいたらガネーシャ・ファミリアが闇派閥が何かやっていると勘違いして調査に来たのが三日前。

 

 だからこうしてダンジョンに集まって音楽を楽しむ事にしたって訳だ。

 

 

「にしてもプロとまでは行かなくても散々言われる程に酷くないよな?」

 

「周りの連中は大袈裟なのニャー」

 

「神であらされるアポロン様は感覚が違うのだろうが、団員まで非難するのは納得行かん。私の演奏に文句を言えるほどお前達は上手なのか?」

 

 各々一言だけ愚痴を吐き出し、演奏の準備を始める。これは秘密の演奏会、虐げられた俺達の憩いの時間だ。

 

 

 

「「「せーの!」」」

 

 使える時間は僅かだが、音楽を楽しもうか! 俺達二人は楽器を構え、アーニャは発声練習を行い、そして楽しい時間が始まった。

 

 

 

 

『ギュエエエエエエエッ!?』

 

 そして開始五分で地面の一部が揺れて、変なモンスターが姿を現す。巨大な単眼に触手を持った派手な体色。

 其奴が飛び出した穴の中も奇妙な色をしていて、震えてい

 

「新種っ!? 成る程、我らの音楽に魅了されて出て来たか」

 

「モンスターにしちゃ見る目があるニャー。この場合は聞く耳がある?」

 

「感激のあまり地面を転がって感情を表現しているぜ」

 

 あの穴に落ちたら文字通りモンスターの腹の中、蓋になる目の前の奴の妨害を避けながら脱出する必要が有るんだろうが、逆に言えば今はそんなに難しい相手じゃない。

 

『ギョエエエエエッ!?』

 

 アーニャの槍とヒュアキントスの剣が喜びのあまり転がっているモンスターを貫き、魔石を破壊して灰に変えた。

 残りは穴の中に収まった円柱状のモンスターだが、身動きが取れないみたいなので死ぬまでヒュアキントスが魔法を叩き込んで安全に撃破する。

 

 俺? 下級冒険者だし見学だよ。魔法見れて楽しかった。アーニャは味方も巻き込むからって見せてくれなかったけれどな。

 

 

 

「それでどっちがギルドに報告するんだ?」

 

 忘れちゃいけない。俺達は秘密の会合中、でも新種は報告すべきだよな?

 だから一人で見付けた事にするんだよ。

 

 勿論ランクアップしている二人のどっちかが。

 

「取り敢えず音楽を楽しんでから決めるか」

 

「仕方無ぇニャー」

 

 音楽の途中、リズムに乗ったモンスターが叫び声を上げたり走り回ったりと大好評だったが、どうして神や人間にはウケないんだろうな?

 

 

 後日、異変として調査依頼がロキ・ファミリアに来たらしい。解せぬ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 楽しい音楽の時間も終わり、招待されたパーティーの時間がやって来る。

 正装の必要は無いって言われたから普段着で来たが(そもそも当日だし用意する時間が無かった)、他に招待されたファミリアの神とかは正装してやんの。

 

 あれ? 恥を掻かせる気だった?

 

 ホームである『戦いの野』の庭を使い、並べられた料理や飲み物を楽しむ立食形式のパーティーで給仕をしているのは当然ながら団員だ。

 

 

「よっ! ダンジョンで急に倒れた時は心配したぜ?」

 

「ぐっ!」

 

 そんな中でアレン発見、ちょっとアーニャに似てるなって思いつつ声を掛けたが、怒りを必死に押し殺してる感じだった。

 そりゃ客人に手を出せねえよな? ましてや何をされて負けたのか分からねえ相手だし、即座に来ないのは第一級冒険者なだけある。

 

 第一級ってバイアシオンの方で言う難易度五を受けられる程度か? なら当然だな。

 多分最低でもマグマゴーレム程度の強さはあるし、スキルと魔法が加われば更に上だ。

 

「ふふふ、お客様にそんな顔しちゃ駄目よ? アレン」

 

 一瞬にして場の空気が変わり、周囲の意識が一箇所に集まる。ふぅん、これが間近で見る美の女神か。

 

 フレイヤの登場と共に神も人も目を奪われ、団長も顔を真っ赤にしている。

 うん、近くで見る方が綺麗だな。

 

 それにちゃんと女神として魅している。

 

「急な呼び出しでごめんなさいね、ミアハ。噂を思い出して会ってみたくなったの」

 

「いや、構わんよ。眷属に気分転換をさせてやりたかった所であるしな」

 

 女から人気があるから落ち着いているのか、それとも落ち着いているから人気があるのか、周囲の見苦しい態度を見せる神々と違ってミアハはフレイヤ相手に動じない。

 

 天界で付き合いが長いって訳でもないらしいのにな。

 

「こうやって会うのは初めてかしらね、『運び屋』さん」

 

「……まあ、そうですね」

 

 態度が不遜と思ったのかアレンとかから涼しい殺気が飛んでくるんだが、さっき注意されたばかりだろう。

 

 バベルに居る時は遠くから見たり手を振ったりする程度だったし、女神フレイヤと会うのは初めて……って言えるのか?

 

 余計な発言は野暮だと飲み込み、ミアハ同様に普通の顔を向ければ更に接近して囁く様に声を掛けて来た。

 

 

「ねえ、今宵は私に夢を見せてくれないかしら?」

 

「不眠症の理由が体調不良なら俺の魔法でどうにかなるけれど……心因性なら難しいな。薬の方が良いとして、団長、後で話を聞く時間を作れるか? 女同士の方が話し易い……うん?」

 

 え? この空気、何?

 

 眠れないから困っていて、俺の魔法なら何とかなるかもって事じゃねぇの?

 

 周囲は呆然として固まって、アレンも呆れ顔でフレイヤは指を口に当てて笑い出しそうなんだけれど。

 

「フレイヤ、どうして笑いを堪えているのだ? 私としても相談に乗ってやりたいが、ちゃんと話してくれぬと此方としても困るのだが」

 

「ふふ、ふふ、ふふふふふふふっ! ご、ごめんなさいね? その子に言ったのは別の意味だったのだけれど。私への態度が変わらないなんて、やっぱり貴方の眷属って感じね」

 

 クスクス笑うに留めちゃいるが、今にも爆笑して女神としてのあれこれが吹っ飛びそうだな、フレイヤ。

 

「ねえ、一つ教えてくれないかしら? 貴方は何か嫌う物ってある?」

 

「酒が臭いからして駄目なのと……自己犠牲かな。それを選んで満足する奴も、持て囃す奴も好きじゃねえな。求められるがままに欲求を押し殺して平気な顔するのとか嫌いなんだよ……」

 

 あのエルフとか、竜王とか、糞エルフとか、傲慢な狂信者エルフとか!

 

 皆の為に犠牲になれよ、君が傷付けば皆が救われる、とっても馬鹿馬鹿しい。

 

 

 

「そう……。貴方の近くにそんな子が居たのね。どんな子だったか聞かせてくれるかしら?」

 

 知らない誰かに少し共感する様な同情する様な、何よりも興味を惹かれた顔になるフレイヤ。

 うん、少し魅力が増した気がするな。

 

 

 

 

「オッタルのオッさんに仲間からの人望とコミュ力を大量に追加して、代わりに年齢と棒と玉とタッパを抜いた感じの人?」

 

「そっちは聞かなければ良かったわね」

 

 

 

 今の所、アレンの件は互いに言及は無しと。俺もミアハには心配させるだけだと言ってねえし、向こうも何もしないなら今回の美味い飯だけで手打ちで良いか。

 

 

「別の意味とは何だったんだろうな、ナァーザ」

 

「団長は分かるか?」

 

「答えたくありません。セクハラですよ、セクハラ!」

 

 え? なんで? 今夜は夢を見せてって、眠れなくて困ってるって事だろ?

 

 

 

「前は悪かったな。理解出来なかったからって他人の言葉の意味を一々聞くとか配慮が足りなかった」

 

「いや、別に良い……」

 

「あっ、でも気にはなるから言語に関する文献とかあるか?」

 

 ちょっと意味が分からない目に遭いながらも飯は美味いし、この前のダークエルフに謝れたりと悪くはなかった。

 

 そんな中、とある神が話し掛けて来たんだけれど……。

 

「やあ! 君がギル君かい? 俺はヘルメスだ」

 

 無茶苦茶胡散臭いし、シャリの仲間で世界滅ぼそうとしてねえよな?

 

「胡散臭い。おっと、言い間違えた。俺がギルで合ってるぞ」

 

 それにしても胡散臭いし、多分目的の為の犠牲は厭わないタイプだな、こりゃ。

 

「おいおい、酷いな。俺よりも誠実な神はそう居ないんだぜ?」

 

 これは俺でも嘘だって分かるな。ミアハを見れば首を左右に振っているし正解って事だろう。

 

 主神公認の胡散臭さに既に信用度はゼロに近いんだが、どうも気になる。

 声と顔に覚えがある気がするんだが、何処だったのやら。

 

「あっ、思い出した。通りすがりに俺の嘘を嘘だと暴露した神だ」

 

「やべっ!?」

 

 そうだよ、あの時の神で間違い無い。俺の指摘にたじろいだし、自分も覚えておきながら声を掛けに来やがったのか。

 

 これには隣の眷属らしい女も呆れ顔。こっちも苦労してそうだ。

 

「ヘルメス様、何をなさっているのですか、貴方は。……失敬、申し遅れました。私はアスフィ・アンドロメダ、ヘルメス・ファミリアの団長をやっております」

 

「今日は君に会えて良かったよ。便利な魔法を持っているんだろう? 仲良くしようじゃないか」

 

「無理。アンタへの信用は皆無を通り越して負債の状態だからな。このまま利子が膨らみ続けるだろうよ」

 

 握手を求められたが俺は拒否して手を出さない。忙しい身だしな。

 

 第一、こっちに来たばかりで身元も定かでない相手と手を組もうとか怪しいだろ。

 ボールスみたいに完全に互いの利益の為の関係じゃあるまいし。

 

 どうも姉貴を殺そうと自分の仲間を人質にしたエルフと似てるんだよな、ヘルメスって。

 

 

 




ロキ・ファミリアについては入れたかったけれど6000近かったので次回冒頭から
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