「ロキ・ファミリアからは団長に副団長にヒリュテ姉妹に剣姫にポ…
過剰戦力、一見するとそう見えるだろうが敵の底が見えない現状じゃもう少し欲しい所。
その少しが俺って所だろうな。
ダンジョン深層まで瞬時に自他を移動させる【テレポート】に欠損でなければ瞬時に広範囲を癒す回復魔法、見せている手札だけでも十分だ。
「俺の役目は後方支援と奇襲の為の足って所で良いのか?」
「ああ、通常ならそれを選ぶだろう」
リルビーってのは付け黒子が法で決まっていた位に見た目じゃ成人してるかも分からない種族だ。
実際、クリスピーは俺より年上の子供がいる年齢には見えなかったしな。妊娠が発覚するなり逃げた奴を父親って呼んで良いのかは疑問だが。
反面、この
強さはクリスピーの方が上だが、人間性はこっちが上だな。あのオッさん、子供っぽい言動だし。
「普通は、か。陽動役でも任せるって所か? 戦力の分配は?」
「……話が早くて助かるよ。この作戦は君が鍵になる予定だったから大体しか決まっていないけれどね」
俺の魔法は向こうに割れてる、それは同時に何時入って来るかを警戒させるって事だ。
二十四階層の
囮って分かっていようが瞬時に移動するんだ、転移して来た奴に襲われるのは経験済みなだけに厄介さは分かっているのさ。
そして俺が断った場合、敵が反応していたアイズが引き付ける役になるのか。
「少なくても第一級冒険者を一名付けよう。それなら魔法で避難する時間は十分に稼げるだろう。そして契約金として前渡しする報酬が……」
「結構凄いぜ、これは。依頼主も大盤振る舞いだな」
空気みたいだったっていうか、空気みたいに扱われていたヘルメスが差し出したのは一冊の本。
成る程、
「売れば一億は固い……」
思わず団長が呟くが、確かにオークションでその位の値段は付くし俺も読みたい。
一応下級冒険者の俺の安全の確保はしてくれているみたいだが……。
「二十四階層での人的被害は?」
「向かったとされる冒険者の多くが帰って来ないか、肉体の欠損等の怪我を負ってると報告されている」
解決の為なら別に俺が必須じゃないが、犠牲者を減らす為なら話は別って所か。
「……気を付けて行くのだぞ」
何も言わずとも分かっている、そんな風なミアハに少し驚かされるが、この理解力があるなら団長とか無意識に口説いてる相手の乙女心とかも理解出来ないものか、無理だな。
「む? 何故溜め息を……」
「恐らくミアハ様の普段の言動が理由だと思う。それでどうする? 読む? 売る?」
「友達の所に借金が有るってのもな。そっちの方がファミリア抜きにして付き合えるし」
しょーじき言ったら読んで俺だけの魔法を手に入れたい。シャリとかコーンスの爺さんが空を飛んでたが、あんな感じの魔法とか出たら嬉しいぜ?
でもなあ、他にも優先すべき事は多い。別に読まなくても普通に発現する可能性だってあるんだからな。
「本当はあまり良くないんだけれど……」
ちょっと前よりはアミッドへの対応が柔らかになった気がする団長だが、それでも完璧ではない。
ミアハに向けていた関心が俺の方に向けられて、それでも完全には吹っ切れる事は無いし、別ファミリアで仲良くするべきでないってのも分かるんだよな。
確かに商売敵だってんならそうなんだが、団長に言われても治療院の手伝いは続けるぞ?
命は落とさなくても苦しむ時間を減らしたり後遺症が残らない様に早期に治療が可能だからな。
「……節度は守ってね。最近じゃ傘下に入ったとか噂されてるんだし」
その辺を伝えれば渋々ながらも了承してくれたし、これで問題は無いな。
「よーし! そうと決まれば売却先は俺に任せてくれ」
ドンと胸を叩いて張り切っちゃいるが中抜きされないよな? 割引く代わりに別の取引を優位にするとかの交渉を裏でとか。
ミアハに視線を向けるが悩ましそうな顔をし、フィンの方は苦笑するがそれが答えだろう。
そりゃ仮にも神を信用に値しないとか言えないだろうしさ。
「おいおい、俺を疑ってるのかい? 酷いなあ」
「出会ったその日に眷属に尾行させて見張ってたからな。あの姿を……」
「わわっ!? ストップストーップ! 俺の所で一億二千万ヴァリスで買い取るからそれ以上は言わないでくれ!」
一億二千万、それだけあれば十分か。
あの【インビジブル】みたいな奴、よほど隠しておきたいのか大金を提示されたが、顔を青ざめさせながら言い訳をどうしようとか呟いているし、尾行の意趣返しはこれで良い。
口止め料は……提示されていないな。少なくとも今の金額は買取価格としか言っていないんだ。
ミアハが居なけりゃ団長がその辺交渉してくれそうなんだが……。
「じゃあ、決まったなら明日早朝に決行しよう。くれぐれも他言無用で頼むよ」
最後にフィンがそう言って今回の話し合いは終わりだ。さてと、さっさと飯食って手伝いに戻らねえとな。
そして翌日、指定された場所に向かった俺に姉妹の薄い方が駆け寄って来た。
「君が『運び屋』君? あたし、ティオナ。よろしくねー! あっ! そうそう、アミッドと婚約中って噂は本当なの?」
「おう、よろしくな。そして噂は男女間の友情を否定したい連中が面白半分に流したんだろ」
エステルと同類だな、此奴は。活発で人見知りしないタイプ、アマゾネスだからってのもあるんだろうが、それでも初対面で距離感がおかしい。
「ちょっと何やってんのよ、ティオナ。他の派閥も来ているんだし、団長の顔に泥を塗る気?」
「そうですよ、ティオナさん。その人も困りますって」
「えー!? ちょっと位良いじゃん。それに二人だって気になってたでしょ〜」
グングン詰め寄って来る姿を見かねたのか姉の方とレフィーヤが止めに入ろうとはしているが無駄だろうさ。
「まあ、今は話は後にしようか。取り敢えず自己紹介だけしておくよ。ミアハ・ファミリアで下級冒険者をやってるギルだ。足引っ張るだろうが勘弁してくれ」
「大丈夫! あたしなら中層のモンスター程度なら楽勝だもん! それに君も大丈夫じゃないの?」
大平原を張り、自信たっぷりに答えたかと思えば、心底不思議そうに問い掛けられる。
アイズの方を視界の端に捉えるが、動揺を隠さずに左右に顔を振っていて隠す気あるのかって様子だ。
いや、強い奴には見破られたりするもんなけれどさ。腹芸の一つでも身に付けてくれって。
さて、この後は特筆すべき事は特に無い。敢えて言うならディオニュソスの所のが何処か距離を開けてるって感じだったのが気になったな。
触られるのが嫌ってタイプのエルフならそんなもんだろうけれど。
「じゃあ、第二級には余計な世話だろうが、緊急時は杖か鞘を差し出してくれたら良いさ。そういう文化なら仕方無いしな」
「……そうか」
一応伝えたが態度は変わらない。……フェティは族長か誰かに言われて森から出て来たっつってたが、こうゆうタイプのエルフは何が目的で森から出て来たのやら、人それぞれっつたら其処迄だがよ。
それに俺にはどうにもならない状態だし、エルファスも何処に居るのやらって感じだからな。
「それじゃあ頼むよ『運び屋』」
「へいへい、それじゃあ皆様、俺か触りたい相手にお掴まり下さいっと」
ティオナは俺に堂々と掴まり、一応誤魔化す気だったのかアイズが俺の腕を普通に掴んだ事にレフィーヤが嫉妬と妄想を爆発させ、俺に触れたフィンにティオネが抱き付いて、アスフィとリヴェリアはアイズに触れて、最後まで遠慮を見せたあのエルフ……フィルヴィスは謝りながらレフィーヤの服の端を摘む。
「【テレポート】」
そして瞬時に移動したのはダンジョン二十四階層の端、一旦此処で二手に分かれるってなってるんだが……。
赤い髪の女が意味深な事を言っていたし、前衛向きの第一級は四人だ。だから当然アイズは俺とは別の班。
フィン、リヴェリア、アイズ、ティオネの四人が危険な場所に突っ込んで、残りはバレバレの陽動部隊。
俺としては演技が下手な情緒お子様と一緒に居て色々とバレるのは勘弁してくれって感じだったんだが……。
「ギルさん、一緒に行かないの?」
「アイズさん!? ちょっと、貴方っ! 一体何時アイズさんを誑かしたんですか!?」
あれだよ、悪意が無いってのは逆にタチが悪いな。少し寂しそうとか拗ねた感じのアイズにポンコツむっつりエロフが妄想で顔を真っ赤にして暴走中、本当に真面目な振りしている癖に直ぐに卑猥な方向へと考えが行くんだからな。
このエロフにもベルゼーヴァの正体を教えていたら今みたいに面倒な事にならなかった……訳がねぇな。絶対ポロっと漏らしそうだ。
「レフィーヤ、めっ」
「ア、アイズさーん!?」
ほら、精神年齢幼女にまで怒られてるじゃねえか。額を軽くペチンと叩かれて叱られてるが、俺や兄貴が同じ事を言ったら防具着けた手で拳骨落とされてるんだからな?
「……その辺で良いよ。全く関係ない筈の男と憧れの相手の距離が近く見えたら反応しても仕方が無いからな【キュア】」
叩いたのは本当に軽くだが、額に回復魔法を使いつつアイズを嗜める。そもそも迂闊な行動したのが暴走の理由だからな?
アマゾネスの習性もそうだが、これがエルフのスタンダードってんな大して怒る気にもならねえ。評価は下げるんだがよ。
「アンタも妙な誤解するな。俺の魔法でダンジョン深くまで送るのを頼まれたとして、友達でもない相手に手間を掛ける気はないと言った事があるし(別の奴だが)、それで仲良くなろうとしても変じゃないだろ? ……俺は大手ファミリアの幹部に妙な真似をする馬鹿じゃねえよ」
だから落ち着いてさっさと役目を果たしに行こうぜ、そんな風に伝えればレフィーヤは少しは納得したみたいだが、納得される様な認識されているのかよ、アイズって。
ファミリア内部でも天然扱いなのかと考えている間にフィン達が二人に小言を言っているらしいが他人の家族間の問題だと放置する事にした。
「ごめんねー。レフィーヤ、アイズが関わると変になっちゃうんだ」
「それだけ慕われてるって事だろ? 別に気にしちゃいないさ」
こんな事で揉めていても仕方が無いさ。出会った初期のフェティとかレムオンよりは大分マシだし、周りは大変だと思うしな。
はっはっはっ、大勢の前で叱られていてザマァ。これで俺が訓練してやったベルゼーヴァだと知ったらどうなるか気になるが、今は依頼最優先だ。
「さて、ちょっと問題はあったが作戦開始だ。陽動班が暴れるのを確認し、敵が動きを見せたタイミングを見て僕達が突入する。互いの無事と成功を祈ろう」
この人も個性強い幹部を纏め上げるのとか苦労してそうなんだよな。副団長が倍以上年上だし、種族の為に英雄であろうとしてるんだっけ?
使命感を拗らせたネメアさんが大陸統一を目指して戦乱の時代を作ったし、この人も変に暴走しないと良いんだが。
バイアシオン大陸じゃ種族の代表となるのがあの父娘だし、是非とも頑張ってもらいたいんだが。
あ、俺を変に巻き込まない方向でってのは前提として。
「行っくよー!」
俺達の役目は陽動、兎に角目立ち続ければ良い。だからエルフ二人には派手に魔法を使ってもらうんだが、それなら俺とティオナは暇になる。
緊急時に俺を守る役目の彼女なら別に良いが、俺が目立つってのも重要だ。
だから派手に暴れる事にした。ティオナが向かって来るモンスターの脚をへし折り、背後に移動した俺が【テレポート】で上空に一緒に移動、即座に退避してエルフ二人が魔法で狙い撃つ。
まあ、目立とうとして目立っているのがバレバレだろうが、それでも敵側の意識を向けて少しでも戦力を分散させられればそれで良いさ。
本当なら魔法を使うまでもなく倒せる相手に回りくどい真似をしないといけない苛立ちをぶつける様に次々にモンスターを空中に転移させ、それが地面に落ちるよりも前に魔法が射抜く。
最初は動きを止める為のギリギリの手加減として脚を潰してもらっていたが、途中からは慣れたからとモンスターの間をすり抜け、複数体を同時に転移させられる様になっていた。
「君って本当に下級冒険者? うちのL v.2位は動けてるよね? あっ! ランクアップしたとか!」
「ステイタスは底辺も良いところの一般的な雑魚冒険者だぞ? 恩恵貰う前から戦いに慣れてただけだ。それもここ一年位は畑仕事に戻れてたけれどな」
「戻れてた? 戻ったじゃなくって?」
「元々が農夫だったからな。色々あって四年間は冒険者……こっちのとは違う感じのをやったりしてたんだが、親が遺した畑を守る方が大切だったのさ」
オラリオに来たのも恩恵を貰ったのも不本意な事情が理由だよ、そう伝えたがあんまりピンと来てないみたいだな。
さっきから質問とかを色々して来たり話し掛ける事が多いんだが、探りに来ている感じではない。
ただの距離感がおかしい奴かと思えば俺の警戒心も途切れるもんだ。
「ほらよ!」
「オッケー!」」
一緒にモンスター相手に暴れるのも楽しくなって来ていて、俺が蹴り飛ばしたホブゴブリンをティオナが上空に蹴り上げるみたいな風にもなっている。
多少動ける程度は前例もあるし、そもそも力を隠して動くのは性に合わないからな。
魔法さえ使わなけりゃ別に良いだろうさ。
そうやって暴れ回って派手に目立ち続ける俺達だが、二時間程経っても向こうが出張って来る様子は見られない。
「ちょっと休憩にするー?」
俺達は全然疲れていないが、フィルヴィスの方は精神力を結構消費したみたいだしな。
レフィーヤ? 魔法連発し過ぎて体力共にフラフラ。途中。笑いながら連発してたし、ティオナが頭への一撃で止めなきゃぶっ倒れてたんじゃねえの?
まあ、数だけは多いからモンスターの相手に多少は疲弊しても仕方無いよな。
「ほら、うちの新商品の
「えっと、どうも……」
「そっちは……此処に置いておくからな」
「すまない……」
ランクアップした場合、ステイタスの急上昇から来る感覚のズレに加えて接近したモンスターに杖術での対応からの魔法の連発、そして最大のダメージが頭への手刀。
宣伝も兼ねて一人には手渡し、近寄られるのも嫌そうな方には近くの岩に置いて離れる。
他責的な潔癖ってよりは自己嫌悪的なのを感じるんだよな。
俺に使える呪いは死の呪いかステイタスの半減だけだが、人の数以上に魔法の可能性が存在するんなら更に厄介な呪いだって存在するんだろう。
……問題はそれを本人が自覚しているかどうかで、こうエルフに対して失礼に当たらない呪われてる事の伝え方とかどうすりゃ良いんだ?
「やれやれ、この私がわざわざ出向く事になるとはな。光栄に思え。かのじょによって……」
そんな時に枝をかき分けながらやって来たのは骨の仮面をした男、こっちも呪われてるんだろうが、発言と殺気からして敵なんだろう。
「【テレポート】」
からの瞬時に触れての【テレポート】で深層にまで連れていく。あの四人じゃちょっと厳しそうな相手だったからな。
後は瞬殺してから俺だけ戻った事にすれば……。
「む? お前は……」
「オッタルのオッさんか。丁度良い、この男はオラリオの敵だ。今度深層まで連れていってやるから頼んだ!」
遠征でも行っていたのかフレイヤ・ファミリアの幹部数人が居たので押し付けられたぜ、ラッキー。