英雄の末弟と英雄を目指す白兎   作:ケツアゴ

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結構チョロいぜ、この男

 ボールスの言う『良い所』って何処だ? やっぱアレだよな……。

 

 今年で十六、異性が気になるお年頃の俺の胸は期待に満ち溢れていた。

 荒くれ者のオッサンが誘うなんて候補は限られるし、ミアハから近付かない様に言い含められている場所が有る、歓楽街だ。

 

 多分そうだよな……。

 

 当時は必死だったし子供だったりで特に気にしちゃいなかった時期が長かったんだが、旅の途中で出会った姉ちゃん達は随分と……うん。

 

 姉と違って発育の暴力アンド尻が凄ぇ!

 

 体のラインが丸分かりの服装な上に尻の辺りの肌面積が広いんだよな、カルラとか。

 その上で未だ餓鬼だったからか距離が近いし、今考えりゃ美味しいポジションだった気がする。

 

 だが、ある程度成長したら基礎を学ぶ為って感じで魔法学校に入学させられて飛び級卒業でも半年は寄宿舎に入れられたり、情勢の悪化でその手の手段で金稼ぐ女が多くなったからって、俺には刺激が強いからって酒場の飯は宿で持ち帰ったのを食べてたしな。

 

 旅が終わったのは別に良いんだ、畑を守るのは誇らしいから。でも、服装が普通の人ばっかりだし、ど田舎だからその手の店は酒場すらねぇし……。

 

 ゼネテスが“もうちょっと大きくなったら悪い遊びを教えてやる”とか言ってたが、駄目だろアンタの立場的に。

 

 おい、元王女の婚約者! まさか実際に行ってねえよな? ちょっと位早く行っても良かっただろ!?

 

 国の立て直しが軌道に乗ったばかりだし、お預けは暫く続きそうなんだよなぁ……。

 

 それに少し初恋引き摺ってるからな、俺。相手の立場考えりゃ元から無理だし、そもそも未だに子供扱いされてたから。

 

「この大陸に来て良かった……」

 

 配送を終えた後、軽い運動をしようとやって来たのは巨大な滝がある場所。

 テレポート一芸特化に思わせる為に仮面とフードで変装してモンスター狩りの真っ最中、すれ違ったのはアマゾネスの集団。

 

 視線を向けたのは一瞬だが、ノーブルでは見られない露出過多な服装は一瞬で脳に焼き付けた。

 いや、ジロジロ見てたら悪いしな。

 

 世界最強(竜王公認)の英雄の弟があまり無様な姿を人様に見せられないっつーか。

 歓楽街は良いのか? 元からその手の商売やってるから大丈夫……だよな?

 

 一部の悪い大人は利用してたらしいし!

 

「あの集団と出会ったのも今夜のお誘いもラッキーだ。そして今日は随分と運が向いているな」

 

 周囲から絶え間なく響く何かが這い出る音、地面が盛り上がり植物を薙ぎ倒しながら出て来たのはモンスターの群れ。

 怪物の宴(モンスターパーティ)って呼ばれる現象だとは習って、兆候があれば即座に逃げろって言われているが……。

 

「此処らでもう少し成長したいんだよな」

 

 俺は躊躇無く崖から飛び降りた。大量発生が起きたのは俺の周辺だけじゃなく、螺旋状に続く足場の多くでだ。

 本能からか俺を追って飛び降りるモンスターや下の水辺で待ち受けるべく集結する魚型のモンスター共。

 

「デュアルスペル・【サイクロン】」

 

 手を上下に向けて発動するのは風の禁呪。モンスターを取り囲む複数の竜巻は弧を描き加速しながら密集、巨大な竜巻になって群れを飲み込んだ。

 複数の階層に渡って周囲に影響を及ぼす程の暴風は俺の上下で同時に発生し、襲って来たモンスター全てを灰とドロップアイテム幾つかに変えてから収まった。

 

 後に待つのは水への落下、濡れるのは嫌だと出っ張った岩に手を伸ばし、濡れて滑りやすかろうが握力で堪えて飛び上がる。

 ……水に落ちたドロップアイテムは放置で良いか。

 

「今、魔法を二つ同時に使って……。それに無詠唱だった」

 

「マジで鈍ってるな、俺……」

 

 片腕だけで足場に登れば目の前には金髪の少女の姿。何処か人形めいた印象に火の巫女の姿が頭を過ぎる。

 フレアも最初は感情なんて捨てましたって感じだったよな、元気にしてんのかね?

 

 拠点が大陸の端と端な上に役目もあるからって会いに行けない仲間の一人を思い出す。

 テレポートを連続で使えば行けない事もないんだがな。連続で長距離テレポートはキツイから結局日を跨ぐからな。

 

 それはそうと見られた上に相手に気が付かなかった事に頭を抱えるが、この為の仮面だったっと安心した。

 そうだ、この仮面とフードで俺が誰かは分からないだろうし、後は下手でも演技をして別人に成りすませば良い。

 

 どんな風に演技するか、ちょっと悩んだ時に浮かんだのは喫茶店で相席になったダークエルフだ。

 

「ククク、我の二重魔法を目にしたか、風の精霊に愛されし者よ。我こそは魔道の深淵を覗き込みし……ベルゼーヴァなり!」

 

 適当な名前が浮かばなかったので知り合いから拝借。悪いな、ベルベル。

 

 所で頭のトンガリはお洒落なのか? 低い場所でぶつけそうじゃん。

 

「……何でそれを?」

 

 そして鈍ったのを再確認。エアと同じ感じがしたし、ノリで精霊に愛されしとか言っちまったが相手に警戒されちまっている。

 俺を睨みながら剣に手を掛けるが動揺も見えているし、さっさと逃げ出せば良いか。

 

「【スキップ】」

 

「待っ……」

 

 速度を倍化させる魔法で瞬時に逃走すれば手を伸ばした状態の女の視界から瞬時に消え去る。

 やれやれ、こりゃ勘を取り戻すのにどれだけ掛かるのやら。

 

 

「しっかし反応が妙だったな、どっちも……」

 

 逃げ果せた先で思い出すのは少し過剰な感じの少女と、演技の参考にしたダークエルフの言い回しを指摘した時の反応だ。

 

 

 

「現世のカロンとか深淵の使者である自分と会い見えるだろうとか、意味を聞いたら涙目で逃げ出したが訳分からん」

 

 あの反応からしてこっちの文化じゃ酷い侮辱とか? だったら会った時に謝らねえとな……。

 

 そんな風に考えていると目の前に現れたのは動く溶岩。火の禁呪を手に入れる時に通った先でも似た感じのが居たが別物だな。

 って言うかダンジョンのモンスターからは精霊の力を感じ取れねえ。

 

 大陸が違ったら此処迄違うのかって驚く中、殺到したモンスター達に向かって拳を構える。

 あくまでも俺にとって近接戦闘は補助程度、でも遠くから一方的にやり合うよりはリハビリになるだろうさ。

 

「来いよ、木偶共。俺の役に立ってみな!」

 

 一人になるとテンションが上がって強気な言葉が飛び出す。後で悶えるのもセットだ。

 

 そういや昼飯決めてねえや。二人が仕事してるんだし、俺がこうやって運動するだけってのもな。

 

 放置しておくと飯忘れて調合だけしていそうな二名の顔を思い浮かべ、周囲を見渡す。

 真っ赤に発熱した溶岩地帯……焼肉にするか。

 

 

 

「いやー。ボクまでお呼ばれしちゃって悪いね」

 

 飯前に一旦戻って飯の準備をしてたんだが、肉買って帰ると何故か見た目お子ちゃまな女神まで居た。

 ミアハが招待した? 止せよ、団長が不機嫌になるだろ?

 

「呼ぶなら呼ぶで先に言ってくれ。人数増えたら肉の量を増やすんだからよ」

 

「すまぬな。以後気を付ける」

 

 そもそも多少余裕が出来ても借金持ちなんだ、人様を飯に呼べる身分なのかっての。

 

「ミアハの所は良いね。仕事熱心な子達が居てくれてさ。ボクなんか全然入団してくれないんだぜ?」

 

 この女神の名前はヘスティア、あのバイトしていた奴だ。地上に降りて来たのは良いがファミリアに誰も入ってくれないとかで生活費稼ぐのに苦労してるんだと。

 

「お肉なんて久し振りだなぁ。あっ、この肉が良い焼き加減に……」

 

「そうか。……確かに美味いな」

 

 ヘスティアが箸を伸ばした先の肉を掻っ攫って食えば成る程、神の見立ては確かみたいだ。

 

 それにしても食品を冷やす箱やら灯りやら、この焼き肉の鉄板やら魔石製品ってのは便利だな。

 

「これこれ、他にも肉は有るのだから横から奪うものではないぞ? すまぬな、ヘスティア。ギルは今まで悪神の類しか見てないので神への敬意が低いのだ」

 

「へぇ。どんな神だったんだい?」

 

「動物と自然が大好きだから、それの命奪う人間絶対殺すって女神と、惚れた女殺されたから人間皆殺しだって男神」

 

 俺の発言にヘスティアは少し引いた感じだ。神から見てもそんな感じなんだな。

 神なんだから人の動物も植物も等しく見てるもんだと思ってたし、だからティアが人間殺そうって考えたんだろうに。

 

 いや、そもそも自然を創り出したからだっけか?

 

「まあ、そんな訳で神様だからって無条件で崇拝とか無理なんだわ。そうそう、今夜はボールス達が親睦会を兼ねて接待してくれるそうだから夜飯作って置いとくな。シチュー作っておくから温めて食ってくれ」

 

「すまぬな」

 

 別に良いんだがな。だって俺は目的達成したらノーブルに帰る予定の身だ。

 いつ抜けるか分からない奴を置いてくれているんだし、仲間になったんだから気にする程でも無いのによ。

 

 

 

 

「所でギル君はどうしてボクに眷属が出来ないんだと思うかい?」

 

「そりゃあノウハウがあって仲間が居るファミリアの方が良いからじゃね? あと、威厳。見た目が子供なのは仕方無いとして、立ち振る舞いが見た目以上に餓鬼だからな。実年齢考えて、少しは神らしく振る舞え。あと、適当な所で恩恵刻んじまえばホームが廃墟だろうと逃げれねえだろ」

 

「思ってた以上に容赦が無いっ!?」

 

「それと何処にも入れてもらえずに路頭に迷いそうな奴、入れても足を引っ張りそうなヒョロチビを選べば良いんじゃね?」

 

「き、君も容赦無いなあ……」

 

「選択とか縁は大事だぞ? 俺の知り合いの王女なんて貧民街で威張り散らす糞貴族からのプレゼントの人形が貧民街の子から奪った物だと知ったら抜け出して謝りに行ったからな」

 

 尚、その時に手伝ったの俺。姉貴は当時インビジブルとかテレポート使えなかったし、安全策でな。

 

「へえ。君って王女と知り合えたんだ。それに立派な子じゃないか」

 

「最終的に自分は簒奪者の娘だってコンプレックスから国を滅ぼしかけたんだが。目が見えなかった従姉妹の目を治した後、姉貴が色々ケアして心の闇を晴らしてな。そうしたら拗らせた」

 

「はいっ!?」

 

 いや、うん、何故あの女を救ったのです、的な事を言われたのは心に来たよ。

 それはそうとして全力で聖属性魔法ぶち込んだけれどな? 闇属性纏ったからには光の王女と呼ばれてても有効ならさ。

 

「君も色々苦労してるんだな……」

 

 うん、偶に夢に出て恨み言言われ続ける。受け入れるしかねえんだけれど、辛いよな。

 

「そんな感じのが一揆を起こした十一から十五までの間に起きてんだからビックリだよ」

 

 神ってのは嘘が通じないから騙すのは難しいが、逆に言えば嘘を疑われないのは助かる。

 俺も自分で言ってて荒唐無稽な話だもんな。説明の時に体験から例を出しても疑われちゃ面倒だ。

 

「まあ、俺が言ったのは極端な例として、今選んでいない選択を考えるのも有りじゃねえかって話だよ。後悔する前にな」

 

 俺が魔法学校に入っている間に姉貴が嵌められて剣闘士からの反乱軍加入とか……うん。

 

 何やってんの!? 俺が知ったのは全部終わった後なんだけれど!?

 

 宝石の配達だけで五十万とか疑おうぜ? その前に酒の配達依頼で暗殺犯に仕立て上げられ掛けたんだしさぁ……。

 

 

 あの人、マジで大丈夫か? 今頃になって同行した方が良かった気がするんだが……。

 

 

 

「ギル君、頭を抱えてどうかしたのかな?」

 

「ん。俺がしっかりしないと駄目なのに、って呟いている」

 

「苦労人の様だからな……」

 

 

 さて、文字の稽古するか。数字は読めるようになったし、帳簿程度は俺がつけられるんだが、困らない程にするにはもうちっと掛かりそうだ。

 

 

 そんなこんなでやるべき事は終わらせて、待っているのはご褒美の時間。

 俺の目の前には色香漂う美女揃いの欲望渦巻く艶やかな場所……ではなく、歓喜と悲鳴の叫び入り混じる場所だった。

 

 互いにカードを手にして腹の中を読み合い、神のくせに振るうダイスに向かって祈っている。

 欲望渦巻く場所なのは変わりねえが、予想していた場所とはちょい違うんじゃね?

 

 あっ、でもバニーガールは眼福だわ。でも、あれって獣人的にはどうなんだ?

 

 

 

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