英雄の末弟と英雄を目指す白兎   作:ケツアゴ

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選択肢に全部って書いてなかったし、一個だけとも書いてなかった


他二個も順番にね


疑問

 ……先生は私なのにベートは狡い。

 

「それでベートさんが一撃でインファントドラゴンの頭を蹴り砕いたんです!」

 

「うん、もう何度も聞いたよ?」

 

「実力は天と地ほど離れていますけれど戦闘スタイルは似ていますし。えっと、どんなトレーニングしているのか教えていただけたらなぁーって」

 

 朝の訓練の休憩中、話すのは先日助けてくれた相手の事ばかり。私だって助けたのに薄情な弟子だ。

 ……もうちょっと厳しくして私が思っているよりも凄いって所を見せてあげないと。

 

「次から私が打ち込むから頑張って捌いて」

 

「ひぇっ!?」

 

 ベルは思わず悲鳴を上げたけれど、気絶したら膝枕をしてあげられるし、兎を可愛がっているみたいで可愛い。

 

 風は……流石に駄目かな? 駄目かも。

 

 もう遠征までそんなに無いし、他の団員に見付からない様にするのも大変になって来た。

 だから、後数日中に一気に仕上げる。

 

 そうすれば一番尊敬されるのは多分私。むふー!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……どうしようかしら? 最初は距離が近くなり過ぎるのが嫌だったけれど、方向性が違う気もするし」

 

「……やはり愚兎めの疑惑は本物なのでは?」

 

「さて、どうでしょうね。女に興味が無い訳ではないみたいよ? それに貴方とヘグニ以外はお願いの為に出払っているし、今は取り敢えず様子見で済ませましょうか。楽しみは他にもあるし……。所で貴方はそっちの趣味は……」

 

「一切御座いません」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「港町に行きたいから連れて行け? 何でまた急に……」

 

 ()()()()()()()からそんな事を唐突に頼まれたのはフェルムさんの顔でも見るかと豊穣の女主人に足を運んだ時の事だった。

 

「お願いがあるからって言って来たからベルとのデートの仲介かとでも思ったら、足代わりか」

 

 ちょうど裏で皿洗いをしているらしく、頼んだ茶菓子を運んで来たシルが頼み事をして来たんだ。港町のメレンまで魔法で送り迎えを頼めないかってな。

 

「ベルさんとのデートはその内? 今は新しい友達と遊びに行きたいなあって思ったのですが、メレンまで馬車で行っていたらお休みの日の殆どを往復で使っちゃう事になるので」

 

 デートという単語が出た瞬間に店の隅から小さな悲鳴が上がる。反対にシルは目を輝かせているし、理想のプランでもあるんだろう。

 今は他にも楽しみがあるって様子だがな.

 

 ミア母さん、二人揃っての連休は簡単にはくれないんですよ、とシルは残念そうに答える。

 

 だったらフェルムさんに運んでもらうか、お店の端にしょっちゅう居るアレンにでも運んでもらえば良いと思ったんだが、只の店員が大手ファミリアの幹部にそんな事は頼めないし、そもそも目立つから、らしい。

 

「私、ちょっとした事情からオラリオの外に気軽に出掛けられなくって。それでギルさんの魔法でコッソリと送ってもらえないかな~って」

 

 ちょっとした、ね。楽しそうにしているのを台無しにしたくないから野暮は言いっこ無しだがよ、もう少しギルドとかガネーシャ・ファミリアの苦労を考えてやっても良いんじゃねえの?

 

 

「あのオッタル(オッさん)には話通しているのか? 上級冒険者は気軽に出掛けられられないって聞いているんだが?」

 

「ぶふっ!」

 

 後から文句を言われても困ると伝えようとした所で盛大に噴き出した。その後も思い出し笑いなのか必死に堪える時間が続き、影から見ている奴の視線が痛い。

 楽しそうだろ、気にするなって。

 

 

「何を言ってるんですか? 私の外出に口煩くする冒険者さんなんて居ませんよ? それとも年上の彼氏が居るとでも思ってたんですか? もー! 一人もいませんって」

 

「つまり年下なら大勢……何でも無い」

 

 目の前の相手で遊ぶのは此処までにするとして、今日は護衛がヘグニなんだなって店の端の席でメニュー表で顔を隠しながら様子を伺う姿に何か引っ掛かりを覚えていた。

 

「私はベルさん一筋ですよ? お互い変な事は言わないでおきましょうね? ギルさんだって変な服装で出歩いているとか噂されたら困るでしょう?」

 

 笑顔だが目が笑っていない、そして警告だ。余計な事を言ったらベルゼーヴァの正体をバラすぞってな。フェルムさんが教えなくたって、あの人の強さとか僅かな情報で行き着いたんだろうな。

 

 多分滝を凍らせたのも俺だって分かってるな、これ。

 

 流石にギルドに知られるのは色々と面倒な事になりそうな事が多いし、冗談は控えておくか。

 

「それにしても普段居るアレンは来ていないんだな」

 

「私も詳しくは知りませんけれど幹部の皆さんで何か勝負をしているらしいですよ」

 

 よく分かりませんが楽しみですね、そんな風に言う笑顔には少し思う所があったが黙っておこうか。

 その辺を考えるのは本人がする事だ。

 

 

 

 

 

 

 

「何か会話の途中途中で唇だけ動かして何をやってるのニャ、あの二人? はっ! まさか読唇術って奴かニャ!」

 

「シルにその様な事が出来る訳が無いでしょう? いえ、シルなら或いは?」

 

「喋ってないで手を動かしな。客が少ないからって気を抜くんじゃないよ!」

 

 

 

 

 

 さて、義手のローンの支払いも終わり、ミアハによる売り物の配り歩きも控えさせて定期的な販売ルートも作った今、店としては安定し始めたんだが、新たな問題が発生していた。

 

 

「大規模な入浴施設? それを建てたいと言われたのか……」

 

 ヒュアキントスとアーニャと共に集まっての演奏会の日、俺が出した悩みはミアハと団長が前から計画していた巨大な浴場についてだった。

 

 確かに今でも金払って入る風呂はあるが、それも大規模な物を作って大勢が人を楽しめる様にしたいとか、風呂に入る事での効能まで詳しく語られた俺は計画書を見て即座に却下した。

 

「土地代に建築費用に施設の維持費、そして適切な運営をする為の人材の確保に人件費。とてもじゃないが弱小ファミリアがどうにか出来る物じゃねえよ」

 

 俺としてはディアンケヒト・ファミリアに計画案を売り払うのが一番だと思うがな。

 理想だけじゃ腹は膨れねえんだし、あっちの方が適切に運営出来るだろ。

 

「お前は農家の出だと聞いていたのだが、その辺りの知識はどうしたのだ?」

 

 計画の杜撰さを細かく語る俺にヒュアキントスは少し驚いた様子だ。そりゃそうか。分野が大きく違うからな。

 アーニャは途中から理解するのを忘れて宇宙を背負っているが、ヒュアキントスは話を聞いただけで理解する辺り、流石は団長なんだと思う。

 

「ちょいと隣国の方でゴタゴタがあって文官が不足してるからって一時期だけ見習いをやらされてな。その時に基礎は学んだ」

 

 そのせいで姉貴を皇帝にするのとは別に俺を部下に誘って来たんだよな、ベルベルは。

 俺が帳簿とかならある程度出来て最強クラスの魔法使いだからって、隣国の農夫だぜ? 実力主義だろうと節操が無いにも程があるだろうによ。

 

 何があったら農夫の餓鬼が見習い文官になるんだって訝しげな顔こそ向けられたが詳しくは聞かれない。

 各地から主神が気に入った相手を集めているだけはあるって事だな。

 

 まあ夢見てやって来た奴だけじゃないって事だ。

 

 

 俺も姉貴が世界を救う英雄になるべく生まれた存在(ガチ)で神とか神の代行者を倒したって訳ありだからな。

 言えねえし、言っても信じねえだろうさ。

 

「まあ、良い。今は音楽を……いや、招いていない客のご登場だ」

 

 また俺達の音楽に惹かれてモンスターでも現れたのなら良かったんだが、今回は白装束の怪しい連中。

 武器を構えて殺気を隠そうともしてない此奴等については何者なのかは何となく予想が付く。

 

「何処で知ったかは秘密だが、 生まれ変わった先で愛する相手に会う為にオラリオをぶっ壊そうってイカれた連中だとよ。爆弾隠し持っているから気を付けろよ」

 

 別行動していたアイズ達の前に現れたらしい連中の同族、フィンの予想では生まれ変わり先を融通する代わりに動いてるとか。

 

「暗黒期にも居た連中の同類か。愚かな。愛する者が生まれ変わる世界を滅ぼしてどうする」

 

「同感。取り敢えず気絶させておミャーの魔法でギルドへゴーってかんじかニャ?」

 

 流石は第二級冒険者、話が早くて助かるぜ。連中の行動に動機は理解しても吐き気がする、そんな様子で向かって行く。

 俺は別に動かなくて良いよな。

 

「爆破されても癒すから頑張れよー」

 

 楽出来て良いなって感じで座って観戦しようとしたが睨まれ、ヒュアキントスが顎でしゃくった方を見れば岩壁に隠されていた謎の扉、その向こうには人工物。

 

「おい、彼奴は……」

 

 一人が俺に気が付いたみたいだがもう遅い。リーダー格の奴が懐から何か丸い物を取り出して翳せば門は閉まって行くものの、それよりも先に俺は魔法を発動させていた。

 

 

「【テレポート】」

 

 門が閉まる寸前に中に転移、通路の向こうから巨大な芋虫やらが出て来たので【ロングショット】を先頭の一体に叩き込めば頭が弾け飛び、続いて全身が弾け飛んで吹き出した液体が壁や他の芋虫を溶かして、更にそれが連鎖する。

 

「魔法で一気に……いや、駄目か」

 

 近付いた俺達に反応して出て来たって事は何らかの方法で見張られてたって事だ。

 じゃあ、さっさと戻るか芋虫は二人にはキツイ相手になりそうだしな。

 

 

「おい、ちょっとヤバいモンスターが出て来た。殺したら溶解液撒き散らして自爆するんだ」

 

「それは不味いか……」

 

「おさらばニャー」

 

 判断が早い二人は俺の言葉を聞くなり手近で気絶している奴を引っ掴んで俺に掴まる。

 にしても十八階層にこんな未発見領域が存在したなんてビックリだ。

 

 

 流石に今回は発見者としての報告をヒュアキントスに丸投げは出来ない……か?

 

 

 

 

「いや、流石に無理があるだろう。馬鹿か、お前達。」

 

 

 取り敢えずアーニャと一緒になって頼んでみたが、普通に断られた。

 

 

 

 

 

「おーい。未発見領域と闇派閥らしい怪しい連中発見したんだ。そんな訳だから手続き頼んだぜ、ローズ」

 

 怪しい連中を手にぶら下げた二人に肩を掴まれた状態で転移したのはギルドの内部、爆弾は取り除いてるから大丈夫だと二人は言っていたし、ちょうど近くには俺の担当の姿があった。

 

「今、他の担当冒険者との打ち合わせ中だから順番待ちを守りなさい。……はい? 今、何って行った?」

 

「別ファミリアのアマゾネス同士だけれど交際してたら主神にバレちゃって

……」

 

「いや、貴方じゃなくて、急に大事持ち込んだ其処のお馬鹿。……胃が痛くなって来たわね」

 

「【キュア】。大丈夫か? アドバイザーって大変なんだな」

 

「誰のせいだと思っているのかしら?」

 

「さあ?」

 

「わ、私の相談!?」

 

「違うわよ。何処かの馬鹿のせいだから。……貴女は貴女で大変だけれども」

 

 何故か恨みがましい視線を向けられるが、理由が分からん。俺、帳簿は読めても政治は得意じゃねぇし、女心も理解してねえ。

 そしてローズを苦労させているのが誰って言われても微塵も答えは出やしねえ。

 

 だって俺、ローズに相談した回数なんて片手の指で足りるし、そこまで仕事っぷり見てないし。あー、でも美人揃いだからフレイヤして来る野郎も居るのかもな。

 

 にしてもローズは先約があるんだったら無理は言えないか。じゃあ、ヒュアキントスの担当アドバイザーに話を持って行く事にしようぜ。

 

「……仕方無い。お前はガネーシャ・ファミリアにでも先にこの連中を連れて行っておけ。私が報告をしておくから……」

 

 離れた席から小さな悲鳴が聞こえた気がするが、ヒュアキントスはそっちに同情的な視線を送りながらも迷わず向かっていく。

 あの人が担当って訳か。

 

「あー、はいはい。長時間の残業や下手したら休日出勤まで決まりそうだからか。大変なんだな、アドバイザー」

 

 バイアシオン大陸じゃ仕事の斡旋しかしなかったってのに、世界の中心って呼ばれるだけあるな。

 

 

 

 

「やあ。まさか此処まで早い再会とは思わなかったよ、ギル君」

 

「遠征前だってのに大変だな。俺も孤児院で絵本読んでやる予定が潰れたし、次行く時が大変そうだよ」

 

 ヒュアキントスの担当アドバイザー(今日は夜勤明け)に諸々の報告がなされ、ギルド長まで出て来ての大騒ぎになった一連の出来事だが、今までに深く関わっているとしてフィンとロキも交えてそれぞれの主神込みで話し合う事になった。 

 

 これから伝説を打ち立てるんだ、とばかりに張り切って遠征の準備を推し進めていた時にこれだ。フィンも苦笑いだし、ロキも八つ当たりと分かっていてもこっちを睨みながら頭を抱えている。

 残った幹部にも多分話は通るし、今頃遠征の準備に並行して方針を決めているんだろう。

 

 ただ、アーニャの所は留守で来なかったけれどな。休みに向けてシフトの調節中って言ってたし。何か魔導アカデミーでの公開授業で家族が来てくれなかった奴みたいな顔しているな。

 

「よく集まってくれた! そして俺がガネーシャだ!」

 

 俺達が集められたのはギルドではなくガネーシャ・ファミリアのホーム。何でギルドじゃないのかは俺には分からねえが……この流れをやる意味とかあるんだろうか?

 

 いや、遺品届けた俺とは会った事があるけれど、他二人とは顔を会わせた事がないのかもな。

 

 

「んなモンどーでも良いから話進めーや。そこの三人が見付けたっちゅー謎の通路についてどうするかや」

 

「ヒュアキントス達が何をしにその場所に居たのか……は今は別に良いか。何となーく分かるからな」

 

 アポロンが視線を向けるのはヒュアキントスや俺が手にしていた楽器。置きに帰してくれなかったから持ち込んだが、主神に演奏は控えろと言われているだけにヒュアキントスは気まずそうだ。

 

「まあ、お前達落ち着け。これが一番重要な事だが……その場所に魔法で行けるのか?」

 

 場の空気が変わり視線が俺に集中したのはミアハのその言葉が発せられた瞬間だった。未発見のその場所、ダンジョンに最初から備わっていたのか、それとも人工的に付け足した物かは不明だが、闇派閥の隠れ家になっているのなら放置は出来ない。

 

 ……やべぇ。ギルドで大声出して報告する事じゃなかったな……。

 

 

「一度行った場所だから可能だよ。何なら転移前に周囲の状況も何となく分かるけれど……」

 

 言うまでもなく向こうだって警戒しているだろう。監視する為の何かがあって、開門閉門の為に特別な道具が必要という事が分かっただけでも十分だが、それだけで、いざ突入!、とは行かないもんだ。

 

「一旦は発見と敵の警戒をその入り口に向けられるという事で良しとするとして……」

 

「少しずつでも移動範囲を広げるしかないってこっちゃな。おい、ちゃんと新種共に対抗出来る奴と行くんやで? ……こりゃ地上にも出入り口があるやろうな。街で暴れた新種はそこから搬入したんやろ」

 

「今は慎重に動くしかないという訳か」

 

 この場に集まったほぼ全員が重苦しい空気に包まれ黙りこくる。こりゃフェルムさんと一緒に殴り込んで即座に殲滅した方が早そうだが……シャリが絡んでそうだからな。

 

 滅んだ邪竜を復活させたし、既に倒されたっていう厄災を復活させても不思議じゃない。

 どの位強いかは分からねえが、エルファスと合流する迄は慎重に行かないとな。

 

 

 最悪、あの場所を破壊する事がオラリオの崩壊に結び付く可能性もあるんだが……。

 

 

 そもそもダンジョンって何なんだ? ティラみたいにモンスターを生み出すし、聖属性を使おうとすると猛烈に嫌な予感がするんだよな。

 

 

「ほんまならフレイヤの所のも巻き込みたいんやけれどなにやっとんねん」

 

 

「それなんだがダフネとカサンドラ……俺の眷属がガリバー兄弟の声をダンジョン中層で聞いたらしい。兎共がどうとか言うのに混じって戦う様な声が聞こえたそうだ」

 

「それなら俺の眷属はミノタウロスと剣で撃ち合う猛者(おうじゃ)を見たらしいが……」

 

「そーいやウチの所のもライガーファングを叩きのめしてはエリクサーで回復するアレンの姿を……」

 

 

 モンスターでも飼い慣らす気か? 主神がバカンスの準備を進めてる時に何やってるんだか……。

 




ベル君への試練(ルナティックモード)の準備、進行中!


 
「やべえ。言葉も通じねえんじゃどうしようもねえな」

 多分シャリの仕業で知らない国に飛ばされたらポルタン族の女っぽい連中に追われてるんだが、普通に侵入者への対処だよな。
 まあ、本来なら魔法でパパッと脱出すれば良いんだが、問題がある。

 この国、誘拐されて来た男共が居て、それを見捨てられない。だから回復させて飯を与えて、今の俺は大暴れで囮の最中だ。
 食いついて来るのとか毒使って来るのは咄嗟だったもんで気絶させたが、他のまでそうは行かねえし……。

「……いや、一旦周囲を氷で覆えば良くねえか?」

 逃げ切った頃に溶かせば良いし、思い立ったら即行動とばかりに今いる都市の入り口を凍らせて塞ぐんだが……。


「あっ、悪い。ちょっとしたら溶かすから勘弁してくれ」

 お子様三人が入り口の前で呆然としながら立っていた。これ、戻れないって感じじゃねえか。

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