英雄の末弟と英雄を目指す白兎   作:ケツアゴ

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次回にはベル君出したいの


話すべき事

「少しは話すべきかねー? この大陸での指標になるだろうし」

 

 この大陸に来てから二週間が過ぎ、俺は団長に使える魔法について話すべきか悩んでいた。

 

 たった二週間同じ屋根の下で暮らしただけされど二週間だ。姉貴の場合、二週間も毎日言葉を交わせば凄く仲良くなれる。

 顔見知りが友情とか信頼の域に達するんだから、選ばれた人間ってのを見せられてる感じで誇らしい。

 

 エアという風の巫女がいる。世界のバランスを保つ竜王の配下である翅王と共に過ごす千里眼の持ち主である少女……魔法で子孫を生み出し自我を保ち続ける奴を少女と呼んで良いのかは別として、滞在中に毎日会いに行ったらエアの心を乱すとして翔王に警告される程度には仲良くなった。

 

 その後でも会いに行こうとしたのは馬鹿なのか? 馬鹿なのだろう。俺がしがみ付いてでも止めなければどうなっていたか。

 明日も会いに行くと約束したらしいが、状況を考えろと言いたい。

 

「実際、ダンジョンに潜っていたんだから指標となる物を分かっているだろうしな。自分がどの位なのか知るのは必要だよな」

 

 これでも四年間の冒険(その内の半年は魔導アカデミーに在籍)で濃密な体験をして、ただの田舎の小僧が何千年も生きてるエルフの王族の魔法に威力だけなら並べる様になった。

 テレポートの距離とかは知らね。あの人の先生だったらしいネモ曰く、それは別の才能とか技術らしい。

 

『勿体無いねー。その才能も生きる時間の短い人間なら磨き切る前に終わるからな』

 

 こんな事を言われる程度には才能がある俺だが、それでも恩恵によるステイタスやら独自の魔法やら他の天才について考えたら慢心は駄目だ。

 だって独自の魔法とかあるし。

 

 狡い! 俺なんてステイタスがマジで微塵も成長しないし、スキルも魔法も出てこないのに、エルフの魔法なら何でも使えるって奴すら居るんだぜ?

 

 狡い! 俺も自分だけの魔法とか使いたいのに!

 

 まあ、 ボールスも上澄みではあるが、上積みの中では底に近いらしいし、あの精霊の力が強い女の子はどの辺りに位置するのかも分からないから、シャリの陰謀で他の冒険者とぶつかる事も想定しておきたいんだ。

 

 だから話す事にした。一応ミアハにも相談してだけれど。

 

 

「……うん、君の大陸ではエルフみたいな魔法種族でなくても魔法が使えるのは分かった。古代魔法みたいな物だって」

 

 精霊の力を取り込むとかは分からないけれど、そんな風に呟く団長の目の前には大きく抉れた砂漠地帯の地面。綺麗に丸く抉れ、真っ黒に焼き焦げている。

 

 太陽が落ちて来たと錯覚する程に巨大な火球を真上から落として対象を焼き尽くす魔法だ。

 火属性を極めたレベルの魔法使いじゃないと使えない。

 

「今のが火の禁呪【ヘルファイア】。それで次が……」

 

「うん、他にもあるんだ。見せられる前に言っていくけれど、無詠唱で放って良い魔法じゃないから」

 

「因みに魔法を二つ同時発動する技もあるんだけれど……」

 

 この時点で疲れた顔をした団長の表情が固まった。うん、一応気を使ってオラリオから遠く離れた砂漠地帯まで来たけれど、俺の魔法がこっちでも強いのは正解だったらしい。

 この規模の魔法を使うには詩みたいなのを分単位で唱える必要があるのを聞けたのも良かったよな。

 

 やっぱ情報って大切だわ。団長を連れ出して良かった。

 

「その光景誰かに見られてる?」

 

「風の禁呪を同時発動するのを見られたけれど、仮面被ってたから大丈夫だろ。偽名も名乗ったし」

 

「うん、これ以上はもう良い。……いや、弱めの魔法見せといて。表向きに使う三つ目の魔法を選ぶから。君に任せたら絶対駄目な気がする」

 

 短時間で凄く疲れた感じだな、団長。今日は胃に優しい物を作ってやらねえと。

 それにしても俺に任せたら駄目か。いや、俺達の敵って魔王の円卓の騎士だの封印されてた邪竜だのばっかりだったからな。

 

 闇の禁呪だってバンバン撃って来やがったし、多分こっちの大陸の基準に合わせるのは知識が足りねえ。

 

 久し振りに仲間の大切さを噛み締めた俺は底位の魔法を三倍の威力で放つ【スペルラッシュ】ってスキルも使った結果、団長は頭が痛くなったらしい。

 人前では控えろって事らしいし、暫くはベルゼーヴァとして動かなくちゃな。

 

 あっちの姿なら自制の必要も無い事だしさ。尚、多種多様の魔法(自動蘇生魔法(リインカーネイト)は自重)を見せた結果、現場判断に任せるって丸投げされた。禁呪は駄目だから緊急時以外は控えろってさ。

 

 

 まあ、そんな風に説明も終わり、毎日の飯の種を稼ぐ時間がやって来る。

 ミアハと団長は調合と店番、俺はダンジョンだ。俺も連れが欲しいんだがな。

 

 ギルドで担当アドバイザーに相談するか、知り合いに聞いてみるか。

 

 

 

 

「いや、確かに人手が欲しいとは言ったんだが……」

 

 リヴィラの街への荷物の配送も毎日ある訳じゃなく、そんな日は鈍った勘を取り戻す為に暴れたり、商品の原材料となる物の採取を行っている。

 

 だけれど目当ての物が生息するダンジョン十九階層以降『大樹の迷宮』は広い上に何処に生息してるか決まっていない。

 

 詳しい奴なら大抵の場所は知っているし、テレポートで行き帰りが可能だろうと採取効率と一度に持てる量を考えれば誰かの手助けは欲しいんだが……。

 

「今日は随分と質の良い物が多いですね」

 

「アミッド、団長の仕事の方は良いのか?」

 

「今日はお店と書類仕事は任せて来ましたので安心して下さい」

 

 何故か俺の隣で採取したホワイトリーフを満足げに眺めているのはディアンケヒト・ファミリア団長アミッド。

 俺は普通に話す相手だが、主神同士は仲が悪い上に債権者と債務者の関係。

 

 そんな俺と一緒に居て良いのかって思うんだが、当の本人は平然としている。

 団長として示しがつかないとか大丈夫か?

 

 先ずはギルドに向かおうとしてたんだが、丁度別用で帰る所だったのに遭遇、そうしたら一緒に行きますって流される感じで……。

 

「私としても採取の為に使う時間は節約したいですし、何処かの親切な方が匿名で資材を寄付してくださるからにはお手伝いしたいので」

 

「まあ、それなら……」

 

 あれだな。姉貴も色々あって貴族になったり冒険者になったりしてたし、俺も多少流されても良い気がする。

 

 それにアミッドって大人しい風で行動的な部分もあるし。じゃないと治療院なんて物の運営に関わらないよな。

 

「それに治療院の話、まだ諦めていませんから。こうやって一緒に過ごして仲良くなればお手伝いして下さるかもでしょう?」

 

 治療院の仕事ねぇ。そりゃ偶に手伝いに行くくらいは良いんじゃないかって思い始めているけれど、多分それじゃ満足しないんだよな、この人。

 

 借金の事もあるし、やってる事は立派で尊敬すらしてる。

 この前、それを伝えたら照れながらも再勧誘して来たから二度と言わないんだが。

 

 さて、この辺りは粗方終わったか? アミッドの方を見れば頷いたので手を伸ばす。

 直ぐに掴まれたので地図のチェックマークの所にテレポートを使用して飛んだ。

 

「あら、こっちも大量に生えてますね。本当に今日は運が良い。ちょっと怖い位に」

 

 テレポートで飛んで少し歩いた先にもポーション類の材料となる物が大量だ。

 高値で売れるからって他の冒険者が見つけ次第全部持って行く事も多いんだが……。

 

 さっき手を握った時、ちょっとだけ指先が荒れてたな。

 

 種族の特性か俺より三歳上なのに幼く見えるアミッドだが、団長としての業務に店番、薬の調合や研究、そして治療院の運営。

 その働きが大勢の命を支えているんだろうが、第二級冒険者の体でも流石に影響が出ているらしい。

 

「【キュア】」

 

「あら? どうかしましたか?」

 

 だから俺の自己満足として彼女に魔法を使う。最初は少し驚いた様子だったんだが、直ぐに真面目な眼差しで自分の指と俺を交互に見ていた。

 

 もしかして不味かったか? 薬とかに肌が負けてるのかと思って軽い気持ちで使ったが、経過観察中だったとか、余計なお世話だったかもな?

 

「……肌荒れにも効果があるのですね。いえ、そもそも炭化した肌も綺麗に治していた時点で分かる事でした」

 

 今度は指先で自分の頬を撫で髪を弄る。うん? 怒ってる感じじゃないな。

 どちらかと言うと薬の研究中のミアハ達に近い感じだ。

 

 そもそもアミッドの回復魔法でも肌荒れとかは別なのか? 乾燥とか栄養不足とか寝不足とか理由によって違うんだろうが、分かる事が一つ。

 

「あー、治療院の仕事を月一と緊急時に手伝うから黙っててくれな?」

 

 俺の回復魔法は分類的には水の力を使った物。だから肌に潤いを与えるんだろうが、悪目立ちする理由になるんだったら知られたくない。

 

「別に口外はしませんよ? ただ、原理が分かれば肌荒れの薬の研究に役立てそうだと思っただけです」

 

「いや、どうせ手伝う気だったし、今のを口実にさせてくれ」

 

 アンタの頑張りを応援したい、そんな風に素直に言えたら良いんだが、ちょっと恥ずかしいので口には出さない。

 俺って面倒臭い位に素直じゃねえな、うん。

 

「ええ、でしたらお言葉に甘えさせて貰いましょうか。口止め料として働いて下さいね。勿論、そちらのご予定に合わせますのでご安心を」

 

 そんな風に少し悪役になってくれって酷い頼みをしたってのに嫌な顔もしないし、成る程な、聖女とか呼ばれる訳だ。

 

「悪いな。アンタみたいな美女にそこまでやらせてしまってよ」

 

「美女ですか? 私が?」

 

 うん? なんか失敗したか?

 

 美女って言葉が自分に向けた物だと一瞬理解出来なかったのか、顔を指差して首を傾げている。

 

 普通に美女だよな? 他の奴はそう言わねえの?

 

「もしかして美少女の方が良かったか? 悪いな、俺にいた大陸じゃ十九は大人として扱うんだ。気を悪くしないでくれ」

 

「いえ、年下からも子供扱いされるので新鮮な気分でして」

 

 恥ずかしそうな嬉しそうな表情を見せてくれて俺も安心だ。今頃になって俺も恥ずかしくなって来たけれど……。

 

「下がってっ!」

 

 不愉快でないなら良かったと安心したのも束の間、モンスターは避けてたってのに目の前で一匹産まれようとしている。

 盛り上がる地面を見て咄嗟に俺を庇う様に前に出るアミッド。

 

 こんな時、情けないって思うんだよな。ランクアップもしていない新人相手じゃ正しい行動だが、本当なら後衛向けの俺でもここら辺のモンスターなら拳で相手出来るってのに、同じ後衛のアミッドに任せている。

 

 目立ったら嫌だって自分勝手な理由でな。

 

「あれは……ヴィーヴル!?」

 

 アミッドが焦ってる? おい、まさかヤバい相手なのか?

 

 竜と人間の少女を合わせた様な見た目の其奴の額には強い力を感じさせる宝石が埋め込まれ、翼と両腕の爪を広げる姿からは周辺のモンスターより強いのだと感じさせられる。

 

 

 

 まあ、ぶっちゃけ俺にとっては誤差だが、アミッドが焦りを見せたと気が付いた瞬間には既に動いていた。

 地面が陥没する勢いで蹴り、相手が俺達を認識するよりも前に額の如何にも何かありそうな宝石に手を伸ばし、毟り取ると同時に胸に拳を叩き込んだ。

 

 肉の骨も纏めてぶち抜く一撃、初見の敵なら何かする前に倒すのが基本。

 当然、魔石も粉々になり残ったのは灰の山とドロップアイテムの翼。

 

 そして俺の手の中の宝石だ。

 

「……悪い! ランク詐称とかじゃなくて恩恵無関係に強かったんだ、俺。面倒事が嫌で黙ってた」

 

 正面から顔を見る勇気が出ずに背中を向けたまま謝罪を口にする。あの驚き様だ、何か面倒な力、それこそ錯乱や呪いを撒き散らす力があったんだろうし後悔してない。

 

 しているのは隠していた事だ。多少なりとも好意的に接してくれた相手にだ、しない訳がないだろ。

 

 

「はぁ。それなのに私は驚いたせいで動いてしまったと。……えっと、言い出し難いのですが、ヴィーヴルは魔石もドロップアイテムも非常に高価なレアモンスターでして……」

 

 背中に受けるのは侮蔑や怒りなどの非難の類かと思いきや、少し困った様な、それで楽しそうな笑いを堪える感じの声。

 

「うん?」

 

「それで思わず固まってしまったのですが。えっと……ふふ、ふふふふふ」

 

 アミッドは口に手を当てて笑いを堪えるも抑えきれない感じでプルプル震えている。

 俺の覚悟とか色々が台無しじゃね……。

 

 

「えっと……取り敢えず石の売値、俺の分を口止め料代わりに受け取って全部黙っていてくれ。多い分は孤児院とかに分配して。じゃないと恥ずかしくて堪らないっ!」

 

 直後、アミッドは腹を抱えて笑い出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今、遠くで強い力を感じたが……」

 

 時間は遡り、ギル達の魔法を実演で説明している砂漠の少し離れた場所、本来ならば砂上船で進むか、せめてラクダ等の動物に乗るべき灼熱の砂の上を旅する青年がいた。

 

 長く伸ばした銀の髪に白い肌、中性的な顔立ちは美の神に匹敵する程に整っており、その少し妙な服装も彼の神秘性を際立たせる。

 

「うぅ……」

 

「安心しろ、殺しはしない。例え奴隷狩りであろうと悔い改めて罪を償う権利はあると僕は考えている。元より僕に糾弾する権利など有りはしないからな」

 

 周囲に転がり呻き声を上げるのは武装していた男達。最近起きた侵略戦争によってシャルザールの城が攻め滅ぼされ、王子だけが逃げ延びたという状況で起きた奴隷狩り。

 

 鎖と手錠で拘束した民衆を連れ、このまま金に変えようとしていた時に青年が通り掛かったのだ。

 武器を突きつけられても平然とした顔で自分達の素性を訊ね、不快感を顔に出す彼を捕まえようと襲い掛かり、指一本触れる事すら出来ずに倒れ伏した。

 

「君達もこの連中に思う所はあるだろうが、此処は助けた僕に免じて私刑を行うのは止してくれるかい? 先ずは少し歩いた所にある街へと行こう。【テレポート】」

 

 手錠の鍵を男達の懐から取り出した青年は静かな声で告げ、頭さえ下げる。

 その姿に奴隷として売られる筈だった者達は戸惑いすら感じる中、彼が唱えた魔法によって一瞬で景色が切り替わる。

 目の前の町に人々が戸惑う中。最初に口を開いたのは気丈そうな少女、気品すら感じさせる彼女こそこの国の王子であるアリムの正体だ。

 

「先ずは礼を。ありがとう、助かった。その上で一つ問いたい。君は一体誰だ? 名高い冒険者とお見受けするが、何処の神の意思で動いている?」

 

「神の意思、か」

 

 その問い掛けに青年は僅かに眉を顰め、直ぐに自嘲する様な笑みを浮かべて首を左右に振った。

 

 

「僕はエルファス。贖罪の罪を続けるだけの、自分の意思で動く人間だよ」

 

 




感想欲しいです

アミッド 友情

ナァーザ 信頼寄りの友情

春姫 友情

ミアハ 信頼

ジルとチャカ  激愛

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