英雄の末弟と英雄を目指す白兎   作:ケツアゴ

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悪戯

 私、春姫は少しイケナイ事を企んでいました。ナァーザ様にファミリアの商売のお勉強として習い始めた薬の調合。

 

 娼婦見習いとして身に付けた雑務や実家に居た事に学んだ貴族の娘としての教養とはまた違った内容に戸惑いと新鮮さが入り交じった日々。

 

 大変では御座いますが二度と会えないと思っていた友達との再会と……想い人と一つ屋根の下での生活は幸せです。幸せなのですが、もう少し進展したいと申しますか、殆ど身請けされた身分な以上は夜の夢を見たいのです。

 

 少し前までは己を汚れた身だと思っていましたが娼婦としては三流以下以前の問題でして、惚れた相手と身も心も繋がって……はわわっ!?

 

 ですがギル様は奥手と申しますか、客と娼婦としての夜より前に進めなくって。いえ、ミアハ様とアァーザ様のお二人とも暮らしている以上は夜に寝所を訪ねるのも恥ずかしく……お仕事にご同行させるキカイ恵まれたのでお薬に頼る事に致しました。

 

 

「良い? これは煎じて飲んだら男も女も元気になるし、お香にしたら凄くエッチな気分になる」

 

「な、成る程……」

 

「ギルが引き抜かれたり故郷に帰ったらファミリアは凄く困る。だから頑張って。二人が旅行中なら私も色々と準備しやすいんだ」

 

 作ったお薬は二等分……だったのですが、入れ物の筒を開けてみれば分けられていませんね?

 

「ナァーザ様が分けるのを忘れていたのでしょうか?どう致しましょうか……」

 

 効果はあるけれど調合してから日持ちしないという話でしたし、残りを持ち帰ってお渡しする訳にもいきません。

 

 少々狡い気も致しますが全部使わせていただく事にしました。

 

「ギル様は只今お出掛け中ですし、先ずはお香の方から……」

 

 香炉に入れて火を付ければ甘い香りが漂うのですが、何とも言い表せない心地良さに思わず鼻を近付けて嗅いでしまいました。

 お酒を少し召した時の感覚と申しますか、頭が少し働かず足元がフワフワと覚束無い。

 

「ひゃっ!?」

 

 一歩踏み出した時に肌と服が擦れて、その部分に走る電気の様な刺激。膝が崩れそうな感覚に思わず変な声が出た。

 妙な感じではあるのですが癖になりそうでもある。

 

 これがアイシャ様が言っていた交わりの際の快感なのでしょうか?

 

 肌に服が擦れた程度でこれならば意中の相手に触れられたにならどれ程の……。

 

「い、一旦お茶を飲んで落ち着ましょうか」

 

 先に二人分淹れておいたお茶を喉に流し込んで思い出す。体の奥からポカポカを通り越してカァーっと熱くなって力が漲る。

 そして思い出しました。お香と煎じて飲むの二つを短時間で併用すると相乗効果で大変な事になると。

 

「はぁはぁ……」

 

 息が荒くなり汗が軽く滲む。同時に空気が肌に触れる感覚すら鋭敏になって頭の中が真っ白になりそうです。

 

 包み隠さず申しますと発情してしまった私ですが、ドアをノックする音と入室を告げる声に息を呑んで固まりました。

 此処でギル様ならお慈悲をお願いするのですが、残念ながら来訪者は別の方

 

「失礼します。お加減は如何ですか?」

 

「ア、アミッド様……」

 

 そう、いらっしゃったのは私と違い所属するファミリアに多いに貢献なされているアミッド様。

 ナァーザ様曰く私の恋敵ではあるものの憧れの対象であり、噂の限りでは尊敬に値する好ましいお方。

 

 この方が相手ならば仕方ありませんので私は愛妾の立場で満足で御座います。

 

 ……つまりは仲良くなっておくべき相手ですね。

 

「急に気絶するものですから心配しましたがお元気……いえ、少し熱っぽい顔ですね」

 

「こ、この度は誠にご迷惑をお掛けしました。それでこれはお薬が効いたと申しますか……」

 

 今も私を心配して訪ねて来て下さり頭が下がる思い。なので精力剤を飲んでこうなったとは口が裂けても申し上げられません!

 

 役立たずの新米ではありますが、私にだって恥はあるのです。

 

 

「薬ですか。滋養強壮の類みたいですが少し効き過ぎの様ですし、用法容量を守らないといけませんよ。此方のお茶ですね?」

 

 アミッド様は私を心配して下さりながら別の湯呑みに少し注ぎ、確かめる様に口に含んで飲み干す。

 

「あっ……」

 

 途端、今の私の様に顔が赤らみ息が乱れて、暑くなったのか少し襟を緩めてしまいました。

 

 

「……成る程。どの様な物なのか理解しました。……似た薬を飲んだせいで効果が的面に現れ過ぎましたね」

 

 一口飲んだだけで何の薬なのか理解なされたのですか!?

 

 言葉の最後の方は聞き取れない程に小さな声でしたが納得したらしく、香炉に顔を近付けて数度嗅げば更に効果が現れたみたいで妙に色気を醸し出します。

 

 

「しかし困りました。この症状からして発散させなければ暫く収まりそうにないですね。春姫さん、失礼ですが自分で性欲を発散させる方法は分かっていますか?」

 

「知識だけなら……」

 

「なら合理的にいきましょう。実際の行為で発散させるのが一番簡単です」

 

 はい? この方、正気なのでしょうか? 噂では仕事一筋だった筈ですが、最近になってギル様と親密になったとお聞きしていますが、これがアイシャ様が言っていた"真面目な奴ほど色恋の沼に嵌まると怖い"という……。

 

 私など自らの指で慰めた事など有りませんが、目の前のお方は耳に入って来る噂や実際の仕事っぷりを見る限りでは随分と堅物な印象でしたのに、お香と精力剤の二つの効果があるとはいえ一切迷わないだなんて。

 

 恥ずかしくて気絶してしまいそうですが、此処で気を失ったら一歩も二歩も出遅れてしまいそうですし……。

 

 

 

 

「アミッド様はその……大胆なのですね。春姫は用意した物を使うだけで精一杯で最後の一歩が踏み出せそうにありませんでしたのに」

 

「いえ、私も今の状況でなければ踏ん切りが着かなかったでしょう。何しろ神に癒しを求めた事はあっても、恋心とは別物でしたので。ですが、何時か故郷に帰る気の彼を繋ぎ止めるには必要な事です。……ディアンケヒト様に負けぬ欲張りなものですので、オラリオでの治療も続けたいし、彼とも一緒に居たいのですよ」

 

「あっ……」

 

 そうです、私はずっと一緒に居たいと望みましたが、あの方の望みは故郷で畑を守り続ける事。お兄様が残ってるとはいえ、生半可な理由でそれは変わらないでしょう。そして目を逸らしていた事ですが、あの方の生まれた大陸では額に角が生えた種族こそいますが獣人は居なかったとか。

 

 私が故郷に行ってみたいと申した時、珍しい種族がどの様な扱いを受けるか心配して下さいました。もし想いが通じてお子を授かったとして、自分がこの世を去った後に子孫が苦労する事を考えればギル様はきっと……。

 

 

 

 

 

 

「わ、私もご一緒させても……」

 

「下手に足の引っ張り会いになるよりは良いでしょう。彼の故郷では普通は結婚は一人とだそうですし、楔は多い方が良いのと……一人では流石に無理な気がして……」

 

 アミッド様は更に真っ赤になった頬に両手を当てて絞り出す様にその様な事を言っていますが、私も同じです。一人だと何時か何時かと先延ばしにし続けていたでしょうから。

 

 

 こうして思わぬ形で結んだ同盟ですが、一つ困った事が……。

 

 

 

 

「私、本で学んで知識だけはありますが、実際は殿方の鎖骨を見ただけでのぼせ上がる程度でして……どんな流れでコ事に及べば良いのでしょうか……?」

 

「私も本で読んだ学術的な知識だけです。治療の際に裸を見る事こそありますが……誘い受け、でしたか? 兎に角雰囲気だけ作り上げて後はされるがままで、流れ次第で……」

 

 避妊具は用意しましたが、実際に着けた事は無くてどうしましょう、そんな風に困り顔のアミッド様に私は何も言えません。だって本で色々な方法は知っていても玩具を使った練習すらままならなかったのですから。

 

 

 ちょっと先行きが不安になって来ました。ギル様はその手の知識とか経験とかは……無いでしょうね。有れば既に私も組伏せられてギル様と繋がっている筈ですし。

 

 

 

 

「一応重要な情報が御座います。ギル様は胸よりお尻の方が好きなのと、不意打ちで胸を見ただけで気絶する初心な方です」

 

「前者は兎も角、後者はどうするんですか。身を任せるプラン前提ですが、どうしようもないじゃないですか」

 

 既に扉は目の前で、香炉も急須も手に持っていて後には退けない状態。意を決して扉を開ければベッドに横になるギル様が此方を見ています。

 

 あわ、あわわわわわわっ!? こんな時、どんな事を言えば……。

 

 歓楽街で客としての彼と会っている時にはそれなりの事を言えていた筈なのに、個人として誘惑する今は何一つ思い浮かばず頭が真っ白な状態。

 

 

「どうしたんだ? 揉め事でもあったか?」

 

「夜這いに来ました。前に言った通り避妊具の使用方法を教えますので脱いで下さい」

 

「アミッド様!?」

 

 そんな包み隠さずド直球に何を言うのだと思い顔を見れば冷静な声とは裏腹に顔は羞恥と混乱で染め上げられています。

 唖然として固まるギル様を他所に説明は終わったとばかりに服を着崩しながらベッドへと向かい、私も慌てて帯を緩めると急須の中身を湯呑みに入れて口に含んだ。

 

 

「ちょっ!? 落ち着こう! 少し落ち着こうって!?」

 

「私は冷静ですが? なのでこうして貴方が気絶しない為の対策だって出来ています」

 

 布団に潜り込んで何やらゴソゴソしていた彼女の手には脱ぎたての下着。

 ヒラヒラと目の前で動かして床に投げ捨てるのですが、この時点で頭が沸騰しそうになった私は慌てて目隠しをしてギル様の顔を手探りで掴むと勢い良く顔を近付けて……唇を重ねた。

 

 ああ、春姫の初めて(キス)は捧げてしまいました。

 

「……先を越されましたか」

 

「おい!? 舐めるな……」

 

「首筋は弱いと。では、耳はどうでしょうか」

 

 口の中の薬を少し流し込んだ私にアミッド様は少し拗ねた声を向け、何かを舐める水音や息を吹き掛ける音が聞こえます。

 これはその……そうゆう事なのですよね?

 

 

「お、おい!? 流石に冗談……じゃねえか」

 

「ええ、冗談で此処迄しません。……此処迄させる貴方が悪い」

 

「それはちょっと理不尽じゃ……」

 

「は? 私、貴方との婚約の噂が流れてしまっているのですが? 婚約破棄された噂まで流れても不愉快ですし、文句を言い続けるなら顔面を尻で踏みますよ? 春姫さんが」

 

「私がですか!?」

 

 会話に入っていけずに黙っていたら凄い事になっているのですがどうしましょう、イシュタル様!?

 

『知るか。踏まれて喜ぶ奴もいるんだし、そういった体位もあるのを知らないのか?』

 

 あっ、脳内のイシュタル様は冷たい。ですが……はい。

 

「ギル様がお望みなら……ひぅ!?」

 

 体を擦り寄せた瞬間に全身に走った刺激。これは駄目です、頭の中がピンクに染まって息が荒くなって……。

 

 少し気になったのはアミッド様から漂う香り。何か……いえ、誰かの甘い移り香が私の中の欲望を刺激する。

 この香り、何処かで……。

 

「もしやイシュタル様とお会いしましたか?」

 

「さて、何の事でしょうか? 医療に携わる者として患者の情報は守る責務が有りますので」

 

「何やってんだ、あの女神……」

 

 合点がいった風な呆れ声に私も何となくアミッド様が此処まで大胆な理由を察します。

 どんな用事でいらっしゃったのかは存じませんが、多分後押しのつもりで軽く魅了したのでしょう。

 

 それも情欲を刺激する形で……。

 

 恐らくは先を越されないと私を焦らせる気だったのでしょうが、そんな状態に薬が加わって今に至る、と。

 

 凄い事故になっちゃいました……。

 

 

「切っ掛けはどうであれ私の意思には違いありませんのでご安心を。精々凄くムラムラさせられた程度ですので」

 

「あまり聞かない言葉だな、それ……」

 

「それに貴方だって強く抵抗しないではありませんか。年頃ですので当然でしょう。それとも私達に大恥をかかせる気ですか?」

 

「その通りで御座います……」

 

「因みに春姫さんは魅了を受けていませんよ。素の状態で誘惑をしに来ています」

 

 不満そうなアミッド様の声の後には唇を軽く重ねる音。そう、此処迄ギル様が強く抵抗なされた事実は御座いません。

 流されての結果なのは少し不満ではありますが、それでも幸せではあるのでしょう。

 

 ……今回の事で抵抗が無くなれば向こうから求めていただけるかも知れませんし?

 

 ちょっぴり打算的な気もしますが、お薬を用意した時点で……まあ。

 

 今は今後の為にもと抱き付く力を強めますが、それ以上は無理。服も大きくはだけれどいるだけで完全に脱ぎ捨てた訳ではありませんのに、アミッド様がギル様の首に再び舌を這わせる音が鮮明に聞こえるせいで意識が薄れそうになります。

 

 私も同じ事を……無理。絶対に無理です!?

 

「……いや、俺の故郷では二股ってのは……」

 

「ならランクアップして故郷とオラリオを自由に行き来して下さい。出来る人に飛ばされて来たのなら、貴方にも可能でしょうし」

 

「私もご協力致しますので……んっ」

 

 勢いに押されて再びの口付け。もうこれだけで終えても良いのではと心の中では思うのですが体の疼きはそれを良しとしない。

 これも全部煮え切らないギル様が悪いのだと首筋にですけれど。

 

 舌を這わせるのは無理でもこの程度なら私にも出来る。目を塞いでいるからこそ漏れ出た声や体の震えは伝わって、私がそれを引き出しているかと思うと触れ合う部分が余計に敏感になる気がして……。

 

 

「……さて、何だかんだ言いつつも抵抗はなさらないという事はこのまま楽しむという方向で宜しいですね? 堅苦しい事は忘れましょう。どうやら準備万端の様ですし、ね」

 

「おいっ!? 幾ら何でも其処はっ!?」

 

「ズボンを脱がさないとナニが出来るのですか? 馬鹿馬鹿しい」

 

 え? もうズボンに手を掛けたのですか!?

 

 つまり今から本格的に私達は……はわわっ!?

 

 ベッドに潜り込んで服を脱いでおきながら何を今更と言われそうですが、毛布の中から聞こえるゴソゴソという音が私の妄想を刺激して、存在しない記憶が脳内で再生されました。

 

 

 布団に寝転がった私に覆い被さるギル様。

 

 露天風呂で後ろから抱き締めた私を……。

 

 口や胸で……。

 

「はっ!?」

 

 今まで私が夢の中で客相手にしていた事……の夢の中が全部ギル様へと置き換わり、濃密な体験を一気に濃縮されて再生が終わった時、思わず目隠しを取った瞬間、この部屋に向かって勢い良く駆け込もうとする足音が聞こえて来ました。

 

 

「……ちっ! 【テレポート】」

 

 私の腕をギル様が掴んで引き寄せ、毛布に包まる様にした瞬間に下から伝わる感触はベッドではなく冷たい砂浜へと変わります。

 視界も部屋から外、人の気配が無い街から離れた砂浜へと……。

 

 

 

「そ、外で行うのですか!? 私は構いません。他の方の目さえ無ければ……」

 

「違うからな!? 部屋に誰かが入って来ようとしただろうが。それで咄嗟に避難したんだ。……男だったら二人の裸を見られちまうからな」

 

「はい?」

 

 ……そんな無粋な真似を一体誰が? 

 

「【大きくなれ その力にその器】」

 

 何処の誰だかは知りませんが許せませんね……。

 

 

 

 

「落ち着きなさい。ほら、これを……」

 

 詠唱途中に掛けられた声に視線を向ければズボンがずらされて下着が見えて、服の襟を引っ張った事で見えたのは鎖骨。

 

 

「きゅう……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、お子様はお眠りですので大人は楽しむとしましょうか」

 

 意識が途切れる寸前、勝ち誇った様な声が聞こえた気がしました……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「逃げられたか! ええい、エルファスと知り合いなのを秘密にしよって! イシュタルが話を聞いていなければ逃げられる所だったぞ!」

 

 




アミッドはさん暴走しすぎだったのでイシュタルに余計な真似をしてもらいました


オマケ 一緒に喚ばれたの レルラ=ロントンとルルアンタだったら とかメンバー変えても良いかもね

フェティは扱いが難しいのでオルファウスとオイフェとか?
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