英雄の末弟と英雄を目指す白兎   作:ケツアゴ

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大団円とは行かないが……

「未だ入団希望者が集まらない? もう神頼みしかないな」

 

「僕も神なんだけれどっ!?」

 

「知ってる。何を今更……」

 

 今日は休日、なのでデメテル・ファミリアに頼んで畑仕事を手伝わせてもらった帰り、じゃが丸君のカレー味を買い食いしつつヘスティアを軽く弄る。

 

 この女神、今日もバイト三昧だとか。俺は休日だけれど。

 

 デメテル様は良いな、思わず様付けするご立派な胸だし、何よりも尻が良い。

 見るのは一瞬、それで脳裏に刻み込めば十分だ。

 

 なのにこのちびっ子は……うん。

 

「なのにこのちびっ子は……うん」

 

「全部聞こえてるからねっ!? 心の声はせめて心に留めようか!」

 

 あの紐は子供を背負う時の奴なんだろうけれど、言動まで子供っぽいせいで子守りのバイトをしている子供にしか見えない。

 実年齢考えると……おっと、これ以上は駄目だ。

 

「そういやバベルの頂上の窓から地上を見てるのは誰なんだ? 今まで興味が無いから誰にも聞かなかったけれど」

 

「へぇ〜。君もやっぱり男の子だったって訳だ。興味無いとか強がっちゃってさ。確かフレイヤの部屋だよ。美の女神さ。……って、本当に興味無いんだね」

 

 うん、全然って感じに頷く。だって外出た時に見て来るから今日初めて手を軽く振ってみたら振り返したから聞いただけで、特に接点無いし。

 

「どれだけ人間に似てようが別物だし、雲海から突き出した山頂から眺める日の出とか芸術品の類としか思わないからな。俺、大海原に欲情する趣味無いから」

 

 まあ、綺麗だよ? アミッドや春姫と比べてあの女神の方が美しさでは上だと思うけれど、異性としての魅力なら断然前者。

 

 デメテル様の場合は裸婦像とかに感じるエロス的な? 眺めるだけで完結する奴。

 

 なんかもうさ、神への印象が最悪過ぎて恋心とか抱くの理解不能なんだわ。

 否定はしないが俺が絶対無理。

 

 だから目の前のちびっ子の胸が大きかろうが道端の凸凹程度にしか思わねえな。俺

 

「だから目の前のちびっ子の胸が大きかろうが道端の凸凹程度にしか思わねえな」

 

「漏れてる! 心の声が漏れてるからっ!」

 

「あっ、土産に普通の三個包んでくれ。一個は別包装で」

 

 この大陸に来てから良かったのは食い物が美味い事だな。でも、一番美味いと思うのは生まれ育った家で兄弟揃って食べる飯。

 

 結果的に姉貴が魔王とか女神とかぶっ倒して英雄になったけれど、政争の影響で色々あった身としては未だに複雑なのは秘密だ。

 

 取り敢えず禿げとけ、レムオン。貴族制廃止のゴタゴタで額が後退しやがれ。

 

 

「まあ、アンタを弄るの楽しいし万が一入団者が出た時に気が向いたら無料で怪我を治してやるよ。欠損と死亡以外は……さて、行くか」

 

「嬉しい申し出だけれど理由が複雑だなぁ」

 

「じゃないと闇堕ちしそうだし」

 

「しないよっ!?」

 

 死亡以外は治せる、其処は最後までは言わんし、言えん。強力過ぎるが故に封印されたユニオンスペルの最高位魔法。

 

 死んだ際に自動で蘇生する【リーンカーネイト】、叶わなかった願いが集まり闇の狭間で生まれたシャリですら死者の魂を一時的に呼び戻すしか出来なかった。

 

「まっ、神は不老不死なんだろ? 世界の寿命が尽きる迄に見付かると良いな」

 

 渡された袋の中身を軽く嗅いで間違えてないかのチェックを終える。テレポートでパッと目的地まで行くだなんて野暮は無しだ。

 神の勧誘さえなけりゃ歩いていて楽しいからな。

 

 何か心配なんだよな、この女神。善寄りなのに抜けているしお気楽だし、なのに神だから秘められた力は大きいって。

 

「取り敢えず願いを叶えるとか言って近付いて来る奴には注意しろよ? 悲劇を生まない為に世界滅ぼそうとするヤベー精霊みたいなのだから」

 

 だからシャリの奴が利用しそうなんだよなー。

 

「背を伸ばしてくれるって言われてもついて行くなよ? 東方から来た黒髪の奴だったからな。お菓子くれるって言われてもだぞ?」

 

「行かないよ!? 君は僕を何だと思ってるんだい!?」

 

 ……駄女神? それと何度か話してるから微妙に好意は感じてる。顔見知りよりはマシってレベルだけれど。

 

 

「君は本当に変わった子だよ。それで結構活躍してるみたいだけれどランクアップの記録更新とか出来そうなのかい?」

 

「逆に全っっっったくステイタスが微動だにしない記録なら未来永劫保持出来そうだ」

 

 マジで1すら上がらねえってどうなってんの? 実はミアハって神としてポンコツだったりする? 商品配り歩くポンコツ店主ではあるんだけれど……。

 

 

 

「あれ? アミッドったら肌も髪も何時もより綺麗になってない?」

 

「そうですか? 私は特別な事はしていませんが」

 

 店の中、盗み聞きする気がなくても聞こえる声に耳を傾ける。

 

 恩恵ってマジで神によって変わらないのか、そんな疑問を抱いた俺が向かう先はディアンケヒト・ファミリアの店舗。

 ボールスとかは変に弱み見せない方が良いタイプの友好関係だし、こっちの薬は見ていて面白い。

 

 ウチの店舗には普段から置いていない商品を手に取って眺めるが、一口に毒消しっつっても種類があんだな。

 俺が知ってる毒消しっつったら雑魚だろうが上位のモンスターだろうが毒は毒だろうって感じで治してくれる『七色の軟膏』だったからな。

 

 麻痺も幻惑も、それこそ呪い以外なら強弱に関わらず治せるってんで便利だったんだがこっちには売ってねえの。

 魔法とかで作ってるのかね? ミアハにだけ教えたんだが卒倒して頭抱えてたぞ。

 

「えー。教えなさいよ。急にだもん、気になるじゃない。男? まさか気になる男でも出来たの?」

 

「え? 本当っ!? どんな子!?」

 

「いえ、ちょっとした極秘の美容法があるだけで……」

 

 尚、その美容法は俺の魔法である。普通に手入れするより効率が良いからって俺に丸投げするのは勘弁してくれ。

 

「それにしても元気だな……」

 

 聞き耳立ててる俺が言うのも問題だが、ちょっと離れた此処迄聞こえて来るぞ?

 

 姦しいってこんな感じなのか? 姉貴とカルラさんとエステルが揃った時もあんな感じだったし、攫われた村娘を救う為の潜入中って忘れたのかって思ったもんな。

 

 よく考えりゃ大勢の冒険者が利用する大手の店舗だ、ちょっと雑談とか出来る筈も無く、今度遠征に行くらしいロキ・ファミリアの幹部だっていうアマゾネスの姉妹が注文ついでにお喋り中だ。

 

 美容を気にしていたら満足に働けない仕事なのに気にはなるのかアミッドの肌や髪の艶を気にしているが、口止めしているので適当に誤魔化してくれている。

 

 大変だな、客商売って。それと十九歳なんだから子供扱いする接し方は止めてやりゃあ良いんだが、本人も嫌がってないから別に止めない。

 

 じゃあ、俺は話せず残念だけれど帰るか。あの中に割って入る気はねえし。

 

「ハンカチ噛みつつ撤退ってな」

 

 頭の中に浮かんだのは下半身の露出が凄い事になってる女将軍。死ぬべき時に死ぬ為に屈辱を堪えろって部下を諭してたのを思い出す。

 

 死ぬべき時、戦場で生きる軍人はそんな事を考えるのかねえ?

 

 差し入れの予定だったじゃが丸君は俺が齧りつつブラブラと街中を探索すればすれ違うのは冒険者らしい連中。

 

 ハナから食い扶持目当てに選んだか他の選択肢が無かったか、それとも諦めたのか野心やら夢やらを感じさせる瞳を持たないのも多いが、さっきのアマゾネスとかは違ったな。

 

 ありゃ冒険が楽しくって夢や未知を追い求める奴だ。うん、俺もそうだったからな。

 

 夢を諦めたとか飽きたとか、ましてや怖くて逃げ出して燻ってるのでもない。

 最初は貴族の指示で始まった冒険者としての旅路、たった四年間で何度も死ぬかと思ったし、実際ユニオンスペルで蘇っただけで死んでた事もある。

 

 悔いは無い。満足だ。俺の冒険譚はあの四年間で幕を閉じ、英雄である姉貴の帰る場所を守り続けるのが兄貴と俺の誇りだからな。

 

「ちょっとは燻ってたのかもだが……」

 

 君が冒険を望んでた、そんな風にシャリが言ってきそうな現状だが、今の所は別にな……。

 

 魔法を思いっきり使うのは楽しいが、駄目なら駄目でそれで良いし、畑がちょっと気になる。

 賢者様も手間取ってるのか連絡来ないし、暫くは此処で暮らすんだよな、シャリが姿見せねえのも妙だしよ。

 

 そもそも本当にシャリか? 他の残党は居ないと思うんだけれど……。

 

 疑問は尽きないが言える事はただ一つ。再び感じた視線の先であるバベルの頂上に視線を向け、直ぐに地下に存在するダンジョンの方を見る。

 

 もう未知の冒険にワクワクドキドキはしない。俺は冒険を十分に堪能したから、後は守りたい物を守るだけだ。

 

 はい、面倒な思考は此処で終わりだ。俺は定期的に荷物を配送しつつ薬草とかを集めて治療院を時々手伝って、体が鈍らないようにダンジョンで暴れる。

 

 でも今日は休日だし、畑仕事して適当に食べ歩きしたら昼寝でもするか。

 

「風呂も良いな。今日の飯は昼晩共に店で頼んでも良いし……」

 

 普段なら俺が作るんだよ。でも休日は別に良いじゃねえか。偶に気まぐれで癒した連中の中にはウチでポーションとか仕入れる愛想の良い連中だって居るし、ボールスの耳にもシャリとかに繋がる話は入って来ない。

 

 気になるのはサルワって国が戦争を仕掛けてるって事だけれども……。

 

 

「……今日は別に良いや。パッと行ってサッと調べてくりゃ良いし。今日は思い切って娼館で春姫と話でも……」

 

 忙しくも充実した日々だが、休日だって充実したい。美味い物でも食ってダラダラして、どうせなら普段は自重している奥の手をダンジョン奥で……いやいや、今日は休もう。

 

「どうも頭の方が昔に戻りつつあるな、おい」

 

 物騒な方の思考は即座に頭から追い払い、頭に浮かべるのは充実した休日の過ごし方。

 文字も大体覚えたし、寝っ転がって本を読むのも良いだろう。

 

 少なくともダンジョンに行く必要は……。

 

 

 

「『運び屋』だな? 一つ頼みがある。俺とダンジョンまで来い」

 

 行かないって決めた途端にこれだよ、畜生が。

 

 俺の目の前には堅物そうな顔の大男、それが目の前に現れて急に頼み事をして来たが、確かフレイヤの部屋に居た奴だよな? 後ろの方にチラッと見えた。

 

 それでダンジョンに一緒に来てくれって、面倒だな。

 

 俺が一瞬で行ける十八階以降だが、第一級冒険者でも片道数時間かかるとか。

 実力に見合っただけの敵がいる場所まで行って戦って帰ってくるのに必要な物資と時間を考えたら片道だけでも送ってくれって頼む連中は結構いる。

 

 大抵はボールスだのに頼んでリヴィラの街の利用制限をチラつかせればどうとでもなるんだが……。やめ

 

「今日は休日だし、そもそも一回受けたら俺も私もってなるから断ってるんだ。アミッドの場合は利害が一致しただけだし」

 

 採取素材が出やすいポイントを教えてもらっているし、金なら稼げば良い。

 だからぶっちゃけ……いや、待てよ。確かフレイヤ・ファミリアって大手だったよな?

 

 成る程、猪の獣人でフレイヤの眷属なら既に耳に入れている。

 

「ああ、アンタが都市では一番強いっていう冒険者か」

 

 ……見た感じ、ダナンには少し届かない程度か? いや、それでも凄いんだがよ。

 

 邪竜と融合したドワーフにして闇の神器『憤怒の鎚』の管理者である円卓の騎士の姿を思い出し、既に完治して後遺症なんて残ってない筈の右腕に痛みを覚えた。

 

 まさかバリア張ってる上から腕の骨を砕かれるとか思わなかった。咄嗟に頭を庇って差し込んだけど、遅れてたら絶対かち割られてたよな。

 

 

「オッタルだったか? 悪いな、こっちに連れて来られたばかりでよ。……それで頼みでダンジョンにってのは無駄な道のりを短縮したいって所か?」

 

「ああ、そんな所だ。忙しい身で滅多に潜れん。……それにお前の魔法にフレイヤ様が興味を持ち、体験した話を聞きたいと仰った」

 

 どーすっかね。他の奴は断っているのに、此奴だけ受けたら不公平だわ。

 貴族だろうが貧民街の子供だろうが依頼は依頼ってのが俺の故郷の冒険者だったけれど……。

 

 だが、メリットはある。担当アドバイザーに誤魔化しが効く事だ。それと竜王教徒のクソエルフの同類に武人を混ぜたっぽいんだよな、このオッさん。

 

 今の所、俺のテレポートの効果で他人に知らせているのは……。

 

 ① 一度行った場所か目視な範囲のみ。

 

 ② 最大移動距離は俺が一日掛かる距離。大人数の移動や連続使用は疲労が凄くて大変。

 

 ③ 移動先の様子は何となく把握可能

 

 あくまでアドバイザーのローズさんに深くまで潜る理由付けとして話しているだけで、ダンジョンから脱出する魔法の方はテレポートの一部だって事にしちゃいるが……。

 

「帰還を考えても滝壺辺りの場所までなら一人程度同行者が居ても行けるぞ。次の入り口まで行ったら先に進む余裕は無いんだが」

 

 肩を竦め、下級冒険者は辛いと冗談っぽく言ってみるが反応は無しだ。面白くねぇの。

 

「階層主に出会わなくて良かったな。下級冒険者が襲われれば魔法で逃げる暇もあるまい」

 

「運が良いのさ。それに安全確認はしてるからな」

 

 実際は一回双頭の竜とは戦ったし、火山地帯みたいな所までなら魔法で強化してのゴリ押しで行けるんだけれどな。

 

 うん、ローズさんにバレたら怒られる。リヴィラの街の買取り価格って大手が相手でも三割にも満たないし。

 

 ダンジョンは円錐状に広くなって行くし、目視範囲での繰り返しで先に進んでるって誤魔化しもそろそろ限界に近い。

 

 

「頼んでおいてなんだが、本当に良いのか?」

 

「俺も少し先まで行ってみたくてな。行動に必要な物資とモンスターの相手をお願い出来るなら構わない。他の冒険者が支払えない報酬有りなら黙らせられるしな」

 

 今日は休日だし、散歩代わりにするからドロップアイテムや魔石は要らないと告げると意外そうな顔をされる。

 

「意外だな。リヴィラの街の連中と随分と手を組んでいる以上は……」

 

「……金に汚いとか思ってたか? ダンジョンに行くって騙して女子トイレか高度一万以上に放置してやろうか?」

て女子トイレか高度一万以上に放置してやろうか?」

 

「……悪い」

 

 って言うか頼み事する相手に何言ってるんだ、オッさん。脳筋か? 実は脳筋なんだろう? 姉貴の同類だな?

 

 

 

まあ、女子トイレは入った事が無いから個室に移動して騙すんだけれどな。

 

 

「因みにアンタ以外の団員に頼まれても面倒だし、黙らせてもらえるか?」

 

「善処はする」

 

 成る程、団長として尊敬されてないんだな、この脳筋。姉貴とは別物って事ね。

 

 

 

「人望ねぇのな、オッさん」

 

「……否定はしない」

 

 そっか、自覚あるのか。……じゃが丸君食うか?

 

 

 

 

 




ベル君出すって言ったな 無理だった

因みに腕を折られて吹っ飛ばされながらもホーリーをぶち込みました

移動式階層主? ……うん、それについては次回少し
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