オラリオ一の苦労人を甘やかしたい。   作:眼鏡大好き

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5話:デート①

アスフィの手を引いて、本拠地を出る。

忙しない日々を送る彼女を癒やすには、まずはのんびりお散歩でしょ!

 

「おー、いい天気だ! やったね、散歩日和だよ!」

「二日酔いにはちょっと眩しいですが……休みだと思うと清々しい気がしてきました」

 

顔を見合わせて笑う。

なんてことない会話なのに、なんでこんなに楽しいんだろう。

アスフィと話す時はいつも心地いいけれど、今日は格別に感じる。

……これからもずっと、そうだといいな。

 

「どこへ向かうんですか?」

「さぁ?」

「無計画ですか!?」

「計画的な散歩なんてないよ? だらだら頭空っぽにして歩くの!」

「……マジですか?」

「大マジ! アスフィはもっと適当にならないと!」

「そういうものでしょうか……?」

 

何時でもきっちりかっちり、目的を持って動くのは、アスフィの魅力の一つだ。彼女の行動には全て理由があるし、彼女やその周りの人達の利益を見据えている。より良い未来を目指している。

それは本当に素敵なことだけど、そればかりではアスフィ自身の息が詰まってしまう。ヘルメス様みたいになれとは絶対に言いたくないけど、たまには休息も取って欲しい。

 

「ぼーっとしながら歩くと、いいアイデアが思い浮かぶの。部屋で寝る前とかに、新しい魔道具を思いつたりすること、アスフィもない?」

「ああ、確かに……」

「だからハイ、りらーっくす」

「言いたいことはわかりましたけど……リラックスは無理かもしれませんね、これは」

 

少し赤い顔でアスフィは呟く。

繋いだ手がちょっと熱いし、まだあんまり体調がよくないのかもしれない。

 

「大丈夫? ちょっと失礼……」

 

少し背伸びして、アスフィのおでこに手を当ててみる。

うーん? あんまりわかんないもんだな、こういうの……。

 

「!? そういうとこですよ!!」

「わっ、ごめん」

 

急に触るとびっくりしちゃうか。そうかも。

あ、ちょっとおでこが見えるアスフィも可愛いなぁ。

 

「全く……行きますよっ」

「あぁちょ、ひっぱらないでー!」

 

肩を怒らせてボクを引っ張っていくアスフィだけど、少ししたら吹き出して。ボクも思わず、笑ってしまうのだった。

 

 

☆☆☆

 

 

「あ、この公園でご飯食べようよ」

「いいですね、そうしましょうか」

 

ベンチに腰掛け、弁当箱とスープジャーを取り出す。

こうしてみると、ちょっと多いな。張り切りすぎちゃったかも。

 

「好きなだけ食べていいからね。もちろん、食欲なかったら残してもいいから」

「ありがとうございます。いただきます」

 

アスフィは渡したタオルで手を拭くと、すぐさま食べ始める。

おお、いい食べっぷりだ。

 

「嗚呼……私はこのために生きていたんですね……」

「毎度のことながら、大げさだなぁ」

「大げさじゃないんですよ、本当に。シトリーの料理は、食事って安らぐものだと思い出させてくれるんですから」

「……ありがと。なんかそれ、味を褒められるより嬉しいかも」

だってそれは、アスフィがボクの料理に、味の良し悪し以上の価値を感じてくれているってことだから。

 

「もちろん味も最高ですよ」

「ふふん。アスフィの好みはわかってるからねぇ」

「完全に胃袋を掴まれてしまいましたね。毎朝私にスープを作って欲しいくらいです」

「っ、それ意味知ってて言ってるの!?」

「意味って、どういうことですか?」

「えっと、知らないなら大丈夫、うん……」

 

び、びっくりした……。

極東の言葉で、毎朝ミソスープを作ってほしいというのは、すなわちプロポーズだ。

ものすごーく真剣に言われたから、ガチなのかと思っちゃった。

知らないのか、そっか……。

 

ちょっとだけ、残念かも。

 

 

☆☆☆

 

 

結局アスフィは、用意していたサンドイッチを平らげてくれた。こんなにも食べてくれると、本当に嬉しいな。

 

「ふぁ……。仕事がないと、こんなにも時間はゆっくりすぎていくんですね」

「そうだよ。アスフィはもっとこういう時間を過ごさないとね~」

 

あくびをもらすアスフィを見て、衝動のままに頭を撫でる。

ちょっとだけびくりとしてから、受け入れてくれる。

 

「ご飯食べたばっかりだけど、ここでちょっとだけ寝ちゃう?」

「いえ……シトリーに悪いですし」

「ええ~。膝枕させてよ~!」

「……誰もいませんけど、公園ですよここ?」

「嫌?」

「嫌じゃないです」

 

即答じゃん。

膝をぽんぽん、ってすると、アスフィはおずおずと頭を乗せる。この、ちょっと遠慮がちなところがアスフィらしくて、ボクは好きだ。

 

「ゆっくり休んでいいからね。ボクのことはお気になさらず」

「はい。ちょっとだけ……」

 

アスフィは言うが早いか、すぐに寝息を立てる。眼鏡は邪魔だろうし、預かっておこう。

まだ早朝と言っていい時間なのに、本来ならもう仕事。そんな毎日過ごしていたら、疲れも溜まるに決まってる。

少しでも彼女を労りたくて、優しく彼女の頭を撫でる。ふわふわしていて、こっちも気持ちがいい。あぁ、寝顔が綺麗だなぁ。

 

さて、アスフィが寝てる間に、この後のことを考えないと。休日を確保することはできたけど、プランは正直詰めきれてないんだよね。ヘルメス様を説得するための小説を書いて、朝ご飯と夜ご飯の仕込みでギリギリだったから。

 

こういう時、引きこもりは困る。

友達と遊ぶ時、普通は何をするのか、わからない。

ダンジョンは論外。

女の子らしくお買い物? ……服とか見るのかな。でも、2人共あんまり興味ないんだよなぁ。

あぁ、魔道具のお店や工房に行くのはいいかもしれない。多分ずっと、趣味の時間は取れてないはずだから。

 

でも、あちこち連れ回すのも気が引ける。

アスフィにはしっかり休んで欲しいし……少し魔道具のお店を見たら、ボクの部屋でマッサージかなぁ。

まぁでも、全てはアスフィの気分次第だ。今日は彼女が最優先だから。

 

アスフィはしばらく起きないと思うけど、それはそれで全然大丈夫だ。彼女が穏やかな寝顔を見るだけで、ボクは嬉しいから。

 

「ゆっくり休んでね、アスフィ。……それと、ありがとう。昨日の言葉、嬉しかったよ」

 

ほんとは面と向かって言うべき言葉だけど、まだ照れくさい。だから、ちょっとずるいけど今言わせてもらおう。

口に出すと、なんだか胸が温かくなった。浮かれた気持ちのまま、鼻歌を口ずさみながら、アスフィの寝顔を眺めるのだった。

 

 

☆☆☆

 

 

アスフィが目を覚ましたのは、それから1時間くらい経ってからだった。

 

「ぁ……おはよう、ございます」

「おはよう。まだ眠いなら、寝てていいよ?」

 

微睡み混じりでふにゃふにゃのアスフィにそう言うと、また眠る。

ふふふ、二度寝の幸せをとくと味わうがいい……!!

 

とか何とか言ってたら、今度はしっかり目が覚めたみたいだった。

 

「……二度寝というのは、ダメになりそうですね」

「ダメになって欲しくて言ったからねぇ。今日はどうしようか? どこか行きたいところはある? 魔道具のお店とか、一緒に行くよ」

「……そうですね。でも、できれば2人きりの場所がいいんですが」

「そうだね。ボクもアスフィにしてあげたいことがあるし。じゃあボクの部屋にする?」

「いえ、本拠地だと仕事に巻き込まれそうですし……どこか、宿に入りませんか?」

「え?」

 

……え゛????

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

【オマケ】

 

~近くにいた、とある百合好きの神様たちの会話~

 

☆☆本拠地の近くにて☆☆

 

「なにあれてぇてぇ……」

「手、手繋いでた!? 付き合ってんの? 付き合ってんの????」

「いやあれは距離感のバグった友人関係だな。ああいうのが俺には一番効く……」

「友達なのに、ほんのり胸の高鳴りを感じちゃうということか……」

「【万能者】の方が嬉しそうなのがたまらんな」

 

☆☆☆

 

「おでこさわったぞ!!」

「首を傾げているが、きっと繋いだ手から熱がありそうと感じたものの、真っ赤な【万能者】を見て自分も体温上がっちゃってよくわからないというパターンではないか!?」

「恐ろしく早い考察。俺でなきゃ聞き逃しちゃうね」

 

 

☆☆公園にて☆☆

 

「め、めまぐるしい攻防だ……!!」

「受け攻めが入れ替わり続けてやがる……っ!!」

「膝枕ァーーーーー!!!(断末魔)」

 

「ヘルメスの野郎、あれを毎日見てるのかよ、許せねぇ……!!!」

 




あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。

お気に入り・感想・ここすき・評価嬉しいです!
いつもありがとうございます!



原作開始直後じゃなかったら、温泉行くのもアリだったな……。
いずれ書きたい温泉回。
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