オラリオ一の苦労人を甘やかしたい。   作:眼鏡大好き

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6話:デート②

「どこか、宿に入りませんか?」

「……え?」

 

予想外すぎるアスフィの提案に、フリーズしてしまう。

なんかこう、お互いの部屋で過ごすことはよくあるのに、宿で2人きりだと、何かが違う気がしてドキリとしてしまう。ボクが意識しすぎだろうか。

 

でもなぁ、確かに本拠地だとルルネやファルガーあたりが乱入してきそう。彼らの困った顔を見たら、きっとアスフィも手助けしてしまう。それは絶対にダメだ。今日だけはアスフィに仕事のことを思い出させたくない。ほとぼりが冷めた頃に戻って、夜ご飯を作るくらいが丁度いい。

 

……うん。ボクが恥ずかしいくらい何だって言うんだ。アスフィが落ち着けるなら、それが一番だ。

 

「うん、わかった。この辺で空いてるところ、探そうか」

「……!はい」

 

ボクの返事を聞いたアスフィは、本当に嬉しそうに笑う。この笑顔が見れるなら、まぁなんでもおっけーかなって思った。

 

 

☆☆☆

 

 

少し怪訝そうな受付のお姉さんに案内され、宿の部屋に入る。飾り気はないけどそれなりに広い部屋だ。そして、大きめなベッドが一つ。泊まるわけじゃないのに、何故か少し緊張してしまう。

 

「やっと、人目がないところですね」

「ふふ、アスフィを存分に甘やかせるね?」

「……ぅ、はい」

 

誰にも邪魔されない空間。

顔を真っ赤にするアスフィ。

得も言われぬゾクゾクが、背中を駆け抜ける。

 

「どうしたい? ボクは今日一日、アスフィのものだよ?」

「え、あ……」

「急には思いつかないかな。ボクはマッサージしてあげようかなって思ってたんだけど」

「マッサージ!!??」

 

うわ、すごい声。

 

「まぁ、そんなに期待しないでよ。お母さんと友達にやってあげてたくらいで、素人に毛の生えた程度だからさ」

「じゃ、じゃあお願いします……」

「うん、任されました。まずは肩から失礼しますよっと…………って、かっっっっった!!!!!!」

 

なにこれ、岩??

Lv.4の耐久ステイタスは伊達じゃないかもしれない。

……と現実逃避しちゃうくらい深刻な凝りだ。これは腕が鳴るなぁ。

 

「恥ずかしながら、体はボロボロかもしれませんね……回復役(ポーション)だけでは限界が……」

「もー……。もっと早く言ってよね」

「心配かけるだけですし……」

「心配かけていいの! ていうか、もうずっと心配してるし!!」

「う、すみません……」

 

「まったく。ボクってそんなに頼りないかなぁ。……ふふ、その分今日は極楽につれてってやるんだから! うりゃー!!」

「ぁっ、ちょ、そこは……っ!!」

 

くすぐったそうに身を捩るアスフィに、なんだか気分が高揚する。ボクは今、彼女を好きにできてしまう。そう思うと、ちょっと悪戯心が出てきてしまう。

 

「ひゃぁぁああ!? 何するんですかぁ!?」

 

ちょっと首筋を撫でただけでこの反応。かわいすぎでは??

無視して肩を揉みながら……。

 

「ふぅー…………」

「!!!!! ちょっ、シトリー……!!」

 

耳に息を吹きかけたら、ぷるぷると震えてしまう。

なんか、これ以上やるといけない気がする……。

 

「もぅ、終わりですか……?」

「……お、終わり。肩揉みに戻るよ~」

 

耳を真っ赤にしながら、たまに息を漏らすアスフィにどぎまぎしながら、肩を解していく。うん、だいぶよくなってきた。

 

「次は頭のマッサージ~。……アスフィの髪、柔らかいねぇ」

「あ、ありがとうございます……」

「でも、ちょっとボサボサになっちゃってるね。後で髪のケアもしよっか。ボクのヘアオイル持ってきてるからさ、おんなじ匂いになれるよ~。お揃いだぁ」

「はぃ……」

 

せっかくの綺麗な髪が、忙しさのせいで傷み始めている。アスフィが頑張っている証拠ではあるんだけど、やっぱりこうして体が悲鳴を上げてるのを見ると、悲しくなってしまう。

 

頭が終わったら、背中と腰。おてて。足。

全身かっちかちのアスフィをひたすらに揉みほぐしていった。どんどん口数が少なくなってるあたり、だいぶ気持ちよさを味わえたみたいだった。

 

「天国でした……」

「それはよかった。じゃ、次はアスフィのやりたいことを聞かせて?」

「で、では……抱きしめて、もらえますか」

「うん。おいで」

 

アスフィは遠慮がちに、優しく、でも力強く抱きついてくる。温かい。

少しはマッサージの効果もあるのか、脱力して寄りかかってくれてる感じがする。なんだか嬉しい。

 

「あの。愚痴を聞いてもらえますか」

「もちろん。聞かせて」

「最近また、仕事が増えてる気がするんです……」

「えぇ……今までよりも?」

 

聞けば、仕事の量もさることながら、要求もどんどん高くなってるし、トラブルも頻発しているんだとか。ちなみに原因の9割はヘルメス様だ。今度ボクも殴っておこう。

 

「私だって人間なんですから……できるからと言って、やりたいわけじゃないんですよぉ……」

「そうだよね。つらいよね」

「でも他の人にやらせるのも心苦しいじゃないですか。じゃあ私がやるしかないんですよね……」

「そんなことないよ。周りを頼っていいんだよ」

 

【万能者】(ペルセウス)という二つ名は呪いだと、ボクは思う。

何でも出来るというイメージが先行して、面倒事を押し付けられてしまうから。事実、アスフィはそれを抱え込むし、文句を言いつつも全てこなしてしまうから、始末に負えない。

そして、そんなアスフィの力になれない自分が恥ずかしい。役に立たずなせいで、ボクを頼ってと言えない自分が。

 

「仕事をするのは嫌いじゃないんです。でも……少し、私にも気を配って欲しいだけなんです……だから、シトリーには本当に、救われているんです」

「え」

「貴女だけなんです。私を見てくれたのは。だから、だから……ありがとう」

 

ぽろり、と。涙を流してしまう。

何も出来ていないと思っていたけど、違った。ちゃんと、アスフィのことを助けられていた。そのことに、ボクの方が救われてしまった。

 

「うん……。うん、ありがとう」

「なんでシトリーが泣いてるんですかぁ……」

「だっで……だっでぇ……」

 

釣られてしまったのか、アスフィも涙声だ。

そのままふたりで、わんわん泣いてしまう。

でも次第にこの状況がおかしくなって、ボクもアスフィも泣き笑いに変わっていた。

 

 

☆☆☆

 

 

「すっきりした?」

「ええ。……シトリーこそ、大丈夫ですか?」

「も、もちろん……!」

 

清々しい顔を見せるアスフィとは対照的に、ボクは何か恥ずかしかった。慰めるつもりが、情けないところを見せてしまった気がして。

 

「それにしても、シトリーがそんなことを気にしてたなんて。バカですね」

「ひどくない!?」

「だって、私はもうシトリーなしじゃ生きていけませんよ?」

「お、大げさ……」

「そんなことないですよ。だから……」

「?」

「私がどうしてもしんどくなったら、一緒に逃げてくれませんか?」

 

なんだ、そんなことか。

 

「ボクでよければ、死ぬまで一緒にいてあげる」

 

 

 

―――――――――――――

 

 

 

一方、その頃のヘルメス。都市内のどこかにて。

 

「うーん、さっすがシトリー。文句ない出来だ。いいもんだねぇ、自分の理想だけを味わえるエンタメってのも。本格的にサービス開始する前に、テストがてら、もう少し続きを書いてもらうとするか~!」

 

「あら、ヘルメス。面白そうなこと言ってるじゃない」

「……げ、フレイヤ様!?」

「失礼しちゃうわね、その反応。それで?手に持ってる紙は何かしら?」

「あー、これはその……企業秘密っていうかぁ……」

「理想を味わえる、って口走ってたわね。聞かせてちょうだい」

 

「えーと、それはちょっと……。いや、待てよ? ……!! おーけー、商談と行きませんか?」

「商談?」

「実は今、ウチの小説家が新しいサービスを画策してましてね?……かくかくしかじかで……」

「ふぅん。面白そうじゃない。乗ったわ」

「じゃあお好みのシチュエーションを、後日お伝えしてもらいましょうか」

「いいえ、その必要はないわ。その子をウチに呼んでちょうだい。直接伝えるわ」

「……へ? いやいや、そいつぁちょっと困……」

「嫌ね。乙女の理想を連絡役に聞かれるかもしれないなんて、恥ずかしいじゃない。それに色々と注文したいの。だから、少しの間貸してちょうだい?」

「りょ、了解しました……(やっべぇ!アスフィのメンタルがぁぁ!!!)」

 




いつもありがとうございます。
お気に入り・感想・評価・ここすきのおかげで頑張れます。

フレイヤ・ファミリアの苦労人もアップを始めたかもしれません。
ともあれ、何が何でも毎回アスフィとイチャつかせる所存です。
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