他の作品では妖怪が人里に入ることすら禁止されてる所があったりもしますが、うちはそこら辺は割りかし緩いです
でもなんかやらかしたら程度によっては博麗の巫女がぶっ飛んでくるので気をつけましょうね、という感じの認識です
『移ろう夕闇が
奈落のような色彩を
呑むように隠してしまった』
「いらっしゃい……おや、由良木か」
「こんにちは、霖之助さん」
カランカラン、と無事だった香霖堂の扉を開けて、奥のカウンターに座っていた男性に挨拶をする。
人里から西に進むとある魔法の森、その手前に店を構える香霖堂は、ちょっとした雑貨屋だ。
魔法の森を抜けた先の再思の道、その果ては無縁塚という場所へ繋がっており、そこには外から忘れられたものが多く入ってくる。
それはモノ然り、人然り。
店主である森近霖之助は度々そこへ訪れ、自身の持つ【物の名前と用途が分かる程度の能力】を利用して売れそうな物を店へと入荷している。
「増えましたね、前より」
「あぁ、ちょっと前に見たら色々見つけてね。面白そうなものが多くあったんだ」
読んでいた本に栞を挟んだ彼は、近くの籠から丸いものを取り出す。
それは私にとって、懐かしさを感じるものだった。
「うわ、たま◯っちですか。懐かしいですねぇ」
「君なら知ってると思ったよ。使えるかい?」
「はい」
近くにあった椅子に二人で座り、電源を付ける。
偶然だが、電池がまだ残っていたみたいだ。
「後でボタン型の電池を見つけないとですね」
「充電、というものではないんだな」
「これは古い型なので電池式なんですよね……確か後期型のものはケーブルを繋いで充電出来た筈です」
ピピーピロリンという軽快な音と共に、たま◯っちが起動したので、軽くミニゲームでもしてみることに。
「子供に混じってこれで遊んでたのが懐かしいです」
「失礼かもだけど、由良木は違和感がないからね」
「ですね、髪色も奇抜じゃないし…余り不審な目で見られなかったので、そこは少し安心です」
会話しながらも指の動きは止まらず、落ちてくる果物を籠にどんどん詰めていく。
そうしてピロピロと音が鳴り……スコアが430になったところで、操作を間違えてしまいゲームオーバーとなってしまう。
「ふむ……私も腕が落ちたかもしれません」
「充分凄くないか?」
「この二倍の得点を叩き出した子も居ましたよ」
「二倍!?この時点でかなり速かったのに……!?」
男女問わず楽しんでいたたま◯っちの話で多少盛り上がっていると、軽快な足音。
「おーっす!香霖居るかー?」
足音を弱める事なく扉を開いた白黒の魔女っ子。
流れるような金髪の彼女は、霧雨魔理沙。
「はいはい、いらっしゃい魔理沙」
片手に箒を持ってカウンターへ軽快に足を進めていく彼女は、少しして私に気づいた。
「おっ、由良木か。お前も借りに来たのか?」
「魔理沙、君の「借りる」は盗む事だろうに……」
「だから違うって、死ぬまで借りてるだけだぜ」
帽子を脱いでドヤ顔でそんな事を言う魔理沙に、霖之助が呆れたように溜息を溢す。
「今日は新しいアルバムを埋めようと思ってぶらついてただけですね」
「へー、もう埋まったのか。確か今は……」
「134冊目ですね」
「そんなにか!?」
隣の椅子に座って流れるように饅頭を食べ始めた魔理沙が驚く。
そこへ裏から戻ってきた霖之助が、魔理沙の前にお茶を置いた。
「お、サンキュー香霖」
「良いさ、いつもの事だしね……そうだ、ミニ八卦炉のメンテナンス終わったよ」
「マジか!いつも助かるぜ!」
次いで机に置いたミニ八卦炉を掴んだ魔理沙が、少しの間じっと見つめて満足そうに頷いた。
その様子を横目に、もう一度たま◯っちを起動する。
「?それって外のやつか?」
「そうですね。私も外に居た時に遊んでました」
「ほー、卵みたいだな」
興味を持った魔理沙に軽く説明をして、ミニゲームをやらせてみる。
が、まぁ案の定と言うべきか、私よりもかなり低いスコアで早々にゲームオーバーとなってしまっていた。
「あぁ……終わっちゃったぜ、難しすぎないか?」
「さっき由良木がやった時は400は超えてたね」
「なんなら外の方には私の二倍のスコアが居ましたし」
本を読み進めていた霖之助が呟くのに合わせて、先程と同じ事を言う。
「400…二倍!?ヤバすぎだろ!?ちょ、香霖もやってみろよ」
椅子から飛び降りてカウンターにたま◯っちを置く魔理沙。
「えぇ…僕がかい?多分そんなに」
「いーからいーから!ほら打倒由良木だ!」
ふむ、霖之助さんのセンスは正直自分も気にはなる。
「頑張ってください、霖之助さん」
「……まぁ良いよ、やれる所までやってみようじゃないか」
私達の言葉に腹を括った霖之助さんが、眼鏡をしっかりと掛け直した。
「っ……く……こっちか!」
「おっ、おお!凄いぞ香霖!」
静かに見ると、スコアが私の430に追いついた所だった。
初めはおっかなびっくりと言った感じだったが、少しずつスピードが上がっていけばそれにも慣れていく。
私のことなど目もくれず、目の前で落下していく果物を左右のボタンを駆使して採っている。
二人で隣、肩を寄せ合い小さな画面を覗き込む姿に、私の右手は無意識にシャッターを切っていた。
———額に汗を滲ませながらも視線だけはたま◯っちから離さない霖之助と、その隣で両手を握りしめながら応援してる魔理沙。
ふふ、と笑みを溢して椅子に座り直せば、ふと誰かの気配。
「……朱鷺子さん、こんにちは」
「……ん、こんにちわ」
白と青の髪で、橙色よ瞳をした静かな妖怪。
物静かな彼女がいつの間にか隣の席で静かに本を読んでいた。
よくあることなので大して驚く事もなく、片方は読書を、もう片方は窓の外を見やる。
小窓から覗く空や店内の様子を何枚か写真に収めてると、霖之助達の声が響く。
「凄いぜ香霖!スコア760だってよ!」
「ふはー……凄く集中力を使うね、これ……」
どうやら私のスコアを抜き、外で会った猛者のスコアにまで追い付きそうになっていたらしい。
「お疲れ様です、かなり白熱してましたね」
「いやぁ、疲れたけど楽しかったよ。こんなに意識して集中したのはいつぶりだろうか……っと、朱鷺子さんも来てたのか、いらっしゃい」
「こんにちわ」
小さくお辞儀した朱鷺子さんがまた読書に戻り、魔理沙もお茶を飲んで一息付く。
「いやー、こんなに盛り上がるとは思わなかったぜ」
「外でも同じ事が起きてたのを思い出しますね……10年位は前だったかもしれません」
あの時は一応私が年上という設定だった為、暗くなりかけた所を私が先頭になって子供達を家に送り届けていたのだったな。
「皆でお菓子を持ち寄って、一位になった人が1番多く貰えたんですよ」
「そっちもそっちで楽しそうだな」
「まぁ、10年も経ってしまいましたし…今はもっと高性能なものがありますし、そちらばかりですね」
「最近幻想入りするものも、電気を使うものが増えてきたし……」
「そう、なんだ」
と、不意に朱鷺子さんが呟く。
「電気をエネルギーとして動くものが急速に増え、どんどんそれ以前のものが忘れ去られてゆきますから。この幻想郷にスマートフォンが落ちてくるのも時間の問題かもしれませんねぇ」
「あー、うっすい板だっけ?」
「それです。私も外では持ってましたよ?今は紫さん達に預けてますけど」
「……大丈夫なのか?それは」
霖之助さんが苦笑している。
見れば魔理沙も苦そうな顔だ。
「大丈夫ですよ?紫さん……というよりも、基本的には藍さんが私の私物を管理して下さってるので」
「……藍なら大丈夫か」
「藍さんなら、まぁ……」
「紫さんってどれだけ信用ないんですか……」
二人の顔が少しだけ元に戻る。
紫さんと藍さんでの差が大き過ぎるんだけども。
「「
……おいたわしや、ゆか上。
そんな微妙な空気を最後に、私達は解散することになった。
帰り道、あと少しで人里に着くであろう頃に、私は妖気を感じ取る。
木々の影からゆらりと漂う底のない深さ、そして同じように漂う血の匂い。
……恐らく、普通の人ならこの時点で恐怖に駆られ逃げてしまうだろう。
だけど、この妖気を
「———あなたは食べてもいい人類?」
鈴が転がるような、幼さの残る声。
「…………———まぁ、指くらいなら良いですよ」
その返答に妖気が少し揺らいで、森の向こうから人影が現れた。
金髪に赤い御札をリボンにした、その背に先の見えぬ暗闇を纏う見た目幼女の人外。
「あは、やっぱゆらぎは優しいのだー」
宵闇の妖怪、ルーミアだった。
『見ずとも解る瞳の色は
凪いだ風に溺れた
灰色に褪せる心のよう』
その容姿と性格から子供達を纏めたりする事が多く、当時はよく公園でたま◯っちをしたり帰り道に付き添ったり喧嘩の仲裁をしたりと色々やっていた。
それも数日おきなのだが、公園に居ない日は釣り上げる神としての活動をやったりしていた。
大人な対応が子供達にかなり受け、初恋を奪ったりすることもしばしば。
他人からの感情に気付かない程に鈍感ではない為、男女問わずしっかりとお断りしている。
じゃあもうちょっと考えて対応しろ、となるがこればかりは彼女の性格故に直す事ができない。
初恋キラー、とはよく言われていた。
なお本人は結婚等は一切考えておらず、その理由も寿命の差とか種族の差とかではなくただただ面倒なだけである。