灰かぶりの老鴉 - ARMORED CORE Ⅵ Fires of Rubicon   作:竹河参号

3 / 3
 清書するだけしてみた、そのに。


■緊急ミッション「ハンドラー・ウォルター護衛」

 最初の印象は、埋火(ウズミビ)だった。

 

 

 かつて、人類の生存圏が地球だけだったころ。本物の火を囲んで暖をとっていた時代のことだから、さらに昔々のお話だ。しんしんと雪が降り積もる冬、先人たちは身を暖める火を完全に絶やすことなく、灰の下に火種を埋めていたらしい。完全に火を消さないことで、次に点ける際にはその灰を払い、薪を継ぎ足すだけで済む。火付けの手間を減らし、薪を節約し、それでいて熱を守る。賢いというべきか、涙ぐましいというべきか。そんな古い古い習慣を――いまや老いた彼女すら碌に知らない文化を、どうして思い起こさせたのか。

 決して燃え上がらず、而して消えず、その(たましい)を保ち続ける。人によっては、冷たい鉄を印象付けるだろう。人によっては、赤熱する鋼を印象付けるだろう。そんな、複雑な色を見せつける少年だった。あるいは“使命”という名の薪を与えれば、それは強く大きく燃え上がるだろうか。囲う者たちの体と心を暖める熾火に――あるいは、家そのものを焼き尽くす大火に。

 

『一度生まれたものは、そう簡単には死なない』

 

 それは彼女自身が語った言葉なのか、それとも少年が発した言葉なのか、はたまた別の誰かの言葉が、思い出の中で勝手に紐づいてしまったのか。

 いずれにせよ、正鵠を射る言葉だ。他でもない彼女自身が、その言葉を体現する一人なのだから。

 もう一人がいるとすれば、それは――

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 ぴぃぃ、と脳裏に赤い光が走った。

 

『――レイヴン! ウォルターが未確認勢力に襲われています! 急いで救援を!』

 

 その言葉は、()()の心拍数を急上昇させる衝撃を与えた。ハンドラーが襲われている――守らなければ、という使命感を咄嗟に与えた。

 今まさに遂行中のミッションは何だったか。そんな些事は、()()の脳髄から綺麗に消し飛んだ。守らなければ。殺さなければ。ハンドラーの敵は、己の敵。

 ()()は背後へ急旋回すると、急速突進(アサルトブースト)を噴かせて急発進した。あっという間に彼方へ消えた灰色の背を見、互いに生存の喜びより困惑が勝り、あれは何だったんだと首を捻るモノたちがいたのか、どうか。

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 コルヴスのコクピット内に響いたアラートに、アイリーンは顔をしかめた。

 ウォルターの猟犬が、今まさに銃弾を浴びせているハンドラーの猟犬が戻ってくる。もう嗅ぎ付けられたのか。彼女は目の前のヘリに向けて、オープン回線を強引に繋いだ。

 

「連れないじゃないか、ウォルター。せっかくのデートだっていうのに、邪魔者を呼ぶんじゃないよ」

『悪いが、ストーカーに構う趣味はない』

 

 飄々とした軽口は、しかしすげなく躱された。きっと回線の向こう側では、むっつりとしかめ面をしていることだろう。ジョークに乗らない生真面目さは相変わらずかね、と言ってやるべきか、どうか。相手の言葉は、今まさに向かってきている灰色の機体に向けられた。

 

『……621、手間をかけてすまない。こいつのことは構わん、撃破しろ』

 

 極力眦を下げないように発せられた言葉には、彼女もいよいよ閉口せざるを得ない。事もあろうに『猟犬遣い(ハンドラー)』たる者が、その猟犬に向けて謝罪だと? つくづく、馬鹿が付くほど真面目な男だ。

 

「おまけにひどい言いようだ。猟犬の世話ばかりで、女の扱い方を教わらなかったのかい?」

『……戯れ言に構うな。始末しろ、621』

 

 心とは裏腹に、なお軽口を垂れる彼女を無視して、ウォルターは猟犬(621)へと命令を下した。つまりそれは、敵対者への死刑宣告である。

 

 

 急速突進(アサルトブースト)によるGを全身に浴びてさえ衰えず、尋常な敵対者ならば震え上がるほどに鬼気迫る形相。機体越しでさえそれを捉えた彼女は、仕方なく機体を旋回させ、目の前でどすんと着地した灰色の機体と対峙した。

 ハンドラー・ウォルターの猟犬、独立傭兵レイヴン――こいつの腕前は把握済みだ。こいつを野放しにしたまま、目的を達成することはできない。すなわち、この猟犬と殺し合いを演じるか、なりふり構わず逃げるか、その二択だ。

 

「さて、ワンちゃん。残念だが、用があるのはご主人様の方だ。邪魔をするなら死んでもらうよ。

 ……あいつが使い潰してきた猟犬たちと、同じようにね」

『猟犬……?』

 

 老獪さが育んだ軽口の端々に、冷徹な殺意を滲ませながら、コルヴスが跳び上がった。意味深な言葉に当惑するエアを置き去りに、621も応戦するようにライフルとミサイルポッドを向ける。

 ――いま、何か(おか)しなことがなかったか。

 

『構うな、621。……そいつは、アイビスの火以前から戦ってきた傭兵だ。

 この女は、アイビスの火を……その後の半世紀を生き抜いた強敵だ。油断するな』

 

 その軽口を遮るように、ウォルターが通信を挟んだ。その回線にはヘリ本体の危険を示すノイズも、ウォルター自身の負傷を伺わせるものもない。いつもとは少し異なる、決して相手を侮らない緊張感があった。

 ひとまず、彼は安泰らしい。冷静さを取り戻したエアは、まず傭兵支援機構(オールマインド)の登録データを参照し、目の前の機体に照合する情報を捜し出した。それは情報処理能力に特化した彼女にとって児戯に等しく、目当ての情報はすぐに見つかった。拾い上げた傭兵登録情報を、彼女は621に伝えるべく読み上げた。

 

『――機体情報を解析。機体名コルヴス、搭乗者はアイリーン・スピアリング。

 「灰かぶり」を名乗る上位ランカーの実力者です。機動力に翻弄されないよう注意を』

 

 

 それが、()()()()()()()()()()()()()()()とは知りもせずに。

 

 

「――……待て」

 

 マシンガンを撃っていたコルヴスの動きが、ぴたりと中空で停止した。そのままがしゃんと墜落……とはならず、コアシステムに統制された姿勢制御システム(ACS)が自動反応し、万全の姿勢で着地した。ざりっと、降り積もった雪と汚泥が巻き上がり、コルヴスの細い脚を僅かに汚す。

 コクピット内で呆然とする、アイリーンを置き去りにして。

 

「あんた、まさか……“声”かい?」

『!?』

 

 呆然と呟かれたアイリーンの言葉に、息を呑んだのはエアだった。

 一方、621はコクピット内で瞬きを重ねるだけだった。“声”。何のことか。もしかして、このエアのこと?

 

「そうなんだね? あんたには、()()()()んだね? “それ”と交信してるんだね?」

『……アイリーン……? 貴様、何を言って……』

 

 今まさに銃弾を交わしていた敵対者を前に、無防備に立ち尽くす――それは歴戦の傭兵にとって致命的な隙であり、つまりこの“灰かぶり”が決して見せるはずのない行動だった。ウォルターでさえ思わず困惑する奇行に、しかしまるで頓着しない様子のアイリーンは、かすれた声で問いを重ねた。震える声は、ウォルターではなく、“声”ではなく、621へと向けられた。

 『声が見える』という表現には、覚えがある。

 確か、大陸間輸送カーゴランチャーで()()されたとき――その空を漂うコーラルの流れに飛び込んだとき、エアが語っていた。“()()()()()()の声”と。

 

『レイヴン……彼女は、まさか……私のことを……?』

 

 かすかに声を震わせるエアは、抱くべき感情を見つけることができなかった。

 ()()()()()()()()()()()()()()。このレイヴンが、初めての例外(コンタクト)だった。それが、もうひとり――? 驚愕とも歓喜ともつかない感情に戸惑うだけのエアに、

 

 

「ああ、だめだ。だめだめだめだめだめだめ――」

 

 コクピット内で頭を抱えるアイリーンのことなど、慮る余裕はなかった。

 頭の中に埋め込んだ警報が止まらない。強化手術を受けた心筋の動悸が止まらない。ヘルメット越しに頭皮を掻く手が止まらない。

 だめだ。だめだ。だめだ。だめだ。だめだ。だめだ。だめだ。だめだ。

 

「絶対にだめだ。それだけはだめなんだよ、ワンちゃん」

 

 あってはいけない。見つかってはいけない。存在してはいけないはずの――消えたはずの、埋火(ウズミビ)

 

 

 

――凡人には理解不能な、専門用語の羅列。

――複雑なグラフの数々。急速な跳ね上がりが、唯一理解できる異常。

――それを渡す()の、深刻な表情。

 

 

――「()()が果たされたとき、我々人類は、果たしてどうなるのか……」

――「ただ死ぬだけならいい。滅びるだけならいい。それは悲惨だが、しかしいずれ到る末路だ」

 

 

――「だが、もしも、()()()()()()()()()?」

――「既存生物の何物にも該当しない――いや、()()()()()()()()()()に成り果ててしまう……そんな未来が、あるとしたら?」

 

 

 

 がしゃり、とコルヴスが再起動した。

 

「……事情が変わった。あんたには、ここで消えてもらう」

 

 その瞬間、621はふと、鼻腔に妙な違和感を覚えた。呼吸器の一部でしかないそれを、くすぐる何かが生じた。それが、すでに失われたはずの嗅覚がもたらした錯覚――“死の匂い”であると、本人だけが理解できなかった。

 それを待たず、黒鴉(コルヴス)が吶喊した。目の前の灰鴉(レイヴン)を、狩り尽くすべく。

 

 

 

『敵機の行動パターンが変化しました。レイヴン、応戦を!』

 

 エアの叫びに、621はいち早く再起動した。がりがりと装甲を削る死の礫を、瞬間加速(クイックブースト)で避ける。

 コルヴスのカメラアイが素早くそれを追い、そして急速突進(アサルトブースト)で追いすがる。これまでとは違う、敢然とした攻め手だ。

 

「まったく、あの腑抜け野郎が言う通りだったとはね……

 ――悪いね、ワンちゃん。あんたを生かしておくわけにはいかない」

『来るぞ! 油断するな、621!』

 

 ハンドラーの叫びに、しかし621は満足に応じることができなかった。

 機械仕掛けの脳裏に厭な感覚が走る。かすかな鼓動を保つだけの胸がざわめく。敵は倒す、ハンドラーは守る。それだけでいいはずだ。なのに、どうして思い通り動けない――()()()()()()()()()()()()というものを、()()は知らなかった。強化人間C4-621は、初めて『当惑』という感情を覚えていた。

 コルヴスの肩部から射出された二対のミサイルが、621の視界外を大きく逸れ、しかし急旋回して襲い掛かる。それを紙一重で掻い潜り、応報とばかりにライフルのトリガーを引いた621の弾丸は、しかし流線型の薄く脆い機影を捉えることなく、明後日の方向に飛んでいった。

 突進する黒鴉に向けて、左腕に装着したパルスブレードを振るう。しかしそれは、咄嗟に迎撃を察知したコルヴスの瞬間加速(クイックブースト)によって空振りし、翠緑の刃が虚しく空を切るだけだった。

 

「どうした、その程度かい!? 前の猟犬たちの方が、よほど強かったよ!」

『敵機は軽装甲ですが、高い機動力で翻弄してきます。落ち着いて対処を!』

『焦るな、621。隙を突いて、確実にダメージを与えていけ』

 

 しわがれた罵声を遮るように、621を見守る二人の声が、()()を現実へと引き戻す。

 とにかく、戦わなければ。この女鴉(てき)を殺さなければ、己が死ぬ。意識を切り替えようとした()()は、反射的にぶるんと頭を振った。自分でも意味が理解できない行動だった。

 ――何のことはない、いつも通りだ。敵は殺せ。とにかく、殺せ。

 火器管制(FCS)が飛翔するコルヴスを捉え、肩部のミサイルポッドから六つの爆弾が放たれた。僅かな時間差を置いて射出されるそれは、基本巡航速度の高いコルヴスをしても油断ならない弾幕を形成し、大きな回避行動を強要する。その間隙を縫うように、ライフルから鉛弾が放たれた。コルヴスのマシンガンよりも大きく重たいそれが、がりがりと装甲を削る。

 咄嗟に着地したコルヴスに向かって、ぐりんと二連装榴弾砲(グレネード)の鎌首が向けられ、即座に榴弾が放たれた。これは堪らぬと飛びずさったコルヴスは、しかし着弾の爆風に巻き込まれ、熱と衝撃で装甲を剥がされる。

 

「なるほど、猟犬も伊達じゃないってか……」

 

 ――知っていた。分かっていた。熟練のハンドラーに手綱を握られた殺戮人形と、老いさらばえた小兵。まともにやり合えば、不利なのは己の方だと。

 

「だからこそ、見逃すわけにはいかないね――たとえ、刺し違えてでも……!」

『あと一歩だ、621。油断するな』

 

 理性(あたま)で分かっていても、本能(こころ)がそれを止められない。コルヴスにできることは、ただコクピット内にいるアイリーンの激情を映し、マシンガンのトリガーを引くことだけだった。

 小粒ながら高密度の弾幕を、完全に避け切ることはできない。割り切った621が構わず放ったライフル弾が、次々にコルヴスに衝突し、その衝撃を蓄積させていく。それは、二重関節がゆえに精密な姿勢制御を要求し、衝撃抵抗に劣るKASUARの姿勢制御システム(ACS)の耐久限度をあっという間に超過し、ついにごんと重い衝撃と共に制止させた。

 好機。621は咄嗟に急速突進(アサルトブースト)で飛翔し、その勢いに乗せて右足を突き出す。があん、と重い衝撃がコルヴスの全身を透徹し、アイリーンの意識を一瞬だけ飛ばした。空転するアイリーンの視界が最後に捉えたのは――翠緑に輝くパルスブレードの刀身。

 ぶおん、ぶおんと二連撃。それはコルヴスのコアブロックを深く深く抉り、アイリーン本人にすら届いた。所詮、非常脱出用のパイロットスーツなど、鋼鉄装甲の裁断を前提としたブレードには無力だ。辛うじて彼女の肉体が両断されなかったのは、奇跡と言っていい。

 だが、それはアイリーンの命を両断するには十分だった。脊髄一歩手前まで深く斬り抉った一撃は、彼女の臓腑を焼き切り、破損したコクピット内に夥しい血を撒き散らした。びーびーとコクピット中に鳴り響くアラートを、彼女自身がどこまで認識できていたことか。

 

「……先、生……申し訳、ありま……」

 

 ――不始末の謝罪すら、満足に言い切らないとは。

 我ながら、耄碌したもんだ。

 

 

 強力な電磁パルスがコルヴスのジェネレータに引火し、内蔵燃料がぼんと爆炎を上げた。そのまま墜ちていく黒赤の鉄塊は、着地姿勢も取らずに地面へ激突し、べしゃりと泥を跳ね上げた。ばちばちと火炎と黒煙を上げる機体は、それ以上動く様子がない。

 

『……敵AC、機能停止。生体反応もありません。……撃破、完了です』

『……よくやった、621』

 

 621の脳裏に、それぞれ声が響く。それは、敵機の完全な死亡停止を宣告するものだった。

 これで、ハンドラーの脅威は去った。己の脅威は去った。それでいいはずだ。

 ――だが、この感覚は何だ。密閉されているはずのコアブロック内に、中央氷原の寒気が入り込んだような感覚がする。胸元にぽっかり穴が開いたように、冷え冷えとした感覚に襲われる。

 

『余計な手間をかけて悪かったな。今日のところは、もう休め』

 

 ハンドラーの命令が、脳裏に響く。その声に乗った微かな震えは、通信のノイズに紛れて消えた。その意味を問い質す手段は、()()にはなかった。

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

【新着メッセージ 1件】

 

 

『621、あの傭兵のことなら気にするな。一度……いや、何度味方として共闘しようが、敵対するときは敵対する。この業界ではよくある話だ』

『大方、アーキバスあたりに抱き込まれたのだろう。共通の敵を倒すために一時休戦――と見せかけて、都合の良い盤面を目論んで駒を動かす……企業共の考えそうなことだ』

『奴の言葉も、気にしなくていい。腕利きの“老鴉(コルヴス)”も、耄碌したというだけの話だろう』

『……連戦で疲れているはずだ。今日だけは、よく休め』

 

 

『……レイヴン』

『彼女は……アイリーンは、あなたと交信しているだけの――()()()()()()()私を見抜きました』

『その上で、()()()()()を標的として……“何を措いても排除すべき脅威”として、認識していました。この私ではなく、あなたの方を』

『……不可解です。彼女は、何を知っていたのでしょうか……』

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

『拝啓、“帥叔(すいしゅく)”ミドル・フラットウェル。

 

 

 あんたがこれを読んでいるということは、一人のババアがぽっくり死んだか――はたまた、このメールそのものを処分し忘れたかのどっちかだ。

 ああ、ババアの素性なら気にしなくていい。……と言っても、警戒するのがあんただろうね。その慎重さを見込んだからこそ、こうして回りくどい真似をしているんだ。

 とにかく、あんた個人の敵でも、あんたたちルビコニアンの敵でもない、とだけ言っておこう。もっとも、もうどっち側にも付けなくなっている、という前提だがね。

 ……前置きが長いのは年寄りの悪い癖だね。こうして筆を執っても、だらだらと益体もないことを書いちまうんだから。

 

 

 本題に入ろう。あんたも知っているであろう、独立傭兵レイヴン――あいつには気を付けな。

 「敵として」という意味じゃない。「味方として」という意味でもない。あいつをどう扱うかが、このルビコンの未来を握っている。それは、良い意味でも悪い意味でもだ。

 あんたたちがルビコニアンとして、あるいは解放戦線として、あいつとどう接するのかは、あんたの判断で決めていい。そこまで嘴を突っ込めるほど、このババアも元気じゃない。

 ただ、敵として潰すにせよ、味方として抱き込むにせよ……あいつの動きには、最大限の注意を払うことだ。「やりすぎ」と思うくらい、注意深く取り扱いな。切れ者の自覚があるなら尚更だ。

 世の中にはいるんだよ、そういう困った手合いが。どれだけ策を講じても、必ず斜め上の結果を叩き出す。定石なんてまるで通用しない、それこそ盤面丸ごとひっくり返しちまうような、とんでもない問題児(イレギュラー)ってヤツがね。

 

 

 ああ、あの「独立傭兵レイヴン」という名義は偽物だよ。

 本物は本物で、とんでもなく厄介な連中だが……それは脇に置いておこう。「このルビコンのどこかで、タチの悪い独立傭兵が暴れている」とだけ覚えておくといい。

 奴の正体は、旧型の強化人間……しかも“アイビスの火”以前に施術された、正真正銘の骨董品だ。おそらくは、第三世代か第四世代あたりだろう。それ以前の世代でまともに動ける奴がいるとしたら、そりゃもう化石と思っていい。

 「それくらいなら」と思っているかも知れないが、問題はもっと根が深い。それこそ、こんなメールには残せないような、深刻な厄ネタだ。

 あんた一人になら明かしてもいいが、変に話が広まっちまったら大事だしね。将来有望な若人が、あれもこれもと問題を抱えて苦悩するのは見たくない。

 

 

 ――それでも、どうしても知りたいのなら。

 あんたたちが担いでる、あの腑抜けた神輿に聞いてみるといい。“帥父(すいふ)”だっけ? 度胸だけが取り柄の若造が、随分と豪勢な肩書きを貰ったもんだよ。

 あいつがくたばる前に、事の真相を問い質してみるといい。あんたにその度胸があるならね。

 

 

 あるいは……死に損ないを叩き起こす、いい刺激になるかも知れないね?

 敬具』

 

 




 本当に死に損なったのは誰?




 お前ターミナルアーマーの話はどこ行ったねん、というツッコミはやめて。
 あれを小説的に表現するって恐ろしく難しいんだよ。無理だよシュナイダー製コアで内部システム(と中の人)まで無事な展開とか。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。