広告でよく見る『虫になれッ!』君に転生してしまった件について 作:K+#ガソ林
俺は玉木。
なんと、『ドロヘドロ』の世界に転生してしまった。
「いや、もう無理なんだけど。」
自宅っぽい場所でパジャマを着ている俺。頭の中にジクジクと痛みがある。俺が…乗り移ったらしいこの少年の記憶と、俺自身の記憶が混ざり合っている感覚だ。
「どうやら、この俺も『玉木』みたいだな…。」
玉木…というか『俺』か。
『俺』は原作『ドロヘドロ』だと、魔法使いの残忍さを示すためのチュートリアル的なキャラクターだ。
戦闘力はザコ!一般人を倒すことぐらいしかできない。
「俺は…今から魔法の練習に行く予定だったみたいだな。…。」
人差し指の指先を見る。
魔法は、ケムリ管から、ケムリを出すことで発動することができる。『俺』はケムリを出すところから躓いていて、指のケムリ管を露出する手術をしていたみたいだ。
「どうしようかな…。」
原作主人公のカイマンを放っておこうがおかまいが、原作のラスボスである『ホールくん』はどうにかして出現して、魔法使いを行動不能にして皆殺しにする雨を降らせることだろう。
正直何やっても無駄な気がしてきたな…。
「そういえば悪魔にでもなれば生き残れるっぽい。」
悪魔のなり方…。
そうそう、悪魔に師事して悪魔修行を…。
「めんどくさ…。」
とりあえず今日は寝ることにしようかな。
原作からすれば、家に閉じこもって飯食ってれば助かるのだ。
でも寝たきりになるくらいだしなぁ。
「あー。」
ホールの人間でまともに生きれなさそうな奴に恩を打って召使にすればいいんじゃねぇ?
「なら行くか。」
身支度して、ホールに行くためのドアを煙で作る。
いやー便利便利。手術してよかったわ。まじ。
───
ホールについた。つーか、扉潜るだけだからまじで一瞬。
ここからは気を張らないと。ホールにおいては、魔法使い殺しのカイマンという男が徘徊しているはずだ。あいつには魔法が効かないし、何より原作主人公。一瞬で負ける。その上、魔法使いを殺す理由もたくさんあるから出会った瞬間にアウトだ。
(絶対に気をつけないとな。)
路地を出た後、目の前にいたのは、トカゲ頭の男でした。
「カイマン!?」
あ、しまった。ついつい声を出してしまった。
「………お前、誰?」
カイマンは立ち止まり、ゆっくりとこちらを見る。間違いない。あの十字目のタトゥーはカイマンだ。
「俺はお前の知り合いだよ、カイマン!」
ここはシラを切ることにした。実際、ドロヘドロ全巻をサンデーうぇぶりで読破した俺からすれば、お前のことはだいたいわかっているのだ。
「し、知り合い!?」
「そうそう、知り合いさ!俺は玉木!よかったら、落ち着けるとこで話をしないか?」
───
俺はハングリーバグまで案内された。カイマンの女房役のニカイドウがやっている飲食店だ。ニカイドウが餃子を作っている間に、話を始めた。
「お前…玉木とか言ったよな。俺のことを本当に知っているのか?」
「ああカイマン。お前は…アイ=コールマンという男だったのさ。」
もうなんかどうでもいいので話せるだけ話してしまおう。デタラメ混じりで。
「お前は昔、魔法使いに憧れるホールの人間だったのさ。」
「しかし、リビングデッドデイでお前はかなり負傷してしまった。」
「お前はカスカベ博士に頼み込んだ。このまま死ぬのなら、魔法使いの肉体を移植して…お前の計画である、魔法使い化計画を実行してから死なせて欲しい、とな。」
「結局、お前の体は魔法使いの身体を移植して治ったが、魔法は出せなかった。そのことで自棄になったお前は、夜の暗闇に紛れ、ホールの死体遺棄所である廃物湖に飛び込んだのだ。」
「廃物湖の見回りをしていた俺はお前を救おうとした。…しかし、突然に湖面からお前がすごい勢いで飛び出したのだ。お前の頭はトカゲになっていた。そして、理性も失っていたんだ。そのあとお前は、どこかに行ってしまった…。正気のお前にまた会えるなんてな…アイ。」
デタラメ混じりだが、リアリティがあったようでカイマンはショックを受けていた。
「お、俺は…アイ=コールマンだったのか…。玉木…。」
「…アイ、俺は謝らないといけない。俺はお前がもう化け物になったと思っていた。だからあのあとお前が死んだと報告してしまったんだ、すまない。」
「…気にすることはねぇさ!こんな頭だからな。」
「ところで…近くの賭場でスッちまったからさ、しばらく泊まれる場所を紹介してくれないか?あと仕事も。」
「そういうことなら、うちに泊まってくれていいぜ。仕事は俺が紹介する!」
ここで、ニカイドウが餃子を持ってきた。だが、予想した通り怪訝な顔をしている。俺のことを詐欺師か何かと思っているのだろう。何か耳打ちしている。おそらくは…。
「カイマン。そいつ多分、碌でもないやつだぞ。話の筋もあまり通ってないし、本当はお前にたかりに来た奴かも。少しは考えた方がいいんじゃないか?」
「いーんだよ。そん時はそん時だ。」
みたいに会話しているのだろうな。
「…お前、玉木だったな。カイマンに感謝しろよ。いや、これからはアイか?」
「カイマンでいいぜ。今から覚え直すのも面倒だろ。それに、記憶は戻ってないしな。」
「ありがとう、カイマン。俺もこれから、頑張って行くから…。」
そうして俺は、カイマンの家の居候になったのであった。