広告でよく見る『虫になれッ!』君に転生してしまった件について 作:K+#ガソ林
ニカイドウとリスに突貫した後、奴らは巧妙にも受け身を取り、戦闘開始。その最中に、屋敷の外で待機していたトカゲ野郎と合流されてしまった。俺は必死に戦い、しかし敗北し、体が爆散した───そう説明した。カイマンが外に潜んでいたと説明すれば、俺のこの現状にも理由がつく。
「…あのトカゲ男、仮にも我がファミリーの一員を殺害したその狼藉、万死に値する…。心!能井!ホールに行き、あのトカゲ男を殺せ!」
「でも、煙さん。あのトカゲ野郎は頭をトバしても生きてた。…死後に発動する魔法をもっているのかもしれない。」
煙の指令に対し、心が突っ込んだ。実際、カイマンの内部には複数の首がある。切られると生え変わる特殊なものだ。...回数制限があるはずだが、よく覚えていない。新舘は真面目にカイマンを殺すことを考えているようだが、俺の目的は違った。
カース。
栗鼠の持つ魔法だ。殺されたら発動し、自分の仇の全てを奪うために活動する最強の魔法。発動すれば、あらゆる攻撃は跳ね返り、殺意には殺意で返され、肉体全てを奪われる。
ドロヘドロではカースと栗鼠が合体する展開があり、その際、カースはカイマンから離れている。「お前は、俺を殺した奴ではない…。」そのようなことを言っていた。つまり、今恵比寿をぶっ殺してカイマンと合流させれば、カースと栗鼠が合体して最強の魔法使いが生まれる可能性がある。
「煙さん。俺の意見を聞いていただけませんか。」
「…言ってみろ。」
「たとえ、蜥蜴野郎の首が生え変わったとしても、魔法が効くなら話は別です。いくら生き返ろうと、その度に殺してしまえばいい。───本題はここからです。あの蜥蜴野郎に、魔法は効かない。そして、魔法が効かないのは悪魔と───。」
「───二重に魔法がかかっているもののみ、か。」
「蜥蜴の魔法をもつ恵比寿を一回、殺してみるのはいかがですか?キクラゲ…さんの魔法と能井さんの魔法で復活させればいいんですから…。」
「ゲーッ!?」
「お、おい!新入り!お前言っていいことと悪いことが…!」
藤田と恵比寿は動揺する。だが、藤田の方は割とアリかも?と思い始めているよう。藤田はキクラゲがすごい気まぐれなことを知らないから、楽観的だ。
「…考えたことがあるが、キクラゲが魔法で恵比寿を生き返らせるかどうかの確証は持てん。俺も責任は取れない。だからその作戦は、恵比寿の意思次第で実行する。…そもそも、恵比寿の魔法で蜥蜴になっているかもわからんからな。」
「イヤッ、イヤッ!!」
ちいかわかな。恵比寿が首を横に振る。
「…と言うことだ。心、能井。命令は続行する…。生き返ると言うならば、殺し切れるまで殺してこい!」
───
しかし、なんとかして恵比寿をぶっ殺さないと栗鼠が完全体になれないぞ…。俺の虫の魔法でゴキブリタックルすれば容易そうだが、煙、心、能井ら実力者にひっついているのでチャンスが薄い。
「さて、どうしようかな。」
能井さんの魔法で身体は戻った、ゴキヘル、ゴキナックル、そして追加でカブトムシチェストプレートを装備しておく。軽い上に硬い虫の装甲は便利である。しかし、内部への衝撃は防げないので、何かしらのクッション材を装備しておきたいところだ。
「…せや。」
───
魔法使いがパートナーを探すために行われる祭り、ブルーナイト。それの少し前。藤田はやることもないので、煙屋敷を散歩していた。
「…松村…。」
脳裏に浮かぶのは、自分の元パートナーの松村。カイマンに対して怯むことなく、藤田をドアを使って救った勇気ある男…。
「ちくしょう!恵比寿が松村をぐちゃぐちゃにしなければ…!」
恨んでも仕方ないことだが、能井さんからの協力も得られないし、かと言ってすぐに治療系のケムリが手に入るわけではない…。
「…まぁいいか。栗鼠だって白骨化したところから生き返ったんだ。こつこつ治療系のケムリを集めればいずれ…ん?」
藤田の目に映るのは、玉木だった…。気に入らない新人だ。そこそこケムリの量が多いので、煙も藤田より彼に仕事を与えている節がある。
先日は生ゴミの虫化、先々日は汚物の虫化、先々々日は虫を行軍させることで床のゴミをかき出すなどの仕事をしていた。
「しっかし...何をやってるんだ?」
アレは...蚕か?蚕をたたいている...。
「おい、何やってるんだよ...新人!」
「...藤田さん?いえ、これは、その...。」
事情を聴いてみると、蚕に糸を吐かせようとしていたみたいだった。
「バカだなー。その蚕は成虫じゃないか。蚕は幼虫じゃないと糸を吐かないんだぞ。」
「そ...そんな...。」
いけ好かないやつなのかと思っていたが...案外抜けているやつなのかも知れない。
「そう心配すんなって。蚕の幼虫の姿は知ってるか?実は煙屋敷にはキノコと共生する生態系を作る計画があってな、蚕も飼育しているはずだ。ついてくるか?生でじっくり観察すれば、おまえの目的も楽になるかも知れないぞ。」
「なんと!藤田さん、よろしくお願いします!」
蚕が糸を吐く様子を見せてやると、イメージが湧いたようで、巨大な蚕を魔法で作って厚手のインナーを吐かせていた。お裾分けということで俺の分も貰う。
「...魔法で何かできるやつはいいよな。」
「藤田先輩...。」
「おっと!ごめん。そういうつもりじゃない。」
つい、本音が漏れてしまったようだ...俺もケムリがこれぐらい使えたら.松村も死なずに済んだかも知れないのに。
「いえ...俺も気にしてません。今日はありがとうございました。」
「ああ。...じゃあな。後輩。」
玉木の顔は、動じていないようで、何か心配しているような...そんな顔だった。玉木と別れ、自宅へ戻る。
...煙さんや心さん達ほど強く無くても、俺に玉木ほどの力があれば、力さえあれば...。
「...。ふてくされていても、しょうがないか。松村...。」
パートナーを最後に救ったおまえに負けないくらいの...立派な魔法使いに、なりたいよ。
藤田の中で一つ、覚悟が決まった。