ブルアカ書き殴り短編集   作:このむらりく

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『距離感が近いのに、お付き合いの間柄ではない扇喜アオイさん』

 吐いては棄てる程ある、経験談。

そもそもの話、文字通り、吐いては棄てる。

口からトイレへ。呻き声とふらつかせた身体。

力が入らない両手を無理矢理に動かし、首を絞める。

こうすれば気持ち悪さは勝手に臨界点を突破し、力を込めずに嘔吐することができる。

吐いて楽になる一瞬だけが、今の先生にとっては楽園である。

シャーレの個室トイレ一番奥。その扉は本日早朝よりほとんどの時間閉まっている。

先生の嘔吐特等席。もはやこのトイレとは相棒と言っても良い間柄ではないだろうか。

 

 “うーん、結構拙いぞ”

 

 もう二度と呑まない。少なくとも、午前中は呑まない。

つまるところ、先生は二日酔いである。

バリバリに強烈な嘔吐感、キンキンに響く頭痛、ダルダルの倦怠感。

笑ってしまうくらい最悪のトライセッションだった。

気の所為にしたかったが、手足は震えているし、立ち上がろうにも力がふわっふわだ。

全く気の所為じゃない不調が心身に染み渡る。

 

 “やっぱり、拙いぞ”

 

 寒くないのに寒気がしたり、手遅れ感で溢れ返っている。

そして、輪をかけて本日のシャーレお手伝い担当がとてもやばい。

 

 蒼森ミネ。

 

 AOMORIMINE! 元気にネイティブ発音しても現実は変わらない。

もうだめだ、終わった。たぶん、マジギレされる。

理性が迸る前に、本能が警報を鳴らしている。

今の先生は何処かの天才薄幸図太さ満点美少女より弱い。

ミネが今の先生を見た瞬間、本日の予定が全て救護に切り替えられるに違いない。

そもそも、それだけで済めば御の字だ。

この際と言わんばかりに、シャーレから連れ出されて、問答無用でトリニティの救護騎士団お抱えの病院へと運ばれる可能性だってある。

救急搬送。緊急入院。経過観察。嫌な四文字熟語ばかりが溜息と共に吐き出される。ゲロと一緒に――ふざけているなぁ。

ミネの救護に妥協はない。何ならセリナとハナエがタックを組んで更なる救護をしてくる恐れまで発展する。

 

 数日、いや数週間か?

 

 卓越した頭脳を最大限に空回して考えても、結論は同じだ。

穏便に彼女達をやり過ごせる光明は眼前に現れてはくれなかった。

日頃の不摂生も含めた上で、間違いなく、改善を求められることは確実である。

そして、最近の健康診断の数値を彼女達は知らない。知ってても言わない。先生、とても賢いので。

 

 ここまで、ゲロ数回。嗚咽数え切れず。

 

 よし、逃げよう。その決意に至るまで先生の躊躇はゲロと一緒にトイレへと吐き出され、流されている。

大変誠に心苦しくお祈り百回申し訳無さで五点接地。

本日のシャーレは午前休業に決定した。

ミネにはモモトークでそそくさと連絡をすることにする。

理由は、ゴリ押しで何かうまいこと言い逃れで乗り切ろう。

いそいそと、トイレから出てミネへとチャットを送った後、先生は考える。

私室や執務室でぐったりするのはよくない。誰か別の生徒だったり、ミネがやっぱり突撃だったり。

場所が割れている以上、捕まるかもしれない、と。ぐむむと考えに考えて三秒くらい。

ひとまず、先生は最近よく使うお気に入りの隠れ場所へと向かうことにした。

頻度が高すぎて、隠れ場所になっていない気がするが、

 

「かくかくじかじか」

「それで、ここに来た訳? 私、これから仕事なのよ?」

「まあ、端のソファーで横になるだけだから。いつものこと、オーケー?」

「ノー」

「承認可決だね、ありがとう」

「救護騎士団呼ぶわよ」

「すみませんでした、ここに置いて下さい」

 

 財務室長のお部屋はかなり先生で侵食されているのだ。

当然、其処の主である扇喜アオイも慣れた顔で呆れている。

 

「仕事の邪魔はしないし、生き返ったら手伝うから。

 申請と承認の関係上、私が近くにいると楽になる。ほら、お買い得だよ?」

「はぁ?」

「あ、すみません、調子に乗りすぎました……」

 

 こういう時だけは口先が廻る。

呆れと溜息を抱えつつ、先生とアオイは何度目かわからないやり取りを繰り広げる。

ちなみに、通算はとっくに数えていない。

 

「自然に置かれていたから流してたけどさ。こんな横になれるソファってなかったよね?

 適当なオフィスチェアと机でぐったりする予定だったのに、どういう気の回し?」

「先生が毎回来るから揃えたのよ」

「もしかして、私のことが好き……!?」

「好きよ」

「ありがとう、私もアオイのことが好きだよ。

 それで、ソファは実費? 経費で落とせなかったのかい」

「よく私の前で言えるわね、怒られたいの?」

「もう、とっくに怒ってるじゃん」

 

 公私を混同しない彼女からすると、そういう類の話は好きではないのだろう。

間違いなく、あのソファはアオイのポケットマネーから出ている。

 

「後で、先生に請求するわ。帰る時までに請求書作っておくから」

「毎回来る度に請求書を持って帰ることになりそうだね。

 目指すは私の第二の部屋」

「私の執務室は公共の場よ」

「まあまあ。勝手知ったる私達の家ってことでさ」

「私達の家は別に建てるべきでしょう」

 

 それにしても、ここまで親密になったのは何時からだっただろうか。

最初は事務的な会話だけだったはずが、今ではこうして軽口を叩けるくらい親密になってしまった。

大体、毎度お決まりのようにやっている総決算が悪い。総決算ってそう何度もやるものではないだろう。

もう麻痺しているが、アオイとの思い出もそろそろ収まりきらないのではないかとさえ、思う。

 

「それで、また飲み過ぎ? 懲りないわね」

「ストレスの解消が見つからなくてね」

「その結果が二日酔いというのは大人としてどうかしら」

「君らが想像している程、大人ってすごくないからね」

 

 先生が部屋に来て、隠れるように休憩して。それをアオイはため息混じりに受け止める。

随分前からこうなっている気がする。

先生の執務室や私室は他の生徒達が勝手にやってきたり、騒がしいので、アオイはめったに行かないが。

変な勘ぐりをされて七面倒なことになるってわかっているからだ。

そして、ある程度のだらしなさは他の生徒達にも見せているが、ここまであけすけで見ているのはアオイだけだ。

 

「それじゃあ、私と一緒に飲めばいいじゃない。なら、私が適量の飲酒で先生を抑えられるでしょう?」

「流石に生徒の前で飲酒は……。それに泥酔できないし……」

「今更の気恥ずかしさね。二日酔いで散々先生の情けない姿を見てきた私に言う言葉じゃないわ。

 毎回この部屋でぐったりしていた先生を甲斐甲斐しく介抱したのは誰か答えて頂戴」

「語弊! 吐いてるのはちゃんとトイレだし、まだ最低ラインは下回ってないから!」

「最低ラインの線引はやり直した方がいいわね……」

 

 ああ言えば、こう言う。軽妙な会話を繰り広げている間に、アオイは片っ端から書類を片付けている。

先生の進捗はぼちぼち。アオイが流した書類を確認しながら、時折ソファで横になる。

こうしてある程度電子化が進んだ環境でも、何だかんだでペーパードキュメントは残ったままだし、書類作業というものはなくならない。

承認の判子もアナログだし、ままならないものだ。

 

「進捗、遅れてるわよ」

「午後取り戻すから」

「私との時間を犠牲にして?」

「言い方」

「本当のことじゃない」

 

 弱い大人は圧力に容易く屈してしまう。その鋭い言葉にぴえんぴえん。

なお、アオイには嘘泣きは全く効果がない。ユウカにはとても効くのに、と。

仕方がないので、二人で隣り合ってミーティングに出たり、通話で各部署に指示を送ったり。

なんだこいつという顔もされたが、よっぽど自分の顔色が悪かったのだろう。

しゃんとしなさい、と。ぺちぺちと頬を叩かれたり、冷えた手を握られたり、アオイが事あるごとにかまってくる。

いつものことなので慣れたが、ここまで甲斐甲斐しくされると、我が身を振り返る必要があるのかもしれない。

アオイの働きぶりをぼんやり見つつ仕事を手伝っていたが、いつの間にかに、午前が終わっていた。

 

「そういえば、今日の定食さぁ……Aセットのコンソメスープだけちょうだい」

「ちゃんと自分の分を頼みなさい。食べないと大きくなれないわよ」

「その言葉はモモカに言うべきじゃない? 私、大人」

「特別扱いよ。いつも甘やかしていたら、つけあがるでしょう」

「ないない、そんなの。アオイはこんなにも弱っている私に食事を強いるのかい?

 この胃腸で食べろと言えるかい? 鬼かな?」

「生徒のスープを奪おうとする大人にかける慈悲はないわ」

 

 程々に捌いた書類を尻目に、アオイと共に執務室を出て食堂へと向かう。

正直、食事を抜いてソファで横になっていても良かったが、午後を乗り切るにあたって、何かしら口に入れておいた方がいいだろう。

健康は食事から。暴飲暴食で身体を壊した自分が言える立場ではないけれど。

 

「仕方ない。私のAセットのコンソメスープ以外とアオイのコンソメスープを交換で」

「私の仕事がデスクワークだって知らないのかしら? 今日のセットは唐揚げなのよ?

 二人分も食べると太るじゃない」

「一食多めに食べて太るなら、危険な水準になっている生徒は山程いるでしょ」

「よく言えたものだわ。これだけ一緒にいるのに、まだわかってくれないようね」

「一緒にいるからこそ、君がカロリーをきちんと消費しているって事実を誰よりも知っているんだけど?」

「今日は朝、一緒に散歩してくれなかったじゃない」

「二日酔いで散歩しろと言いますか」

 

 何だかんだ言いながら、アオイは頼んだAセットからコンソメスープを分けてくれたので、優しい。

ついでに根菜サラダも渡してきたので、固形物も食べろということなのだろう。

先生はササッと渡された二品も食べ、アオイも残りをきれいに食べきった。

周りのざわめきや視線がこそこそとこちらへと向いているが、自分たちが物珍しいのだろう。

先生は外回りでシャーレを開けていることがあるし、アオイは執務室で軽食を取ることが多い為、二人揃って食堂に行くことはあまりない。

 

「というか、アオイが細すぎだと思うね。散歩だったりで自己管理ができている証拠だけどさ。

 毎回抱き寄せた時、細すぎて不安になる私のことも慮ってほしいね」

「先生はそう言うけれど。色々と気にするのよ。

 財務室長としても、先生の横を歩く身としても、だらしない姿は見せられないもの」

「二人きりの時はだらしないのにね」

「いつも気を張っていたら、何処かで限界が来るでしょう? 先生だって二日酔いその他諸々のだらしない態度を隠そうとするじゃない」

「一応、私大人だからね。最低限の壁は作っておかないといけない訳」

「私はその壁の内側にいるから、全く理解できないけれど」

 

 午後からの業務もやることが山積みだ。室長の立場なだけあって、アオイもどれだけタスクを片付けても、空っぽとはなってくれない。

そういう訳で、執務室に戻り、さあ執務に戻ろうかとする前に、とりあえずアオイを抱きしめてみた。

散々に太るかもしれないと懸念の言葉を並べていたが、どれだけの肉付きか確かめてみる。

 

「うん、やっぱり細い」

「先生は太ったわね」

「散歩に付いていくだけじゃ駄目かぁ」

 

 一般的な生徒よりも一回りは細身である彼女は、骨だけのガリガリ体型とは言わないが、十分以上に痩せている。

BMIは間違いなく痩せであろう。数秒間抱き寄せた感触としては、懸念の言葉なんて必要ないくらい、彼女はスマートだ。

ぎゅぎゅぎゅっと。密着度を上げ、力強めで抱きしめてみる。

 

「やっぱり太ってないとか、ない?」

「太ったわね。しばらく、私と毎朝、散歩かしら」

「手厳しい」

 

 抱かれ慣れているアオイの鑑賞は敏感であった。

どうやら、財務だけではなく、他人の体格を測る感覚も優秀らしい。

その優れた把握力を、別の方向性で活かしてほしかった。

 

「今更だけど、下のコンビニに行けばよかったわ。

 そうしたら、定食の分前で悩むこともなかったのに」

「お昼の混んでいる時間に行くのは、嫌だなあ」

「確かにそうね。私達の時間を無駄に取られるのは避けたいわ」

「アオイと云々話しながら買い物もいいとは思うけどね。

 今日みたいな体調だったら、栄養ドリンクの棚に行くのはもう視えている」

「あれに頼るのは駄目って言ったでしょ」

 

 抱きしめているつもりが抱きしめ返されている気がしてならない。

心なしか表情をドヤらせているアオイが脳裏に浮かぶ。

そう思うと、何だか癪に障るので、とりあえず抱きしめを解除する。

ほら、やっぱりだ。こっちは両手を離しても、向こうの両手は離してくれない。

抱きしめ状態は続行だ。

 

「勝手に離さないで」

「離さないと仕事ができないでしょ」

「先生から手を出したのだから、私が満足するまで続行よ」

「横暴だなぁ……」

 

 そこを何とかと説得しつつ、ようやく体を離すことに成功する。

 

「そういえば午前のリカバリプランは大丈夫なの?」

「それは平気。緊急の案件は処理済で、今抱えているのはバッファあるし。

 いざとなれば、アオイに手伝ってもらうよ」

「私を呼べば来る安い生徒だと思っていない?」

「総決算」

「…………そういう時もあるわね」

 

 魔法の言葉、総決算。

本当に隙あらば仕事が重なっているので、驚きである。

虚無もといイベントがない時期など与えないぜ言わんばかりに、アオイがやってくる。

財務室とズブズブの間柄になれば、聞き覚えが悪くなる。

偏に、変な噂が流れないのは、アオイが公私を完全に分けて物事を考えられる生徒だからである。

提出書類の期限は絶対に延ばしてくれないし、誤字脱字があったら遠慮なく修正要求のもとに、提出物は差し戻される。

その度に、先生はしなしなになっている。

 

「ともかく! その調子だと、午後の仕事は通常通りね」

「まあね。定時上がりで今日は締めたく、何卒何卒」

「早く帰りたいからって仕事を翌日に回さない?」

「体調が優れなくてね。こういう時は早めの帰宅が大事なんだ」

「見たらわかるわ。でも、早く帰ったらそれはそれで大変じゃない?

 暇な生徒達に捕まって、元気に対応できるなら、良いけれど」

 

 確かに、アオイの言う通りだ。キヴォトスはいつだって、ワクワクとドキドキで満ち溢れている。

半端に早上がりしたとて、テンション高めの生徒達に連行されてしまう。

今日に限っては拙い。いつもの体調に戻す為に、インターバルはどうしても欲しい。

そもそも、早上がりしたとして、自室にミネがスタンバっている可能性がある。

一応、モモトークにて言いくるめてはいるが、油断は禁物だ。

なんといっても、救護騎士団は骨から救護、肉も救護。

隙あらば救護を行い、先生の体調を健康にしたくてうずうずしているのだから。

 

「それなら、先生のことを程々に放し飼いしている私に捕まった方がお得じゃないかしら」

「成程。誘い文句がうまくなったね」

「先生がうまくさせたのよ。逃げ上手の先生を捕まえるには、手八丁口八丁以上を維持しないと」

 

 そうなると、もう話は早い。何だか1日中アオイの執務室にいる気がするが、仕事もしているしまあ良いだろう。

午後も、自分の執務室に戻らず、程々に引き締まった中、業務を遂行する。

時折書類を提出しに来たり、業務確認の為に執務室に入ってくる生徒達がぎょっと表情を驚かせたが、まあ、先生が何故かいることを考えたら当然だろう。

 

「あの、どうしてここに先生が?」

「その理由は私ではなく、本人に聞きなさい」

「丸投げは良くないよ、アオイ」

「押しかけてきた人が言う台詞じゃないわね」

「受け入れたのはそっちだし、連帯責任だよ」

 

 こんなやり取りを何度も繰り返すのだから、生徒も困惑するしかない。

 

「その、不躾な質問で申し訳ないんですが、お二人は付き合っているんですか?」

「違うよ。生徒と付き合うのは、ね」

「違うわね。先生と付き合うのは、ね」

 

 このように即答である。これだけ距離感が近く、会話も軽妙なのに、付き合うという考えはさらさらないのである。

 

「その、そういう認識を持ったことは?」

「ないよ」

「ないわ」

 

 別に、一歩先の関係性に踏み出す必要はないし、持ちつ持たれつの間柄でこのまま現状維持の方が楽だ。

 

「じゃあ、お互い好きとかそういった感情はないんですね」

「いや? アオイのことは好きだよ」

「先生に対して好意を抱いているわよ」

 

 質問をした生徒の困惑が更に深まっていく。

何だ、この二人。立場が上の人達ながら、理解不能な感情の作りをしている。

これ以上聞いていると、頭がおかしくなってしまいそうだ。

深入りはやめよう。シャーレに勤めている生徒は空気がとても読めるのである。

その後も、何だかんだで生徒は入れ替わり立ち替わりやってきて。

二人の仲睦まじさにげんなりとした表情を見せるまでがワンセットだ。

どう見ても付き合っている。そうとしか思えない距離感と阿吽の呼吸だ。

その関係性に無理やり割る度胸はない。

そうして、生徒達の茶々入れも何の効果がないまま、窓の外はいつのまにかに暗くなっていた。

 

「本日承認分は終わらせたわ。そっちは?」

「きりが良いところまでなんとか。今度使うトリニティ視察で使う資料も作ったし。

 ナギサは資料を隈なく読み込んでくるから、手が抜けないよ」

「先生が作った資料だから読み込むんじゃないの?」

「まさか。ナギサは回ってくる資料を全部深読みするからなぁ。

 それが美徳でもあり、悪癖でもあるんだけど」

 

 元々、慎重かつ猜疑心の強いナギサは、基本的に確認事項を嫌と言うほどに読み込む。

当然、回ってくる資料も熟読するし、それが先生の作ったものであっても、変わらないだろう。

政を司る立場もある。

 

「そういうタイプなら、いっそのことシャーレに引き込めばいいのに」

「そのつもりはだよ。ナギサみたいな子がいたら、仕事も回る。

 人材として有能なのはもちろんだけど、武力ではない――政治と交渉を得手としている生徒は思ってるよりも少ない」

「先生というよりシャーレがスカウトしそうね。先々のことまで気を回しているようで何よりだわ」

「そして、私の仕事も楽になる」

「呆れた。自分の子飼いにするつもり? 誘い文句はまさか……私には君が必要なんだ。これからは私の傍で支えて欲しい、なんて。

 そんな月並みな言葉を使ったんじゃないでしょうね」

「え、使ったけど」

「……………………」

 

 その場は、当然今後の進路にも関わる話なので、二人きり。

ナギサが淹れた紅茶を飲みながら、上記の言葉を並べ立てた。

手を握り締め、目を見て、誠心誠意のお願いをしたつもりだ。

ナギサもそれを聞いて、声色を上擦らせご機嫌だったし、背中の羽はぱたぱたとはねていた。

反応からして、好感触間違いなし。今後仕事をしていく上で、かわいい後輩ができると喜んでいたのに。

 

「ああいう手合は、拗れたら刺しに来るわよ」

「今の話で拗れる要素何処に!?」

「刺すというより撃つかしら」

「どっちでも変わらないよ!」

「先生は時として誠意が失策になることを学んだ方がいいわね」

 

 先生からすると、生徒に対して誠意を以て接するのは当然である。

まさか、それが刺す撃つに発展するとは。

特段相手がナギサでなくとも、頼み事をするなら動揺の態度は取る。

 

「じゃあ、アオイとは?」

「私はいいのよ。同じシャーレの職場だもの。先生の誠意に勘違いすることはないわ」

「確かに」

 

 距離感が近すぎる故に話がまとまっているが、実際問題、全然まとまっていない。

妥協点は明後日の方向だし、他の生徒達から見ると本当にこれで付き合っていないのはよくわからないの。

本日、何度も確認されたことだが、この距離の近いやり取りを見る度に、シャーレ所属の生徒全員が質問するのだ。

 

 

 

 

 

 

Question:お二人は付き合っているんですか?

 

Answer:いいえ。

 

 

 

 

 

 

 マジでふざけるなよ、このバカップルモドキ。




Question:連載の更新は?

Answer:いいえ。総決算です。

シャーレの総決算があるということは扇喜アオイさんのSSが10億生み出されるはず。、
なので、その一助を担うべく、書かせていただきました。そろそろ、実装のお強請り、してもいいでしょうか。






下記追伸です。
連載の後書きは完全に次回予告となってて、書く所がないので、ここで。

連載のお気に入り及び感想及び推薦等、誠にありがとうございます。
皆様の貴重なお時間を私のSSに割いていただけること、非常に嬉しく想います。
私自身、自分が読みたい書きたいと思っているものを文章にしているので、
エンジョイエキサイティング精神ばかりが逸ってる気がしてなりません。
いや、本当にそれでも読んでいただけること、マジ感謝。
連載につきましてまだ続きますので、お時間いただけますと幸いです。
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