カードファイト!! ヴァンガードOverlord 作:リュウ・セイ
「あーあ、やっぱり、こうなったか……」
なんとなく、こうなることは予想していた。
アカマルが倒れたことに、私は自分の中のイメージが現実になって、少しうんざりしていた。
私が本気を出す時、《ブラスター・ダーク》にライドすると、ほとんどの人は、クレイの中で倒れ込んで、現実で、私の怖さに怯えて、逃げ出すんだよね。
アカマルはそうはならない。
「……また、一人になるんだ、私」
ふっと、私は無意識にそう呟いていた。
バーに憑依したまま、アカマルを見て、私は背を向けて、現実世界に戻ろうとした。
──その時だ。
「まだ……オレのダメージチェックは終わっていない……」
「!?アカ、マル……?」
突然、アカマルの声がした。
振り向くと、バーに憑依していたはずが、いつも間にか霊体の姿で、アカマルが立ち上がっていた。
──僕は夢を見ていた。
変な話だ。ファイト中に夢を見るなんて。しかも、イメージの中で。
なんて、不思議な話じゃないか。
レイが言っていたな。イメージ力次第で、惑星クレイのどこかにいけるって……。
だったら、ここは惑星クレイの……墓場か?
「否。ここは惑星クレイではない。我とお前だけの世界だ」
「……え?」
ふっと、声がした。
初めて聞くはずの声なのに、不思議と、聞き慣れた声だ。
視線を向けると、そこには何もなく、僅かに、丸い球体が見えた。
「……誰だ?お前は?」
「誰?だと?知らないわけではない」
「……」
いや、その姿で言われても、知らないし、わからないし……。
「……まぁ、良い。貴様はこんなところで終わっていいはずではないだろ?」
「……」
確かに。言われてみれば、そうだな。
不思議と、力が入った。立ち上がる力。手を動かす力……体全体に、力が入り、不思議と、コイツの正体が頭の中に浮かび上がった。
「だったら、お前の力を貸せよ──ドラゴニック・オーバーロードっ!」
「……ふっ、良いだろう」
それを聞いて、オレは夢から覚めた。
突然、霊体の姿で立ち上がったアカマルに、私は驚いていた。
「……アカマル、まだファイトを続けるの?」
「……ああ、続けるさ」
「怖くないの?」
「怖いさ。けど……それ以上に、オレは今、すごく、ワクワクしている!」
「──ッ!?」
満面の笑顔で、アカマルは答えた。まるで、太陽のように。
「初めてやるカードファイト。こんなにワクワクして、心が……魂が燃えるなんて、初める前のオレにはイメージできなかった。けど」
「けど?」
「今のオレは……イメージできる!初めて良かった!もっと早く始めれば良かったって、思うぐらいに……そう感じる!」
「……」
そっか。アカマルは私とのファイト、ワクワクしてくれたんだ。
初めてだよ。全力を出した私のファイトを肯定してくれたのが……。
初めて、自分の在り方に肯定してくれた人がいた。
その人は私にとって、大切な人で、私の心を暖めてくれる。不思議な人だ。
ああ、これが恋ってやつなんだ。
そう感じた時、私は不思議と、いつものように、笑えた。
「それなら、大丈夫だよ!これから始めれば、まだ追いつくよ!」
なんて、そう簡単に追いつかせるわけ、ないけどね。
「そうか……なら、まずはこのファイト、全力で楽しんで、勝ってやる!」
「ふふ、そう簡単には勝たせないよ♪」
こうして、私達のファイトが再開した。
「まずはダメージチェック!」
意識を失っていたから、インフリクター・ドラゴンの攻撃で、まだダメージチェックを行なっていなかったオレは山札の上に手を置く。
ダメージはお互いに、4対4。同点だが、盤面と手札の差が広がりすぎている。
故に、ここでオレが捲るべきトリガーはヒールトリガーか、ドロートリガーの2択。
オレのデッキはクリティカルが最大8枚入っている。
残りの8枚のトリガーの枚数はヒールが4枚、ドローが3枚、オーバートリガーが1枚。
フロントトリガーは1枚も入れてない。あまり、このデッキに合ってない気がしたからだ。
んで、今はクリティカルトリガーが1枚見えている。が……。
「残りのデッキ枚数的に、トリガーが出るかは……微妙だな……」
けど、悪くない賭けだ。
そう思った時、オレは山札の上を捲った。
「……!」
捲られたカードに、オレは静かに驚いた。
それは《フレアヴェイル・ドラゴン》。ドロートリガーだ。
「ゲット!ドロートリガー!1枚引いて、《バー》のパワーをプラス1万!」
アカマル 山札39→37
手札3→4
ダメージ4→5
鎧の化身 バー
パワー8000→18000
「ここでドロートリガーか……運がいいね、アカマル。私はこれでターンエンド」
ターン3
レイ
手札6
山札34
ライドデッキ1
ドロップ5
ダメージ4(表2、裏2)
クレスト、《エネルギージェネレータ》(エネルギー0)
フィールド
セットオーダー、なし
前列、《インフリクター・ドラゴン》(R左)、《ブラスター・ダーク》(V中央、ソウル0)、《閃裂の騎士 カルブレ》(R右)
後列、なし
アカマル
手札4
山札37
ライドデッキ2
ドロップ4
ダメージ5(表5)
クレスト、《エネルギージェネレータ》(エネルギー3)
フィールド
セットオーダー、なし
前列、《鎧の化身 バー》(V中央、ソウル1)、《ドラゴンモンク・ゴジョー》(R右)
後列、なし
「よし!オレのターン!まずはスタンドフェイズで、ユニットをすべてスタンド!そして、ドロー!エネルギーチャージ!」
自分のターンになったオレはレストしているユニットをすべてスタンドさせ、カードを引き、《ジェネレータ》のスキルを忘れずに先に解決し、手札を1枚、ドロップゾーンに置いた。
「そっちが漆黒の騎士なら、こっちは竜騎士だ!竜と共に駆け巡れ!ライド!《ドラゴンナイト・ネハーレン》っ!」
アカマル 山札37→36
手札4→5→4
ドロップ4→5
ライドデッキ2→1
エネルギー3→6
ドラゴンナイト・ネハーレン
グレード2 パワー10000 星1
「《ネハーレン》にライド時、《バー》のスキルが発動!カウンターブラスト1して、山札からグレード1のユニットを手札に加えられる!」
新たな憑依先、ドラゴンナイト・ネハーレンにライドしたオレはソウルにある《バー》のスキルを解決し、山札を見る。
次のターン、確実に生き残るには……これだ!
「オレは《
「完全ガードね。次のターン、確実に生き残るための手段ってわけね」
「ああ!そして、オレは《ゴジョー》を後ろに下げ、もう一体の《ネハーレン》をコール!さらに、《マルチプルストローク》を、もう一度、左側にコール!」
アカマル 山札36→35
手札4→5→3
ドラゴンナイト・ネハーレン(R)
グレード2 パワー10000 星1
マルチプルストローク・ドラゴン
グレード1 パワー8000 星1
「《マルチプルストローク》の永続スキル!相手のドロップゾーンにカードが5枚以上あれば、パワープラス5千!」
マルチプルストローク・ドラゴン
パワー8000→13000
「グオォォン!」
パワーが上がったのか、マルチプルストロークはお叫びをあげる。
よし!これで準備は整った!
──後は!
「自分のファイトを……信じるだけだ!《マルチプルストローク》で、《カルブレ》にアタックっ!」
「!?(リアガードに攻撃!?インターセプトを警戒してるの……?)ノーガード!」
拳に雷を纏い、マルチプルストロークはカルブレに殴り、吹き飛ばした。
「ク……申し訳ありません。マイ・ヴァンガード……」
吹き飛ばされたカルブレは壁にぶつかり、レイに謝罪して、姿を消した。
レイ ドロップ5→6
「……やってくれるわね、アカマル」
おー、怖いな。けど、容赦はしないぜ!何故なら……!
「オレのアタックはまだ終わらない!《ゴジョー》のブースト、リアガードの《ネハーレン》で、《インフリクター》にアタックっ!」
「そうはさけない!《ディスマ》でガード!」
ドラゴンナイト・ネハーレン(R)
パワー10000→18000
白牙の魔女 ディスマ
シールド15000
インフリクター・ドラゴン
パワー13000→28000
レイ 手札6→5
ドロップ6→7
今後は防いだか。だが、手札を1枚減らせた。
このまま押し通す!
「今後はヴァンガードの《ネハーレン》で、《ブラスター・ダーク》にアタックっ!」
「《ブレードフェザー・ドラゴン》でガード!」
ブレードフェザー・ドラゴン
シールド15000
ブラスター・ダーク
パワー10000→25000
またしてもガード。だが、まだドライブチェックが残っている!
「いくぜ、ドライブチェック!」
勢いよく、山札を捲ると、右上に治が記されたユニット、《
これは……ヒールトリガーだ!
「ゲット!ヒールトリガー!オレのダメージがレイより多いから、1枚選んで、ドロップゾーンに!さらに!《ネハーレン》のパワーをプラス1万!」
オレは《バー》のスキルで、コストに使った裏向きのカードを選び、それをドロップゾーンに置いた。
アカマル 山札35→34
手札3→4
ダメージ5→4
ドロップ4→5
ドラゴンナイト・ネハーレン
パワー10000→20000
レイ 手札5→4
ドロップ7→8
「パワーが上がっても、こっちのダメージは通らないよ!」
「あー、けどよ!」
「ッ……」
オレはドラゴンから飛び降り、レイに……ブラスター・ダークに近づき、槍を振り下ろした。
それを見たレイは一瞬驚くも、魔剣で迎え撃ち、オレ達は
「……何の真似?」
「こうやって、気持ちを伝えられるだろ?ヴァンガードは!」
「ッ……そうね」
一瞬、驚くレイ。だが、それはすぐに満面の笑顔を、オレに見せた。
「こういうファイトも、悪くないわね……」
「だろ?だからレイ、見せてくれよ!お前の本当の姿を!お前の分身を!」
「ッ!?……ええ、いいわよ!私の本当の姿、見せてあげる!」
「そうこなくっちゃ!オレはこれで、ターンエンド!」
ヒールトリガーのおかげて、ダメージを1つ、回復できた。
手札には完全ガードがある。確実に1回の攻撃は防げる。
だけど、まだ少し、オレには不安な気持ちが残っていた。
次のレイのターン。オレはレイの攻撃を耐えられるだろうか?
いや、耐えてみせる!
そして、必ず、ドラゴニック・オーバーロードに繋いでみせる!
ターン4
レイ
手札4
山札34
ライドデッキ1
ドロップ8
ダメージ4(表2、裏2)
クレスト、《エネルギージェネレータ》(エネルギー0)
フィールド
セットオーダー、なし
前列、《インフリクター・ドラゴン》(R左)、《ブラスター・ダーク》(V中央、ソウル0)
後列、なし
アカマル
手札4
山札34
ライドデッキ1
ドロップ5
ダメージ4(表4)
クレスト、《エネルギージェネレータ》(エネルギー6)
フィールド
セットオーダー、なし
前列、《マルチプルストローク・ドラゴン》(R左)、《ドラゴンナイト・ネハーレン》(V中央、ソウル2)、《ドラゴンナイト・ネハーレン》(R右)
後列、《ドラゴンモンク・ゴジョー》(R右)
私の本当の姿を見せてほしい、か……。
アカマルはすごいなー。思ったことを口に出して、初めてやるカードファイトを楽しんでる……。
しかも、相手はこの私。本当にすごいよ。
純粋で、真っ直ぐで、太陽みたいに眩しい……。
──だけど、負ける気はないけどね。
「私のスタンドアンドドロー。《エネルギージェネレータ》のスキルで、3枚エネルギーチャージ……」
レイ 山札34→33
手札4→5→4
ドロップ8→9
エネルギー0→3
手札を捨てて、ライドデッキの最後のカードを見て、私はふっと、思った。
なんとなく、で、決めたカードだけど、ある意味、正解だったかも……。
はじめてファイトするアカマルにとっても、相手が私であることも、アカマルにみせる、“私の分身”が、このカードで良かった……。
そう思った時、私はこのカードに想いを乗せて、口にした。
「神話に眠りし、聖剣よ!星の竜となって、その姿を現せ!これが私の分身!──そして、私の
上空から光が降り、光は私を包み込んだ。
漆黒の騎士から離れ、私は新たな憑依先に、憑依した。
光が晴れると、そこには漆黒の騎士の姿はなく、かわりに、機械的な竜に憑依したレイの姿があった。
「これが私の分身にして、私の剣!剣聖騎竜 グラムグレイス!この姿になったら最後、誰も私の前には立っていられないよ!」
「す、すげぇ……」
さっきまで、
これがレイの分身……グラムグレイス!
なんというか……。
「かっけぇ……かっけぇよ、レイ!これがお前の本当の姿なんだな!」
「ええ、そうよ♪かっこいいでしょ?」
「ああ!すごくかっこいいっ!」
さっきからオレ、かっこいいしか言ってないな。他の言葉を言うべきか?
……いや。この場で
剣聖騎竜 グラムグレイス
グレード3 パワー13000 星1
「かっこいいだけじゃないよ?スキルもすごいんだから!という訳で、《グラムグレイス》のスキルを発動!カウンターブラスト1とソウルブラスト1で、山札の上から1枚引いて、手札からユニットを1体、中央後列にスペリオルコール!このスキルでスペリオルコールされたユニットのパワーはプラス1万される!《フェルンバエル》をスペリオルコール!」
グレード3 星1
パワー13000→23000
レイ 山札33→32
手札4→5→4
ドロップ9→10
今度は白い騎士か。しかも、《グラムグレイス》の後ろにコール……何かあるな。
今までのレイのプレイングや、ユニットのスキルを考えると、後列からのアタックか、ブーストを
「その顔、何かに気づいてるって顔だね」
「……まーな。ここまで来たら、何が来てもおかしくないからな」
「……そうね。隠すつもりはないから、先に言っておくね。《グラムグレイス》のスキルでスペリオルコールされたユニットは、このターン、後列からアタックできて、バトル終了時に、《グラムグレイス》のソウルに置かれて、1枚ドローができる」
「……マジ?」
「マジよ」
マジか。一番、来てほしくないスキルが当たったな。パワー
というか、レイの国家、ケテルサンクチュアリのカードって、全部こうなの?
「さ〜らに!空いてる右列に《ダヴン》をコール!《インフリクター》の後ろに《らんぐどしゃ》をコール!」
さらにレイは2体のユニットをコールした。
どうやら、このターンで、決着をつけるつもりだ。
グレード2 パワー10000 星1
ディヴァインシスター らんぐどしゃ
グレード2 パワー10000 星1
レイ 手札4→2
「さぁ、アカマル!私の攻撃に耐えられるものなら耐えてみなさい!」
「ブラスター・ダークに、グラムグレイスか……」
──懐かしいな。
仕事の合間に、僕はレイとアカマルの対戦を覗いて、密かに、そう思った。
というか、レイちゃん。今回はグラムグレイスなのか……。
いつもは“黒いドラゴン”を使うのに……相手がアカマル君だからか?
……まぁ、いいや。
それはそれとして、アカマルはこのターン、レイの攻撃を耐えられるかな?
手札は4枚。その内、2枚は完全ガードと、シールド1万5千の《焔の巫女 ローナ》か……。
少なくとも、2回は耐えれて、攻撃は1回、受ける感じかな……?
後1回は──
「──運次第だね。手札に1万5千がもう1枚あればいいけど……」
まぁ、この辺は“アイツ”次第だ。
アイツは気まぐれだけど、弱いヤツはあっさり見放すからな……。
……まぁ、多分、大丈夫かな。少なくとも、今回は力を貸してくれると思うから。
──だから、アカマルくん。
「君は、君が信じるように、やりたいように、イメージして、戦うんだ。なーんてね。カッコつけすぎたかな……」
まぁ、見ている人がいないんだけどね……。
「店長!このパック、買いたいんだけどー!」
「店長!このカードの裁定、教えてー!」
「店長!このカード、どうやったら使えば……」
「店長!このカード、もう少し、安くできないっすかー?」
「……」
やれやれ。店長は辛いな。
呑気に、二人の対戦を観戦もできない……。
「はいはーい。順番に対応するから、少し待ってねー」
さて、お仕事、頑張りますか!