コツコツコツと軽い足どりで咲夜は図書館を歩く。古い紙とインクの匂いに包まれた図書館は咲夜にとって紅魔館の中でも好きな場所の一つである。知識と知恵の泉に体を浸しているような気分になり――しかし多くが魔導書であるので理解できるわけではないが――心地いい。
きょろきょろと辺りを見回して本を探していると、本を棚になおしている小悪魔に出会った。
「あら、咲夜さんじゃないですかぁ~。何か探しものですかぁ?」
間延びした声で声をかけつつ、小悪魔は咲夜をつま先から頭の先まで嘗め回すように不躾に眺めた。咲夜は居心地が悪そうに身を捩る。
「……なにか?」
「なんでもないですよぉ~。…………そんなことより、探し物は見つかったのですか?」
咲夜の批判がましい視線を受け流しつつ、小悪魔は司書然とした調子に切り替えた。
彼は呆れたように溜息を吐いて脱力する。小悪魔のこれはいつものことだ。飲み込まれてはいけないと、咲夜も用件を伝える。
「お嬢様から念写、透視、視覚共有に関する書籍があれば見繕ってほしいと頼まれまして」
「…………へぇ~~」
小悪魔はそれを聞いて虚をつかれたように一瞬フリーズしたが、何事かを察するとうっすらと笑みを浮かべ、流し目で咲夜を見た。
「なにか?」
「いやぁ~。やけに陰湿というか卑劣というか。これなら真正面から視てる私の方が万倍マシですねぇ~」
小悪魔は間延びした声でどこか挑発するように、にやにやと薄ら寒い笑みを浮かべて咲夜をみつめる。
「何の話ですか?」
なんとなく馬鹿にされている気がした。いや、小悪魔の素の態度が人を小ばかにしたような態度なのでいつものことかもしれないし、何をバカにされたのかもわからないが、なんとなくむっとして咲夜は小悪魔を睨みつけた。
「いえいえ~~。こちらの話ですよぉ~。…………少々お待ちください。今お持ちします」
そう言って小悪魔は踵を返し、タッタと小走りで駆けて行った。その後ろ姿を眺めつつ、彼女は何を言おうとしていたのかと咲夜はしばし思案したが何も思いつかず、やがて考えるだけ無駄だろうと頭を振った。
さて、彼女が本を集めてくる間、彼は手持無沙汰になった。なにとはなしに、周りの本棚に詰め込まれてある魔導書を眺めてみた。
大図書館の本は、ぱっと眺めるだけではどう分類されているか分からない。題名や著者の名前でアルファベット順にソートされているわけでもなければ、ラテン語の書籍の中にフランス語の書籍が挟まれていることもあるので言語によって仕切られているというわけでもない。
一見何の整理もされず雑多に本が詰め込まれているようにみえるが、素人目には魔導書の共通点が分からないだけだ。かくいう咲夜も教えてもらった範囲で、棚にある一部の魔導書の共通事項を知っているばかりで自力で分類の基準を理解することはできない。それだけ魔法は奥深いのだ。
例えば身体能力の強化に関する魔法のうち、自分に掛けるものであれば、実体として体内の魔力操作を応用したものが多い。このためこれらの魔法は、魔法の基礎に関する本の近くにあるという。初心者がまず学ぶべきは自らの身体に流れる魔法の効率的な運用方法だからだ。そして、身体強化につながる体内の魔力操作というのは、武道家が気を体内で循環させ、尋常ならざる力をふるうのと根本的には似ている。
しかし、他者に対する身体強化の魔法は、その者の身体の中に流れる魔力を操作するわけではない。もしそんなことをしようとすると、対象者の魔力の流れの全てを掌握しなければならず、バフ掛けの魔法としては非常に非効率だ。このため、単に表皮の硬度を増したり疲労感を軽減させたりなど、表面的な術に留まることが多い。
そして、これはある種の状態異常である。ある物質が量によって毒にも薬にもなるように、身体強化の魔法、もといバフの魔法は正の状態異常を付与するものである。だから初見だと意外に思えるが、他者に対する身体強化の魔法はデバフやほかの状態異常に関する書籍の近くにある。
……ということを、パチュリーが立て板に水で饒舌に語って聞かせてくれた。全て彼女の受け売りである。
ある魔導書をなんとなく手に取ってみた。相変わらず語彙も文法も難しい。まるで隠されたメッセージを探すかのように、彼はゆっくりと一文ずつ読みこんでいる。そもそも読解が困難で内容なんて頭に入ってこないが、暇つぶしにはちょうどいいのだ。
そんなことをしていると、上の方から音がした。見上げてみると天井近くの窓があけ放たれており、透き通る青い空にカーテンが吸い込まれていた。
「また来たんですね」
咲夜は持っていた本を直す。やはり、難解な本を読みこむのよりは身体を動かす方が好きだ。
我が家のように遠慮なしに入ってくる盗人を捕らえてやろうと、彼は下手人の方へ歩き出した。
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「ひゃー、あっぶねー!死ぬまで借りるぜー!」
パチュリーの弾幕を縫うようにかいくぐり、箒に乗った白黒の魔法使いは颯爽と広い図書館を飛び回る。彼女の名は、霧雨魔理沙。
ひときわ濃密な弾幕を避けるため、床すれすれのところまで高度を下げ、高速で低空飛行する。ぶつかりそうなギリギリを攻めるのが最高に興奮するとは彼女の言である。
まるで大空を飛ぶ渡り鳥のように自由自在に飛んでいると、ふっと視界の端に人の影が映った。
「や――」
魔理沙がよけようとしたが、間に合わない。進路を少し逸れたところに現れた咲夜が、箒を掴んだ。
高速で飛来した物体を横合いから掴んで止めるなど、普通は不可能である。鬼や吸血鬼ならその強靭な腕力に物を言わせて無理に掴めるのかもしれないが、咲夜は人間で、しかも男である。
当然の帰結として、彼の白い手が血で真っ赤に染まる――かに思われたが、箒はピタッと、空間に縫い付けられたように制止した。代わりに魔理沙がぽーんと放り投げだされた。
「――エェ!?」
魔理沙は何が起こったか分からないと、声にならない悲鳴を上げた。
咲夜は何事もなかったかのように箒から手を離す。すると箒はびゅーんと弾けるように飛んでいき、図書館の窓から外に飛び出した。同じくして慣性により箒から投げ飛ばされていた魔理沙も床に激突した。
「ぐぇ」
潰れたカエルのような声をあげた。
「おぉ~、バッタみたいによく飛びましたねぇ~。というか、箒が一瞬止まったように見えたんですが、何かしたんですか?」
いつの間にか両手に本を抱えて運んできていた小悪魔に声をかけられる。咲夜は彼女の方を一瞥して、事もなしに言う。
「別に。ただあの箒の時を止めただけだから」
肝は、彼の拡張された能力にある。
咲夜の能力は時間を操る程度の能力である。これは主に、自分以外のあらゆるもの、言ってみれば世界を対象に時間を停止させるたり加速させたりすることに使われてきた。
しかし、『努力』の結果により、彼は時間を操作する対象を選別し、それのみの時間を停止したりすることができるようになったのだ。今回の場合で言えば、箒のみが時間が止まったために箒はぴたっと停止し、魔理沙は時間が止まった世界にいるわけではないので慣性のまま投げ飛ばされてしまったのだ。
なお、これは生き物にも適用できるが、生物でも物質でもいわば時が止まった世界に隔離されるので、こちらからの干渉は意味をなさない。傍目には、絶対に壊れない石像になってしまったように映ることだろう。
「いてて……。あまりにも唐突な攻撃、私じゃなきゃヤバかったぜ……」
強く打ったらしい額をさすりながら魔理沙は起き上がった。咄嗟に防御魔法使ったようで、目立った外傷はない。
魔理沙は咲夜にびしっと指をさす。
「ひでーぜ咲夜!私たちの仲なら見逃してくれてもいいじゃないか!」
「どんな仲なの。私は執事、貴女は盗人。見逃す理由のないシンプルな関係だと思わない?」
咲夜はポーチからナイフを取り出し、臨戦態勢に入る。
「けっ!相変わらず愛想がねぇーぜ。そんなんだったら貰い手が見つからんだろうな!」
魔理沙は捨て台詞をはきすてて、脱兎のごとく駆けだした。
「待ちなさい!」
咲夜も後を追う。
「本、入り口の机のところに置いておきますよ~~」
離れていく咲夜の背中に、小悪魔が声をかける。彼女の間延びした声が館に響いた。
咲夜は時を止めて瞬時に距離を詰めることができるので、一度補足されたならば逃げ切ることはできないだろう。しかし、来るとわかっていればやりようはあるというもの。
魔理沙は出口の方に向かっていきながら、魔法を使って本棚から本を取り出し浮遊させ、自分の周りを取り囲ませている。本棚には本を守るために障壁魔法が掛けられているが、本自体はその限りではない。弾幕にしろナイフの投擲にしろ、遠距離からの攻撃は本を傷つけてしまうかもしれないため、咲夜は得意の攻撃手段を封じられたような形になった。
接近して制圧しようとするが、彼女に近づくほどに迎撃のために展開された弾幕の密度は上がり一筋縄ではいかない。本がひとりでに棚から出て魔理沙の周りをぐるぐると漂うのを見ると、まるで本が眷属のように動いているように見える。時折咲夜との間に本を割り込ませて彼の攻撃を中断させるのも実にいやらしい。
また、本も単に盾として浮かべているだけではなく、魔術の術式が仕込まれているものであれば魔力を通すだけで術が発動するので、魔理沙はそのような魔導書を目ざとく見つけては棚から抜き出し、術を行使している。
じりじりと後退していく魔理沙が、咲夜をいなしつつ使えそうな本を探そうと素早くあたりを見まわす。『統制魔獣による対人制圧』と書かれた魔導書が目に留まった。使えるやつか分からないがとりあえず場に出すだけでも、図書館を荒らしうる存在を咲夜は無視できなくなるはずで良い足止めになってくれるだろう。
魔法でその本を棚から抜き取り、魔力を流して書き込まれた術を発動させる。
魔導書が鈍く輝き、ひとりでに本がばさっと開いた。
「うぉ、まぶし!」
「!?」
二人とも思わず腕で顔をかばい、咲夜は眩しさに目を細めながらなんとか目の前のものを視界にとらえようとした。
徐々に光が薄くなってくると、浮遊している本の前に大きな円形の魔法陣が展開された。直径が咲夜の身長程はあるだろう魔法陣からは何か異質な気配があふれ出し――
「――ッ!?」
何本もの触手が目の前に対峙していた咲夜を襲った。
すぐに飛びのいて距離をとろうとしたが、いつのまにか足元に出現していた魔法陣から触手がとびだしてきて、咲夜の足をからめとった。あの派手な光や大きな魔法陣はカモフラージュだったのか。
「しまっ」
足を取られた一瞬のうちに、魔導書から伸びていた多数の触手が咲夜に殺到し、四肢や腹に絡みついて身動きを封じた。こうなってしまっては咲夜の能力でも抜け出せない。一度掴まれてしまっては、たとえ時間を止めても体は拘束されたままであるからだ。
触手が咲夜の身体を覆っていく。
「うわ、なにこれ、エッグいなぁ……」
しばし唖然と眺めていた魔理沙であったが、咲夜の動きが完全に封じられたあたりでふと我に返った。この魔獣の召喚と敵の制圧までの圧倒的な手際の良さに感心しつつ、あまりの徹底ぶりに寒気も覚えていた。
これは初見では回避できまい。回避できるとすれば、直感で避けられるやつか、はたまた体をすり抜けさせられるようなやつだけだろう。
魔法の開発者に引いていた魔理沙の隣に、紫色の影が舞い降りた。
「はぁ……、追いかけっこって楽しくないのよね、疲れるだけだから。……あら、テンタクルスじゃない。あなたが呼び出したの?」
この図書館に籠っている魔法使いである、パチュリー・ノーレッジである。
「知ってんのか、あれ?」
「知ってるも何も、あれを作ったのは私よ?」
『干渉・服属・統制』の魔導書に記述されていた魔法を実践し、支配下に置いた魔獣をいつでも取り出せるように本に封じていたのだという。魔獣をわざわざ魔導書に封じたのは、自分の技術力の力試しも兼ねたちょっとした余興のつもりであった。
「……うっわ、あの陰険な魔法作ったのお前かよ。やっぱ魔法は作ったやつの根性を体現するんだな。見上げたもんだぜ」
「うるさいわね」
『魔法を他人にどうこういわれる筋合いはないわよ』とパチュリーは口を尖らせる。パチュリーの拘りと負けん気は知っているので、ここで反論しても不毛な言い争いになるだけだ。魔理沙は『へいへい』とパチュリーの不満をかわした。
「……あら、捕まってるのは咲夜なのね。貴女じゃないならこあかと思ってたのだけれど」
今気づいたように、パチュリーが咲夜の方をみやる。つられて魔理沙も目を向けた。
咲夜は高く身体を持ち上げられている。
咲夜は触手のなすがままになり、次々と武装をはぎとられていった。
ポーチにしまっていたナイフやベストの裏に隠していたナイフは触手に器用に抜きとられ、小さなナイフが仕込まれていた靴も抵抗むなしく脱がされた。触手がボウタイをするするとほどくと、結び目に潜ませておいた小さな毒針も落ちてしまった。ほどかれたボウタイはかろうじて首にかかっている。
服ははだけてしまい、まるで"事後"のような乱れ具合だ。身を捩って逃れようとする様は悶えているようでとても艶めかしい。触手が顔に巻き付いて目や口までふさがれ、『んーんー』ともがくのが――とてもえっちだ。今のうちに目に焼き付けておこう。パチュリーを非難していた魔理沙は手のひらを返すように、心の中で彼女に称賛を送った。
「あれ制御すんのは開発者?それとも使用者?」
彼の痴態を眺め、ひととおり堪能して満足した魔理沙は魔導書を指さしてパチュリーに訊ねる。
「使用者ね。開発者だけが使うように認証基盤まで組み込むのが面倒で……」
開発の背景などまるで興味はない魔理沙は『ふーん』と鼻を鳴らす。
「じゃあどうやって止めるんだ?」
「あれの個体名を呼べば言うことを聞いてくれるわ。今は自動的に制圧行動をとっているだけね」
「なるほど。じゃああいつの名前を教えてくれるか?」
「えっと、そうね。たしか……」
視線を下げ、記憶をたどるように開発時の状況を思い起こしていたパチュリーはふと、何か名案を思いついたかのようにぱっと顔をあげた。その口の端は少しつり上がっている。
「……忘れたわ」
パチュリーはうっすらと笑っていた。魔理沙はそんな様子のパチュリーを訝しむ。
「……じゃあ止められないじゃないか」
「そうね、残念ね」
パチュリーはあっけらかんと答えた。魔理沙は『はぁ?』と困惑したような声を出す。
「残念ってお前……。なら私がマスパぶっぱなしてやる。ちょっとくらい屋敷が壊れても文句言うなよ」
そういって彼女はポケットからミニ八卦炉を取り出し、魔獣の方に向けた。触手が出ている本体は魔導書なので、そこに照準を合わせればいい。火力の調整はあまり得意ではないが、密度を絞れば光線の太さは変えられる。
八卦炉を掲げ、いまに光線を打たんとしていた魔理沙の腕をパチュリーがつかみ、そっと手を降ろさせた。魔理沙は戸惑った様子で、おもわずパチュリーの方をみた。
「なに、どうしたんだ?レミリアの従者より館の方が大事なんか?」
「いえ。あの魔獣は初期状態では制圧に特化させてあるわ。だから咲夜が死ぬことはないし、傷つくこともないわ。そうね、寝技をかけているようなものかしら」
彼女は、御前演舞として美鈴がレミリアやパチュリーの前で他の妖怪や武道家に技をかけていた様子を思い起こす。日本に来て学んだという柔術を使っていたらしく、里の師範も見事と舌を巻いていた。
「だから?時間切れまで待つんか?」
「えぇ、そうよ」
パチュリーは取り付く島もなく、きっぱりと答えた。
魔理沙はほんとうに分からないという顔をした。テンタクルスが相手を傷つけないからと言って、放っておいてもいいことにはならないだろう。いわんや、今は咲夜が辱められているのだ。それはだめだろうと、魔理沙が改めて反論しようと口を開くと、パチュリーは手で制して答えた。
「だって……滅多に見られるものじゃないじゃない?」
――――確かに……!!
魔法に関しては意見が合わないこともままあるが、事ここに至っては完全な一致を見た。
魔理沙はすっと八卦炉をおろし、改めて咲夜のあられもない姿を見た。
「んー!!んー!!」
未だ暴れて何とか触手から逃れようとする咲夜。
他に危険なものを隠し持っていないかと、触手は襟や裾から服の内側に入り込み、べたべたと身体を這う。敏感なところにあたるたびに、ぴくっと身体が跳ねた。
魔理沙はこの絶景を脳に焼き付けるように、かっと目を開いた。パチュリーはいつのまにやら映像記録用の魔導書を手にしており、ページをゆっくりとめくりながらこの光景を紙に現像していった。
「なぁ、それあとで貸してくれよ」
魔理沙は咲夜を凝視したまま声をかける。
「あげないわよ」
「わかってるって。お前の部屋の中で見せてもらえればいいから」
「そうね、それならいいわ」
口の端をつり上げてふふふと笑う紫魔女。
ニヤニヤと下卑た笑いを浮かべる白黒魔女。
少年の痴態を楽しむ痴女二人。
この場に彼を助けようとする者はいなかった。
疲労のために咲夜が脱力し、すべてを諦めて触手に身をゆだねようとしたその時――
「死ねぇい!!!」
ドガン、と轟音を響かせてドアを突き破ったフランがレーヴァテインを投擲し、寸分たがわず魔導書を貫いた。槍は勢いそのまま、魔女二人とぶつかる。
「あ、やべ、死――」
赤く眩い光が館を照らし、ひとときの
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フランに助けられた後、咲夜は堰を切ったようにさめざめと泣きだしてしまった。
それを見てフランはしばし唖然としたが、ふつふつと湧いてきた激情に突き動かされ、『殺してやる!!』とレーヴァテインを手に振り返った。しかしその時にはもう、彼女たちは忽然と消え失せていた。やるせない怒りをどうにか飲み込んで、彼は咲夜を部屋に連れて行ったのだった。
あくる日、ひと眠りして立ち直った咲夜は、気恥ずかしさに頬を赤らめつつ深々と頭を下げた。
「ご迷惑をおかけしました、フラン様。お見苦しいところを見せてしまい、申し訳ありません」
咲夜は前後不覚のままとにかく目の前にいたフランに縋りつき、ベッドにあげられても彼の胸に顔をうずめて泣いていた。やがてくぐもった泣き声はだんだんと小さくなっていき、緊張の糸が切れたように、咲夜はフランに身を預けて寝た。
フランは、自分を抱きしめながら穏やかに寝息を立てる咲夜の頭をゆっくりと撫で、小さい子を寝かしつけるように咲夜に寄り添った。
フランが咲夜をあやす、いつもと逆転したような状況であったがフランはこれはこれで悪くはなかいと思った。彼は咲夜を憎からず思っている。ちょっと抜けてるところがあっても頼りになる咲夜が始めて見せた、弱弱しい姿であった。普段の健気で気を張った姿からは程遠かったけれども、これを自分にしか見せることはないのだと思うと、何か心をくすぐられるような感じがした。
「謝んなくていいよ、咲夜。僕、全然迷惑だなんて思ってなかったから」
「……ご配慮、痛み入ります」
フランは少しばかり恥ずかしそうに視線を逸らし、消え入りそうな声で呟いた。
「む、むしろ、その……」
「……?」
何かを言ったような気がしたが、咲夜は聞き取れず首を傾ける。
「もう!」
フランは何か怒ったように、ぷいっとそっぽを向いてしまった。愛らしく頬を膨らませるフランを見て、咲夜はふふっと顔をほころばせた。
「ありがとうございます」
興味本位で聞きます。あべこべものにおいては……
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男の娘を愛でるのも良き
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BL要素だけはあってはならん
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設定凝ってるのもいいんだぁ
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貞操は逆転させても体格とかは逆転さすな
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知らん。とにかくハーレムを出せ