TS博士ちゃんと複数の研究対象達 作:かまくら
『そろそろですかね……』
数秒後に建物内の目覚まし時計が一斉に鳴り始める。それから少しして、各々眠そうにしながら皆食卓へやってくる。
ただ一人を除いて……だけど。
『先生はまだ寝てるんですか?』
さりげ無く尋ねたつもりだったけれど、心の中を覗かれた様で。いや、聞いた相手が悪かった。実際に覗いたんでしょう。彼女はニヤリと笑いながら教えてくれた。
「そうだね、さっきこっそり見て来たけどまだスヤスヤ。疲れてるみたいだし、寝かしてあげたら?」
『一回許してしまったら何回も過ちは繰り返されるから駄目。そうだ、シッディ。貴方呼んでき』
そこまで言った所で、思い出したけれど遅く彼女はもうそこにはいなかった。きっとそれを聞いたと同時に移動して先生を起こしに行ったんでしょう。
はぁ……。失敗した。何かと仕事が多く先生に人に頼る事も大事だよと言われたのもあってか頼ってしまった。
腕を組みながら、仲良く食卓にやって来た二人を睨みつけながら私はご飯をよそう。それをいつもの光景とばかりに皆は気にせず箸を進める。
私達は家族では無い。血の繋がりも無い、側から見れば赤の他人だ。でも私達は先生に救われた。此処にいる人間は全員そうで。だから、私達はいや、私は先生が好きだ。今日も今日とてその気持ちに気づかないフリをして先生を見てしまう。
それが私達のありふれた日常で、それはずっと続くと思っていた。そんな訳無いのに。
ある夜。トイレに行きたくなって廊下を歩いていると、玄関先で人の声が聞こえた。もう遅い時間なのに一体誰がと思って覗いてみると。
先生と知らない人が話していた。大きな身体の男の人だった。
そばに行こうとして異変に気づく。それは話し合いじゃなくて恐喝の様だった。男の声は段々大きくなり、こっちにも正確に聞こえるほど響いていた。
「おいセンセー。俺は、何も難しい事は言ってねえんだぜ?ただ、急ぎで欲しいって言ってるだけだ。全員は無理だろうから一人だけで良い。なのに、一人も渡せねえって言うのはどう言う事だ?」
『だから、何度も言っているでしょう。まだ彼女達は未完成なんです。その状態で場に出してしまったら、彼女達が壊れてしまうかもしれないんですよ?そしたらまた何年も掛かります。それに今戦場に出して敵国に認知され対策されてしまったら、それもまたやり直しになるんです。それに何より、未完成の状態で世に出したく無い。私の研究者としてのプライドがそう言ってるんです』
「悪りぃな。先生、上はそんな事聞いちゃいねえんだよ。上が求めてるのは出せるか出せねえかだ。アンタが知らない筈も無いだろ?敵国のスパイから連絡が来て、奴らは明朝に最新鋭の兵器を使いウチの重要施設を破壊するつもりだと。それを止めて更にやり返すには、アンタが作った試作品しかねえんだよ」
『そんな事を言われても……』
「チッ、時間が無い。悪いな強行突破させて貰う」
そう言って先生を無理矢理押し除け、こっちに近づいて来た。慌てて逃げようと思ったけど、足がすくんで動かなかった。そして、そのまま男に持ち上げられてしまった。
「おい、コイツがそうか?」
必死に抵抗する私を無視しながら、男はそう言う。
『ち、違う。その子は親戚の子だ』
「あーそうか。……ならこの施設にいる他の生命反応の中に、試作品はいるか?」
『いない』
「あ?」
『試作品なんか一人もいない。全員私の子供だ』
「おいおい、マジかよ先生。馬鹿なオレでも分かるぜ?それは
『違いますと言ったら信じて貰えますか?』
「いつもの連星沈着で機械の様なアンタの言葉なら信じただろうな。でも、今のアンタは人の顔をしてるぜ?まるで大事なオモチャを取られたく無い子供みたいに必死な顔をしてる」
『なら、そんな子供に優しく手を差し伸べるのが大人の役目では?』
「無理だ、俺もガキだからな。と言ってもクソガキだがな?」
外側に勢い良く投げられた私は暫く宙に浮かんだ後、重力を思い出したかの様にゆっくり落下した。
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