警備局員勤務記録   作:日本陸軍広報部支部

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勤務記録 EE-01

私はヴァルキューレの警備局所属のしがない外回り担当だ。個人的には事務所のほうが動かなくて好きなので、今が実質底辺である。

しかも勤務は深夜......警察組織だから明かりを消すことはない、とは分かっていても......いざ、私がその明かりを付けたままにする役割になると辛い。まあ、強いて言うならまだ新人なので相勤と雑談をできる、という点はマシかもしれない。

 

「はぁ~......こんな真夜中の勤務だなんて、学生のやることじゃないなぁ」

「まあまあ、仕方ないって。恨むならにここ(ヴァルキューレ)に入った自分を恨んでよ」

 

そう言って相勤は少し、嫌な笑いを見せてくる。こっちを若干憐れんでるような、嘲笑ってるような顔。少しイラついたので、少し小突いて運転に集中することにした。あっちは突然の攻撃に驚いたらしく、仕返しを検討していたようだが......そのうち諦めて、固くも柔らかくもないパトカーの座席に自分の全体重を預けていた。

 

「ねえ、■■■ちゃん」

「ん?どうしたの」

 

呼ばれたので、ほんの少しだけ頭を向ける。流石に完全にあっちを向くのは間違いなく事故って謹慎確定になるのでできないけど。あっちを向くと、相勤が官帽を弄繰り回しているのが、月明かりと街灯に照らされて薄っすらと見ることができた。

 

「明日の朝になったら上がりだけど、どうする~?」

「まず、寝よっかな」

「なんかつまんないね」

 

まあ、それはそう。他の学校───トリニティとかミレニアムとか、そういうマンモス校の人らは、今のうちにたっぷり寝て、昼間に元気よく活動しているんだろうな。青春というものを謳歌するために......

 

「羨ましいなあ......」

 

そう溢したのを見て、横の暇人はクスッと笑って見せた。はあ......自分のお財布事情なんか気にせず他のマンモスか中小校へ行けばよかったのかもなあ。まあ、これも後の祭りってヤツなのかなあ......もうパトロール開始してから1、2時間?くらいは経ったかな。そろそろなんか事件が来そうなもんだけど......

 

『警察本部から警備局員へ、警察本部から警備局員へ。現在シラトリ区の■丁目〇番地▲▲にてコンビニ強盗が発生。対応可能なPC(パトカー)は至急急行せよ───』

 

無線が入ったのを理解し、今私らがいる場所を確認する。かなり近かった。はあ......これは急行しないと後で詰められるやつだな。いろんな気持ちを込めて、相勤のほうを向いてみる。あちらも同じ気持ちだったのか、既にこちらを向いていた。

 

「近いね」

「そだねー......」

 

そう言って、溜息をつきながら少し崩れた服装を直す。そして、オマケに支給されてさほど月日が経っていないショットガンのチェックをする。どれもまだまだ新品で、どこにも問題はなかった。さて、事案対応だ......

 

「こちらシラトリ46から警察本部」

『シラトリ46どうぞ』

「先のコンビニ強盗、対応します。どうぞ」

『警察本部了解。容疑者は二人、受傷事故防止に留意し、急行せよ』

「シラトリ46、了解」

 

その無線を聞き届けると、私は緊急走行を表すサイレンのスイッチを入れる。けたたましいサイレンの音が静かになった街中に鳴り響き、そしてパトライトの青と赤の光がビルに当たり、反射する。

 

「さて、向かいますか」

「速度上げるよ。舌嚙まないでね」

 

そう言って私はアクセルを踏み込む。パトカーのエンジンが悲鳴のような音を出して、この鉄とその他諸々の塊を加速させる。

交差点に差し掛かる度に呼びかけをして、一般の車両と衝突しないようにする。まだ1年生なのに、クロノスの報道に取り上げられるのは御免だ───そう思っているうちに、目標のコンビニ付近まで来ていた。

 

「シラトリ46から警察本部」

『シラトリ46、どうぞ』

「こちら現着しました、どうぞ」

『了解。細心の注意を以て対応に当たれ、以上警察本部』

 

強盗が発生しているコンビニのほど近くにパトカーを止め、そう無線を入れる。無機質で味気ない言い方だが、確実な緊張感をこちらに与えてくれる。相勤もそれを感じてか、少し緊張気味にアサルトライフルを準備してる。まあ、こういう事案対応なんかこの短期間に何回したかわかんないけど......

 

「じゃ、行こっか」

「そうだね」

 

相勤とはそれだけ言って、パトランプと街灯、そして建物の光が街中を照らす中、車のドアを開けてコンビニ近くへ向かった。どうせサイレン音とパトランプの光で犯人にはバレているので、特に隠れることなく歩を進めていく。道端にある電柱やトランスボックス辺りに身を落ち着かせると、コンビニの中を覗いてみる。そうしてみると、犯人も店員もおらず、やけに静かな空気が流れている。

 

「……逃げられた?」

「さあ、本部に連絡入れてみよっか」

 

私はそう言うと遮蔽に隠れてから肩にある無線機に手を伸ばし、スイッチを押す。それから間髪入れずに私は口を開き、言葉を発する。

 

「こちらシラトリ46、店外からは店内にはマル被確認できず。どうぞ」

『こちら警察本部、了解。店内に入り、安全を確保せよ』

「シラトリ46、了解」

 

無線のスイッチから手を離すと、相勤の横へ戻る。相勤の銃口は今だ室内に向けられており、警戒をしているということが誰から見てもわかる状態だ。そんな状態の相勤の肩を軽く叩く。

 

「室内に入るから、援護して」

「了解。誤射は許してね」

「出来るだけしないで……」

 

少し相勤を心配しながらも、シールドとショットガンを構え直し、コンビニへと突入する。自動ドアが開くと、冷たい風が身体全体に押し寄せてくる。涼みたい気持ちはあるが、そんなことをしている場合ではないのでレジのほうへと身体を向ける───ん?なんか声が聞こえるな。

 

「ん...んーーー!!んーー!!」

「ちょっ、お前そろそろ黙れ!!」

「……」

 

聞こえないつもりで喋っているんだろうが、丸聞こえである。流石にヴァルキューレがいくら間抜けだとか無能だとか言われても流石にこれはわかるぞ......まあ、こっちは大助かりではあるんだけども。犯人がいる位置はおそらくレジのすぐ裏、さっさと済ませてしまおう。

 

「……!!なんでわかった、ヴァルキューレの連中はポンコツじゃなかったのか?」

「ヴァルキューレ警備局だ、そこを動くな!!」

「いいから早く両手を挙げて出てこい!!」

 

声を張り上げて私は犯人を脅す。こちらから攻勢に出て店の物品を破壊した後、あとで署まで請求書がやってきたら私たちは始末書確定なので、犯人が動くまで待機する。さほど時間が経過することなく、犯人はガムテープで口を封じられた店員の生徒を拳銃で脅しながら出てくる。犯人は粗いつくりの覆面を被っている。おそらく毛糸の帽子に目と口を開けたヤツだな。ポンポンが頭に付いてる。

 

「お、おい!そこを動くな......動いたらコイツがどうなっても知らないぞ!!」

 

典型的なヤツだ。訓練ビデオ以来だな、こういうのを見るのは。さて、どうしたものか───相勤の射線にはまだ入ってないだろうし......一芝居打ってみようかな。偶には犯人で遊んだって罰は当たらないはず、だよね?

 

「わかった、わかった。出口から出してあげるから、ゆっくり前に進んで?こっちも銃は下ろすからさ」

「ヴァルキューレにしては物分かりがいいな」

 

そう言いながら犯人は店員を盾にしてゆっくりと前に進んでくる。私はゆっくり後ろ歩きでシールドを持ったまま下がる……さて、そろそろだな。そろそろショットガンを構え直すとしよう。

 

「おい!?お前何を───」

 

私を犯人が怒鳴りつけると同時に、相勤のアサルトライフルから放たれた弾丸がポンポン付き目出し帽の額を丁度貫く。ここまで上手く行くと気持ちがいいを通り越して少し犯人を憐れむ気持ちまで出てくる。さて、こんな事考えてる場合じゃないな。

 

「ちょっ、待って!!」

 

弾丸が命中した弾みで犯人が店員から手を離した瞬間に、私はシールドを活用して犯人と店員の間に割って入る。そしてその勢いに乗って犯人にシールドによるタックルを仕掛ける。

 

「ま、待って‼もう抵抗しない、抵抗しないから!!」

「よしっ、そのまま動くなよ。おーい、■■■!!」

 

私は銃を向けたまま距離を取る。後ろから近づく相勤の足音が近づいているのを耳が拾うと、後ろを見ずに相勤に犯人を拘束するよう声をかける。相勤はグッドサインを小さく作ると、アサルトライフルを背中に背負い、拳銃と手錠を持って前に出てくる。そのまま犯人の後ろに回ると、相勤は腕時計を見る。

 

「えーっと、午後11時23分。強盗の容疑で現行犯逮捕!!」

「よし......店員さん、大丈夫ですか?」

 

ちょっと忘れてたなんて口が裂けても言えない......とりあえずさっさとガムテープを取ってしまおう。見た限り口以外にも手首をガムテープでぐるぐる巻きにされている。とりあえず無理矢理どっちも剥いでしまおう。少し痛がっている気もするが気のせい気のせい。

 

「遅すぎない!?犯人を制圧したらまず救助でしょ!!だから───」

「......」

 

面倒なのと当たった。ショットガンで気絶させてやろうかとも思ったけど流石に控えよう。まあ、こういう時は肩にある無線機のスイッチに手をかけ、押し込もう。

 

「こちらシラトリ46、犯人を確保。これより移送します、どうぞ」

『警察本部、了解。店員に関してはどうか、どうぞ』

「店員に関しては怪我なし、どうぞ」

『了解、事後処理は生活安全局員が行う。犯人の移送を行え、以上警察本部』

 

さて......横でずっと文句言ってる店員さんはどうしてくれようか。まあ、無視して取り敢えず相勤に声かけるか。後は全部生活安全局員に投げれば大丈夫だろう、うん。

 

「■■■ちゃん、もう撤収するよ」

「オッケー!ほら、立って」

「あ、ああ」

 

犯人は相勤の言葉に従って、そのままパトカーへと連れて行かれる。依然こちらへの文句は延々と続いてるが、こういう時はそそくさと撤収してしまおう。さて、最後の言葉はどうしようか。

 

「では、事後処理は生活安全局の者が来ますので、それでは!!」

「ちょっと、待って!!」

 

最後の一言を最後に、コンビニから全速力で撤収する。間違いなく間違った対応だが、精々一人の苦情だし、あんま問題にはなんないでしょ───パトカーに到着したら、素早くドアを開けて、閉める。後部座席を見ると、諦め気味の犯人と、ニヤニヤしている相勤がいた。

 

「いやあ、面倒なのと当たったねえ」

「まあ、本体は楽にやれたからよかったよ」

 

そう言いながらパトカーのエンジンを入れる。サイドミラーでコンビニを覗いてみるが、店員は追ってくる気はないのか、そのままレジで一息ついている。さあ、事務所にさっさと戻って休もう。今日はもう終わりになんないかな~。




「ハーメルン」では初の投稿となります。日本陸軍広報部支部こと「幻軍曹」と申します。こちらの小説はpixivで投稿した「勤務記録1-01」及び「勤務記録1-02」を合わせて、一部を修正したものとなっています。あまり私の文章は褒められたものではないですが、少しでも楽しんでいただければ幸いです。それでは、また次の小説で……

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